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お茶のことを「滌煩」というのは韋応物が出典=漢詩学習

本日の「如亭山人遺藁巻二」からは「冢荷渓が香遠山房」を紹介いたします。

この冢荷渓という人は、大塚荷渓(1777~1844)のこと。冢(チョウ)は修姓(漢詩を詠む際のいわばペンネーム)。荷渓は号(よびな=これもペンネーム)。名は碧。字(あざな=ニックネーム、通称)は風暁。東海道藤枝宿(現在の静岡県藤枝市)の豪家。「奥州屋」と称して醸造業を営んだ。香遠山房は書斎の号。海内才子詩に詩五首を収める。


久しく聞く 詩客の山園を治するを
千頃の1)ヘキカ 小軒に当る
隣に僧の談ずる有りて竹院に過り
径に犬の護する無くて2)サイモンを掩ふ
中心の3)クミ 吟社に供し
外面の清香 別村に散ず
唱和 容す 吾が4)ジョウリを停むることを
朝々 爽気 5)ジンハンをア)



1)ヘキカ=碧荷。緑色のハスの葉。音として「ヘキカ」と聞いてこの漢字はなかなか浮かばないですね。その前に「千頃」(広々としたさま、一頃は百畝)とあり、ハスの葉が広々とした土地に植わっている様を言う。「荷渓」と掛けている。

2)サイモン=柴門。粗末な家の形容です。彩文や祭文でないのは分かるでしょう。この句は陶淵明の「桃花源記」の「阡陌交通、雞犬相聞」を踏まえた表現ですね。この前の第三句の「竹院」とは、竹の植えてある中庭。この句は、晩唐詩人、李渉の「題鶴林寺僧舎(登山)」の「終日昏昏酔夢間,忽聞春尽強登山。因過竹院逢僧話,又得浮生半日閑。」を踏まえています。お坊さんとちょっと雑談をしていたら、煩わしい一日の半分で気持ちが落ち着いてきましたよ。


3)クミ=苦味。意外な漢字で吃驚です。苦い味。その前に「中心」とありますから、蓮根です。蓮根が苦い味なのです。でも、外側のいい香り「清香」が漂い、隣り村にまで行き渡る。「吟社」というのは、詩社、つまりは詩の仲間。

4)ジョウリ=杖履。杖と履き物。つまりは旅支度。「ささ、一緒に詩でも吟じましょうよ」と如亭が滞在を勧められたのでしょう。

5)ジンハン=塵煩。これは稍難問。世俗的な煩悩。「塵」は浮かぶと思いますが、常用漢字である「煩」がなかなか浮かばない。中唐の韋応物の「喜園中茶生」に「潔性不可汚,為飲滌塵煩。此物信霊味,本自出山原。聊因理郡余,率爾植荒園。喜随眾草長,得与幽人言。」がある。

ア・滌ふ=あら・ふ。これは音読みに注意です。「テキ・デキ」(漢音)のほか、「ジョウ」(慣用読み)がある。「盪滌」(トウデキ=たっぷり水をかけてあらいすすぐ)、「滌漑」(テキガイ=あらいすすぐ)、「滌洗(滌濯)」(テキセン、テキタク=すすぎあらう)、「滌滌」(テキテキ=旱のために草木、川水がなくなり、洗い去ったようになること)、「滌盪(滌蕩)」(テキトウ=よごれを洗い去る、滅んでなくなる)、「滌煩」(テキハン=お茶の別名)、「滌瑕」(テキカ=きずや欠点をとり除く)。

お茶のことを「滌煩」という言い方は、先ほどの韋応物の七言律詩の第二句にある「為飲滌塵煩」が出典です。とすると、如亭も最後の句はお茶を寓意しているものとみられますね。

「あなたの書斎で朝を迎え、爽やかなお茶を啜れば、世の中の煩わしい瑣事がきれいさっぱりと洗い流されることでしょうね。」――。

李渉も韋応物も陶淵明の伝統を受け継ぐ“自然派詩人”。如亭は彼らの詩のエキスを採り入れることによって、いかにも「陶淵明的」な雰囲気を出そうと工夫しています。
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char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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