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蕈狩り迷った先には桃花源…=柏木如亭「詩本草」


 柏木如亭の「詩本草」シリーズの5回目は、「蕈狩り」にまつわるちょっと、いや、かな~り不気味なお話を紹介します。如亭自身の体験談ではなく、人から聞いた話のようですが、そう簡単には忘れられないでしょうね。怪談の季節にはちと早いですが、すこしだけ寒くなっていただきましょう。ただし、ちょっと長いので、2回シリーズで。重要漢字は目白押しですよ。そして、また陶淵明の出番です。

《10蕈狩りの怪異》

1 蕈を拾ふは蕈を食らふより楽し。

2 に信中に寓す。

3 舎後の乱山松林の中に多く此の物を生ず。

4 秋来、日として拾はざるは無し。

5 毎に筐に盈ちて帰る。

6 即ち隣翁を招きて、酒を貰ひ蕈を焼きて鬼を説かしむ。

7 中にサイキンの一話有りて最も怪し。

8 云はく、「某生、一僕を携へて竜神の温泉に浴す。

9 温泉は紀の深山の中に在り。

10能く諸瘡を治すと云ふ。

11時に維れ八月、秋気蕭条として草木黄落す。

12浴に在ること数日、旦夕惟だ谷鳥の悲鳴、嶺猿のアイショウを聞くのみ。

13生、無聊に堪へず。

14因つてサイキンの遊を為さんと欲し、これを居停主人に謀る。

15主人曰く、「此を去ること十七八里、一松林有り。

16菌甚だ多し」と。

17生、翌日暁を侵して出づ。

18僕、行厨を提げて相従ふ。

19行くこと二十里多路にして謂ふ所の松林を見ず。

20小径、通ずるに似、窮するに似て、只だ縦歩して行く。

21大木、天に参じて日を蔽ふ者、その数を知らず。

22生、顧て僕に謂ひて曰く、「古の名士は多く山水を愛して動もすれば輙ちを結びて栖む。

23予が心、これを慕ふも、風塵に奔走して未だ初志を遂げず。

24今求めずして此の如きショウキョウに遇ふことを得たり。

25豈に幸ならずや」と。

26主僕相対して青苔に坐す。

27手づから壺觴を引きて以て飲む。

28既に酔ひて興趣ボツゼンたり。

29且つ吟じ且つ行く。

30前面に忽ち一孤峰を見る。

31眺望絶佳なり。

32乃ちトウカツハンエンして上る。

33狭径僅かに行履を通じ、落葉人を没す。

34行くこと里許、殆ど将に絶頂に近づかんとするも、亦た甚だしくは険ならず。

35一草廬有り。

36短牆斜門、ジンセイを隔絶す。

37生、驚歎して曰く、「這の裏に又た秦を避くる人有るか」と。          (続く)

 ここで一旦切らせていただきます。本文は追い込んでいますが、見やすいように一文ずつ改行しました。併せて文の数も多いのでどの文から語彙を採用したか分かりやすくするために一文ずつ番号を付しましたのでご容赦を。。。。一文は短くて、あたかも「漢詩」のように歯切れがいいでしょ?こうすると読みやすく、意味は汲みやすいのではないでしょうか?

1 きのこ狩りは、きのこを食べるよりも楽しいと言っています。その気持ちはマニアなら分かる。譬えて言うなら、漢字学習は、漢字検定試験を受けるよりも楽しい。。。全然違うか。いや、逆か。漢字検定試験を受ける方が、漢字学習より楽しい。何が言いたいかわからな~い、例えになっていな~い。

2 「曩に」は訓めますよね?「嚮に」とも書く。→「さき・に

  「信中」は、信濃国、すなわち長野県。どこぞの家老か豪商のところに食客となって世話になっていたのでしょう。

5 「毎に」は訓み問題です。表外訓み。→「つね・に

  「筐」は「かご」。四角いカゴ。和訓ではほかに、「かたみ」「はこ」「ねだい」。音読みは「キョウ」。熟語は「筐筥」(キョウキョ)、「筐篋」(キョウキョウ)、「筐笥」(キョウシ)、「筐牀」(キョウショウ)、「筐箱」(キョウソウ、箱のソウは表外音)。

6 「貰ひ」は「もら・ひ」。珍しい訓みに「おぎの・る」がありますが、むしろ中国ではこちらの意味が主。品物を先にやり取りして支払いは後にする、付け買い、掛買いという意味。漢詩などではよく出てくる。この意味の熟語では「貰買」(セイバイ)、「貰貸」(セイタイ)。「もらう」という意味は日本用法。「鬼」は妖怪、化け物のお話。

7 書き問題「サイキン」。蕈狩りのことです。書けますか? 「最近」「砕錦」「細瑾」「采芹」「細謹」ではない。→「採菌

8 「竜神の温泉」は、注釈によれば、今の和歌山県田辺市龍神村にある温泉。

10 「瘡」は「ソウ」で「きず、かさ、くさ」と訓む。できもの、腫れ物。「瘡痍」(ソウイ)=「瘡夷」、「瘡腫」(ソウショウ)、「瘡瘢」(ソウハン)=「瘡痕」(ソウコン)、「痘瘡」(トウソウ、もがさ)、「刀瘡」(トウソウ)。

11 「維れ」は「こ・れ」。特別な用法ですが、意味は無く語調を整え、次に来る語を強調する役割を担っています。「時」を強調する。

   「蕭条」は「ショウジョウ」。物寂しいさま。

12 「谷鳥」(コクチョウ)は、谷間を飛ぶ鳥。「嶺猿」(リョウエン)は、嶺(みね)に棲む猿。

   書き問題「アイショウ」。哀しい鳴き声。同音異義語は「愛誦」「愛称」「相性」「愛唱」「愛妾」「哀傷」。→「哀嘯

   「嘯」(ショウ)は「うそぶ・く」「うな・る」「ほ・える」「しか・る」とも訓む。「嘯歌」(ショウカ)=「嘯詠」(ショウエイ)、「嘯傲」(ショウゴウ)、「嘯合」(ショウゴウ)、「嘯聚」(ショウシュウ)=「嘯集」(ショウシュウ)、「嘯咤」(ショウタ)、「嘯風」(ショウフウ)、「嘯風弄月」(ショウフウロウゲツ)。

14 「居停」(キョテイ)は、寄寓している家。温泉の宿屋のこと。

18 「行厨」は「コウチュウ」。携帯用の酒食。弁当。木や竹でつくったわりご(破籠、)。

19 「多路」(タロ)は、~以上の道のり。歩いた距離は二十里ではきかなかったということ。

20 「縦歩」(ショウホ)は、気ままに歩くこと。逍遙。

22 「廬」は訓み問題。訓で。このblogの名称でもある。 →「いおり

   音は「ロ」。粗末な小さい家。「廬舎那仏」(ルシャナブツ)、「廬山」(ロザン)、「廬児」(ロジ)、「廬舎」(ロシャ)、「廬墓」(ロボ)、「廬落」(ロラク)、「廬陵」(ロリョウ)、「草廬」(ソウロ)。

24 書き問題「ショウキョウ」。書けますか。とても簡単な漢字です。景色の良いところ。同音異義語は「猖狂」「生姜」「松喬」「鈔劫」「抄劫」「商況」「小経」。→「勝境

   この場合の「勝」は「まさる、すぐれる、他のものの上に出る」という意。熟語では「勝引」(ショウイン)、「勝概」(ショウガイ)、「勝景」(ショウケイ)、「勝状」(ショウジョウ)、「勝蹟」「勝迹」(以上ショウセキ)、「勝絶」(ショウゼツ)、「勝地」(ショウチ)、「勝区」(ショウク)、「勝致」(ショウチ)、「勝麗」(ショウレイ)。

27 「壺觴」は読めますか?酒つぼとさかずきのこと。 →「コショウ

   陶淵明の「帰去来兮辞」に「壺觴を引きて以て自ら酌む」がある。陶淵明の基本ワードですね。

28 書き問題「ボツゼン」。書けますか?急に沸き起こるさま。基本ですね。→「勃然

32 書き問題二題「トウカツ」と「ハンエン」。書けますか?「トウカツ」は同音異義語は「偸活」「統括」「統轄」ですが違う。次の「ハンエン」とも連動するのですが、こちらは「よじのぼる」。よじのぼるものと言えば。。。。漢字は簡単ですが「トウカツ」では浮かび難いですね訓で。「ふじかずら」ならいかがですか?→「藤葛」と「攀縁

   「攀」(ハン)は「ひ・く」「よ・じる」「すが・る」とも訓む。「登攀」(トウハン)、「攀援」(ハンエン)、「攀桂」(ハンケイ)、「攀登」(ハントウ)、「攀附」(ハンプ)、「攀竜附鳳」(ハンリョウフホウ)、「攀恋」(ハンレン)=「攀慕」(ハンボ)、「攀轅臥轍」(ハンエンガテツ)。

36 「短牆斜門」は「タンショウシャモン」。丈の低い垣根と正門の横の潜り戸。「牆」(ショウ)は「かき」「まがき」「へい」「かこ・い」とも訓む。「牆垣」(ショウエン)、「牆衣」(ショウイ)、「牆籬」(ショウリ)、「牆頭」(ショウトウ)、「牆有耳」(ショウにみみあり)、「牆壁」(ショウヘキ)、「牆面」(ショウメン=無能者)。

 書き問題「ジンセイ」。書けますか?同音異義語は「仁政」「恁生」「人性」「腎性」「人生」。けがれたよのなかのこと。分かりますね。→「塵世

   類義語は「塵界」(ジンカイ)、「塵境」(ジンキョウ)、「塵俗」(ジンゾク)、「塵寰」(ジンカン)。

37 「秦を避くる人」は、懐かしの「桃花源の記」の一節。例の漁人が迷い込んだ邑の住人は、自分たちの祖先が500年も以上前の秦の暴虐の時代を避けてこの地に逃げ込んだと語っていました。このお話の「某生」も、蕈狩りをしていて迷い込んだところに見つけた草廬を見て、あの桃花源の記を思い出し、邑人の祖先と同じように世を棄てた人でも棲んでいるのではないかと思ったのです。心憎い台詞と言えましょう。

 本日はここで筆を擱きます。まだ、おどろおどろしくないですね。次回、後半はかなり恐いですよ。お楽しみに。。。。

 【今日の1級配当漢字】

蕈、曩、筐、瘡、蕭、聊、輙、廬、觴、牆、彙、譬、嚮、筐、筥、篋、牀、瑾、痍、瘢、嘯、傲、逍、猖、姜、鈔、蹟、迹、偸、攀、籬、恁、寰、擱
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Re: 「勝地涼…」じゃないですよね、白居易ですか…

コメントありがとうございます。どんな問題が出たのか興味津々で助かります。

> 「しょうち(勝地)本来定主無し」が最難問と思います。「成語林」に拠ると出典は、白居易です。

白居易か。。。「長恨歌」学習は間違っていなかったというのが嬉しいですが、出典の詩は知らないです。勉強不足です。ゆくゆくは「長恨歌」からも出るかもしれませんね。
これは分かりませんね。確かに難しい。前回の「使途」と同類です。

> この記事の24番に、勝地が載っていましたね。Char様のブログに出てくる語彙を、辞書で調べて身につければ、もしかしたら解けたのかもわかりません。

う~む、確かに記述はしていますが、辞書から引っ張り出しただけで定着などしていません。せめて見出し語だったら記憶の欠片にはあるような気がしますが、ここまで覚えているのは無理です。ただ、「勝」に「景勝」「形勝」のように「すぐれている」という意味があり、意外に熟語が多くあったことは印象にありました。でも、本番でこの字を浮かばせるのは無理です。白居易の詩を知っていないと無理です。これは語彙力で浮かべというのは無理ですね。。。漢詩の勉強をもっとしなければいけませんね。
そして、改めて柏木如亭の語彙も相当なものだったことを痛感いたしました。「勝境」ですからね。

全体の問題の詳細は知らないのですが、どうやら前回に引き続き比較的平易だったようですね。四字熟語も簡単そうで。。。「夜郎自大」は吃驚しました。これは1級問題で出ていいんでしょうかね?娘の準2級試験勉強で叩き込みましたよ…確かに古代中国の有名な故事のある四字熟語ではありますが。。。

一寸拍子抜けでした。

21-1を解いた結果は、拙ブログに書きました。char様が受験されていれば、かなりの高得点を叩き出されたことと思います。

「しょうち(勝地)本来定主無し」が最難問と思います。「成語林」に拠ると出典は、白居易です。

この記事の24番に、勝地が載っていましたね。Char様のブログに出てくる語彙を、辞書で調べて身につければ、もしかしたら解けたのかもわかりません。

私は、とても其処までは学習できませんが、貴ブログを拝見して少しでも語彙が増えればと思っております。今後とも愉しみにしております。
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char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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