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イッサン?一盞、一粲、一山、一散?いやいや相合傘よ~ん=漢詩学習

本日の「如亭山人遺藁」(岩波書店刊行)からは「桜を看る 以下、乙亥」と「絶句」の各二首、計四首をご紹介します。

まずは「桜を看る 以下、乙亥」から。

この「乙亥」(きのとい)は文化十二年(1815)の作品です。久しぶりの江戸で迎えた春の風景ですね。

春は長堤に満ちて1)キンペイを列ぬ
微風 花下 ア)を把りて停む
此中の歩往皆な2)コウギョク
遊人をして少しも青を踏ましめず

イ)を撲ち衣を穿ちて雪と同じ
往来但だ是れ寒からざるの風
十分の時節何ぞ曾ち悪からん
人は3)ヒカ4)バンテンの中に在り


1)「キンペイ」

=錦屛。錦の屛風。すなわち、満開の桜並木の比喩と思われます。あるいは、着飾った花見客の連なりの譬えかもしれません。噤閉では全く意味が通らない。ここで出てくる「長堤」は長く続く隅田川の土手を指すと見られます。

2)「コウギョク」

=香玉。ここは花びらの譬え。堤の上の道に桜の花びらが散り敷いているさまをいう。紅玉、皇極ではない。唐代の李玖の「噴玉泉冥會詩八首•白衣叟途中吟二首」という詩に「春草萋萋春水緑,野棠開尽飄香玉。繡嶺宮前鶴発人,猶唱開元太平曲。厭世逃名者,誰能答姓名。曾聞王楽否,眷取路傍情。」とあります。

3)「ヒカ」

=飛花。風に翻り飛ぶ落花。悲歌、皮下、悲笳、飛舸ではないので注意しましょう。

4)「バンテン」

=万点。無数の花びらのこと。やや難問か。杜甫の「曲江二首」に「一片花飛減却春,風飄万点正愁人。且看欲尽花経眼,莫厭傷多酒入唇。江上小堂巣翡翠,花辺高冢臥麒麟。細推物理須行楽,何用浮名絆此身。」「朝回日日典春衣,每日江頭尽酔帰。酒債尋常行処有,人生七十古来稀。穿花蛺蝶深深見,点水蜻蜓款款飛。伝語風光共流転,暫時相賞莫相違。」があります。

ア)「藜」

=あかざ。ここはあかざでできた杖のこと。藜は中国原産の一年草で、茎は丈夫なので乾燥して杖にした。痛風を患い足が悪い如亭は杖が必需です。「藜」は「レイ」と読む。「藜杖」(レイジョウ)はそのまんま「あかざのつえ」。四字熟語に「藜杖韋帯」(レイジョウイタイ=質素なことの形容)。「藜羹」(レイコウ=あかざの葉の吸い物、粗末な食事の代名詞)。

イ)「面」

=かお。「おもて」ではなく「かお」と訓んでおきましょう。桜の花びらが顔に当り、衣服にくっついてさながら雪が舞うようだというのです。ところが、吹く風は暖かい。そりゃそうさ、春だもの。やっぱ江戸の春はいいわ。なんだかんだあった江戸だが故郷に帰った思いに耽る如亭です。「面~」の熟語では、「面誡」(メンカイ=面と向かっていましめる)、「面結」(メンケツ=うわべだけの交際)、「面晤」(メンゴ=面会)、「面牆」(メンショウ=見聞が狭く、進歩に乏しい)、「面諍」(メンソウ=論争する)、「面疔」(メンチョウ=顔面のはれもの)、「面縛」(メンバク=後ろ手にしばりあげる)、「剥面皮」(メンピをはぐ=厚顔の者にはずかしめを与える)、「面冪」(メンペキ=幎冒)、「面皰」(メンポウ=にきび)、「面欺」(メンギ=面謾、面と向かってあなどること)、「面諛」(メンユ=おもねること)、「面友」(メンユウ=面朋メンホウ=表面的な付き合いの友)。

続いて「絶句」の二首。これも文化十二年の作品です。

5)キア閃閃として6)エンショウに没す
但だ見る 漁舟の晩潮を趁ふを
7)イッサン相扶けて雨を侵して去る
黄昏独り上る 水東の橋

孤影8)ショウゼンとして月明に随ふ
9)リュウテイ一路 人行少なり
幾家か半ば掩ひて 鐘初めて響く
橋頭に少立して10)ニコウを数ふ


5)「キア」

=帰鴉。夕方に塒に帰るカラス。やや難問。「キア」では辞書に熟語はない。「閃閃」(センセン)とはひらめくさま。唐彦謙の「長渓秋望」に「柳短莎長渓水流,雨微煙暝立渓頭。寒鴉閃閃前山去,杜曲黄昏濁自愁。」があります。

6)「エンショウ」

=煙霄。霞んだ大空のこと。煙瘴、冤訟、圜牆、垣牆、塩鈔、炎瘴、焔硝、猿嘯、艶笑、艶粧、炎症、延焼など同音異義語は多いのでそれぞれが要注意ですね。ただし、煙霄はやや難問でしょう。「霄」は「そら」。「霄漢」(ショウカン=はるかな大空)、「霄峙」(ショウジ=高く空に聳え立つ)、「霄壌」(ショウジョウ=雲泥)→「霄壌月鼈」(ショウジョウゲツベツ=月と鼈)。

7)「イッサン」

=一傘。一つの傘とまんまですが、「一傘相扶けて」と続けて「相合傘で」。一盞、一散、一粲、一山、逸散ではないので念のため。でも一傘は最も難しいかもしれません。

8)「ショウゼン」

=悄然。しょんぼり。蕭然、瀟然、聳然、悚然、鏘然、竦然ではない。が、これらの区別はなかなかに難しい。

9)「リュウテイ」

=柳堤。ヤナギの植えてある土手。流涕、柳亭と行きたいところですがムズい。

10)「ニコウ」

=二更。午後10時頃に鳴る鐘の音。夜の時間帯を五分した前後2時間の時間帯をいう。順に一更=午後8時(同7~9時)、二更=午後10時(同9~11時)、三更=午前0時(午後11~午前1時)、四更=午前2時(同1~3時)、五更=午前4時(同3~5時)。

絶句の一首目、第四句に「水東の橋」(スイトウのはし)とあるのは「江戸・深川にかかる橋。隅田川の東に位置することからこう呼ばれた」。

絶句の二首目、第一句は杜牧の「早雁」がモチーフになっています。すなわち、「金河秋半虜弦開,雲外驚飛四散哀。仙掌月明孤影過,長門燈暗数声来。須知胡騎紛紛在,豈逐春風一一回。莫厭瀟湘少人処,水多米岸莓苔。」。「仙掌」は「サボテン」?
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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