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最大の辜は「桃源郷」があると思わせたことか…=陶淵明「桃花源の記」

 陶淵明の「桃花源の記」の二回目です。川の上流に迷い込んだ漁人は、水源近くのとある山に辿り着きます。舟を下りて、そこから愈愈、「奇跡の世界」に逢着します。

 林は水源に尽き、便ち一山を得たり。山に小口有り、髣髴として光有るが若し。便ち船を捨てて口より入る。初は極めて狭く、纔かに人を通すのみ。復た行くこと数十歩、豁然として開朗なり。土地は平曠にして、屋舎は儼然たり。良田、美池、桑竹の属有り。阡陌交り通じ、鶏犬相聞こゆ。其の中に往来し種作する男女の衣着は、悉く外人の如し。黄髪・垂髫、並びにイゼンとして自ら楽しめり。

 ■「髣髴」は「ホウフツ」。ぼんやりと浮かび上がるさま。両漢字とも1級配当。「彷彿」(これも1級配当)とも書く。1級問題では頻出。陶淵明もよく使う。日常会話で「~が髣髴とする」「~を髣髴させる」などとよく使いますが、「~を思い出させるほど、よく似ている」といった意味で、ここで使われている意味とは少し異なります。

 ■「纔かに」は「わず・かに」。かろうじて、やっとのことで。「纔」も1級配当漢字です。音読みは「サイ」ですが、熟語は見えない。旁が難しいですが、「ク・ロ・ヒ(比)・メン(免)・テン(、)」と覚えましょう。「讒」も同じ。

 ■「豁然」は「カツゼン」。からりと開けたさま。「豁」(1級配当漢字)は「ひら・ける」「ひろ・い」「むな・しい」と訓む。四字熟語に「豁然大悟」(カツゼンタイゴ)があります。はっと悟りが開けること。

 ■「平曠」は「ヘイコウ」。平らで広いこと。「平闊」(ヘイカツ)も同義。「曠」(1級配当)は「あき・らか」「ひろ・い」「むな・しい」と訓む。

 ■「儼然」は「ゲンゼン」。「厳然」とも書ける。建物が厳かなさま、立派な建物ということ。「儼」(1級配当)は「おごそ・か」「いかめ・しい」と訓む。

 ■「阡陌」は「センパク」。縦横、東西に走る路(みち)、畦道のこと。「阡」は南北方向、「陌」は東西方向。「阡」も「陌」も1級配当で、共に「みち」「あぜみち」とも訓む。「阡陌交通」(センパクコウツウ)とは、道が縦横に通じているということ。

 ■「黄髪垂髫」は「コウハツスイチョウ」。1級配当の四字熟語。老人と子供を表わす。「黄髪番番」(コウハツハハ)というのもあり、「黄髪」は白髪が黄色がかった髪の色で老人をいう。「垂髫」は、いわゆるたれがみ、お下げ髪のことで子供をいう。「髫」(1級配当)は「たれがみ」「うない」「こども」とも訓む。「髫齔」(チョウシン)という言葉もあり、これも子供を言う。「齔」(1級配当)は、「みそっぱ」「はがわり」「おさな・い」と訓み、矢張り、子供を指す言葉です。

 ■突然ですが「イゼン」は問題です。漢字にして下さい。「以前」「已然」「依然」でないのは分かっていますよね。「イ」は1級配当漢字。ヒントは「イゼンとして自ら楽しめり」。楽しいんです。イメージしましょう。

 正解は「怡然」。なごやかに喜び楽しむさま。にこにこするようす。「怡」は「よろこ・ぶ」「やわ・らぐ」と訓む。熟語には「怡怡」(イイ)、「怡悦」(イエツ)=「怡懌」(イエキ)、「怡顔」(イガン)、「怡衍」(イエン)、「怡暢」(イチョウ)がある。

 立ち並ぶ豪邸、稔り豊かな田畑、光燦めく池、桑林か竹林か見たこともない木々、井然と碁盤の目のように走っている道。ニワトリや犬がにぎやかに鳴いている。道を往来し畑仕事にいそしむ人は男も女もみな此の国の人とは思えない恰好。そして、老人も子供もなんとまぁ楽しげに笑っていること。。。
漁人が目の当たりにしたのは別世界なのかぁ。。

 漁人を見て、乃ち大いに驚き、従って来る所を問う。具さに之れに答う。便ち要えて家に還り、為に酒を設け、鶏を殺して食を作る。村中、此の人有るを聞き、咸来りて問訊す。自ら云う、「先世、秦の時の乱を避け、妻子・邑人を率いて此の絶境に来り、復た焉より出でず、遂に外人と間隔せり」と。「今は是れ何の世ぞ」と問う。乃ち漢の有るをすら知らず、魏・晋は論うまでも無し。此の人、一一為に具さに聞ける所を言うに、皆歎す。余人、各々復た延きて其の家に至らしめ、皆酒食を出す。停まること数日にして、辞し去る。此の中の人語げて云く、「外人の為に道うに足らざるなり」と。

 ■「具さに(具に)」は「つぶさに」と表外訓み。いちいち細かく。「備に」「悉に」とも書く。前者は表外訓み、後者は準1級配当。

 ■「要えて」は「むかえて」と表外訓み。迎えること。「要撃」(ヨウゲキ)は、待ち伏せすること。

 ■「還り」は「かえり」と表外訓み。行った先から戻ること。

 ■「咸」は「みな」。1級配当漢字です。「ことごと・く」とも訓む。

 ■「問訊」は「モンジン」。問いただすこと。あれやこれやと質問攻めにすること。「訊問」「尋問」とも。「訊」は準1級配当で「たず・ねる」「と・う」と訓む。熟語には「鞫訊」「鞠訊」(以上キクジン)、「審訊」(シンジン)、「音訊」(オンジン=音信、たより)、「訊鞫」「訊鞠」(以上ジンキク)=「訊窮」(ジンキュウ)、「訊検」(ジンケン)。

 ■「邑人」は「ユウジン」。むらびと、村民。「邑」は「むら」「くに」「むらざと」と訓む。四字熟語に「邑犬群吠」(ユウケングンバイ=マスコミが大したニュースでもないのにぎゃぁぎゃぁ騒ぐこと)。ほかに、「都邑」(トユウ=都と田舎)、「邑宰」(ユウサイ=村長)、「邑頌」(ユウショウ)、「邑里」(ユウリ)=「邑落」(ゆうらく)、「邑入」(ユウニュウ=税収)など。

 ■「焉」は「ここ」と訓ませる。「焉」は1級配当で、漢文訓読では必須の漢字です。多くの用法がありますが、「いずくんぞ」「いずくにか」と訓むのが多く、反語・疑問の意を表わす副詞。「なにをか」「いずれか」と訓むケースもある。ここでは「ここに」「これより」「これに」などの指示用法。また、文末において訓読せずに「なのだ」「にちがいない」と訳すケースも多い。語調をととのえ、断定の語気を示す。さらに、文末で「~や」「~か」と訓み、疑問・反語の意を示す助詞としても使う。

 ■「間隔」は「カンカク」。遠く離れて疎遠になること。漢字は簡単ですが、「遂に外人とカンカクせり」と書き問題で書けるかどうかです。「カンカク」には「感覚」「棺槨」「棺椁」「肝膈」「捍格」「扞格」「丱角」などの同音異義語があり、注意が必要です。一番簡単なのが「間隔」ですけどね、「下界の人と疎遠になった」という意味が汲み取れるかどうかが勝負です。ちなみに「棺椁」「肝膈」「扞格」「丱角」はいずれも重要1級配当漢字を含んでおり、覚えなくてはいけません。意味は調べよう。同音異義語は最も効果的な語彙力増強策の一つです。

 ■「歎」は「タンワン」。驚き感嘆すること、ああと溜め息を付いて感慨に浸ること(いい意味でも悪い意味でも)。「歎」は「嘆」の書き換え字。「なげ・く」と訓みます。一方、「」は配当外で「うらむ、残念がる、もだえて惜しがる」。熟語には「惜」(ワンセキ)、「恨」(ワンコン)、「傷」(ワンショウ)=「慟」(ワンドウ)=「怛」(ワンダツ)=「嘆」(ワンタン)などがあり、いずれも嘆き悲しむこと。ちなみに「ワンタン」なら「雲吞」もありますが。。。

 ■「延きて」は「まね・きて」と訓ませている。少し特殊。「延」は「ひ・く」と訓んでもいいかもしれません。これは表外訓み。人を引っ張ること、案内してひき入れること。「延いては」は「ひ・いては」。「延頸挙踵」(エンケイキョショウ)は、人の来訪を今か今かと待ちわびること。熟字訓では「延縄」(はえなわ)、「延根」(はいね=這根)。

 驚いたのは漁人よりも寧ろ、その邑の人々の方こそ。「Where do you come from?」。邑中の人々が彼を饗し、質問攻め。そして、自らの先祖が秦代の戦乱を避けて此の「絶境」に居を構えた。爾来、世間とは隔絶してしまったというのです。秦の時代から、時間が止っている。漢代が続き、ましてや魏・晋の時代は知る由もない。彼らの歴史が秦から動いていないのです。

 漁人は引っ張り凧。一躍邑の有名人に。。。あれはどうなった?それでどうなった?と古代中国史を猛勉強したんでしょうねぇ。。俄か先生となった漁人は、あちこちで酒食で饗応を受け、気が付けば滞在期間は数日間に及んだ。

 「んじゃ、もう帰りますわ」。また来ますわと言う前に、邑人の方が先に「あなたが帰っても人に言うほどのことではないですよ」と釘を差したのでした。

 既にして出づるや、其の船を得て、便ち向の路に扶い、処処に之れを誌す。郡下に及び、太守に詣りて説くこと此の如し。太守即ち人を遣わして其の往くに随い、向に誌せし所を尋ねしむるも、遂に迷いて復た路を得ず。

 ■「向の」は「さき・の」と表外訓み。以前の、前の。1級配当漢字では「曩の」「嚮の」とも書く。覚えましょう。

 ■「扶い」は「そ・い」と訓ませている。「扶」は「たすける、世話をする」という意味だから、やや宛字っぽい訓み。「向の路に扶い」は「以前通った道沿いに」ということ。

 ■「詣り」は「いた・り」と訓む。到ること。馳せること。「いたる」は「踵る」「訖る」「臻る」「曁る」「迄る」「格る」などもあります。

 ■「随い」は「したが・い」と表外訓み。あとについて従うこと。「したがう」は「順う」「徇う」「循う」「賓う」「隷う」「婉う」「扈う」「跟う」「蹤う」「殉う」「率う」「服う」「陪う」「伏う」「遵う」もあります。

 漁人は来た道々に目印を付けます。太守に此れ此れ云云と告げて、人を連れて引き返して来ました。ところが、「あれれれれ。。。迷っちゃったわ」。二度とあの邑に辿り着くことはありませんでした。その存在の痕迹すら跡形もなく消えてしまったのです。漁人は厳しく叱責されたのでしょうね。
 「お主は夢でも見ていたんだろ、戯け者めがぁ」。


 南陽の劉子驥は、高尚の士なり。之れを聞き、キンゼンとして往かんと規りしも、未だ果さざるに、尋いで病みて終りぬ。後遂に津を問う者無し。

 ■「南陽の劉子驥」は、「南陽」は郡名で、今の河南省南陽市にある。「劉子驥」(リュウシキ)は、当時の有名な隠者。

 ■「キンゼン」は問題にしました。意味を考えましょうね。名高い隠者が、再び桃源郷に行けなかった漁人の話を聞いて、よぉ~し、俺が行ったるぜいと腕を撫したんですから、その燃えているさまは分かりますよね。「規りし」は「はか・りし」と表外訓み。

 正解は「欣然」。まぁ、「キンゼン」といえばこれしかなんですけどね。

 ■「尋いで」は「つ・いで」と表外訓みですが、これは結構特殊な訓み方でしょうね。接続語で「それに引き続いて、まもなく」という意味。でも、古代中国の文章ではよく出てきますので訓み方は覚えましょう。

 ■「津を問う」は「シンをと・う」。熟語では「問津」(モンシン)。この場合の「津」は、水のうるおす所、浅瀬の船着場、渡し場。文字通りは、渡し場のあり場所をたずねる。論語の「微子第十八」に「長沮・桀溺、耦して耕す。孔子これを過ぐ。子路をして津を問わしむ。…」がある。旅の途中にあった孔子が、畑を耕す隠者の長沮・桀溺のそばを通りかかった。弟子の子路に渡し場がどこにあるかを尋ねさせたところ、二人の隠者は「孔子なら何でも知っているだろう」といって教えることはしなかった。転じて、学問を修めるための方法をたずねること、また、人にピンチの脱出法を問うこと。この場合は、もう二度と桃花源の場所を探すものはいなかったということ。故事成語の問題で「シンを問う者なし」が出るかもしれません。

 南陽の劉子驥までもが勇躍、その秘境を探し当てようとプラニングしたのですが、成就することなく病気で死んでしまった。その後、その地を訪ねようとする者は二度と現れませんでした。

 ここまでが「桃花源の記」の本篇です。浦島太郎の龍宮城じゃないけれど、漁人は慥かに饗しを受けたのは間違いない。亀は助けてないけど。。。その体が覚えている筈です。惜しいかな、何かしら証拠となる品は貰わなかったのでしょうかねぇ。。。予め先手を打つくらいの周到な邑人たちですから、土産物は一切手渡さなかったのでしょうねぇ。。。

 「奴に物は食わせても、酒は飲ませても、物は渡すな」と邑長から密かにお達しが出ていたかもしれません。漁人のちょんぼはこっそり何か物を盗み出さなかったことでしょうね。

 屹度彼は「また来ればいいさ。その時はごっそり宝物でも持ち帰ろうぜ」なぁ~んて軽い気持ちでいたんでしょうねぇ。甘い甘い。ここで教訓です。好機は一度だけ。まだはもうなり、もうはまだなり。競馬の格言みたいですが、自分のしたい事は今しかできないんです。そう、時間もお金も何もあろうがなかろうが、やろうと思ったその瞬間が最大値なんです。少しでも遅らせたり、ずらしたりしても、それで得られる成果は最大にはならない。いや、むしろ、マイナスだってあり得るからね。チャンスは一度と思っていて間違いはないでしょう。

 さて、漁人が迷い込んだ「桃源郷」が本当にあるのかないのかは誰にも分かりません。漁人だけが知っている。だけど、憖、彼が知ったがために、世間を惑わせてしまいましたね。もしかしたら後世の人間にとっては、彼の最大の「辜」かもしれません。知ってしまったことが。。この世に「桃源郷」はあるんだと思わせてしまったことが。。。本当はないのにね。

 んでも、迂生もあるといいなぁと思いますよ。各人の定義するそれぞれの「桃源郷」が。。。いつもは心のどこかに潜んでいて、人それぞれが本当に欲しくなったときにだけ、「幻」のように現れるのかもしれません。。。すぐ消えてしまうんですがねぇ。。。都合のいい時にだけ現れる「桃源郷」ってないかなぁ。。ないよなぁ。

 次回は「桃花源の記」の詩篇です。お楽しみに。。。


 【おまけ・今日の漢検1級配当漢字】

 昔餓鬼の頃ですが、深夜にプロ野球ニュースという番組があって「今日のホームラン」というコーナーを番組の最後にやっていたのを思い出しました。たたったったた~た、た~たた~(各人で少しずつリズムは異なると思いますが、迂生が文字にすればこう)…軽快な音楽にあわせてその日に打ったホームランのシーンを一挙に見せるのです。あれ、よかったなぁ~と思い、そうだ、漢字検定1級でもやってみよう、と思い付きです。本日の記事で採り上げた漢字検定1級配当漢字を羅列して学習に役立ててもらおうと言う趣旨です。試みにやってみましょう。音楽は御覧のあなたが自由に頭の中で描いて下さいね。んじゃ、行ってみよう。(ちなみに、世代ギャップがあるかも分かりません。若い人でなんじゃそれ?って知らない人がいるかも。そうゆう御仁はネット検索ででもお調べ下さいませ。。。悪しからず)

 髣髴、彷彿、纔、讒、豁、曠、闊、儼、阡陌、髫、齔、怡、已、懌、衍、咸、魏、鞫、頌、焉、椁(槨)、丱、扞(捍)、膈、慟、怛、踵、曩、嚮、訖、臻、曁、徇、婉、扈、跟、蹤、迹、驥、耦、沮、桀、慥、辜、憖
 (もしかしたら漏れがあるかも、あるいは1級でないものも交じっているかも、それは皆さんが直してメモして置いて下さいね)
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char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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