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「カンソウ」に佇む織女「キチョ」飛ばす=漢詩学習

本日の「如亭山人遺藁巻二」(岩波書店刊行)からは「淡斎詩三編」。

淡斎というのは、佐羽淡斎(1772~1825)。上毛桐生で絹の買次商を営み、桐生詩檀の中心的人物として江戸の詩人文人たちとも親密な交遊関係のあった人。淡斎はすでに、淡斎百絶、淡斎百律の二つの詩集を刊行しているが、この年(文化十二年=1815)、第三詩集の菁莪堂集を出版するにあたり、折から桐生に来游した如亭に求めた題詩であるとあります。

季節は「清和」で初夏、陰暦四月の候です。

清和の時節 雨新たに晴る
北向初めて毛中の行を為す
拄杖を払拭してア)で寓を出づれば
芳草 新樹 一身軽し
来到る 桐郷 錦を出すの地
飽くまで看る 山明らかに水又た1)ぶるを
西商東賈 肩相摩し
山に倚り水に臨むは皆な2)キンシ
遊子 段匹を買ふ客に非ず
3)コウリ暫くイ)む 詩人の宅
坐して愛す 4)リガイの好風景
是れ晴 是れ雨 日に5)セイテキ
君に詩巻有り 本より新鮮
奇を捜りて看ることを得たり 第三編
驚歎す 天孫 6)キチョの別なるを
織り出す句句更に7)ランゼン
笑ひつべし 家家8)カンソウの婦
9)を飛ばし軸を転じて凍手を10)するを
花様にウ)たりと雖も璀璨乏し
光華 富貴 君が後に落つ
我れ世人に向ひて普く語げ奉る
巻を獲て蔵する者は宜しく保護すべし
一旦 暴雷 雲間を下らば
11)キョウフウ 12)ガイウ エ)みて将ち去らん


1)「コぶる」

=媚ぶる。媚びること。「こびる」なら100%浮かぶでしょうが、文語体の「こぶる」でも同じように浮かぶかどうかを問うています。ここでは「山水明媚」(サンスイメイビ)を訓読した形。風光明媚にも要注意。自然が見事に美しいさまをいいます。

2)「キンシ」

=錦肆。やや難問。錦などの絹織物を取り扱う店。「肆」は「みせ」。書肆、酒肆、店肆、魚肆、市肆。金枝、錦糸、禁止、巾笥、金翅、金鵄、鈞旨、麕至、菌糸ではない。

3)「コウリ」

=行李。旅の荷物。句驪、孔鯉、狡吏、紅梨、蒿里、蛤蜊、高利ではないので要注意です。

4)「リガイ」

=籬外。う~ん意外に難問か?利害、理外ではない。垣根の外。「籬下」(リカ=垣根の下)と同様に浮かびにくいかもしれません。

5)「セイテキ」

=清適。すがすがしくて気持ちがよいこと。ちょっとエロな人は「性的」しか出てこないでしょう。政敵、静的ならまだ許~す。

6)「キチョ」

=機杼。「キジョ」とも読む。織機(はたおりの機械)と、織機に横糸を通わせる梭(さ)。転じて、「詩文創作における新工夫」の比喩です。これは如亭ならではのなかなかに難しい言葉です。この前の「天孫」(テンソン)は織女星(ショクジョセイ)のことで機織りを司る星。「織婦」(ショクフ)ともいう。これを捩っている。もちろん、この詩を捧げている淡斎が「絹買次商」であることに因んでいるおどけた表現でもあります。

7)「ランゼン」

=爛然。絢爛たるさま。これは平易ですね。ランゼンといえばこれしかない。

8)「カンソウ」

=寒窓。これは難問。寒々とした窓辺で貧窮の生活を寓意している。観想、乾燥、感想、檻送、翰藻、諫争、讙譟、盥漱、間奏など同音異義語は多彩です。でも寒い窓を浮かぶ人は普通はいませんよね。これを機にこの言葉も音と共に習得しましょう。

9)「ヒ」

=梭。さきほども登場した「杼」と同じで、織機に横糸を通すための木製の道具。その形が魚の(カマス)に似ていることから、カマスのことを「梭子魚、梭魚」とも書く。

10)「カする」

=呵する。ここは成句で「凍手を呵する」として「はぁっと息を吹きかける」。「呵凍」(カトウ)という言い回しがあって、「凍った筆や、すずりに、はあと息を吹きかける、つまり、寒中に詩文を書くこと」。ここでは「梭を飛ばし」「軸を転じて」(軸=織機の部品の一つで、縦糸を巻きつけるもの=を動かす)、「凍手を呵する」とあって、寒さに耐えながら機織りをすることと、詩を苦吟することを寓意しているようです。

11)「キョウフウ」

=驚風。猛烈な風のことですが、普通は強風ですよね。でも「驚いた」んです。

12)「ガイウ」

=駭雨。激しい雨のことですが、これも「駭いた」んです。

ア)「旋で」

=つい・で。「尋で」と同義。事の移り来る意。

イ)「駐む」

=とど・む。「留む」と同義。とどまること。

ウ)「肖る」

=に・る。「似る」と同義。似ていること。「肖る」は「あやかる」とも。

エ)「攫み」

=つか・み。「掴み」と同義。つかむこと。

如亭は相当、この淡斎なる商人に金銭面でお世話になっているのでしょう。大賛辞の雨霰ですね。「璀璨」(サイサン)は絢爛豪華なさまという意味の難語ですが、花よりもきらびやかでいかなる貴人もあなたには劣るでしょう。世間の皆様にわたくしめがお告げいたしましょう。あなたの詩が載った書物を手に入れたらそれは大変貴重な代物ですよ。突然雷が鳴って風や雨が吹き降れば、持ち去られてしまいますから注意して守ってくださいませ。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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