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「棘鬣魚」が旬の季節ですなぁ…=柏木如亭「詩本草」

 新しくスタートした江戸時代後期の漢詩人、柏木如亭のグルメ本「詩本草」シリーズの2回目。詩本草は全部で48段あるのですが、その半数近くは魚介類が題材となっています。如亭にとって魚や貝などの海産物は何よりの好物だったのでしょう。そこで本日はユニークな魚の名称を取り扱います。いきなりですが問題です。次の漢字を読んで下さい。そして、普段食卓に並ぶことの多い魚の異称なんですが、何の魚なのかを考えて下さい。答えを見ればこの漢字であることも納得です。

 「棘鬣魚」

 たとえこの言葉は知らなくても(もちろん迂生も全く初めて見ました)、漢検1級を目指すのであれば、なんとか初見でも読むだけは読んでおきたいところ。「棘」も「鬣」も1級配当で訓読みならそう難しくないでしょう。音読みとして定着しているかどうかなんです。そして、この両字が同一熟語で出てきた時にそれが反応できるかどうかが、最終的な語彙力なんだと思いますよ。

 正解も含めて解説は、以下の詩本草13段を見てからにいたしましょう。

《13 鯛》

 鯛魚は海族の冠たり。即ち棘鬣魚なり。所在これ有り。花時、味尤も多し。吉備の金山鯛と称する者、甘美絶倫、実に海内第一たり。余嘗て「備中雑題」を作る。その中の二首に云はく、

 遠く時新を趁ふも亦た一奇

 春を賞する燕上 郷思を減ず

 初めて肥ゆる棘鬣 紅錦の如し

 正に是れ桜花放かんと欲する時

 錦様の佳魚 膾に斫るに堪へたり

 妨げず 一見 囊を取りて傾くるを

 湯と為し来りて喫す骨辺の肉

 幽味は五更に睡るよりも多し

 白文

 遠趁時新亦一奇
 賞春燕上減郷思
 初肥棘鬣如紅錦
 正是桜花欲放時

 錦様佳魚堪斫鱠
 不妨一見取嚢傾
 為湯来喫骨辺肉
 幽味多于睡語更
 

 骨辺の肉、五更の睡り多からずと雖も、最も味有り。是の語、周公謹が浩然斎雅談に出づ。知らず、古人の嗜む所の骨辺の肉、果して鯛魚を指すか。九原を起してこれを問ふこと難し。

 ■「鯛魚」は読めますか?「鯛」(たい)を音読みで読んだことは恐らくほとんどないでしょう。一瞬、虚を突かれた感じがしますね。「チョウギョ」。なぁ~んだと思うかもしれませんが、「シュウギョ」とか「チュウギョ」とかやっちゃうこともあるでしょう。音符の「周」はこの三つの読み分けが大変です。ところが、見慣れない漢字だと迷ってしまうのですが、「調」「彫」「周」「週」なんかはもう染み付いている漢字ですよね。これだとノータイムで「チョウ」や「シュウ」と読み分けられるのに、「鯛」だとノータイムにならない。「シュウ」かなぁ、いやいや、「チョウ」も、おっと「チュウ」もあるぞ。。。。とぐるぐる回り出します。「蜩」(ひぐらし)も音読みは「チョウ」です。「茅蜩」は「ボウチョウ」、「蜩甲=セミのぬけがら」は「チョウコウ」、「蜩蛻=ぬけがら」は「チョウゼイ」、「蜩蟬=ミンミンゼミ」は「チョウセン」、「蜩沸羹」(チョウトウフッコウ)は「セミが鳴き、湯が沸き立ち、あつものが熟えぎる、非常にやかましい音のたとえ」。

 また、「雕」(わし)も「チョウ」。これは「談天雕竜」(ダンテンチョウリョウ)や「雕文刻鏤」(チョウブンコクル)の四字熟語という流れの中では定着しているかもしれません。ところが「雕悍=ワシのように荒々しい」という熟語ではどうか?「チュウカン」とか「シュウカン」とか読んでしまいそうではないですか。このように、或る部分では読めるが応用問題で読めなくなることが多く、漢検本番ではまさにそこが狙われる。常日頃からシミュレーションをする癖をつけておくことが大事です。

 一方、「チュウ」と読むのは「綢」「稠」「惆」。これらはセットで一括りにして覚えちゃいましょう。

 ちなみに、「たい」の名称は、日本最古の百科事典とされる「倭名類聚鈔」(ワミョウルイジュウショウ)に「鯛 和名太比(タヒ)」とあることから類推するに、「鯛」は奈良時代に遣唐使が中国から伝えた漢字のようです。

 ■「海族」(カイゾク)は、海の生物の総称。

 ■さぁ、出ました「棘鬣魚」。正解は「キョクリョウギョ」。意味はとっくにお分かりで、鯛の異称です。なるほどでしょ。背鰭が「とげ」のような「たてがみ」みたいですわな。伊藤東涯の「秉燭譚」に「近年書ニノスル棘鬣魚ヲ云ハ即鯛ナリト」とあると注釈には書かれています。「棘」(キョク)は「いばら」「とげ」「ほこ」「おどろ」とも訓む。「棘囲」(キョクイ)=「棘院」(キョクイン)=科挙の試験会場(不正防止のため)、「棘針」(キョクシン)=「棘刺」(キョクシ)、「棘心」(キョクシン)、「棘薪」(キョクシン)、「棘人」(キョクジン)、「棘門」(キョクモン)、「槐門棘路」(カイモンキョクロ)。「鬣」(リョウ)は「たてがみ」と訓む。「鬣尾」(リョウビ)、「鬣鬣」(リョウリョウ)。「鬣」の音符は難しいですが、「臘」「蠟」「鑞」(いずれもロウ)、「」(リョウ、からすみ)とセットで覚えてください。

 ■「所在」は、どこにでも、いたるところ。

 ■「花時」は、桜の花が咲く頃。「桜鯛」というのはやはり、色もさることながら桜の季節が最も美味しいからですね。備中とあるように、瀬戸内海の物が有名のようです。

 ■「趁ふ」は「お・う」。はなれずぴたりと後からついていくこと。定時の船や車に乗り込むこと。つけこむ、すきに乗じるという意味もある。熟語は余り多くなく、「趁」は「チン」。「趁事」(チンジ)、「趁船」(チンセン)くらい。

 ■「燕上」(エンジョウ)は「宴上」と同義。酒宴の席上。「燕」には「くつろぎ落ち着いて酒食を楽しむ、また、そのこと。宴に当てた用法」がある。同系語に「讌」がありますね。「燕楽」(エンラク)、「燕居」(エンキョ)、「燕語」(エンゴ)、「燕娯」(エンゴ)、「燕飲」(エンイン)などもあります。

 ■「郷思」(キョウシ)は、望郷の念。

 ■「放かん」は「ひら・かん」と表外訓み。この意味では「百花斉放」(ヒャッカセイホウ)がある。

 ■「膾」は「なます」。音読みは「カイ」。「膾炙」(カイシャ)、「膾炙人口」(ジンコウにカイシャす)。この場合は、鯛のおさしみですね。旨そう。

 ■「斫る」は「き・る」。ただ、きるのではなく、斧や刀などを用いてきる。音読みは「シャク」で熟語は「斫断」(シャクダン)。基本ですね。

 ■「嚢」は「ノウ」。「ふくろ」とも訓みますが、ここでは、財布のこと。「嚢を傾ける」で金銭を支払うの意。それほど鯛の刺身は旨いが、お値段も張るということでしょうか。熟語には「囊括」(ノウカツ)、「囊筺」(ノウキョウ)、「囊沙之計」(ノウシャのケイ)、「囊中之錐」(ノウチュウのきり)、「探囊中物」(ノウチュウのものをさぐる)、「囊中無一物」(ノウチュウフムイツブツ=一文無し)。

 ■「九原」(キュウゲン)は、春秋戦国時代の晋の卿大夫(ケイタイフ)の墓地の名。現在の山西省新絳の北、三門峡の北100キロメートルの所にある。転じて、墓場、あるいは人が死後にいく地底の世界のこと。よみじ。「九原を起して」というの、「死者を蘇らせる」という意味の比喩的な表現です。

 「骨辺の肉」とは、鯛のアラのこと。ここが一番旨いんだと如亭は言います。周公謹とは、注釈に依れば、南宋末・元初の人。名は密、字は公謹、号は草窗など。詩・書・画を巧みにし、「浩然斎雅談」のほか、「斉東野語」「雲煙過眼録」などがあると言います。この周が「骨辺の肉、五更の睡り多からず」(その肉の旨さといったら、寝惚け眼も覚めちゃうくらいだ?=注・迂生の勝手訳です)と言い著しているのですが、それが鯛のことなのかどうかは、鬼籍に入っている彼には聞いて確かめようもないよ、乃公はそう思うけどね、と、ややおちゃらけているのです。

 いままさに季節は春爛漫、鯛の季節到来といったところでしょうか?食べたくなっちゃったなぁ。。。屹度、高いよなぁ。。。「囊を傾けて」も食べられないよなぁ。。。あ、そうだ、定額給付金が届いたら食べられるかなぁ?。。。

 本日は以上です。

 【今日の漢検1級配当漢字】

棘鬣、彙、尤、趁、斫、鱠、嗜、蜩、蛻、螗、羹、雕、鏤、悍、綢、稠、惆、鈔、秉、譚、槐、臘、蠟、鑞、鱲、讌、膾、斫、筺、絳、爛、屹
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char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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