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見事に嵌った李斯の「乾坤一擲」?=蘇軾「秦の始皇・扶蘇の論」5

中国の名文・美文を囓んで玩わうシリーズは、蘇東坡(蘇軾)の「秦の始皇・扶蘇の論」(明治書院「新書漢文大系9・文章規範」)の5回目です。

【5】
或ひと曰わく、李斯は始皇をア)けて天下を定む、不智なりと謂う可からず。扶蘇は始皇の子にして、秦人之を1)イタダくこと久し。陳勝其の名をイ)るも、猶お以て天下を乱すに足る。而して蒙恬重兵を持して外に在り。二人をして即ち2)チュウを受けずして、之を復請せしめば、即ち斯・高遺類無けん。斯の智を以てして此を慮らざりしは、何ぞやと。

1)イタダく=戴く。君主として上におしいただくこと。また、君主からありがたくもらうこと。音読みは「タイ」。戴星(タイセイ=朝早く家を出ることや、夜遅く家に帰ることなど、空の星を仰いで歩くこと)、戴天(タイテン=天の下に住む)、戴白(タイハク=しらが頭になる、年寄り、老人)、愛戴(アイタイ=君主からの愛情をいただく)。

2)チュウ=誅。罪を責めて殺す、死刑。「誅」は「ころす」「ほろぼす」とも訓む。誅意(チュウイ=おかした罪そのものではなくその意図や動機をせめる、誅心=チュウシン=)、誅求(チュウキュウ=金銭や財産をむさぼり求める、税を厳しく取りたてる)、誅殺(チュウサツ=罪を責めて殺す、誅屠=チュウト=)、誅鋤(チュウジョ=草木を根こそぎ取ること、罪を責めてすべてをほろぼす)、誅賞(チュウショウ=罪は咎め、善はほめる)、誅翦(チュウセン=罪を責めて罰としてころす)、誅殄(チュウテン=罪を責めてほろぼす、誅滅=チュウメツ=、誅絶=チュウゼツ=)、誅罰(チュウバツ=罪を責めて罰する)、誅戮(チュウリク=罪の在る者をころす、誅伐=チュウバツ=)。

ア)佐けて=たす・けて。わきから手を添えてささえる。「佐ける」は「たすける」。佐弐(サジ=補佐官)、佐車(サシャ=君主用の予備の車)、佐吏(サリ=上役をたすける役人)。「たすける」はほかに、「裨ける、扶ける、輔ける、丞ける、毗ける、掖ける、拯ける、介ける、佑ける、侑ける、俾ける、右ける、幇ける、弼ける、掾ける、援ける、救ける、毘ける、相ける、翊ける、翼ける、補ける、讃ける、資ける、賛ける」などが数多い。訓めるように。。。

イ)假る=か・る。「仮」の旧字。「名を仮る」は、「一字借用する。みせかけに利用する、名前を騙る」んどの意。「仮髻」(カケイ=かつら、かもじ)、仮寐(カビ=うたたね、寝たふり)などは、その場を糊塗するかりそめの小道具を言います。


(解釈)ある人がこう言った。
「李斯は始皇を助けて天下を平定したのだから、知恵がないとは言えまい。扶蘇は始皇の子供で、秦の民衆は長い間彼を天子の子として仰いでいた。陳勝は彼の名前を騙ったのだが、それだけで天下に乱を起こすには十分だった。しかも蒙恬は大軍を掌握して国境の外に居た。この二人がすぐに罰を受けず、もう一度帝の御言葉をいただきたいと願い出たならば、李斯と趙高は一族もろともに生き長らえることはできなかったであろう。李斯ほどの知恵者がそれを考えに入れなかったのはなぜだろうか」。

文章規範の「背景」(P139)によると、「扶蘇には儒家的な思考があったため、始皇の政策に反対して追われたとされる。陳勝が楚の項燕とともに彼の名を指導者として挙げたのもうなずけよう」とあります。蘇軾が持ち出した「或(あるひと)」は、その言辞の末尾で「斯(=李斯)の智を以てして此を慮らざりしは、何ぞや」と疑問を呈しています。李斯の「企み」が成功したのはあくまで二人のチョンボの御蔭であって、始皇帝を支えて天下統一に貢献した知恵者である李斯が、そのことを考慮できないはずはなかったであろう。それなのに敢えて「行動」に打って出たのは単に一か八か、乾坤一擲の「ギャンブル」が嵌っただけなのではないのかと言うのです。つまり、偶なのだと。それだけに、李斯・趙高の「企て」、つまりは偽造した「処罰」をいとも安易に受け入れてしまった扶蘇と蒙恬の軽率な「行動」が悔やまれるのです。しかし、蘇軾は別の要因が働いたと考えます。それは次回以降明らかに。。。。

ちなみに、唐突に出てきた「陳勝」ですが、中国史においては「陳勝・呉広の乱」で有名な人物です。秦末の前210年に農民900人を率いて反乱を起こした際、始皇帝の長男である扶蘇を名乗って、農民の歓心を買いました。「燕雀安知鴻鵠之志哉」の名セリフを残したことでも有名です。「陳勝呉広」と言えば成句となっており、「ものごとの先駈けをなす人、反乱の最初の指導者」をいう。
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