スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

柏木如亭のグルメ本「詩本草」を翫味しよう

 「菜根譚」はまだまだ心に染み入る文章が沢山ありますが、残りはご自身で気に入ったものを見つけられてはいかがでしょうか。ただ、単に読んで納得するだけではなく、自分の身に置き換えてみる。自分の経験や体験、周囲の出来事と照らし合わせるなどして、菜根譚の世界と己の世界を比べてみると、その味が一層咬み締めることができると思います。自分の感想などを認めてみるのも乙な味かと。。。。

 さて、再び柏木如亭に戻ります。今度は「訳注聯珠詩格」ではなく、彼自身がグルメ本として編纂した「詩本草」。漢詩人としての才も余すことなく発揮しています。しばらくは、この中から、文章や漢詩を翫わっていこうと思います。岩波文庫の「詩本草」(揖斐高 校注)をテキストに使わせていただきます。

 まずは、序文に当たる「引」から見ていきます。

 余が性、味を嗜むこと甚だし。而して詩を嗜むこと更に味を嗜むことより甚だし。少小にして厳慈に棄てられ、孑然一身、手に一能無く、惟だ口是れる。青年家を去り、詩を売りて四方に餬口し、数十年来憑りて死せず。止に憑りて死せざるのみに非ず、到る処、家居の致すべからざる味に飽くことを得たり。以謂へらく、是れも亦た一身の清福なりと。今且く紫雲山麓の一小地を卜す。香炉茶鼎、好友往来、唫談して老いを養ふ。但だ侯鯖厨においては猶ほ未だ心に忘るること能はず。偶数十事を省念して、録して数十段を得たり。客の戯れに余を以て詩中の時珍と為す者有り。輙ち酒を呼びてこれを落す。名づけて詩本草と曰ふ。

                  戊寅葭月、如亭山人識す。      堂桑瑞謹んで書す。


 ■「厳慈」(ゲンジ)は、「厳格な父親と慈悲深い母」。ここでは父と母を意味していますが、もちろん、一人で「厳」も「慈」も両方持っていることも可能ですな。この言葉は辞書に記載が見えない特殊なようですが、「ゲンジ」の同音異義語「言辞」「源氏」「現時」の一つに加えておきましょう。「ゲンジを併せ持つ先生」と書けるかどうかです。

 ■「棄てる」は「死去すること」。「棄養」(キヨウ)という言葉もあり、親が死ぬこと。漢字源の解説では、子が親に孝養を尽くせなくなることから。

 ■「孑然」は「ゲツゼン、ケツゼン」。たった一人残され、独りぼっちになること。「孑」は「ゲツ、ケツ」、「ひと・り」と訓む。「孑孑」(ケツケツ、ゲツゲツ、ぼうふら)、「孑遺」(ケツイ)、「孑身」(ケッシン)、「孑立」(ケツリツ)。「ぼうふら」は正確に書くと「孑孒」とやや難しい。

 ■「」は配当外。「むさぼる」と訓む。横からわりこんで食べ物や利益をむさぼる、いやしいさま、欲張りであるさま。音読みは「サン、ザン、ゼン」。「火」(サンカ=食への欲望)、「嗜」(サンシ=むさぼり好む)、「涎」(サンゼン=つまみ食いしたいと思う)、「吻」(サンプン=飢えて欲しがること)。

 ■「餬口」は「ココウ」。居候になること、食客になること。「餬」は「のり」とも訓む。「かゆ」「くちすぎ・する」とも訓む。「四方に餬口し」のフレーズは、春秋左氏伝「隠公11年」の「使餬其口於四方」から採っていると思われる。「餬口を凌ぐ」=「糊口を凌ぐ」、「餬口之計」(ココウのケイ)という成句もあるので要注意でしょう。

 ■「憑る」は「たよ・る」とここでは訓ませている。ほかには「よ・る」「たの・む」「つ・く」「かか・る」「かちわた・る」など訓読みもある。「かちわたる」は難しいが、「暴虎憑河」(ボウコヒョウガ)を想起すればイメージできそうだ。熟語では「憑依」(ヒョウイ)、「憑拠」(ヒョウキョ)、「憑肩」(ヒョウケン)、「憑険」(ヒョウケン)、「憑恃」(ヒョウジ)=「憑仗」(ヒョウジョウ)、「憑藉」(ヒョウシャ)、「憑弔」(ヒョウチョウ)、「憑付」(ヒョウフ)。「馮」が同義語で「馮夷」(ヒョウイ)、「馮河」(ヒョウガ)、「暴虎馮河」(ボウコヒョウガ)、「馮気」(ヒョウキ)、「馮虚」(ヒョウキョ)、「馮尸」(ヒョウシ)、「馮怒」(ヒョウド)、「馮馮」(ヒョウヒョウ)、「馮翊」(ヒョウヨク)、「馮翼」(ヒョウヨク)、「馮陵」「憑凌」(以上ヒョウリョウ)、「馮異」(フウイ)、「馮異大樹」(フウイタイジュ)。

 ■「家居の致すべからざる味」とは、「我家でじっとしていては到底きわめることのできない食べ物」という意味。

 ■「以謂」は「おもえらく」。思うことには、考えてみると。「以為」とも書く。漢文訓読語法の基本ですね。

 ■「清福」(セイフク)は、清閑の幸福。「清~」の熟語で1級配当絡みを見ると、「清婉」(セイエン)、「清暉」(セイキ)、「清灑」(セイシャ)、「清脩」(セイシュウ)、「清晨」(セイシン)、「清澹」(セイタン)、「清眸」(セイボウ)、「清游」(セイユウ)、「清冽」(セイレツ)などがあります。それほど難しいのはないので覚えましょう。

 ■「卜す」は「ぼく・す」。居を構えること。地相の好悪をうらなって住む所を定めることから。「卜」は準1級配当で「うらない」「うらな・う」とも訓む。「亀卜」(キボク)、「筮卜」(ゼイボク)、「卜筮」(ボクゼイ)、「卜宅」(ボクタク)、「卜築」(ボクチク)。

 ■「香炉茶鼎」は「コウロサテイ」。香を焚く炉と茶を煮る鼎(かなえ)。風流閑雅の生活をいう。

 ■「唫談」は「ギンダン」。詩を吟じ歓談する。「唫」は配当外で「つぐ・む」とも訓む。「吟」と同義で「口を噤んで歌の節だけを口ずさむ」。

 ■「侯鯖」は「コウセイ」。「五侯鯖」(ゴコウセイ)の略。寄せ鍋のこと。聞いたことない言葉ですね。この場合の「鯖」は、魚の鯖ではなく、魚と肉とを混ぜて煮たもの。漢字源にも「魚、あるいは鳥獣の肉をまぜて、煮た料理」。中国の「西京雑記」によると、「漢の婁護(ロウゴ)が五人の諸侯から賜った種々の肉を混ぜて煮たことから、珍味を意味する」とある。面白い言葉ですね。成帝(前漢十二代)の母方の王氏が全盛のころのお話。五人兄弟の王氏は同じ日に揃って諸侯となっていたことから五侯と称され、彼らは「鯖」の珍奇さを競い、婁護をもてなした。

 ちなみに、所謂、「五侯」と言えば、「公・侯・伯・子・男」の五等の爵位を受けた諸侯のことですね。

 ■「厨」は「シュンチュウ」。公(シュンコウ)に封ぜられた唐の韋陟(イチョク)が奢侈を好み、厨中の飲食が善美を尽くしたものであったことから、盛宴(御馳走の多い、立派な宴)を意味する。これは「世説新語補」に見える典故です。

 ■「時珍」(ジチン)は、中国明代の李時珍。本草学の代表的書物で日本にも大きな影響を与えた「本草綱目」(ホンゾウコウモク)の著者。

 ■「戊寅葭月」(ボインカゲツ)は、文政元年(1818年)11月。「葭」は「あし」。「葭月」は「霜月、十一月の異称」。

 最後の件に、あちこちを逍遙した際、珍味・嘉肴を味わったが、その味が忘れられずに数十段として書き残した。私のことを明の時珍と言う人がいて、「詩本草」と名づけて上梓しようというのです。まさにグルメ本ですね。各地の美味しいものを食べ尽くします。お楽しみに。。。
 本日は以上です。

 【今日の漢検1級配当漢字】

嗜、孑、餬、憑、輙、葭、孒、涎、吻、恃、藉、馮、尸、翊、婉、暉、灑、脩、晨、澹、眸、游、冽、筮、韋陟、奢侈、葭、逍
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

profile

char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

calendar
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
recent entry
recent comment
category
monthly archive
search form
RSS links
links
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。