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「陛下、漢民族の誇りをお見せくだされ」=韓愈「仏骨を論ずる表」6

中国の名文を味わうシリーズは、韓愈の「仏骨を論ずる表」(明治書院「新書漢文大系シリーズ30 唐宋八大家読本・韓愈」)の6回目です。仏教如き如何わしい宗教に民が戯れているのをいいことに放っておかれている。「冗談が過ぎますよ、陛下」と韓愈はシニカルな笑いを浮かべて「仏教弾圧」を促します。その言いぶりはもはや皇帝に対するものではないですね。心の底から仏教が憎いのです。儒教にとっては相容れないものだからです。言論弾圧、思想信条の自由を侵すことすら厭わない。古来、中国にはそうした「癖」があったのでしょうね。おっと迂生もあまり強く書くと「検閲」を受けそうですが。。。あくまで「韓愈」のこと以外に何も含意はないですからね。

然れども百姓は1)グメイにして、惑い易くア)し難し。苟くも陛下の此の如くなるを見ば、将真心仏に事うと謂い、皆言わん、天子大聖すら猶一心に敬信す。百姓何人ぞ。豈にイ)に更に身命を惜しむべけんと、頂を焚き指を焼き、百十群を為し、衣を解き銭を散じ、朝より暮れに至り、転た相2)ホウコウし、惟時に後れんことを恐れ、老少3)ホンパして、其の4)ギョウジを棄てん。若し即ち5)キンアツを加えずして、更に諸寺を歴ば、必ず6)ダンピ7)レンシン、以て供養を為す者有らん。風を傷り俗を敗り、笑いを四方に伝うるは、8)サイジに非ざるなり。

1)グメイ=愚冥。おろかで物の道理に暗いさま。愚昧(グマイ)、愚蔽(グヘイ)、愚蒙(グモウ)、愚暗(グアン)ともいう。

2)ホウコウ=倣傚。くらべてまねること。倣効(ホウコウ)。倣模(ホウモ=模倣)ともいう。「倣」は「ならう」。「傚」は「まねる」「ならう」。「効」も「ならう」。傚古(コウコ=いにしえにならう、古人を真似て学ぶこと)、傚慕(コウボ=人と同じようになりたい、したいと思う、この「慕」は「手本としてまねる」)。さまよう「彷徨」、雄たけびを上げる「咆吼・咆哮」、宝ばこの「宝匣」とは違うので要注意。いずれも重要。

3)ホンパ=奔波。波が打ち寄せるようにどっと押し寄せること。「奔」は「はしる」。奔渾(ホンコン=川の流れが急ですさまじい)、奔竄(ホンザン=走り逃げ隠れる)、奔車(ホンシャ=無鉄砲な状態を譬える→奔車之上無仲尼、覆舟之下無伯夷=危難のおそいかかる国には賢者聖人がいなくなること「韓非子・安危」)、奔湍(ホンタン=早瀬)、奔馳(ホンチ=馬に乗り勢いよくはしり駆ける、奔駛=ホンシ=)、奔北(ホンボク=戦いに負けて逃走すること、敗走=ハイソウ=、敗亡=ハイボウ=)、奔浪(ホンロウ=激しく荒れる波)。

4)ギョウジ=業次。仕事のある場所、仕事そのもの。やや難語。この場合の「次」は「広く物のやどる場所」という意。胸次(キョウジ=むねのところ)、席次(セキジ=席のある場所)。

5)キンアツ=禁遏。行為を差し止めてやらせないこと、禁止すること。「遏」は「とどめる」「さえぎる」とも訓む。遏悪揚善(アツアクヨウゼン=悪事を禁じ善行を勧める)、遏雲(アツウン=空を流れゆく雲までもおしとどめる、すぐれた音楽や歌声の形容、出典は「列氏・湯答篇」)、遏絶(アツゼツ=一族を全滅させる、押しとどめて物事をさせない、遏止=アッシ=)、遏密(アツミツ=鳴り物をやめて静かにする)。

6)ダンピ=断臂。千切れた腕、あるいは腕を切り落とすこと。「臂」は「うで」「ひじ」。慧可断臂(エカダンピ=なみなみならぬ決意を示すこと)、猿臂(エンピ=さるのうで)、臂環(ヒカン=腕環)、臂使(ヒシ=思うままに人を使うこと、下級官僚、臂指)、剋臂(ひじにこくす=固く約束すること)、把臂入林(ひじをとりてはやしにいる=親しい者といっしょに俗世間から離れて住む)。「ひじ」は「肘、臂」もある。

7)レンシン=臠身。身をズタズタにすること、あるいはズタズタにした体。「臠」は「細かく切れ目を入れた肉、挽き肉、肉の切り身」のことで「きりみ」とも訓む。特殊な読みとして「みそなわす=見るの最高敬語、ご覧になる」とも訓む。臠巻(レンケン=互いに絡み合い、引き合っていること、攣巻=レンケン=)、臠殺(レンサツ=ずたずたに切り裂いて殺す)、臠婿(レンセイ=天子のむすめむこ、また、後世、科挙の、進士の及第者の中からむこをえらぶこと)。

8)サイジ=細事。ささいな事柄。細故(サイコ)ともいう。「肌がきめ細かいさま」をいう「細膩」、疑う意の「猜弐」とは違うので要注意ですが、両熟語とも超重要です。

ア)暁し=さと・し。「暁す」は「さとす」。はっきりと分からせる、明白に知らせる。「さとす」はほかに、「諭す、喩す、譬す」。暁示(ギョウジ)、暁暢(ギョウチョウ=物事や道理によくつうじている、暁達=ギョウタツ=、暁通=ギョウツウ=)、暁寤(ギョウゴ=はっきりと悟る、暁悟=ギョウゴ=、暁解=ギョウカイ=)、暁喩(ギョウユ=よくわかるようにさとす、暁譬=ギョウヒ=)。

イ)合に=まさ・に。漢文訓読語法。「まさに~すべし」と訓み、「~すべきである」と訳す。当然の意を表す。「まさに」は「将に、当に、且に、応に、方に、鼎に、雅に」もあります。


韓愈が最も心配しているのは、愚昧な人民が熱狂的になり国に反旗を翻すことです。自分の身をも顧みず、むしろ犠牲になってまでも仏に帰依しようとする。その見境のない態度は身分制度を根幹とする中国王朝、儒教にとっては最大の脅威。皇帝自らが心酔するとは呆れてものが言えないのでしょう。仏教による「鎮護国家」という政治のやり方も本邦ではありました。中国でも時の政権によっては仏教を利用した時もあった。

しかし、仏教の隆盛によって風俗が乱れ、ひいては王朝の滅亡に至ってしまうと韓愈は考えています。仏の骨を宮中に迎え入れるという「愚行」こそが、人民を惑わす大元。だから皇帝としての威厳を見せて、率先垂範して仏教を排除してほしいと考える。それが人民の上に立つものの務め、国家元首たる責任ではないかと韓愈はいうのです。

それにしても過激な言辞の連続。いかにも漢民族の宮廷官僚らしいスタンスですね。
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次に狙われるのは…


引用ありがとうございます。

韓非子のこのくだりは漢検出題者のお気に入り。覆舟、奔車の次は、仲尼、伯夷が狙われること必定でしょう。固有名詞は出ないと侮る勿れ。孔子の字であり、殷末の賢人の名ですから。中国古典ではお馴染。もはや「普通名詞」と言っていいでしょう。

諺の意味

こんばんは。「奔車の上に…」の諺の意味、引用させていただきました。ありがとうございます。
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不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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