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乗り乗り小杜、漢検本番語彙も目白押し=「阿房宮の賦」4

中国名文を噛みしめて玩わうシリーズは、杜牧の「阿房宮の賦」(明治書院「新書漢文大系9・文章規範」、岩波文庫「杜牧詩選」)の4回目です。今回は漢字、語彙の質量ともに豊富と言えるでしょう。漢検本番も近いですが、出そうなものが目白押しです。そして、リズムに浸りましょう。
【6】
明星の熒熒(ケイケイ)たるは、粧鏡を開くなり。緑雲の1)ジョウジョウたるは、2)ギョウカンをア)るなり。渭流のイ)をウ)らすは、脂水を棄つるなり。煙斜めに霧横たわるは、3)ショウランを焚くなり。4)ライテイのエ)ちに驚くは、宮車の過ぐるなり。5)ロクロクとして遠く聴こえ、6)ヨウとして其の之く所を知らざるなり。

1)「ジョウジョウ」=擾擾。ごたごたと騒がしい。「擾」は「みだす」「みだれる」「わずらわしい」「ならす」とも訓む。擾化(ジョウカ=ならして感化を与える)、擾攘(ジョウジョウ=騒ぎ乱れるさま)、擾民(ジョウミン=民衆をならして従える)、擾乱(ジョウラン=みだれ騒ぐ、みだす)、「躁擾」「掻擾」「搶攘」「騒擾」(以上、ソウジョウ)。「ジョウジョウ」は囁囁、嫋嫋などもあるので要注意。「熒熒」(ケイケイ)は、遠くに小さくキラキラと輝くさま。まさに明けの明星です。「熒」は配当外で「ひかり」「ホタル」。熒煌(ケイコウ=きらきらと輝く)、熒燭(ケイショク=小さな光のともしび)、熒惑(ケイワク=火星、災難や戦乱など不吉な出来事の兆しを示すという、火の神の名)。

2)「ギョウカン」=暁鬟。夜明け寝起きの乱れ髪。もちろん比喩的な表現で一般的ではありません。辞書にもこの言葉で掲載はありません。前段にある「粧鏡」(ショウキョウ=化粧用の鏡)と対になっている。努々、驍悍、澆灌、翹関、行間などを想起しないように…。暁粧(ギョウショウ=朝化粧、暁妝=ギョウショウ=)という言い回しもある。「鬟」は「みずら」「わげ」とも訓む。ここでは普通に「髪の毛」の意。風鬟雨鬢(フウカンウビン=風雨にさらされて苦労して勤労すること)、霧鬢風鬟(ムビンフウカン=美しい髪のたとえ)を押さえましょう。岩波文庫の解説(P77)によると、「緑雲(リョクウン)」は「黒々とした雲。つややかな黒髪を『緑鬟(リョクカン)』、美しい豊かな髪を『雲鬟(ウンカン)』などと呼ぶところから、宮女たちの豊かな黒髪を『緑雲』に見立てたもの」とあります。

3)「ショウラン」=椒蘭。サンショウ(はじかみ)とラン(ふじばかま)。香りのよい植物の代名詞。転じて、「皇后の親類、外戚」も指しますが、ここではその含意はないですね。椒桂(ショウケイ=サンショウとカツラの木、転じて賢人)、椒酒(ショウシュ=屠蘇酒のたぐい)、椒図(ショウト=怪獣の名、竜の九匹の子の一匹)、椒房(ショウボウ=皇后の御殿、転じて皇后、椒屋=ショウオク=、椒庭=ショウテイ=、椒殿=ショウデン=、椒掖=ショウエキ=、椒壁=ショウヘキ=、椒閣=ショウカク=)→「椒房阿監青娥老」(白居易「長恨歌」)。蘭艾同焚(ランガイドウフン=君子も小人も区別なくいっしょに災害に遭うこと)、蘭摧玉折(ランサイギョクセツ=賢人、または美人が死ぬこと)、蘭麝(ランジャ=香りの高いもののこと)、蘭契の契り(ランケイのちぎり=心の通い合った友人の交わり)、蘭桂(ランケイ=君子のすぐれた資質、子孫をほめたたえることば)。

4)「ライテイ」=雷霆。激しいかみなり。「霆」は「いかずち、まっすぐに伸びるいなびかり」。霆撃(テイゲキ=いなずまのように一気呵成に攻撃すること)。「雷」も「いかずち」。

5)「ロクロク」=轆轆。車の走る音。ゴロゴロ。轆轤(ロクロ=鈞)は書き取り用の必須熟語です。

6)「ヨウとして」=杳として。「杳不(無)~」と否定語と用いて、「まったく~ない、まるで~でない」と全否定(強調)の構文となる。もともとは「くらい」「はるか」「とおい」という意味。杳然(ヨウゼン=はてしなくはるかなさま)、杳乎(ヨウコ=はるかなさま)、杳邃(ヨウスイ=奥深いさま)、杳眇(ヨウビョウ=遠くてかすかなさま、杳渺)、杳冥(ヨウメイ=山や霧などがくらくて奥深いさま)、杳杳(ヨウヨウ=くらいさま、はるか遠いさま)。

ア)「梳る」=くしけず・る。髪の毛を一本ずつわけてとく。「とかす」とも訓む。音読みは「ソ」。梳盥(ソカン=髪をとき、手を洗う)、梳洗(ソセン=髪をとき顔を洗う、身だしなみを整えること)、梳頭(ソトウ=髪をくしけずる、髪の手入れをする、梳髪=ソハツ=、梳櫛=ソシツ=)。梳沐(ソモク=髪を洗ってくしけずる)、梳粧(ソショウ=髪をといておめかしする)。

イ)「膩」=あぶら。ねっとりした脂肪。色っぽい美人の形容には欠かせない言葉です。長恨歌では楊貴妃の形容にも使われていました。音読みは「ジ」。臙膩(エンジ=化粧品)、垢膩(コウジ=ねばったあか)、油膩(ユジ=あぶらっこいさま)、細膩(サイジ=きめこまかくねっとりしたさま)、瑣砕細膩(ササイサイジ=情がきめこまやか)、膩滑(ジカツ=あぶらけがあって、すべすべしている)、膩粉(ジフン=きめが細かくねっとりした白粉)、膩葉(ジヨウ=ぶ厚い葉、多肉質の葉)、膩理(ジリ=なめらかで、きめがこまかい肌)。

ウ)「漲らす」=みなぎ・らす。「漲る」は「みなぎる」。水面が溢れんばかりの状態にする、満杯にする。音読みは「チョウ」。漲天(チョウテン=天一面に広がる)、暴漲(ボウチョウ=物が一面にあふれるさま)。

エ)「乍ち」=たちま・ち。急に、さっと。「乍ち~乍ち…」だと、「~したかと思うと、すぐに…する」「~したら、すぐに…する」と訳す。音読みは「サ」。「たちまち」はほかに「忽ち、倏ち、奄ち、掩ち、溘ち、驀ち」などもあります。

杜牧も乗りに乗っています。描写がいちいちオーバー。夜明けの金星がまたたくのは、なんと宮女たちが鏡の蓋を開けたため。彼女らが一斉に化粧を始めたのだ。黒い雲が群がり上がっているのは、彼女らが乱れた髪を直してとかし始めたのだ。清らかな渭水の水面にねっとりと脂が浮いているのは、彼女らが化粧の水を捨てたからなのだ。もやが流れ霧がたなびいているのは、ハジカミやフジバカマの香を焚いて揺らめいているせいなのだ。さあ雷鳴がとどろく。いや、天子様のお車のお通りであるぞ。ガラガラと音と立ててどこかしらへと消えて行く。オーバーなんですがリズムがいい。乗り乗りです。
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char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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