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「ケイコウ」の臣は「蛍光」?「鶏口」?「携行」?いえいえ…=司馬遷「報任少卿書」17

中国の名文を味わうシリーズは、司馬遷の「報任少卿書(任少卿に報ずるの書)」(明治書院の新書漢文大系・35「文選<文章篇>」)の17回目です。ラス前です。友人である任少卿にだけ自分の本心を打ち明けて、理解してほしいと切に願う司馬遷です。この熱き思いは誰にでも言うわけにはいかない。ほかならぬ、本当に信頼のできるあなただけなのですよ。

且つ負下は未だ居り易からず、下流は1)ボウギ多し。僕2)コウゴを以て此の禍に遇い、重ねて3)キョウトウの笑う所と為り、以て先人を汚辱す。亦何の面目ありて、復た父母の4)キュウボに上らんや。百世をア)ぬると雖も、イ)は弥々甚だしきのみ。是を以て腸は一日に5)キュウカイし、居りては則ち忽忽として、亡う所有るが若く、出でては則ち其の往く所を知らず。每に斯の恥を念えば、汗の未だ嘗て背に発し衣をウ)さずんばあらざるなり。身は直だ6)ケイコウの臣と為るのみ、寧くんぞ自ら深蔵岩穴に引くを得んや。

 1) ボウギ=謗議。

  悪口を言うこと、そしり。「謗」は「そしる」「そしり」とも訓む。謗怨(ボウエン=そしりうらむ、謗恨=ボウコン=)、謗譏(ボウキ=きびしくそしる、そしり)、謗言(ボウゲン=人をけなすことば、悪口、謗語=ボウゴ=)、謗鑠(ボウシャク=そしり)、謗書(ボウショ=他人の悪口を書いた手紙、「史記」のこと、漢の政策をそしった書物)、謗傷(ボウショウ=人を悪く言ってけがす、謗詆=ボウテイ=、謗毀=ボウキ=、謗誚=ボウショウ=、謗讒=ボウザン=)、謗声(ボウセイ=人をそしる声、悪いという評判のこと、悪評)、謗嘲(ボウチョウ=そしりあざける)、謗木(ボウボク=人民に政治の欠点や不満を自由に書かせるために、朝廷の前にたてた木のこと、目安箱みたいなもの)、謗誉(ボウヨ=そしることと、ほめること、毀誉=キヨ=)。

 2) コウゴ=口語。

  いった事柄、口にしたことば、言論。あるいは、批判。ここでは、李陵を弁護した言辞を指している。

 3) キョウトウ=郷党。

  むらざと、同郷の人々。周代の制度では、五百家を「党」、一万二千五百家を「郷」としたことからいう。教頭、侠盗、驕宕、狂濤、共闘、狂騰ではないので要注意。

 4) キュウボ=丘墓。

  墓そのものを指す。墳墓(フンボ)、丘墳(キュウフン)ともいう。「丘~」の熟語もなかなかに曲者揃いで、丘里之言(キュウリのゲン=俗世間のことば、でたらめの話)、丘阜(キュウフ=小山)、丘壟(キュウロウ=おか、はか、丘隴とも)、丘軻(キュウカ=孔子と孟子のこと、ともに両者の字)、丘壑(キュウガク=隠棲に適した、俗世間を離れたところ)、丘墟(キュウキョ=土地、建物が荒れ果てたあと、廃墟)、丘索(キュウサク=八索九丘の略で中国古代伝説上の書物の名)、丘首(キュウシュ=本を忘れないこと、故郷を思うこと)、丘冢(キュウチョウ=丘のように小高く築いた墓、丘塚=キュウチョウ=とも)、丘民(キュウミン=いなかに住んでいる身分の卑しい人民)。

 5)キュウカイ=九迴。

  この場合の「九」は「数が多い、また、奥深いさま」を表す形容詞用法の語。「迴」は「めぐる」とも訓み、したがって、「何度も何度もぐるぐる回ること、はらわたがひどくねじれるさま、もだえるさまをいう」。

 6) ケイコウ=閨閤。

  ねや、特に夫人の部屋を指す。閨房(ケイボウ)ともいう。ここでは宮廷の奥深くといった意味。「閨」は「奥まった小門」のことで「ねや」「こもん」とも訓む。閨怨(ケイエン=夫とはなればなれになっている、妻の悲しみ)、閨秀(ケイシュウ=文芸・学術にすぐれた女性、才媛)、閨中(ケイチュウ=婦人の部屋、閨裏=ケイリ=)、閨庭(ケイテイ=家の中、家庭のこと)、閨竇(ケイトウ=とくに作った門ではなく、壁にあけた小さなくぐり戸、転じて貧しい人の家、篳門閨竇=ヒツモンケイトウ=)、閨閥(ケイバツ=妻の親類関係の勢力を中心に結んだ仲間)、閨範(ケイハン=女性の守るべき手本)、閨門(ケイモン=ねやの出入り口、家庭のしつけ、宮中または城内の小門)、孤閨(コケイ=夫が不在で、妻が独りさびしく寝る部屋、空閨=クウケイ=)。「閤」は「くぐりど」とも訓む。閤内(コウナイ=室内)、宮閤(キュウコウ=宮殿)、閤下(コウカ=門のある建物の下、転じて、そのうような建物にいる身分の高い人を尊んでいうことば)。

 ア) 累ぬる=かさ・ぬる。

  「累ねる」(かさねる)の古語。つながってかさねる、つながってかさなる、ほかの物事をかさね加える。挈累(ルイをたずさう=足手まといになる妻や子供たちをつれる)、累日(ルイジツ=幾日も続いて)、累遷(ルイセン=地位などが次第にあがること)、累紲(累絏=ルイセツ、しばりなわ、罪人として捕らわれること)、累息(ルイソク=溜息、吐息、息をひそめ殺すこと)、累葉(ルイヨウ=何代も続くこと、代々)、累卵之危(ルイランのキ=物事が、卵を積み重ねたようにくずれてこわれそうである、きわめて危険な状態にあること)。

 イ) 垢=はじ。

  「けがれ」とも訓み、ちり・あかのよごれから転じて、体面をけがすこと。音読みは「コウ」、呉音で「ク」。垢辱(コウジョク=はずかしめ、はじ)、刮垢磨光(あかをけずりひかりをマす=人の欠点をけずりとって、知徳の光を発揮させる、人材を育成すること)、垢汚(コウオ=あかがついてよごれる、そのよごれ、垢穢=コウアイ=)、垢脂(コウシ=あせやあぶらのよごれ、垢膩=コウジ、くに=)、垢滓(コウシ=あかとかす、よごれたもの)、垢弊(コウヘイ=あかじみて、やぶれる、またその着物)、垢離(こり=神仏に願い事をするとき水を浴びて心身のけがれを取り去ること、水垢離)、無垢(ムク=けがれなし)、塵垢(ジンコウ=ちりとあか)。

 ウ) 沾さずんば=うるお・さずんば。

  「沾す」は「うるおす」。ひたひたと水でぬらす、他に利益を及ぼす。音読みは「テン」。沾洽(テンコウ=恵みなどが広く行き渡る、学識が広い)、沾湿(テンシツ、テンシュウ=ひたひたとぬれる、また、雨でぬらすこと)、沾染(テンセン=気質が、外部の影響で変わる)、沾被(テンピ=恵みを受ける)。「うるおす」はほかに、「潤す、霑す、洽す、浹す、涵す、湿す、膏す」がある。雨冠のついた「霑」も「テン」で同義。四字熟語に霑体塗足(テンタイトソク=苦労して労働すること)があり本番で要注意。霑酔(テンスイ=全身にしみわたるほど酔う、泥酔)と熟語もあります。


そもそも、罪を負った者は暮らしにくいもの。下賤な人々はとかく口うるさいもの。わたしは自分が口にしたことばが原因となって、この災禍に遭うこととなり、その上、郷里の人々の笑い者ともなり、亡き父親の名前すら汚してしまった。一体、如何なる顔をして、父母の丘墓に上ることができようか。百世を経過したとしても、恥辱は一層甚だしくなるばかり。かく考えると、腹中が一日に何度もよじれるような苦痛があり、家にいても茫然として何かを失ってしまった気がして、外に出てみても、何処へ行こうとしていたのかも、分からなくなってしまう有様なのだ。この恥辱を思い返すたびに、冷や汗は背中を伝わり、衣服を濡らすのである。わが身は宮廷の奥深く仕えている身に過ぎないのだが、さりとて、身を退いて巌穴に隠棲することもできないこの身が恨めしい。

そうだ、わたしにはやることが一つしかない。はっきりしている。罪は罪として消えるものではない。ただ、前を向いて己の為すべきことに邁進するのみ。たとえ、人が何と言おうとも、何と思おうとも……。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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