スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

獅子奮迅たる李陵の活躍ぶりに感動=司馬遷「報任少卿書」7

中国の名文を味わうシリーズは、司馬遷の「報任少卿書(任少卿に報ずるの書)」(明治書院の新書漢文大系・35「文選<文章篇>」)の7回目です。李陵とかかわった司馬遷は、親しくないと言いながらも、尊敬の念を持っています。中島敦の「李陵」を読めば、彼の獅子奮迅たる活躍ぶりは髣髴とし、それがそのまま司馬遷の手紙でも描写されています。司馬遷が感動したさまもうかがえます。

且つ李陵は歩卒をア)ぐること、五千に満たず。深く1)ジュウバの地を践み、足は王庭を歴、餌を2)ココウに垂れ、彊胡に挑し、億万の師を仰ぎ、単于と連戦すること十余日。殺す所半当を過ぐ。虜は死を救い傷を扶くるも給せず。イ)旃裘の君長、咸震怖す。乃ち悉く其の左右賢王を徵し弓を引くの人を挙げ、一国共に攻めて之を囲む。転闘すること千里、矢尽き道窮するも、救兵至らず、士卒の死傷すること積むが如し。然れども陵一たび呼して労えば、軍士起ちて、ウ)躬自ら流涕し、血をエ)い涙を飲み、更に空拳を張り、3)ハクジンを冒し、北にオ)かい争いて敵に死せざる者無し。陵未だ没せざる時、使の来りて報ずる有り。漢の公卿王侯、皆カ)を奉り寿を上る。後数日、陵の敗書聞せらる。主上之が為に、食は味を甘しとせず、朝を聴くも怡ばず。大臣4)ユウクし、出ずる所を知らず。

 1) ジュウバ=戎馬。

  戦争に使う軍馬。戦争そのものを指す。ここは後者。「戎」は「えびす」。戎馬倥偬(ジュウバコウソウ=戦場にあって忙しく軍務を行うこと、兵馬倥偬=ヘイバコウソウ=とも)。

 2) ココウ=虎口。

  トラの口。非常に危険な場所・場合のたとえ。孤高、股肱、枯槁、糊口、辜較ではない。

 3) ハクジン=白刃。

  さやから抜いてある刀。しらは。故事成語に「白刃胸を扞(おか)せば則ち流矢を見ず」(大きな困難に出遭った場合は、小さな問題にかかわっている余裕はないこと、出典は荀子「彊国」)がある。

 4) ユウク=憂懼。

  恐れ心配すること、また、心配事。憂畏(ユウイ)、憂惶(ユウコウ)、憂惧(ユウグ)ともいう。憂懣(ユウモン=心配して苦しむ)、憂恤(ユウジュツ=かわいそうでふさぎこむ)。「懼」は「おそれる」とも訓む。

 ア) 提ぐる=ひっさ・ぐる。

  「提げる」は「ひっさげる」。ぐいと直線状にひっさげて持つ。表外訓み。提挈(テイケツ=互いに手を取り合っていく)、提撕(テイセイ=手に提げてもつ、後輩や後進の者を教え導く、励ます)、提要(テイヨウ=その物事の要点をあげ示す、その書物)。

 イ) 旃裘=センキュウ。

毛織りの服。氈裘(センキュウ)ともいう。「旃」は「毛織物」のことで「けおりもの」「あかはた」とも訓む。旃車(センシャ=毛氈を荷台にはりめぐらした車)、栴檀(センダン=センダン)、旃毛(センモウ=毛織物の毛)。「裘」は「かわごろも」。

 ウ) 躬自ら=みずか・ら。

  躬身は「キュウシン」とも読む。からだ、体を曲げて礼をする。「躬」の一字で「みずから」とも訓む。躬耕(キュウコウ=自分で田畑を耕す)、躬行(キュウコウ=自分で実際に実行する、実践する)、実践躬行(ジッセンキュウコウ=自分自身の力で実際にすすんで行動してみること、口先ばかりを戒める言葉)、鞠躬尽瘁(キッキュウジンスイ=ひたすら心を尽して骨折り国事につとめること、諸葛亮「出師の表」)。

 エ) 沬い=あら・い。

  顔を洗う、顔に水を注ぐ。旁をよく見てください。「末」でなくて「未」です。残念ながら配当外の漢字です。音読みは「マイ」。

 オ) 嚮かい=む・かい。

  むこうへ動いて去る。音読みは「キョウ」。嚮導(キョウドウ=目標目指して導く)、嚮応(キョウオウ=響きが声に応じるように、人の言葉や行動にすぐさま反応すること)、嚮然(キョウゼン=音の響くさま)、嚮道(キョウドウ=道案内をする、また、その人)、嚮慕(キョウボ=そのほうをむいて慕う)、嚮明(キョウメイ=夜が明るくなってくる頃、夜明け)。「向」と書き換えできるケースは多い。

 カ) 觴=さかずき(ショウ)。

  酒杯の総称。濫觴(ランショウ=さかずきからあふれたほどのわずかな液体、大水の源流となるもので、転じて、物事のおこり、発端)、觴詠(ショウエイ=酒を飲み、詩歌をうたう)、觴酌(ショウシャク=さかずきと、酒を入れる銚子、酒を酌み交わすこと、觴勺)、觴酒(ショウシュ=さかずきの酒)、觴政(ショウセイ=酒宴に興を添えるために設けた規則、觴令=ショウレイ=)、觴杯=ショウハイ=)。



李陵の活躍ぶりはこうです。わずか五千の歩卒を引き連れて、匈奴のいる地を奥深く分け入り、単于の本拠地を横切り、虎口に自ら餌となって身をさらす。匈奴の精鋭に戦いを挑み、その億万の大軍を迎撃し、単于と連戦すること、数十日に及ぶ。殺した敵の兵隊は辞軍の数の半数を上回り、匈奴は死者を収容し、負傷した兵隊を救出するにも兵士が足りず、毛織りの上着をまとった指揮官たちは、皆恐怖のあまり震えあがる。かくして、敵は左右の賢王を呼び寄せ、弓の使い手のすべてを繰り出し、国の総力を結集して李陵の軍を攻撃。包囲した。李陵は転戦すること千里に、ついに矢も尽き、道も極まって、かくて援軍も来らず、士卒は負傷して倒れ伏す。ところが、李陵が犒いの言葉を発した途端に、兵士らは一斉に立ち上がり、涙を流し、顔は血まみれになりながら、涙をのみ込み、矢の尽きた弓を張って弦音を響かせながら、敵の白刃をものともせず、北に向かって先を争い、敵を皆殺しにしていく。。。。

しかし、所詮五千の軍隊は限界がある。李陵軍敗北の知らせが入ると、皇帝は落胆の色を隠されず、食事ものどを通らなくなりました。回りの取り巻き連中も憂い、恐れ、為すすべを知らぬ有様でした。そして、あのことが起こったのです。。。。。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

profile

char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

calendar
04 | 2017/05 | 06
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -
recent entry
recent comment
category
monthly archive
search form
RSS links
links
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。