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世にも恐ろしい三族も連座する「悪法」=蘇軾「秦の始皇・扶蘇の論」6

中国の名文・美文を囓んで玩わうシリーズは、蘇東坡(蘇軾)の「秦の始皇・扶蘇の論」(明治書院「新書漢文大系9・文章規範」)の6回目です。秦国を滅亡に至らしめた新しい“キャスト”として、商鞅(姓は公孫、前390?~前338)が登場します。彼は始皇帝が天下統一を果たすより遡り6代前の孝帝に仕えた戦国時代の人物です。彼の名は中江兆民の「評論集」シリーズを賞翫した際にも出てきました(「農業論」の「学士紳士畑水錬の名案は恐くは商鞅、安石の新法の如く、徒に農畝社会を擾乱せんのみ」、http://rienmei.blog20.fc2.com/blog-entry-331.html)。刑名の学(刑罰で天下を統御しようとする学派)に基づいて法治主義を信奉し、苛烈な法律を制定して世の常識を覆してしまいました。蘇軾は商鞅に秦朝滅亡の「伏線」があると考えます。

【6】
蘇子曰わく、嗚呼、秦の道を失う、自って来るもの有り。豈に独り斯・高の罪ならんや。商鞅法を変じて、誅死を以て軽典と為し、1)サンイを以て常法と為せしより、人臣2)ロウコ3)キョウソクし、死を得るを以て幸と為す。何ぞ復請するに暇あらんや。

1)サンイ=参夷。ひとりの罪によって、その人の三族(親・子・孫)までも同じ罰を与える刑罰のこと。「三族の罪」ともいう。

2)ロウコ=狼顧。人が恐れて振り返り見ることのたとえ。オオカミは臆病で、常に後ろを振り返り見ることから。転じて、オオカミのように、身を動かさないで後方を振り返り見る(=180度回転させる)ことのできる首。人相を言う。西晋の礎を築いた後の宣帝である「司馬懿」(諸葛亮が挑発するため巾幗を贈った相手です)がこの相であったということが「晋書」宣帝紀に見えます。

3)キョウソク=脅息。じっと息をこらす。非常に恐れ心配しているさま。「脅える」は「おび・える」とも訓む。

(解釈)わたくし蘇軾はこう考える。ああ、秦が正しい道を踏み外したのは、そのときに始まったのではない。李斯・趙高ばかりの罪ではなかったのだ。商鞅が法律を改め、死刑を軽い処罰とし、三族まで滅ぼすことをふつうの規則としてからというものは、臣下はびくびくとおびえ、死刑になることをありがたいとまで考えるようになった。もう一度帝の御言葉を願い出る余裕など、どこにもあるものか。

商鞅は「参夷」によって、「三族」まで連座して処刑することのできる法律を定めました。①父、母、妻②父母・兄弟・妻子③親・子・孫――など、親族の範囲をあらわす「三族」ですが諸説あるようです。秘書のやったことを勝手にやったとか、母親がやったことを知らなかったとか言い逃れる政治家が横行していますが、知っていようがいまいが自動的に自分の親、子、孫をも刑罰に巻き込むという恐ろしい法律なのです。むしろ死刑などの方が遥かに軽くてましなのです。自分だけ死ぬ死刑の方が有難いと考えるのも首肯されるところ。扶蘇や蒙恬も、こうしたピリピリした「空気」の中で生きていた。実際に悪だくみを嗾けたのは李斯や趙高ですが、帝の御言葉が本物かどうかを疑う前に、死刑を受け入れてしまう「土壌」があったのです。
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