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激烈なる言論こそ民衆の権利=兆民「評論集」3・完

中江兆民先生の「中江兆民評論集」(岩波文庫、松永昌三編)から漢字検定1級直前問題演習シリーズの3回目です。本日は「再論言論自由」(P74~77)。今回は少し言っている意味を捉えるのが難しいです。言論の自由の大切さを説いているのですが、同じようなことを諄諄と述べている感じがします。直前演習は今回で終わりです。

▼…道徳政府の1)シリを2)コウキュウするの難きことは前にすでにこれを論ぜり。詩に曰く、切るが如くア)(け)るがごとしと。また曰、他山の石以て玉をイ)むべしと。この故に学士論客いやしくも見る所あるときは、必ず先づこれを口に挙げこれを書に著はし、しかる後そのすでに獲る所の理に因りて益々これを推明して已まず。またひろく益を人に請ふてともに往復弁難するにあらざれば、以てなることあるに至るべからず。詩人の意けだし此を言ふなり。弥児(ミル)氏曰く、真理なる者は一人にしてその全を獲ることあることウ)(な)し。甲の論者その一部を持し、乙の論者その一部を持し、丙丁またその一部を持す、是を以て必ず数人を経て始て完成することを得べしと。それかくの如きなるときは、いやしくも見る所ある者は豈これを衆に示して以て人の質正を求むることを図らざるべけんや。それかくの如くなるときは、政をなす者豈学士論客を奨励してその3)ショカイを尽さしめざるべけんや。それ道徳政術の論たるその意義4)ユウスイ深微にしてややもすれば5)カイジュウに陥ゐりやすし。プラトンの「テルネール」、カントの「クリチツク」の如きも悉くこの弊を脱すること能はず。この故に学士論客いやしくも道徳政術の論に従事する者は、必ずその志気を6)カイカツにし、その言論を7)ショウシにして内にエ)む所なく、外に8)ハバカる所なきにあらざれば、以てその旨趣の快暢なるを望むべからず。しかして志気をカイカツにし言論をショウシにするときは、反覆論述の間あるいは激発に過ぐるなきこと能はず。これ勢の免れざる所なり。

1)シリ=至理
2)コウキュウ=講求
3)ショカイ=所懐
4)ユウスイ=幽邃
5)カイジュウ=晦渋
6)カイカツ=恢豁(快豁、快闊、開豁、開闊)
7)ショウシ=縦恣
8)ハバカる=

ア)瑳ける=みが・ける
イ)攻む=おさ・む
ウ)鮮なし=すく・なし
エ)蘊む=・む

▼…今誠に古人の論を把りてこれを閲するに、その旨義極て温厚にして辞気あるいは9)ゲキレイなる者けだし鮮となさず。柳宗元の封建を論ずる、ルーソーの宗教を論ずる、オ)(か)にこれをカ)るときは、心を動かし気を養ふに足る者ありといへども、キ)にしてこれを考ふるときは、初より平正明白の理にあらざるなし。それ柳宗元、ルーソー彼れク)に10)セキガクの士なりといえへどもいまだ以て聖人の11)モンショウを望むべからず。その論の激烈なること固より怪むに足らず。孔子曰く、12)バクエキなる者あらずや、これをなすもなほ已むにケ)ると。また曰く、いやしくも不欲ならばこれを賞すといへどもコ)まずと。この二語は遽にこれを聴くときは、すこぶる激発なるが如き者あるにあらずや。それ孔子の至聖にしてその言を出すあるいは鋭烈なるに免れざる者あり。いはんやその他おや、要その大旨を採りてその枝葉を棄つるにあるのみ。是に察せずして遽に人の事を談ずるを聞ゐてこれをサ)りて曰く、彼れ云々の言あり何ぞ疎暴なるやと。遽に人の事を論ずるを見てこれをシ)りて曰く、彼れ云々の句あり何ぞ激烈なるやと。その大旨を察せずしてその枝葉を挙げて復た心に省究せず。それ事を論じ事を談ずる者は、必ず思を積み慮を重ね自ら信ずる所あるに及び、しかる後これを発す。故に、いやしくもその疎暴激烈の処を摘発せんと欲する者は、また宜く少く省究を加えへその大旨のある所を考察すべきなり。もししからずして慢然として13)ヒキを致し、また従ふてこれを懲罰するときは、聖人といへどもあるいは14)ルイセツの禍に免れず、これ豈言論を奨勧し真理をコウキュウするの道ならんや。孔子曰く、ス)道なきときは行を危くして言はセ)ふと。ああ一国の才気学識を負ふ者皆自ら戒めてその言を卑順にし、薪木、米塩、財穀、貨物の外絶へて言を出さざるときは、文物の運ソ)に由り以て盛大の域にタ)ることを得んや。

9)ゲキレイ=激
10)セキガク=碩学
11)モンショウ=門牆
12)バクエキ=博奕
13)ヒキ=非毀(誹毀)
14)ルイセツ=縲紲(累紲、累絏、縲絏)

オ)遽かに=にわ・かに
カ)覧る=・る
キ)徐に=おもむろ・に
ク)洵に=まこと・に
ケ)賢る=まさ・る
コ)窃まず=ぬす・まず
サ)誚り=そし・り
シ)毀り=そし・り
ス)邦=くに
セ)孫ふ=したが・ふ
ソ)奚=なに
タ)躋る=のぼ・る

▼…顧ふに言論を奨励し真理を15)キュウサクすることは、世の政をなす者といへども固よりその益あることを知る。唯その言のあるいは直に過ぐるを以てその心に16)キタンすることなきこと能はず。これ乃ち始皇のチ)をツ)むることを求むる所以にして、テ)拿破崙三世の口を錮することを図りし所以なり。それ謗を弭め口を錮することを求むるときは、その勢竟に17)フクヒの法を設くるに至らざれば已まずして、18)ゴクショウ益々繁きを致さん。それゴクショウの繁きは豈ト)国祚長久の基ならんや。かつや道徳の妙義を求め政事の精理をナ)むるは、政をなす者の尤もまさに務むべき所なり。この二つの者にしていまだ得ざるときは、己れを処し身を率ゆるの際令を発し禁を布くの間茫々然として根基とする所あることなし。かくのごときなるときは、19)ショウコ盛なりといえども、20)ノウソウ昌なりといへども、工伎隆なりといへども、竟にニ)蛮貊の風をたるを免れず。それ政をなすに貴ぶ所の者は正さに蛮貊の風を出でて文明の化に遷らんと欲するなり。ああ政をなす者真理の獲がたきを悟らずして、一国人に責むるに聖人の能くせざる所を以てするときは、その弊竟に苛刑煩律を設けて始皇、拿破崙の暴政を追ひ、謗を弭め口を錮しその民を駆りて蛮貊の風に入るに至るときは、何を以て上天の命じて21)シミンを22)シボクせしむる所以の意に答ふるを得んや。何を以てシミンの托を致して福を図るの旨にヌ)ふを得んや。既に上天の命に遵ふこと能はず、また人民の托に副ふこと能はざるときは、それこれを何とかいはんや。今やわが邦の民まさに文運の23)オウセイに際し仁政の恩沢に遭ひ、ここに挙ぐる所の患は万々以て虞となす所にあらず。但言論の自由を極論せんと欲して竟に此に言及ぶことを免れず、24)コウコの君子あるいはその論の激発なるあるを見るもその大旨を察して、その枝葉を窮むることなかれといふのみ。

15)キュウサク=求索
16)キタン=忌憚
17)フクヒ=腹非(腹誹)
18)ゴクショウ=獄訟
19)ショウコ=商賈
20)ノウソウ=農桑
21)シミン=斯民
22)シボク=司牧
23)オウセイ=旺盛
24)コウコ=江湖

チ)謗=そしり
ツ)弭むる=・むる(とど・むる)
テ)拿破崙=ナポレオン
ト)国祚=コクソ
ナ)索むる=もと・むる
ニ)蛮貊=バンバク
ヌ)副ふ=・ふ
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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