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偶には酒を離れて真面目に宇宙を語ります=陶淵明「飲酒」16

陶淵明の「飲酒」シリーズの16回目。岩波文庫の「陶淵明全集(上)」から。老いから来る焦り。時間には限りがあることを身にしみながら、出世への拘泥から解放されて人生を謳歌することに思いを効す淵明です。

「其十五」

貧居 1)ジンコウに乏しく

2)カンボク 余が宅を荒らす

班班としてア)翔鳥有るも

寂寂として3)コウセキ無し

宇宙 一に何ぞ悠かなる

人生 百に至ること少なし

歳月は相イ)しウ)

4)ビン辺は早くも已に白し

若し5)キュウタツをエ)てずんば

6)ソホウ 深く惜しむ可し

1)ジンコウ=人工。

人間の力でつくること。対義語は造物(ゾウブツ=自然、天地)。ここでは「手を入れて綺麗にすること」。

2)カンボク=灌木。

群がり生える木。叢木ともいう。通常は低木を指す。対義語は喬木(キョウボク)。

3)コウセキ=行跡。

あしあと。行迹とも書く。「ギョウセキ」と読めば「人がある物事を行ったあと」。

4)ビン=鬢。

左右側面の耳際の毛。「びんずら」ともいう。鬢糸(ビンシ=細くて、乱れているびんの毛、老人の白髪のこと)、鬢雪(ビンセツ=びんぼ白髪、鬢霜=ビンソウ=)、鬢髪(ビンパツ=びんの毛と、髪の毛、頭髪のこと)、鬢斑(ビンハン=びんの毛が白髪交じりになること)、鬢毛(ビンモウ=びんの毛)、鬢乱釵横(ビンランサイオウ=びんの毛が乱れて、かんざしが横向きになる、女性の乱れた寝姿を譬える、ちょっと色っぽいさま)。

5)キュウタツ=窮達。

困窮と栄達。窮通(キュウツウ)ともいう。運命の意もあり、ここではこの意味を取る説も多い。「窮」は「きわまる」のほか、「いなか」の意味もある。「窮~」の熟語は多く、窮裔(キュウエイ=きわめてへんぴな土地)、窮竟(キュウキョウ=畢竟)、窮窘(キュウキン=行き詰まって苦しむこと)、窮蹇(キュウケン=貧乏で苦しみ悩む)、窮涸(キュウコ=金が尽きて生活に苦しむ)、窮巷(キュウコウ=むさくるしげな場末の街、窮閻=キュウエン=)、窮而後工(キュウしてのちたくみなり=詩人が、生活に困れば困るほど、そのつくる詩が巧妙になること)、窮蹙(キュウキュク=困ってちぢこまる、貧乏で困り切る)、窮棲(キュウセイ=田舎暮らしをする)、窮賤(キュウセン=貧乏)、窮泉(キュウセン=墓の中)、窮措大(キュウソダイ=貧しい学生や学者、窮書生=キュウショセイ=)、窮途(キュウト=旅の途中で難儀する、貧乏で苦しむ僑寓、仕官できずに苦しむこと)、窮年(キュウネン=天寿を全うする、一生涯、老年)、窮僻(キュウヘキ=へんぴな、最果ての地)、窮匱(キュウキ=たくわえがなく、どうにもならないほど貧しい、窮乏)、窮閭(キュウリョ=貧しい村里、へんぴな村里)、窮廬(キュウロ=貧乏住まい、天幕で作ったすまい)、窮臘(キュウロウ=おしつまった年末)。

6)ソホウ=素抱。

素志。日ごろから抱いているこころざし。素意、素懐とも。「素」は「もと」「もとより」とも訓み、「平素より、素性からして、日ごろ」といった意味があります。「ス」と読めば呉音です。「しろい」という意味もあります。熟語も数多く、素位(ソイ=自分の現在の地位に安んじて、なすべき仕事に全力を尽くすこと)、素隠(ソイン=かくれた道理をもとめる)、素英(ソエイ=しろい花)、素王之文(ソオウのブン=孔子が誤りを正したという「春秋」)、素舸(ソカ=飾りのない舟)、素娥(ソガ=月)、素宦(ソカン=実益のない役、位の低い官職)、素顔(ソガン=すっぴん)、素願(ソガン=平素の願い)、素襟(ソキン=平素からのありのままのこころ、本心)、素餐(ソサン=仕事もしないで俸禄を受けること)、素粧(ソショウ=薄化粧)、素湍(ソタン=白波をたてている急流)、素読(ソドク=文章の意味を考えず声を出して文字だけ読むこと)、素魄(ソハク=月の別名、素蟾=ソセン=)、素封(ソホウ=爵位・領地などはないが、その富が王侯にも匹敵する者、民間の大金持ち)、素望(ソボウ=日ごろからの望み)、素樸(ソボク=飾り気がなくすなおなこと、素朴)、素面(ソメン=すがお)、素友(ソユウ=長年付き合ってきた友)、素履(ソリ=質素な生活をする)、素鱗(ソリン=白身の魚)、素練(ソレン=白い練り絹、平素の訓練)。

ア)翔鳥=ショウチョウ。

羽を広げて空を飛んでいる鳥。翔禽(ショウキン)ともいう。「翔」は「かける」とも訓み、「鳥が羽を広げて飛び舞うさま」。飛翔(ヒショウ=空を飛びまわること)、翔貴(ショウキ=物価が上がる)、翔実(ショウジツ=事柄が詳しくて間違いのないこと)、翔集(ショウシュウ=鳥が飛びあつまる、鳥が群れて飛ぶ)、翔翔(ショウショウ=形よく威儀を正してふるまうさま、心がひろびろとしたさま)、翔佯(ショウヨウ=あちこち飛び回る、翔羊=ショウヨウ=)。

イ)催し=うなが・し。

「催す」は「うながす」。はやくするようにとせきたてる。もちろん「促す」。表外訓み。音読みは「サイ」。催告(サイコク=相手に対して、一定の行為をすることを要求する通知)、催租(サイソ=租税の納入を速くするように促す、催科=サイカ=)、催迫(サイハク=時がおしせまってせきたてる)。↓の「逼」と連語として見れば、「催逼」(サイヒツ、サイヒョク)が成り立ちますが、辞書には掲載されていません。時間が速く過ぎて急き立てられる感じになること。

ウ)逼り=せま・り。

「逼る」は「せまる」。いうことをきくようにしいる、無理強いする。ひしひしとおしよせる。音読みは「ヒツ」ですが、これは慣用読み。漢音では「ヒョク」。逼近(ヒッキン=ひたひたと迫る、危険な物が近づくこと、また、危険なものに近づくこと)、逼塞(ヒッソク=しめつけられて動きがとれない、おちぶれて世間と交際しないこと)、逼迫(ヒッパク、ヒョクハク=物事が差し迫っていて余裕がないこと、そうするように頻りに促す)、逼奪(ヒョクダツ、ヒツダツ=ひしひしと迫って奪う、君主に迫って位を奪う、簒奪=サンダツ=)。

エ)委て=す・て。

「委てる」は「す・てる」。手を離してほうっておく。表外読み。委棄(イキ=捨てて、そのままにしておく、委損=イエン=、自分の権利をほうっておいて、他人の自由にまかせる)。



貧 居 乏 人 工
灌 木 荒 余 宅
班 班 有 翔 鳥
寂 寂 無 行 跡
宇 宙 一 何 悠
人 生 少 至 百
歲 月 相 催 逼
鬢 邊 早 已 白
若 不 委 窮 達
素 抱 深 可 惜



この貧乏暮らしでは手入れもかなわず、我が家のまわりは灌木がはびこっている。付近には鳥が飛び舞うのがはっきりと見えるだけ。戚然として人の足跡はない。宇宙の何と悠久であることか。それにひきかえ人は百歳まで生きるのが稀なのだ。歳月は人を老いへと急き立て鬢のあたりはもう真っ白。もしも貧乏とか出世とかそんなちっぽけなものを棄て去らない限りは平生の志はくずれるばかり、(そうしないと)あとで後悔することになるぞ。

「班班」は「部分ごとのけじめがはっきりとわかれたさま」。ここでは鳥が群れをなして飛ぶさまがはっきりと見えるさまを形容しています。それに対して人が歩いた形跡はゼロ。それが「寂寂」です。そして、思いが至るのははるかな宇宙。悠久たる存在です。人間は生きてもせいぜい百歳まで。すぐに年を取ってしまうのです。だから、日ごろからやりたいことをやるのが一番。やりたくないことはさっさと見切りをつける。金がないとかあるとかちっぽけな妄想に囚われている場合ではない。時間に限りがあることをしっかりと認識しつつ、己を確立して前に進むしかない。淵明の「生」へのこだわりは自らの存在の小ささを認識した時に生まれたようです。この首はまじめに宇宙を語っており、酒への言及は中断しております。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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