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「危葉風を畏れ、驚禽落ち易し」…この国のトラウマか=王融「永明十一年、策秀才文五首」5・完

中国名文を囓んで玩わうシリーズは、南朝斉の王融(467~493)が作成した「永明十一年、策秀才文五首」(永明十一年、秀才に策する文 五首=明治書院発行「新書漢文大系35 文選<文章篇>」)の5回目、ラストクエスチョンです。最後のお題は「交渉による領土回復」。国境を越えた“勢力”との付き合い方。まさに外交交渉力です。現代日本なら民主党政権の存在意義を問う米軍普天間基地移設問題の解決策を考えてほしい。。。毅然とした態度で国際関係を構築することが求められています。でも、日本は地続きの国土を持たないから国境の問題は弱いんだよなぁ。。。竹島もなぁ。。。

【5】
又問う。晋氏綱せずして、関河1)トウセキし、宋人馭を失いて、淮汴(ベン)崩離せし自り、朕旧民を思念し、永く済す攸(ところ)を言(おも)う。故に将を選びて辺を開き、労来安集す。加うるに2)カンを納れ和を通じ、徳を布き礼を脩むるを以てす。皇華を歌いて使いを遣り、3)コウウを賦して賓を懐く。関洛南望の懐いを動かし、獯夷(クンイ=北方異民族の名)北帰の念を遽やかにする所以なり。夫れ危葉風を畏れ、驚禽落ち易し。4)カンカを待つ無く、聊か辞弁を用い、片言にして三輔を求め、一説にして五州を定めん。斯の路何にか階(よ)らん。人誰か或いは謀を進む可き。志を誦して以て朕が心に沃げ。

1)トウセキ=蕩析。分散する、離散する。洪水によって流され、家族がちりじりになることをいう。次にある「崩離」(ホウリ)も同様の意味。「蕩」は「うごく、うごかす、やぶる」の意。ゆらゆらと揺れ動いて破れるさまをいう。蕩尽(トウジン=洗い流されてなくなる、使い果たす)、蕩舟(トウシュウ=舟を動かす、蕩船=トウセン=)、蕩揺(トウヨウ=ゆれうごく、ゆりうごかす)、蕩漾(トウヨウ=ただようさま、水が揺れ動くさま)、蕩滌(トウテキ=洗い流して清める、けがれ、よこしまな事などを除き去ること)。

2)カン=款。よしみ。まろやかで欠け目のない心。「款を納れる(納款=カンをいれる)」は成句で「他国と仲良くなる、敵に内通する」との意。「通款(カンをツウず)」ともいう。「まこと」とも訓む。款晤(カンゴ=うちとけて語り合うこと、款話=カンワ=)、款洽(カンコウ=なごやかにうちとける)、款狎(カンコウ=うちとけあって親しむこと)、款然(カンゼン=うちとけて人に接する様子)。

3)コウウ=膏雨。恵みの雨。適切な時に、適度に降って、草木に栄養を与える雨のこと。「滋雨」「甘雨」ともいう。「膏」は「うるおす」とも訓む。

4)カンカ=干戈。戦争。たてとほこ。倒置干戈(カンカをトウチす=武器を逆さまにして置く、世の中が平和であること)。兵戈(ヘイカ=武器)、干戚(カンセキ=たてとまさかり)。「カンカ」と言えば、坩堝、瞰下、轗軻、讙嘩、艱禍、鰥寡などの重要な同音異義語にも留意しましょう。

(解釈)また問う。晋氏が国家を治める綱紀を失って、州郡は分散させられ、宋室が支配の勢力を失って、淮・汴が崩壊分裂してより、朕は晋・宋の旧人民たちの難儀を心に思いやり、これを助け救わんと長らく考えていた。故に将を選び兵を練って派遣して辺境を開き、百姓を慰めいたわって安んじ和らげてきた。加えて、北方の戎狄と好を通じて和親を結び、徳化を敷いて礼制を修めた。毛詩の「皇華」を歌って使者を派遣し、「膏雨」を詠じて我を仰ぐこと滋雨のようにこれを懐けさせた。ここを以て関中や洛陽の民として江南の斉の地への思いを起こさせ、北狄の人をして北帰の念を持たせることになったのである。そもそも霜で落ちようとする葉は風を恐れ、弓弦の音に驚いた鳥は射落とされやすいというではないか。武力を行使することなくわずかの弁辞を用い、ほんの片言で三輔の地を手中にし、わずかの論説で五州を平定したいのだ。そのための方策は果たしてどのようにすればよいであろう。諸君、誰かよい計画を進言できまいか。おのおのの思うところを述べて、朕を教え導いてほしい。


「毛詩」とは、漢代初期、魯の学者である毛亨(モウコウ)・毛萇(モウチョウ)が伝えた『詩経』のテキストの現行本で、一般には「詩経」そのものを指すことが多い。続く「皇華」と「膏雨」はいずれも、詩経に採録されている詩のタイトルです。


「夫れ危葉風を畏れ、驚禽落ち易し」――。このセリフの意味するところは、一度危険な目に遭ったならば、その恐怖を知っているから、思うままに操れるのだ。直接手を加えない「無言の脅しの外交」と言ったら言い過ぎか。外交交渉では駆け引きが重要になる。正攻法で真正面からではなく搦め手から攻める。「北風と太陽」の北風ではなく太陽になれというのかもしれませんね。

グローバルな時代にあっては、ちんけな国境なんてどうでもいいが、国家として矜恃を持ち、毅然とした態度で各国と付き合いたいもの。古来、内弁慶の我が国は外国との付き合い方が下手糞です。本来なら等位外交が望ましいのでしょう。しかし、黒船来航已来、米国に偏って来たのも事実です。民主党連立政権の「アキレス腱」の普天間基地移設問題。

そろそろ、べったりも卒業と行きたいところですが、安全保障の観点からすると、「米国離れ」はそう簡単なことではない。自国の軍隊を持たないと決めた国が、他国の軍事力をどう見て付き合えばよいのか?という悩ましい問題が突き付けられています。

太平洋戦争の敗北、広島・長崎の原爆投下。。。これらはやはり、「夫れ危葉風を畏れ、驚禽落ち易し」という成句を想起せざるを得ませんね。ある意味、日本国の不幸なトラウマだ。しかしながら、声を大にして言いたい。

「風はもはや畏れることは無いのだ、弓弦の音も忘れてもいい頃なのだ。いつまでも米国に怯え続けることはないでしょう」。

王融は言いました。「聊か辞弁を用い、片言にして三輔を求め、一説にして五州を定めん」。そんな都合のよい外交なんてありえないな。経済大国と言われたのも昔になってしまった日本国ですが、この21世紀の針路をどう取るかを考えるいい機会としたいものですね。片言ではない、確固たる「軸」を確立しましょうよ。得難い貨幣を前にして、ピンチをチャンスに変えられるかどうか。いま「国力」が問われています。

以上、王融が出題した5つの難問でした。容易に答えは出せませんが、われわれ国民は事あるごとに常に自問自答しましょう。それがこの国を脱皮させる契機となるはずです。答えは出せなくても出そうとすることが大事なのです。その姿勢を国民が皆共有することがこの国を変えるのです。
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Author:char
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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