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先帝の遺徳を偲ぶも「二番煎じ」?=「後出師の表」1

中国名文の味を噛み締めるシリーズは、引き続き諸葛亮の「熱文」。今度は「後出師の表」を取り上げます。「コウスイシのヒョウ」と読んでください。悲痛極まりない「前出師の表」を受けた魏への出兵は思うような戦果を挙げられず、いやむしろ“敗北”に近い形で撤退を余儀なくされて終わりました。その後、呉が魏の曹休を破り、そのために関中(長安を中心とする一帯)から魏軍が東に移動したことを聞いた諸葛亮が、翌建興6年(228)、今度はその関中への出兵を試みる決意を固めました。その際に上ったのが「後出師の表」なのです。今度は「古文真宝」(明治書院「新書漢文大系 8」)をテキストといたします。「文章規範」には掲載がありませんでした。このシリーズも短く分けられており読みやすくなっています。数回シリーズの予定ですが、年末年始にかかるのでいつ終えられるかは現時点では分かりません。気長にお付き合いください。ポイントは「前」に比べて「後」の方はあまり有名ではないのはなぜかということでしょうか。「前」と同様に先帝の遺徳を偲び、魏国に比した蜀国の正統性を主張しているのですが、やはり「二番煎じ」臭い感じがしますね。

【1】
先帝は漢賊両立せず、1)オウギョウは偏安せざるを慮る。故に臣に託するに賊を討つを以てせり。先帝の明を以て、臣の才を量る。故に臣の賊を伐つに、才弱く敵ア)きことを知れり。然れども賊を伐たざれば、オウギョウも亦た亡ぶ。惟だ坐して亡ぶるを待たんよりは、之を伐たんにイ)孰与ぞ。是の故に臣に託して疑わざりしなり。

1)「オウギョウ」=王業。帝王として天下をおさめる事業。ここでは劉備が漢王朝を再興させる事業を指す。超簡単な漢字ですがなかなか浮かばないかも。

ア)「彊き」=つよ・き。「彊い」は「つよい」。音読みは「キョウ」。彊忍(キョウニン=我慢しにくいことをあえて我慢する)、倔彊(クッキョウ=屈竟)、「つとめる」とも訓み、自彊(ジキョウ=自分で努力すること)。

イ)「孰与ぞ」=いずれ・ぞ。二つの比較するもののうち、どちらであろうか。「孰若ぞ」とも書く。比較選択の漢文訓読用法。「AよりはBの方がいい」と後に来るものを選択せよというニュアンスが強い。ここでは「坐して滅ぶよりは、魏を伐って出る方がましだ」。


【2】
臣命を受けしの日より、寝ぬるに席を安んぜず、食うに味を甘しとせず。北征を2)シイすれば、宜しく先ず南に入るべし。故に五月濾(ロ)を渡り、深く不毛に入り、日をイ)せて食う。臣自ら惜しまざるに非ざるなり。王業の蜀都に偏安することを得べからざるをウ)う。故に危難を冒して、以て先帝の遺意を奉ず。而れども議する者謂いて計に非ずと為す。

2)「シイ」=思惟。深く考える。「シユイ」と読めば、「心を一心にこらして静かに自分の心を考察するという日本仏教の用語。禅那=ゼンナ=ともいう」。「惟」は「おもう」「ただ」とも訓む。音読みの「ユイ」は呉音です。惟惟(イイ=はいはいと承諾する)、惟神(かんながら=神としての存在)、惟我独尊(ユイガドクソン=唯我独尊とも)、惟適之安(ユイテキのアン=ただ自分の気に入ることだけに安んじている。自分の気の向くままの生活に満足してそれ以上を求めない)。

イ)「并せ」=あわ・せ。「并せる」は「あわせる」。音読みは「ヘイ」。并呑(ヘイドン=他国をあわせて自分の領土とすること)、并分(ヘイブン=半分に分けあう)。「併」とほぼ同義です。「并びに」(ならびに)という副詞用法もある。

ウ)「顧う」=おも・う。熟字訓ですが少し稀な用法か。顧眷(コケン=近くに置いてひいきにする、目を掛けて大切にする)、顧恤(コジュツ=あわれみをかける)、顧眄(コベン=ふりかえってみる、きょろきょろする)、顧恋(コレン=恋い慕う)。

ここではまず、北伐の前提として南部の雲南地方に住む異民族を平定したことを言っています。諸葛亮は「後顧の憂い」を消すために五十万の兵を率いて南征しました。その険しい道のりだったのは「日を并せて食う」で瞭然。食事は二日に一度だったというのです。そして、蜀が中原からみれば辺鄙な位置にあるため、ここに安住していては「王業」を為すことができないという先帝の思いを常に抱えて出兵したのだと言い切る。ところが、これは「良策」ではないという輩が数多いる。。。

【3】
今賊遇々西に疲れ、又東に務む。兵法は労に乗ずと。此れ3)シンスウの時なり。謹みて其の事をエ)ぶること左の如し。

3)「シンスウ」=進趨。こばしりに走りすすむ、進んで仕える。「趨」は「はしる」「おもむく」とも訓む。趨競(スウキョウ=はしり競う)、趨闕(スウケツ=朝廷に行く)、趨舎(スウシャ=出処進退)、趨翔(スウショウ=日常の動作)、趨蹌(スウソウ=すばやく走るさま)、趨庭(スウテイ=家庭で子が父の教えを受けること)、趨風(スウフウ=風に乗ったように速く通り過ぎること)、趨歩(スウホ=こばしり)、趨利(スウリ=利益のある方について利益を得ようとすること)。「ソク」と読むと「すみやか」の意。趨織(ソクショク=コオロギ)、趨数(ソクソク=せわしげでわずらわしいさま)、趨趨(ソクソク=せわしげに歩くさま、蟋蟀・蛩・蛬)。

エ)「陳ぶる」=の・ぶる。述べる。表外訓み。「陳」には「つら・ねる」「ふる・い」「ひ・ねる」の訓みもある。陳錫(チンシ=ひろく全体に恩恵を与える)、陳事(チンジ=往時、事柄を述べる)、陳迹(チンセキ=旧跡)、陳疏(チンソ=事情、理由を述べて弁解すること)。

「賊」、すなわち魏は西の反乱に遭い兵力が疲れている。建興6年春、蜀軍は魏の大将軍曹真を攻め、その際、天水郡(甘粛省)など三郡が蜀に呼応したため、その対応に追われた魏は疲弊していました。そして、東では呉の陸遜が率いる軍勢に防戦一方。兵法にある「敵の疲労に付け込む」というのはまさにこのこと。今をおいて魏を討つ好機はありませぬぞ。それなのに朝廷では異を唱えて詰まらんことをいう連中のなんと多いことよ。不満たらたらの諸葛亮の反撃が続きます。

「兵法のイロハもなんもわかっておらぬ」。

諸葛亮の瞋恚が迸ります。

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Author:char
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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