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「鰒魚」と「石決明」と「鮑」と「蚫」=柏木如亭「詩本草」

 柏木如亭の「詩本草」シリーズの3回目の御題は「鰒魚」。これは読めますよね。このほかにも宛てる漢字や、漢名由来の熟字訓もあり、検定試験本番ではよく狙われます。如亭によれば、駿河の国(今の静岡県)の産が美味しいそうです。

《22 鰒魚》

 鰒魚は即ち王莽が啗ふ所の者にして、その殻を石決明と曰ふ。海に沿ひて所在これ有り。亦た海国常食中の美品なり。駿の薩埵嶺下に烹る所の者、頗る好喫たり。越に游ぶの日、尾張の勾臺嶺と能生の海浜に抵り、一孤島を見る。 【              】 岸を距つること僅かに三里なり。奇景探る可く、急に一船を弁じ、酒と鰒とを携へて往きて游ぶ。是の日天気晴明にして海面、鏡の如し。佳処を揀びてし、俯して魚楽を観る。游する者、泳ずる者、歴歴として数ふ可し。是において盃を挙げて古を論じ、詩画を談ず。快甚だし。莫に至りて帰る。再び至れば則ち風浪大いに起り、洶湧岸を拍ち、リンコとしてそれ留まる可からざるなり。チョウゼンして詩を吟じて去る。

 前月来る時此に舟を買ふ

 センプウ吹き送る小瀛洲

 初めて知る 凡骨終に再びし難きを

 屋の如きキョウトウ 旧游を隔つ

 白文

 前月来時此買舟
 センプウ吹送小瀛洲
 初知凡骨終難再
 如屋キョウトウ隔旧游

 ■「鰒魚」は「あわび」とルビを振っているが、音読みなら「フクギョ」と見たままでOK。「鰒」の一字で「あわび」ですが、和名では「ふぐ」もあるので要注意です。「あわび」では「蚫」「鮑」もある。

 ■「王莽」は「オウモウ」。漢の人。初めは善政を敷いて人望を集め、平帝を弑して帝位を簒奪して国を新と号したが、過酷な政治に民心が離反し、光武に殺された。「漢書」王莽伝に「王莽、関東に兵の起るを以て憂憊し、食はず但だ酒を飲み鰒魚を食ふ」とある。古来、鰒好きで知られた人のようです。

 ■訓み問題 「啗ふ」は訓めますか?訓読みの読み問題で出そうです。



 正解は「く・ふ」あるいは「くら・ふ」。音読みは「タン」で「啗以利」(くらわすにリをもってす=利益を与えて人を味方につける)、「啗齧」(タンゲツ=がつがつとかんで食べる)。と思ったんですが、これってもしかしたら配当外?漢検辞典には載っていないような。。。でしたら失礼。問題には出ませんわ。「啖」(タン)なら1級配当なので、こちらを覚えたらいいかもしれません。すいません、よく見たら、「啖」の異体字でした。したがって、問題には出ます。歴とした1級配当でした。漢字源では別の漢字で書かれていたもので。。。二重に失礼。。。「健啖」(ケンタン)、「啖呵」(タンカ)。

 ■「石決明」は熟字訓問題で頻出。これも「あわび」です。ここでは「セキケツメイ」と読ませています。「大和本草」巻14に「石決明 海介の上品也。又蚫と云。肉も殻も目を明にす。弘景蘇恭は石決明と鰒魚を一物とす。蘇頌と時珍は一種二種とす」と記されていると注釈にあります。すなわち、「中国の本草書ではアワビ自体を指し、日本でも『類聚名義抄』や『下学集』に見られるように古くはアワビそのものを指していたが、『本朝食鑑』巻10・鰒に『鮑 俗称 殻は石決明と名づく』(原文漢文)とあるように、後にはその殻のみを指す例が見られる」というわけです。正確には「石決明」はその身というよりは殻を指すようです。勉強になりますねぇ。。。

 ■「駿の薩埵嶺(サツタリョウ)」は、駿河(現在の静岡市清水区と由比町との間)に位置する薩埵峠で、東海道の難所として知られたとある。その峠の下の海で海女が栄螺や鮑を採って旅人に供したことが知られているといいます。「好喫」(コウキツ)は「美味しい」の意。

 ■訓み問題 「適」は表外訓みで基本です。読んで下さい。



 正解は「たまたま」。「偶」も「たまたま」。ふたつセットで覚えましょう。

 ■「勾臺嶺」(コウタイレイ)は人名。尾張の画家で、文化2年(1805年)秋、越後游歴中に五十嵐川のほとりで如亭と邂逅し、以後翌年にかけて如亭と一緒に信越の地を遊歴した。

 ■「能生の海浜」(のふ)は新潟県糸魚川市大字能生の海岸のこと。

 ■「抵り」は「いた・り」と表外訓みで、「到る」と同義。「あ・たる」の訓みもあるがここでは採らない。「抵死」(テイシ)、「抵罪」(テイザイ)、「抵牾」(テイゴ)などの熟語がある。

 ★ 【     】内には「ラケイ・セイカン、ケンキュウにして空にソビゆ。」の一文が入ります。1級配当漢字が5文字です。分かりますか?結構難しいですね。ヒントを出します。この文は、陸から三里許と程ないところに浮かぶ小島を形容しています。この場合の一里は4粁じゃないですよ、6町(=約500米)。

 ■まず、「ラケイ」。この音で浮かびませんか?「蘿径」ではない。ぐるぐると巻貝のように高く盛り上がったさまなんですが。。。。



 正解は「螺髻」。ホラガイのような形に束ねた子供のまげ。形が似ているところから、青々とした山の形容としても用いる。「螺」は準1級で「つぶ、にし」。「螺髪」(ラハツ)、「螺旋」(ラセン)、「螺甸」(ラデン)、「法螺」(ホラ)。「髻」は1級配当で「もとどり、たぶさ、みずら」と訓む。「髻華」(うず)、「髻子」(ケイシ)、「肉髻」(ニクケイ、ニッケイ)、「椎髻」(ツイケイ)、「宝髻」(ホウケイ)。

 ■次に「セイカン」。「セイ」は「青」。問題は「カン」。大ヒント。「緑に覆われた青いまげのような形」を言い表しています。1級配当の「カン」で「まげ」と言えば浮かぶでしょう。。。



 正解は「青鬟」。「鬟」は1級配当で「わげ、こしもと、みずら」と訓む。「丫鬟」(アカン)、「風鬟雨鬢」(フウカンウビン)、「霧鬢風鬟」(ムビンフウカン)、「花鬟」(カカン)、「小鬟」(ショウカン)、「翠鬟」(スイカン)、「垂鬟」(スイカン)。

 ■次は「ケンキュウ」。同音異義語は「研究」「譴咎」「狷急」「建久」。どれもぴたっときませんね。ここで言いたいのは、島が山のように高くてけわしいということ。「ケン」は「けわしい」。「キュウ」は「たかい」。ただし、両字とも1級配当。あまり馴染みがないかもしれませんが。。。。



 正解は「嶮岌」。難しい言葉ですね。ともに1級配当。「嶮」は「けわ・しい」と訓む。「嶮路」(ケンロ)、「嶮隘」(ケンアイ)、「嶮峻」(ケンシュン)、「嶮岨」(ケンソ)。「岌」は「たか・い」と訓む。「岌岌」(キュウキュウ)、「岌峨」(キュウガ)=「岌嶷」(キュウギョク)。いずれも山の雄大な態を形容する漢字です。

 ■最後は「ソビゆ」。これは簡単。絶対にノーヒントで浮かんでほしい。



 正解は「聳ゆ」。1級配当で音読みは「ショウ」。訓はほかに「おそ・れる」「つつし・む」「そばだ・つ」「そび・やかす」「すす・める」と多いので要注意です。熟語には「聳懼」(ショウク)、「聳峙」(ショウジ)=「聳立」(ショウリツ)、「聳秀」(ショウシュウ)、「聳身」(ショウシン、みをそばだつ)、「聳戦」(ショウセン)、「聳善」(ショウゼン、ゼンをすすめる)、「聳然」(ショウゼン)、「聳動」(ショウドウ=世間の耳目を驚かす)。

 ■訓み問題 「距つる」と「許」。ともに表外訓読みです。基本です。本番でも出ますよ。



 正解は「へだ・つる」「ばかり」。しっかり学習しましょう。

 ■「佳処」は「カショ」。絶景ポイントですね。

 ■「揀びて」は「えら・びて」。「選」「簡」と同義。「揀」は1級配当で「わ・ける」とも訓む。「揀別」(カンベツ)、「揀択」(カンタク)、「揀取」(カンシュ)、「揀退」(カンタイ)、「揀選」(カンセン)。

 ■訓み問題 「席」は訓めますよね。「セキ」じゃないっすよ。表外訓読み。



 正解は「むしろ」。ここでは「席する」と動詞にしていますが、「むしろ」は敷物のことで、席を敷いて座る場所を設えること。「むしろ」はほかに「莚」「筵」「莞」「苫」「蒲」「蒻」「蓆」「藉」もある。

 ■「魚楽」(ギョラク)は、魚が自由に泳ぐ楽しみ。注釈によると、「荘子」秋水に出典があるそうです。

 ■「游する者、泳ずる者、歴歴として数ふ可し」は、海水浴に来ているビキニギャルをにやにやしながら眺めている……、なわけなくて、魚が泳ぎまわっている様を数を数えながら眺めていること。

 ■「莫」は「くれ」。暮と同じ。

 ■「洶湧」は「キョウユウ、キョウヨウ」。波がわきたつ音。また、そのさま。「洶」は1級配当で「わ・く」「さわ・ぐ」とも訓む。「洶洶」(キョウキョウ)、「洶動」(キョウドウ)。「湧」(準1級配当)も「わ・く」。音は「ヨウ」と「ユウ」。「涌」は異体字。「湧出」(ユウシュツ)、「湧溢」(ヨウイツ)、「湧出」(ヨウシュツ)、「湧泉」(ヨウセン、ユウセン)、「湧湍」(ヨウタン)。

 ■書き問題 「リンコ」は書けますか?「林胡」「廩庫」ではありません。ノーヒント。



 正解は「凛乎」。音や声がよく響くさま。あるいは、寒さの烈しいさま。「凜」は「さむ・い」「すさま・じい」とも訓む。「凜秋」(リンシュウ)、「凜森」(リンシン)、「懍慄」(リンリツ)、「凜凜」(リンリン)、「勇気凜凜」(ユウキリンリン)、「凜冽」(リンレツ)、「凜烈」(リンレツ)。

 ■書き問題 「チョウゼン」は書けますか?「超然」「輒然」「佻然」「帖然」「兆膳」ではありません。これもノーヒント。



 正解は「悵然」。思い切れず、失意するさま。「悵」は「いた・む」「うら・む」とも訓む。「悵恨」(チョウコン)、「悵悵」(チョウチョウ)、「悵望」(チョウボウ)、「惆悵」(チュウチョウ)。

 ■書き問題 「センプウ」は書けますか?「旋風」「尖風」じゃないですよ。「仙風」?う~ん、これも正解かなぁ。惜しい。「セン」は1級配当で、確かに「仙人」を意味しますね。これがヒント。



 正解は「僊風」。仙界の風。仙人が起す風。「僊」は「せんにん」「やまびと」とも訓む。魂が肉体を抜け出て、飛べるようになった人。すなわち、仙人のこと。「羽化登仙」(ウカトウセン)は「羽化登僊」(ウカトウセン)とも書く。中国の秦から後漢のはじめごろまでは「仙人」を「僊人」と書いた。

 ■「瀛洲」は「エイシュウ」。中国の伝説にある三神山の一つ。東海(渤海)中にあって仙人が住んでいると伝えられる。三神山とは、蓬萊、方丈、瀛洲。「瀛」は1級配当で「うみ」とも訓む。「瀛寰」(エイカン→海と陸の総称、この場合の「寰」は寰宇=カンウで、天下を指す)、「瀛海」(エイカイ)、「瀛表」(エイヒョウ)。

 ■「凡骨」は「ボンコツ」。平凡な人間、凡人。対義語は「仙骨」(センコツ)=仙人の骨相、すぐれた人。

 ■書き問題 「キョウトウ」は書けますか?「驕宕」「驕蕩」「狂蕩」「劫盗」「兇党」「侠盗」「共闘」「教頭」「郷党」ではありませんよ。意味は、逆巻く大波。これでお分かりですね。



 正解は「驚濤」。「濤」は準1級配当で「なみ」と訓む。「濤声」(トウセイ)、「濤波」(トウハ)、「濤瀾」(トウラン)、「松濤」(ショウトウ)、「怒濤」(ドトウ)、「波濤」(ハトウ)、「風濤」(フウトウ)。


 それほど長い条ではないのですが、漢検本番で出そうな語彙が目白押しでした。酒と鰒を携行して島に遊び、一日中、のんびりと魚を眺めて日向ぼっこしていたのですが、次に来たときは荒れ狂う濤が岌く、島にすら近寄れない。やはりあの島は仙人が住むという瀛洲だったのか。あぁ、やはり凡人には二度とは渡れないのだ。自然界の変化を身に沁みたのでしょう。仙人になれない自分のちっぽけさも感じないわけにはいかなかったようです。そして、その時詩人は詩を吟じるばかりです。それでいいのです。

 本日は以上です。

 【今日の漢検1級配当漢字】

鰒、莽、啗、游、揀、俯、洶、瀛、蚫、鮑、弑、簒、憊、齧、啖、呵、臺、邂逅、牾、蘿、髻、甸、鬟、鬢、譴咎、丫、狷、嶮岌、隘、嶷、聳、懼、峙、莚、筵、蒻、蓆、藉、湍、廩、輒、佻、悵、惆、僊、寰、驕、瀾、彙
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char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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