スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

煩わしいジンケン蹂躙?嫌ならカショの国で遊ぼうよ=漢詩学習

本日の「如亭山人遺藁巻二」(岩波書店刊行)からは三首プラス白居易のやや長い詩を一首掲載いたします。

まずは「石雲嶺、睡癖有り。新たに小室を構へて以て1)エンソクの所と為す」。

石雲嶺という人物は既出ですが、すぐにどこでも眠ってしまう「睡癖」を持っていたらしい。鼾声も激しかったようです。

2)ジンケン 嫌ふ 俗と同じうするを
小室の経営 只だ数弓
此より世人面を見難し
3)カショ隔てて一林の東に在り


1)「エンソク」

=偃息。横になって休息すること。厭足、圜則、堰塞、奄息、遠足ではありません。

2)「ジンケン」

=塵喧。俗世間の騒がしさ。塵涓(非常に小さいものの譬え)、人権、訊検、人絹ではない。「喧」は「さわがしい、かまびすしい、やかましい」。「喧囂」(ケンゴウ)、「喧啾」(ケンシュウ)、「喧聒」(ケンカツ)、「喧騰」(ケントウ=大評判)、「喧呶」(ケンドウ=絶叫)、「喧卑」(ケンピ=騒がしくて下品)。

3)「カショ」

=華胥。もとは中国古代伝説上の皇帝伏氏の母親の名だが、列子の黄帝篇の故事から、理想的な安楽平和な世界、転じて夢の世界をいう。「華胥の国」は故事成語問題で頻出。

「数弓」は面積の狭いことをいう。「弓」は土地の長短を計る長さの単位です。一弓は、一歩の長さで、六尺のこと(例えば、周代の一尺は22・5センチ、一説には五尺ともいい時代によって諸説ある)。

続いて「途中、寛斎先生の長崎の幕中より帰るを迎へ奉る」。

寛斎先生とは市河寛斎。長崎奉行牧野成傑に随行して長崎に遊んだ寛斎は、文化十一年(1814)九月二十二日、長崎を発って帰路に就き、十月末ごろ駿河島田辺りで如亭と邂逅した。「幕中」というのは役所の中で、ここは長崎奉行所を指す。

燕去り雁来るも 従ふに処無し
偶然今日 路に相逢ふ
君が身には本と4)チョウリョウの屋有り
笑ふ 我が5)ロヘンに独り踪を寄するを



4)「チョウリョウ」

=彫梁。「彫梁の屋」で、美しく装飾された建物のこと。言い換えれば、立派な屋敷を指す。跳梁、長鬣、跳踉、雕竜、兆両なども同音異義語で押さえておきましょう。「談天雕竜」(ダンテンチョウリョウ)、「跳梁跋扈」(チョウリョウバッコ)もついでに…。

5)「ロヘン」

=蘆辺。あしの生えている岸辺。「踪を寄する」は身を寄せるの意。寛斎先生は元来、立派なお屋敷をお持ちの方なのに、たまたま私のような根なし草の住まいに身を寄せられた。有り難いことと同時に嬉しくも可笑しくもあります。ツバメが南へ去り、カリが北から渡ってくるというこの冬の季節に、お寒いことですなぁ。炉辺、路辺は浮かべないように。



最後は「庭松」。

庭に生えている松のことです。

多く6)ショセイを助けて曲欄を護す
中庭長く免る 7)フキンの残
言ふを休めよ 只だ人の8)リカに寄ると
ア)や勝れり 氷霜㵎底の寒きに



6)「ショセイ」

=書声。書物を読む声ですが、書生や処世くらいしか浮かばんですよね。

7)「フキン」

=斧斤。斧で伐られたり傷つけられたりすること。付近、布巾、布衾ではない。

8)「リカ」

=籬下。まがきの下。梨花、俚歌、李下、罹禍、驪歌、理科と区別できるようにしましょう。籬下には通常、菊の花が満開です。

ア)「較や」

=やや。表外訓み。稍、漸と同じです。「較」は「くら・べる」とも訓む。

「曲欄」は曲折した欄干のこと。ここでは書斎の欄干。白居易の「題岳陽楼」に「岳陽城下水漫漫,独上危楼憑曲欄。春岸緑時連夢沢,夕波紅処近長安。猿攀樹立啼何苦,雁点湖飛渡亦難。此地唯堪書画障,華堂張与貴人看。」がある。

第三句は陶淵明の「飲酒」と「帰去来兮辞」を踏まえ諧謔性を出しています。すなわち、「飲酒」の「采菊東籬下」、「帰去来兮辞」の「撫孤松而盤桓」。人が兎角東籬の下の菊ばかりに寄って行き、松には注意を払わないなどと言わないでねという意。逆に言えば、もっと松も愛でてほしいよねということです。

「氷霜㵎底」は、氷や霜のある谷底。「文選・左思・詠史」に「鬱鬱㵎底松」があるのを踏まえ、庭の松はそれよりもましだという意。

ちなみにですが、白居易の詩に「庭松」と題する五言古詩があります。じっくり味わってみてください。

堂下何所有?
十松当我階。
乱立無行次,高下亦不斉。
高者三丈長,下者十尺低。
有如野生物,不知何人裁。
接以青瓦屋,承之白沙台。
朝昏有風月,燥湿無塵泥。
疏韻秋槭槭,涼陰夏淒淒。
春深微雨夕,満葉珠蓑蓑。
歲暮大雪天,圧枝玉皚皚。
四時各有趣,万木非其儕。
去年買此宅,多為人所咳。
一家二十口,移転就松来。
移来有何得,但得煩襟開。
即此是益友,豈必交賢才?
顧我猶俗士,冠帯走塵埃。
未称為松主,時時一愧懐。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

profile

char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

calendar
05 | 2017/06 | 07
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -
recent entry
recent comment
category
monthly archive
search form
RSS links
links
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。