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殷王朝の彭咸に見る自らの「鑒」=屈原の「離騒経」3

中国の名文・美文を噛み締めるシリーズは、憂国の大詩人、屈原の「離騒経」(明治書院「新書漢文大系35 文選<文章篇>」)の3回目です。同書によると、第三段は「世人がみな乱れていても、自分は高潔な生き方を貫くとの想いを述べる」。濁世にあって、彼が理想とする人物は、古の賢人・彭咸(ホウカン)なのです。殷王朝の人で、主君に忠告したが聞き入れられず、川に身を投げたという。


余既に蘭を九畹(キュウエン)に滋(う)え、又(ケイ)をア)百畝に樹う。

留夷(香草名)と掲車(香草名)とを畦にし、杜衡(トコウ=カンアオイ)と芳芷(ホウシ=ヨロイグサ)とを雑う。

枝葉の1)シュンモせんことをイ)い、願わくは時をウ)って吾将に刈らんとす。

萎絶すと雖も其れ亦何ぞ傷まん、衆芳の2)ブワイするを哀しむ。

衆皆競い進みて以て3)タンランなり、憑(み)つれども求索にエ)かず。

羌 内に己を恕して以て人を量り、各々心を興して嫉妬す。

忽として馳騖(チブ=馬を走らせる)して以て追逐すれども、余が心の急とする所に非ず。

老4)ゼンゼンとして其れ将に至らんとす、脩名の立たざらんことを恐る。

朝には木蘭の5)ツイロを飲み、夕べには秋匊の6)ラクエイをオ)らう。

苟くも余が情其れ信に姱(うつく)しく以て練要ならば、長く顑頷(カンガン=飢えのために顔がやつれるさま)するも亦何ぞ傷まん。

木根をとりて以て茝(シ=ヨロイグサ)を結び、薛荔(ヘイレイ=オオイタビ)の落蘂(ラクズイ=しべ)を貫く。

菌桂(キンケイ=香草)を矯めて以て(ケイ=香草)を紉(つな)ぎ、胡縄の纚纚(シシ=長く連なるさま)たるをカ)にす。

謇 吾夫の前脩にキ)法る、時俗の服する所に非ず。

今の人に周(あ)わずと雖も、願わくは彭咸の遺則に依らん。

1)シュンモ=峻茂。草木がおいしげるさま。峻隘(シュンアイ=土地が切り立って狭い)、峻宇(シュンウ=立派な家)、峻峭(シュンショウ=高くそびえ険しい)、峻阻(シュンソ=山が険しい、峻嶮=シュンケン=)、峻科(シュンカ=厳格な法律、峻法=シュンポウ)。

2)ブワイ=蕪穢。土地などが荒れ果て雑草が生い茂ること。「蕪」も「穢」も「あれる」。

3)タンラン=貪婪。とても欲深いこと。「ドンラン」は慣用読み。「貪」は「むさぼる」。貪猾(タンカツ=欲深くずるがしこい、貪獪=タンカイ=)、貪鄙(タンピ=欲深く心が卑しい)、貪吝(タンリン、ドンリン=欲深くケチ)。

4)ゼンゼン=冉冉。年月がじわじわとたつさま。だんだんと進むさま。荏苒(ジンゼン=じわじわのびるさま)。

5)ツイロ=墜露。こぼれおちる露。墜粉(ツイフン=こぼれおちる花粉)、墜葉(ツイヨウ=落ち葉)、墜景(ツイエイ=入り日、落日)、墜言(ツイゲン=シツゲン)、墜緒(ツイショ=衰えた事業)。

6)ラクエイ=落英。散り落ちる花。落花。落英繽紛(ライクエイヒンプン=落花が乱れ散るさま)。落絮(ラクジョ=散りゆく柳の白いわた)、落魄(ラクハク=希望通りにならず、おちぶれること、落薄)、落霞(ラッカ=ゆうやけ)、落暉(ラッキ=沈む太陽の光、落影、落照)。

ア)百畝=ヒャッポ。面積の単位である「畝」は100歩で、約1・8アール。その前の「畹」(エン)は「一畹は三十畝、または十二畝」。

イ)冀い=こいねが・い。心でそうなってほしいと思う。「冀う」は「こいねがう」。音読みは「キ」。冀求(キキュウ=はげしく願いもとめること、希求)、冀闕(キケツ=宮門の近くにある物見櫓)、冀幸(キコウ=幸運を願う)、冀図(キト=もくろみ、くわだて)、冀望(キボウ=望み願う)。

ウ)竢って=ま・って。「竢つ」は「まつ」。じっとたって待ち受ける。音読みは「シ」。「まつ」はほかに、「俟つ、佇つ、候つ、竚つ、須つ」。

エ)厭かず=あ・かず。「厭く」は「厭く」。音読みは「エン」。厭忌(エンキ=いやになって嫌う)、厭倦(エンケン=あきていやになること)、厭足(エンソク=あきたりる、じゅうぶんになって満足する)、厭飫(エンヨ=たべあきる)。「オウ、ヨウ」と読めば別の意味に。

オ)餐らう=く・らう。音読みは「サン」。餐霞(サンカ=道家で、修練としてかすみを食うこと)、餐霞子(サンカシ=仙人)、餐食(サンショク=食事)、餐銭(サンセン=天子から臣下に賜る賄い料)、餐飯(サンパン=食事)。

カ)索=なわ。表外訓み。「なわ」はほかに、「綯、縲」。

キ)法る=のっと・る。表外訓み。手本としての決まった枠に従う。「のっとる」はほかに、「則る、式る、律る、憲る、楷る、模る」。

文中の「羌」は、屈原が創始した「楚辞」において「ああ」と感嘆語として頻出します。通常は「えびす」と訓み、中国北西部の異民族名のこと。音読みは「キョウ」で、羌夷(キョウイ=異民族名)、羌笛(キョウテキ=異民族の笛)、羌無故実(キョウとしてコジツなし=踏まえた典故がない、まったくのオリジナル)などの熟語がある。また、「謇」も同じく「ああ」と感嘆語です。謇愕(ケンガク=憚らずに諌めること)。

世俗の垢に塗れた連中とは一線を画す。私のお手本は殷の時代、皇帝を諌めて自ら命を断った彭咸だけなのだ。時流に媚びること無く己の信ずることを貫徹することが、今の私のできうる最大の「生きる証」なのである。しかしながら、余りに高潔すぎる屈原の生き方は突出しすぎていて、周りから理解はされません。いずれ、身内からも諫める声が出てきます。
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Author:char
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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