スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

夢の中の「ムリ」、お昼ごはんを支度する「ゴスイ」=漢詩学習

本日は柏木如亭の「吉備雑題」(七言絶句十四首)の後半、八首から十四首です。


○8○

北窓肯へて1)サリョウを送らず
坐して朝陽より夕陽に到る
2)カイカクの山霊 客の困ずるを憐れみて
急に3)ヘンウを将つて4)コンコウをア)


1)「サリョウ」=些涼。難問です。わずかながらの涼しさ。特別な熟語というよりも、「些かも涼を送らず」と訓読した方がいいかもしれません。

2)「カイカク」=乖覚。これも難問。物分かりがよいこと、悟りが早いこと。「カイカク」といえば「牽攣乖隔」の「乖隔」ですよね、普通。この言葉は辞書にも掲載がない。かなり特殊な語彙のようです。「乖」は「そむ・く」という意味。今ひとつピンときませんね。

3)「ヘンウ」=片雨。さっと局所的に降って通り過ぎる雨。通り雨ですが、今ならさしずめ「ゲリラ豪雨」でしょうか。

4)「コンコウ」=昏黄。夕暮れ時の薄黄色の光を表す。これは平易ですが、「黄昏」の方が普通ですかね。たそがれ。

ア)「斂む」=おさ・む。自動詞用法ですね。一か所に集まること、発散せずに引き締まること。音読みは「レン」。この漢字はなかなか覚えるのは手強いが、「斂衽」「斂手」「斂迹」「斂葬」「斂足」「斂眉」「斂殯」「斂容」など重要語がたくさんあります。「おさめる」「ひきしめる」などの訓読みも重要。

○9○

満身の月影 遠く詩を尋ぬ
5)ソウシキの山は我と期するが如し
6)フウロ 夜涼しくして吟じ尽さず
登登来り謁す 土神のイ)


5)「ソウシキ」=葬式、総指揮ではない。正解は相識。知り合い。知人。このばあいの「相識の山」というのは、日頃から見慣れた山のこと。「期する」は約束すること、つまり、約束したかのように月の明かりに照らされてはっきり山が見えるということ。

6)「フウロ」=風露。風が吹き、露が下りていること。冷たい空気を表す。

イ)「祠」=ほこら。音読みは「シ」。「土神の祠」というのは、土地の神を祭る社、産土(うぶすな)の祠。

「登登」(トウトウ)は、どんどんと登ってゆくさま。

○10○

7)ムリ何の時か已に秋に入る
膚に8)ゾクして方に覚む 五更の頭
初めて知る 昨夜炎蒸甚だしく
9)イッシを着けず眠りて楼に在りしを


7)「ムリ」=無理ではない。正解は夢裏(夢裡)。井上陽水の名曲、「夢の中へ」は「夢裡へ」。「夢~」の熟語では、「夢寐」(ムビ)=夢を見ている間、「夢厭・夢魘」(ムエン)=夢にうなされる、「夢境」=夢幻の世界、「夢魂」=夢の中で思いつめた心(既出)、「夢兆」=夢のお告げ、「夢卜」=ゆめうら。

8)「ゾク」=粟。あわだつこと。寒さや恐怖から肌にアワのような粒が生じる。「粟膚」という熟語で覚えたほうがいいかも。鳥肌のこと。

9)「イッシ」=一糸。一本の糸、転じて、ごくわずかなもののたとえ。同音異義語が結構あります。染めるのは「一指」、報いるのは「一矢」、長恨歌の楊貴妃は「梨花一枝春帯雨」、誰でも公平に見るのは「一視同仁」、生きるか死ぬかは「一死一生」、自分の子だけに伝えるのは「一子相伝」、貧乏なさまは「一紙半銭」。

○11○

客窓の飛雨 糸を成さず
香椀 煙は銷ゆ ウ)れんと欲する時
一片の秋心 吟じて未だ了らず
エ)儘教す オ)嬾婢の10)ゴスイの遅きを


10)「ゴスイ」=午睡ではないことに注意しましょう。正解は午炊。意外に難問か。午餐、午食(ゴシ)、午飯、午饌、午餉などともいう。

ウ)「霽れん」=は・れん。横山大観の水墨画の名作に「雨霽る」というのがある。島根県安来市の足立美術館に収蔵されています。音読みは「セイ」。「光風霽月」は基本です。

エ)「儘教す」=まか・す。これは漢文訓読用法の一つ。「ジンキョウ」と読んでもいい。「ままよ、さもあらばあれ」などとも訓んでもいい。「~するのにまかせておく」の意、転じて、「どんな~でも」という意。

オ)「嬾婢」=ランピ。怠け者のはしため。「懶婢」でもいいでしょうが「女」偏で統一しているのが妙味でしょう。しかし、面白い言葉ですが、一般的な用法ではない。「嬾~」と「~」に好きな言葉を入れれば“応用”がきくと思います。「嬾婦」「嬾女」「嬾嫁」「嬾娘」。。。。

「客窓」は、旅先の宿りの窓。

「香椀」というのは、お香を焚くお椀形の器。

○12○

限り無き客情 今 昨に異なる
11)ヒシュウの心事久しく相忘る
方に知る 漸く老いて身は石の如く
他郷と故郷とを辦ぜざるを


11)「ヒシュウ」=悲秋。秋の気配を感じて物悲しい気持ちになること、また、見るもの、触れるものすべて物悲しく感じる秋の季節。杜甫の重陽の節句を詠じた「登高」に「万里悲秋常作客」とある。陸游もずばり「悲秋」という詩を詠んでいる。如亭はこれらを踏まえているようです。

○13○

曾て戸を出でず 秋の過ぐるに任す
暖を逐ひて 12)ボウエン 睡魔を引く
応に是れ隣村に菊を看に去くなるべし
門前漸く聴く 屐声の多きを


12)「ボウエン」=茅簷。謗怨、防炎、望遠ではない。かやぶきの軒、また、その家。貧しい家のつくりの象徴です。茅軒ともいう。陶淵明の「飲酒・其九」に「繿縷茅簷下、未足為高栖」とある。

「睡魔」は、人を眠りに引き込む魔力、強烈な眠気。陸游の「幽居」に「衰極睡魔殊有力」とある。

「屐声」(ゲキセイ)は、下駄の足音。

○14○

13)リョクイコウジョウ 記して心に在り
14)ショウコウ 夢の如く去りて尋ね難し
満村の黄葉 門を関して臥す
又た是れ一年 秋已に深し


13)「リョクイコウジョウ」=緑意紅情。四字熟語辞典には掲載ないですが、艶麗な春景色を形容する言葉です。北宋の文同(1018-1079、文人画家で蘇軾といとこの間柄)の「約春」に「紅情緑意知多少」があるのを踏まえる。

14)「ショウコウ」=韶光。韶華、韶気、韶景ともいう。妝匣(粧匣)、庠校、昇汞、梢公、浹洽、猩紅、瘴江、笙簧、焼香、小康などを蹴散らして一発で浮かべてくださいね。春の日差しを表しています。「韶」は「うつくしい、音や色がほがらかで明るい、優美であるさま」。少し見慣れない漢字ですが漢検1級配当に位置付けられている。熟語では「韶音」「韶武」「韶舞」「韶麗」などがある。伝説上の古代の聖王、帝舜がつくったとされる音楽という意味もあり。論語・八佾篇に「子謂韶、尽美矣、又尽善也」とある。また、「韶華」には青春時代という意味もある。「関す」は「とざ・す」。“関所”のイメージで覚えよう。陶淵明の「帰去来兮辞」にも「門雖設而常関」(門は設くと雖も常に関せり)とあります。
最後に一句。

いつまでも在るとな思ひそ「韶華」の日々
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

profile

char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

calendar
06 | 2017/07 | 08
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
recent entry
recent comment
category
monthly archive
search form
RSS links
links
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。