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キョロキョロすんな!真っ直ぐキョロを行け!=如亭山人遺藁

本日の「如亭山人遺藁巻二」(岩波書店刊行)からは「画に題す」。いずれも文化十二年(1815年)の作品です。十二首もある長い詩なので、六首ずつ二回に分割することをお許しください。まずは前半の六首から行きましょう。


隠を訪ふ ア)人間の客
イ)胡為れぞ頻りに回顧す
深居 到り得ず
白雲 1)キョロを埋む

1)「キョロ」

=去路。旅行の道筋、旅路、行路。「去る」とは、その場を離れて他の場所に行くこと。

ア)「人間」

=ジンカン。人が住む世界、世間。「ニンゲン」と読むと軽くなる気がします。さらりと「ジンカン」と読んでしまいたいところです。

イ)「胡為・れぞ」

=なんす・れぞ。漢文訓読で「胡為」(なんすれぞ)は「どうして」「何のために」と訳す。行動する目的や理由を問う疑問の意を表す。「コイ」と読めば、でたらめに物事を行うこと(俗語)。

この句は俗世間にどっぷりと漬かった人が、山の奥深く栖む「隠者」を訪ねるのですが、どこからか雲がどんどん湧いてきて道が見えなくなり、隠者の廬にたどり着くことができない風景を詠じています。その人は後ろを振り返ってばかり。周りをキョロキョロ気にしてばかり。つまりは己の人生に悔いばかりを残している。他人のことを気にしてばかりいる。そんな半身に構えるしかできない輩は前を向いて生きていくことができないのだ。そう、それは如亭、自分自身のことを寓意しているのです。



山居 喧免れ難し
幽径 来人有り
何ぞ似ん 2)フカの子の
眼に一点の塵無きに

2)「フカ」

=浮家。船を家とすること。新唐書「巻196 隠逸伝」にある「張志和伝」にある「張志和曰、願爲浮家泛宅、往來苕霅」との故事を踏まえて、四方に放浪すること。この四字熟語は「浮家泛宅」(フカハンタク=船の中に住まうこと、転じて放浪する隠者の生活)。

「幽径」(ユウケイ)は奥深い静かな小道。「径」は「こみち」。ここを山中の廬目指してやってくる客がいる。それは誰だ、如亭だ。


山中 来つて戸を閉め
歳月 著書新たなり
城門に向ひて入らず
3)イカン 人を拘束す

3)「イカン」

=衣冠。士大夫の服装。転じて役人勤めを指す。

一日中、山奥の廬に籠って読書に耽るのがいい。なまじ役人勤めなぞしたら最後、しがらみに囚われて自由が利かなくなってしまうぞ。


身外皆な詩料
秋林 ウ)好箋を献ず
幽人 手を袖にして立つ
覚えず 袖将に穿たんとするを

ウ)「好箋」

=コウセン。詩を書き付けるために格好の紙片。ここでは、秋の林の中で、はらはらと散り落ちてくる、紅や黄色に染まった落ち葉をいう。如亭一流のお洒落な表現です。

「幽人」(ユウジン)は隠者のこと。すなわち如亭自身です。山奥の廬に在る物はすべて詩の素材となる。紅葉に染まった落ち葉だって。。手を袖に入れて何もしないでただ見ているだけ。落ち葉がはらりと袖を穿っても気にならないほど物思いに耽るだけだ。紅葉の赤や黄色の中でただひたすら詩興に耽る如亭です。


一たび雲林の主と作り
4)ガンソウ 塵を見ず
花有るの樹を嫌ふに非ず
世間の人を引くを恐る

4)「ガンソウ」

=巌窓。洞穴の窓。ゆめゆめ含漱、含嗽などを想起しないようにしてください。

「雲林」(ウンリン)は雲の掛かっている林のことで、隠逸の場所の象徴です。王維の「桃源行」に「当時只記入山深、青渓幾度到雲林」とあるのを踏まえている。


朝に水墨の画を写し
夕にエ)浅絳の色を写す
目に未だ古人をオ)ざるも
云ふ 黄倪の筆墨と

エ)「浅絳」

=センコウ。あわい赤色。同義語は代赭色。「絳」は「あか、あかい」と訓む。絳河(コウカ=天の川、銀河)、絳英(コウエイ=あかい花)、絳裙(あかい裳、芸妓)、絳闕(コウケツ=王宮の門)、絳紗(コウサ、コウシャ=あか色のうすぎぬ)、絳脣(コウシン=美人のあかいくちびる)、絳帳(コウチョウ=あかいとばり、先生の席や学者の書斎を指す)、絳桃(コウトウ=桃のあかい花)、絳蠟(コウロウ=あかい色のろうそく)。

オ)「覩(ざる)」

=み・ざる。視線を集めてじっと見る。「覩」は「睹」の異体字で「ト」。「目睹」(モクト)、「逆睹」(ギャクト、ゲキト)。

ここで出てくる「黄倪」(コウゲイ)とは、元代の画人である黄公望と倪瓚(ゲイサン)。浅絳や水墨の山水画を能くした。

オマケとして王維の「桃源行」全文を掲載しておきましょう。陶淵明先生の「桃花源記」のストーリーをベースに詠んでいます。

漁舟逐水愛山春,両岸桃花夾古津。
坐看紅樹不知遠,行尽青渓忽值人。
山口潜行始隈隩,山開曠望旋平陸。
遥看一処攢雲樹,近入千家散花竹。
樵客初伝漢姓名,居人未改秦衣服。
居人共住武陵源,還従物外起田園。
月明松下房櫳静,日出雲山雞犬喧。
驚聞俗客争来集,競引還家問都邑。
平明閭巷掃花開,薄暮漁樵乗水入。
初因避地去人間,及至成仙遂不還。
峡裏誰知有人事,世中遥望空雲山。
不疑霊境難聞見,塵心未尽思郷県。
山洞無論隔山水,辞家終擬長遊衍。
自謂経過旧不迷,安知峰壑今来変。
当時只記入山深,青渓幾度到雲林
春来遍是桃花水,不弁仙源何処尋。
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Author:char
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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