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三国志の曹操はカンゾクなり=新シリーズ「世説新語」スタート

中国・南朝宋の劉義慶(403~444)が著した「世説新語」をご存知でしょうか?学者・文人・芸術家・僧侶など、魏・晋時代の名士たちの言行・逸話を集めたもので、「当時の遺文・記録の類から嘉言佳語を選び、徳行・言語・文学・方正・雅量など三十六項目に分類し、その興味深い人間像を記している。中国の思想史・文化史・風俗史を知る貴重な資料としても価値の高い書」(明治書院「新書漢文大系21・世説新語」解説、長尾直茂編)とされています。

弊blogでも何度か引用したことがあります。検索してみました。次の5か所で引用していました。

●「柏木如亭のグルメ本「詩本草」を翫味しよう」(2009/04/18)

●「一休の「心」の師匠は晩唐詩人の杜牧=漢詩学習」(2009/09/27 ) 

●「如亭の武器である「済勝之具」とは何?=漢詩学習」(2009/10/01)

●「 「トウロ」と「ボウロ」はセットで覚えるべし=漢詩学習」(2009/10/11)

●「汗牛充棟、載籍浩瀚、さて「ゴシャ之書」は?=漢詩学習」(2009/10/28)
  
現代で言えば短篇オムニバス形式。著名な人物に焦点を当てて、その人となりやエピソードからぴりりとスパイスを利かした教訓じみた落ちが読みどころです。漢字学習の観点からも当然、語彙の宝庫です。故事成語や四字熟語の出典となっているケースも多い。

底本に基づく「新釈漢文大系76~78・世説新語」(目加田誠著)では、第一の「徳行」篇から第三十六の「仇」篇の順に編集されていますが、今回参考にしました新書漢文大系では「後漢の逸事」「三国の逸事」「魏晋の逸事」として時代ごとに三分類し、列伝風に人物ごとに逸話をまとめるという試みがなされています。素人にも大変読みやすい編集となっています。同書によりますと、「ひとえに『世説新語』の逸話を時代の潮流の中でとらえたいと考えたからであり、また列伝風に編集することで『世説新語』の小説的な風趣が一層玩味できると考えたからである」(明治書院「新書漢文大系21・世説新語」P7・凡例)とあります。

中国近代小説の父とされる魯迅(1881~1936)の解説も見え、彼は著書「中国小説史略」の中で「神秘的で意味深長な言葉を記したり、高潔で珍しい行動を記したり、はては勘違いや度を越した行いなどに話題は及び、人を笑わせるに充分である」と世説新語の特徴をとらえています。正史の列伝のような史書ではなく寧ろ、虚構を交えた一種の小説として分類されるのが最大のポイントでしょう。余りにもできすぎた、にわかには信じがたいエピソードがふんだんに盛られているからです。

弊blogはしばらく世説新語を題材に漢字学習を進めるという試みを敢行致します。

先ず初回は、「Ⅱ 三国の逸事」から、「魏」の「曹操」を取り上げます。迂生は三国志マニアではありません。寡聞にして一度も読んだことがありません。これを機に少しだけ三国志ワールドの一端でも齧れればとも思っています。

曹公少き時喬玄に見ゆ。玄謂いて曰く、天下方に乱れ、群雄1)コソウす。ア)めて之をイ)むるは、君に非ずや。然れども君は実に是れ乱世の英雄にして、治世の2)カンゾクなり。恨むらくは、吾老いたり。君の富貴を見ざらん。当に子孫を以て相累わすべし、と。(識鑒篇1)


【解釈】曹公(曹操のこと)が、若い時喬玄にあった。「天下はまさに乱れ、群雄が虎のごとく互いに争っている。これを治めて統一するのは、君でなくては誰だろう。しかし、君は実に乱世の英雄、治世の姦賊だ。残念だが、私はもう年老いてしまった。君の富貴となる日を見ることはできない。どうか、そのときには子孫を宜しく頼みますぞ」。

1)「コソウ」=虎争。トラが獲物と争うように、激しく争うこと。孤孀、枯痩、瞽叟、胡霜、鼓噪ではありませんよ。「群雄虎争」は四字熟語っぽく覚えましょう。

2)「カンゾク」=姦賊(奸賊)。悪者、悪漢の意。姦兇、姦凶ともいう。「姦」は「よこしま」。姦猾、姦黠(以上カンカツ=悪賢い)、姦軌(カンキ=道理にそむくこと)、姦曲(カンキョク=姦邪、姦回、よこしま)、姦険(カンケン=心がひねくれていること)、姦竪(カンジュ=小悪人)、姦慝、姦匿(以上カントク=悪賢い)、姦雄(カンユウ=悪知恵の非常に優れた者)。

ア)「撥めて」、イ)「理むる」は、いずれも「おさ・めて」「おさ・むる」。撥乱反正(ハツランハンセイ)はよく本番で出る。「理める」は表外訓み。

曹操(155~220)は三国志の主人公の一人ですが、「姦賊」と称して、仁侠肌で聊か悪役のポジションにある人と言っていいでしょう。彼を評した有名な「乱世の英雄にして、治世の姦賊なり」という言葉。当の三国志では喬玄ではなくて、橋玄となっており、その台詞は「天下将に乱れんとするや、命世の才に非ずんば済う能わず。能く之を安んずる者は、其れ君に在るか」となっています。三国志の当該箇所に附された裴松之(ハイショウシ)の注では、東晋の人、孫盛の「異同雑語」を引用して「嘗て許子将(名は劭)に問う、我如何なる人かと。子将答えず。固く之を問う。子将曰く、子は治世の能臣にして、乱世の姦雄なりと。太祖(曹操のこと)大いに笑う」とあります。件の曹操評はこの言葉が原型です。世説新語の逸話は三国志や異同雑語の言葉を綯い交ぜにして作られたものと考えられるとしています。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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