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屈原の「離騒経」を一気に通読しよう=19・最終回

中国の名文・美文を噛み締めるシリーズは、憂国の大詩人、屈原の「離騒経」(明治書院「新書漢文大系35 文選<文章篇>」)の19回目です。いよいよ大団円。最終の第十四段は「乱(=まとめの言葉)。故郷への想いを断ち切り、いにしえの賢臣である彭咸のもとへ行こうと述べる。」。

乱に曰く、ア)んぬるかな。

国に人無く吾を知る莫し。又何ぞ1)コトを懐わん。

既に与に美政を為すに足る莫し。吾将に彭咸の居る所に従わんとす、と。

1)コト=故都。昔都であったところ、古い都、故郷の都。古都とも書く。

ア)已んぬるかな=や・んぬるかな。「もうこれまでだ」「もうだめだ」などと絶望の意。「已矣」「已矣乎」「已矣夫」「已矣甚」とも書く。漢文訓読用法です。


(解釈)乱にいう、「ああ、もうおしまいだ。この楚国には賢人は無く、また、この私を理解してくれる人もいない。この上はどうして故国を懐い慕おうぞ。もはや共によい政治をするに足る人物がいないからには、わたしはかの彭咸のあとを追って一緒に住むことにしよう」と。

清廉潔白の孤高の詩人である屈原は讒言に陥れられ、彼はその後汨羅江に身投げしてこの世を去ります。そうした濁世に迎合できずに無念な思いを残した屈原の想いは後世の中国はもちろん、日本の文学作品にも頻出します。われわれも過度に自らの正当性だけを重んじるのは厳に戒めなければなりませんが、曲学阿世することなく讒諂面諛することのない生き方を見習いたいものですね。どうせ一度の人生なら、己の信じる道をまっすぐに進みたいです。折角の「離騒経」です。その最後に当たり、もう一度全文を一挙掲載しておきます。もう一度復習しませんか。屈原の「怨念」の叫びを通読して味わいましょう。忘れた読み・訓みや意味は、弊blogの過去記事を振り返っておきましょう。


■「離騒経」(文選・文章篇)■

帝高陽の苗裔、朕が皇考を伯庸と曰う。

摂堤孟陬に貞しく、惟れ庚寅に吾以て降れり。

皇覧て余を初度に揆り、肇めて余に錫うに嘉名を以てす。

余を名づけて正則と曰い、余を字して零均と曰う。

紛として吾既に此の内美有り、又之を重ぬるに脩態を以てせり。

江離と辟芷とを扈り、秋蘭を紉いで以て佩と為す。

汨として余将に及ばざらんとするが如く、年歳の吾と与にせざるを恐る。

朝には「阝+比」の木蘭を搴り、夕べには洲の宿莽を攬る。

日月は忽として其れ淹まらず、春と秋と其れ代序す。

草木の零落するを惟い、美人の遅暮ならんことを恐る。

壮を撫して穢を棄てず、何ぞ其れ此の度を改めざる。

騏驥に乗りて以て馳騁し、来れ吾夫の先路を導かん。

昔三后の純粋なる、固に衆芳の在りし所なり。

申椒と菌桂とを雑う、豈維だ夫の茝を紉ぐのみならんや。

彼の尭舜の耿介なる、既に道に遵いて路を得たり。

何ぞ桀紂の昌披なる、夫れ唯だ捷径以て窘歩せり。

惟うに党人の偸楽せる、路は幽昧にして以て険隘なり。

豈余が身の殃を憚るならんや、皇輿の敗績せんことを恐るるなり。

忽として奔走して以て先後し、前王の踵武に及ばんとす。

荃 余の中情を察せず、反って讒を信じて斉怒す。

余 固より謇謇の患いを為すを知るも、忍んで舎むこと能わざるなり。

九天を指して以て正と為す、夫れ唯だ霊脩の故なり。

初め既に余と言を成ししも、後に悔い遁れて他有り。

余 既に離別を難らざるも、霊脩の数々化するを傷む。

余 既に蘭を九畹に滋え、又を百畝に樹う。

留夷と掲車とを畦にし、杜衡と芳芷とを雑う。

枝葉の峻茂せんことを冀い、願わくは時を竢って吾将に刈らんとす。

萎絶すと雖も其れ亦何ぞ傷まん、衆芳の蕪穢するを哀しむ。

衆 皆競い進みて以て貪婪なり、憑つれども求索に厭かず。

羌 内に己を恕して以て人を量り、各々心を興して嫉妬す。

忽として馳騖して以て追逐すれども、余が心の急とする所に非ず。

老 冉冉として其れ将に至らんとす、脩名の立たざらんことを恐る。

朝には木蘭の墜露を飲み、夕べには秋匊の落英を餐らう。

苟くも余が情其れ信に姱しく以て練要ならば、長く顑頷するも亦何ぞ傷まん。

木根を擥りて以て茝を結び、薛荔の落蘂を貫く。

菌桂を矯めて以てを紉ぎ、胡縄の纚纚たるを索にす。

謇 吾夫の前脩に法る、時俗の服する所に非ず。

今の人に周わずと雖も、願わくは彭咸の遺則に依らん。

長太息して以て涕を掩い、人生の多艱なるを哀しむ。

余好く脩姱して以て鞿羈すと雖も、謇 朝に誶めて夕べに替てらる。

既に余を替つるに纕を以てし、又之に申ぬるに攬茝を以てす。

亦余が心の善しとする所、九死すと雖も其れ猶お未だ悔いず。

怨むらくは霊脩の浩蕩として、終に夫の人心を察せざることを。

衆女余の蛾眉を嫉み、謡諑して余を謂うに善く淫するを以てす。

固に時俗の工巧なる、規矩に偭いて改め錯く。

縄墨に背いて以て曲を追い、周容を競いて以て度と為す。

忳として鬱悒して余侘傺し、吾独り此の時に窮困す。

寧ろ溘に死して以て流亡すとも、余此の態を為すに忍びざるなり。

鷙鳥の群せざるは、前代自りして固より然り。

何ぞ方円の能く周わん、夫れ孰か道を異にして相安んぜん。

心を屈して志を抑え、尤めを忍んで詬を攘わん。

清白に伏して以て直に死するは、固に前聖の厚くする所なり。

道を相るの察らかならざるを悔い、延佇して吾将に反らんとす。

朕が車を廻らして以て路に復り、行迷未だ遠からざるに及ばん。

余が馬を蘭皐に歩ませ、椒丘に馳せて且く焉に止息す。

進んで入れられずして以て尤めに離わば、退いて将に復た吾が初服を脩めんとす。

芰荷を製して以て衣と為し、芙蓉を集めて以て裳と為す。

吾を知らざるも其れ亦已まん、苟に余が情其れ信に芳し。

余が冠の岌岌たるを高くし、余が佩の陸離たるを長くす。

芳と沢と其れ雑糅し、唯だ昭質其れ猶お未だ虧けず。

忽ち反顧して以て目を游ばしめ、将に往きて四荒を観んとす。

佩は繽紛として其れ繁飾し、芳は霏霏として其れ弥々章らかなり。

人生各々楽む所有り、余独り脩を好んで以て常と為す。

体解せらると雖も吾猶お未だ変ぜず、豈余が心の懲る可けんや。

女「須(の下に)+女」の嬋媛たる、申申として其れ予を詈る。

曰く、鯀は婞直にして以て身を亡ぼし、終然として羽の野に夭せり。

汝は何ぞ博謇にして脩を好み、紛として独り此の姱節有るや。

薋菉葹を以て室を盈てるに、判として独り離れて服せざる。

衆は戸ごとに説く可からず、孰か云に余の中情を察せん。

世は並びに挙りて朋を好む、夫れ何ぞ煢独にして予に聴かざる、と。

前聖に依りて節中せんとし、喟として心に憑りて茲に歴れり。

沅湘を済りて以て南征し、重華に就いて詞を陳ぶ。

啓に九弁と九歌とあるも、夏康娯しんで以て自ら縦にす。

難を顧みて以て後を図らず、五子用て家巷に失えり。

羿は淫遊して以て畋に佚り、又好んで夫の封狐を射る。

固に乱流して其れ終わること鮮なし、浞は又夫の厥の家を貪る。

澆は身にを被服し、欲を縦にして忍びず。

日々に康娯して自ら忘れ、厥の首用て夫れ顚隕せり。

夏桀の常に違える、乃ち遂に焉に殃に逢えり。

后辛の葅醢にする、殷宗用て長からず。

湯禹は儼にして祗敬し、周は道を論じて差う莫し。

賢を挙げて能に授け、縄墨を脩めて頗かず。

皇天は私阿無く、人徳を覧て馬に輔を錯く。

夫れ維だ聖哲にして以て茂行あり、苟に此の下土を用うるを得。

前を瞻て後ろを顧み、人の計極を相観するに、

夫れ孰か義に非ずして用う可けん、孰か善に非ずして服す可けん。

余が身を阽うして死に危ずくも、余が初めを覧て其れ猶未だ悔いず。

鑿を量らずして枘を正せば、固に前脩も以て葅醢にせらる。

曽ねて嘘唏して余鬱邑し、朕が時の当たらざるを哀しむ。

茹を攬りて以て涕を掩えど、余が襟を霑して浪浪たり。

跪き衽を敷きて以て辞を陳べ、耿として吾既に此の中正を得たり。

玉虯を駟として以て鷖に乗り、溘ち風に埃して余上り征く。

朝に軔を蒼梧に発し、夕に余県圃に至る。

少く此の霊瑣に留まらんと欲すれば、日は忽忽として其れ将に暮れんとす。

吾羲和をして節を弭め、崦「山+茲」を望んで迫ること勿からしむ。

路は漫漫として其れ脩遠なり、吾将に上下して求索せんとす。

余が馬に咸池に飲い、余が轡を扶桑に結ぶ。

若木を折りて以て日を払ち、聊か須臾して以て相羊す。

望舒を前にして先駆せしめ、飛廉を後にして奔属せしむ。

鸞皇 余が為に先ず戒め、雷師余に告ぐるに未だ具わらざるを以てす。

吾 鳳凰をして飛騰せしめ、又之に継ぐに日夜を以てす。

飄風屯まりて其れ相離れ、雲霓を師いて来り御う。

紛総総として其れ離合し、斑陸離として其れ上下す。

吾 帝閽をして関を開かしめんとすれば、閶闔に倚りて予を望むのみ。

時は曖曖として其れ将に罷まらんとし、幽蘭を結んで延佇す。

世 溷濁して分かたず、好んで美を蔽いて嫉妬す。

朝に吾将に白水を済り、閬風に登りて馬を緤がんとす。

忽ち反顧して以て流涕し、高丘の女無きを哀しむ。

溘ち吾 此の春宮に遊び、瓊枝を折りて以て佩に継ぐ。

栄華の未だ落ちざるに及び、下女の詒る可きをウ)相ん。

吾 豊隆をして雲に乗り、宓妃の在る所を求めしむ。

佩纕を解いて以て言を結び、吾 蹇脩をして以て理を為さしむ。

紛総総として其れ離合し、忽ち緯「糸+畫」して其れ遷り難し。

夕べに帰りて窮石に次り、朝に髪を洧盤に濯う。

厥の美を保ちて以て驕傲し、日々に康娯して以て淫遊す。

信に美なりと雖も礼無し、来れ違棄して改め求めん。

覧て四極を相観し、天に周流して余及ち下る。

瑤台の偃蹇たるを望み、有娀の佚女を見る。

吾 鴆をして媒を為さしむるに、鴆 余に告ぐるに好からざるを以てす。

雄鳩の鳴き逝く、余猶お其の佻巧を悪む。

心 猶予して狐疑し、自ら適かんと欲するも可ならず。

鳳皇は既に詒を受く、恐らくは高辛の我に先んぜんことを。

遠く集らんと欲するも止まる所無し、聊か浮游して以て逍遥せん。

少康の未だ家せざるに及び、有虞の二姚を留めん。

理 弱くして媒拙く、導言の固からざるを恐る。

時 溷濁して賢を嫉み、好んで美を蔽いて悪を称ぐ。

閨中既に以て邃遠なり、哲王又寤らず。

朕が情を懐きて発せず、余焉くんぞ能く忍びて此と終古せん。

「艹+夐」茅と筳「竹+專」とを索り、霊氛に命じて余が為に之を占わしむ。

曰く、両美は其れ必ず合わん、孰か脩を信じて之を慕わんや。

思うに九州の博大なる、豈唯だ是にのみ其れ女有らんや、と。

曰く、勉めて遠逝して狐疑する無かれ、孰か美を求めて女を釈てん。

何の所にか独り芳草無からん、爾何ぞ故宇を懐う。

時幽昧にして以て眩曜す、孰か云に余の美悪を察せん。

民の好悪は其れ同じからず、惟だ此の党人のみ其れ独り異なり。

戸ごとに艾を服して以て要に盈て、幽蘭は其れ佩ぶ可からずと謂う。

草木を覧察するすら其れ猶お未だ得ず、豈の美に之れ能く当らんや。

糞壌を蘇りて以て幃に充て、申椒は其れ芳しからずと謂う、と。

霊氛の吉占に従わんと欲すれども、心猶予して狐疑す。

巫咸 将に夕べに降らんとす、椒糈を懐いて之を要す。

百神 翳いて其れ備に降り、九疑 繽として其れ並び迎う。

皇は剡剡として其れ霊を揚げ、余に告ぐるに吉故を以てす。

曰く、勉めて升降して以て上下し、矩矱の同じき所を求めよ。

湯禹は儼にして合うを求め、摯と皇繇とは而ち能く調う。

苟くも中情其れ脩を好まば、何ぞ必ずしも夫の行媒を用いん。

説は築を傅巌に操れども、武丁用いて疑わず。

呂望の刀を鼓する、周文に遭いて挙げらるるを得たり。

寧戚の謳歌する、斉桓聞いて以て輔に該えり。

年歳の未だ晏からず、時も亦猶お其れ未だ央きざるに及ばん。

恐らくは「單+鳥」鴂 先ず鳴きて、百草をして之が為に芳しからざらしめんことを、と。

何ぞ瓊佩の偃蹇たる、衆 「艹+愛」然として之を蔽う。

惟だ此の党人の亮ならざる、恐らくは嫉妬して之を折かん。

時は繽紛として其れ変易す、又何ぞ以て淹留す可けん。

蘭芷は変じて芳しからず、荃は化して茅と為る。

何ぞ昔日の芳草、今直ちに此の蕭艾と為るや。

豈其れ他の故有らんや、脩を好むこと莫きの害なり。

余 蘭を以て恃む可しと為せり、羌 実無くして容長ず。

厥の美を委てて以て俗に従い、苟くも衆芳を引くを得たり。

椒は専ら佞にして以て慢慆たり、「木+殺」は又夫の佩幃を充たさんと欲す。

既に進むを干めて入れられんことを務むれば、又何の芳をか之れ能く祗しまん。

固より時俗の流れに従う、又孰か能く変化すること無からん。

椒蘭を覧るに其れ茲の若し、又況んや掲車と江離とをや。

惟だ茲の佩の貴ぶ可き、厥の美を委てて茲に歴る。

芳 菲菲として虧け難く、芬は今に至るも猶お未だ沫まず。

度を和らげ調えて以て自ら娯しみ、聊か浮游して女を求めん。

余が飾りの方に壮んなるに及んで、周流して上下を観ん。

霊氛既に余に告ぐるに吉占を以てす、吉日を歴んで吾将に行かんとす。

瓊枝を折りて以て羞と為し、瓊「麻+非+灬」を精げて以て粻と為す。

余が為に飛竜に駕し、瑤象を雑えて以て車と為す。

何ぞ離心の同じかる可き、吾将に遠逝して以て自ら疏けんとす。

邅りて吾夫の崑崙に道すれば、路脩遠にして以て周流す。

雲霓の晻藹たるを揚げ、玉鸞の啾啾たるを鳴らす。

朝に軔を天津に発し、夕べに余西極に至る。

鳳凰は翼しみて其れ旂を承げ、高く翺翔して之れ翼翼たり。

忽ち吾此の流沙に行き、赤水に遵いて容与す。

蛟竜を麾いて津に梁かけしめ、西皇に詔げて予を渉さしむ。

路は脩遠にして以て艱み多く、衆車を騰せて径に待たしむ。

不周に路して以て左転し、西海を指して以て期と為す。

余が車を屯むこと其れ千乗なり、玉軑を斉えて並び馳す。

八竜の婉婉たるに駕して、雲旗の委移たるを載つ。

志を抑えて節を弭め、神高く馳せて之れ邈邈たり。

九歌を奏して韶を舞い、聊か日を仮りて以て婾楽す。

皇の赫戯たるに陟升し、忽ち夫の旧郷を臨睨す。

僕夫悲しみ余が馬懐い、蜷局として顧みて行かず。

乱に曰く、已んぬるかな。

国に人無く吾を知る莫し。又何ぞ故都を懐わん。

既に与に美政を為すに足る莫し。吾将に彭咸の居る所に従わんとす、と。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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