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ホウハン?で「黒甜」枕上に昼寝する如亭=漢詩学習

本日は「吉備雑題」(七言絶句十四首)。「雑題」というのは、偶興により様々なテーマで詠んだ詩のことです。本日は一首から七首までの前半。聊か長いですが内容盛りだくさんですので、懲りずにめげずに脱落せずに根気よくお付き合いください。

○1○

1)ホウソウ萋萋として年又加ふ
2)ユウソウ更に遠く天涯に在り
人に逢ひて只だ説く 3)キイ無しと
一夢仍ほ能く暫く家に到る


1)「ホウソウ」=芳草。よい香りのする草花。多くは「蘭」。「芳卉」ともいう。「楚辞・招隠士」に「王孫遊兮不帰、春草生兮萋萋」とあり、これを踏まえ「不帰」の意を寓意しています。「萋萋」(セイセイ)は草木の茂るさま、配当外の漢字です。それでは故事成語問題。「茂林の下ホウソウ無し」(「塩鉄論」軽重)は?引っ掛けですよ、正解は「豊草」。こちらは生い茂った草のことです。

2)「ユウソウ」=遊踪。すこし難しい。出遊漂泊の足跡。「踪」は「あしあと」。流浪先のあちこちに残した“浮き名”を指すのでしょう。

3)「キイ」=紀伊?卉衣?嬉怡?詭異?餽遺?奇異?…難問ですね。正解は帰意。先ほどの「楚辞」の典故を踏まえた言葉でしょう。帰郷の意思。

○2○

来りて時新をア)ふも亦た4)イッキ
春を賞する宴上 5)キョウシを減ず
初めて肥ゆる6)キョクリョウ 紅錦の如し
正に是れ桜花の放たんと欲する時


4)「イッキ」=一騎?一饋?一気?一揆?一簣?溢喜?…以外に出ない。正解は一奇。珍しい試み。

5)「キョウシ」=これも浮かばない。郷思。望郷の念のことで、先ほどの「帰意」と同義ですね。篋笥や僵尸や嬌姿などではない。

6)「キョクリョウ」=棘鬣。棘鬣魚は鯛の異称。以前詩本草で取り上げたことがありますのでご参照ください(2009年4月19日付記事)。とげのようなたてがみ…桜の咲く季節、瀬戸内の物が最高に美味いので、「桜鯛」とも言います。

ア)「趁ふ」=お・ふ。追う。「時新」は時節の旬の食べ物。

○3○

錦様の佳魚 イ)に斫るに堪へたり
妨げず 一見 7)ノウを把りて傾くるを
湯と為し来り喫す骨辺の肉

8)ユウミは五更に睡るよりも多し

7)「ノウ」=この後に「傾くる」とある。「ノウを傾ける」がいわば成句で、お金を叩くという意味。正解は「嚢」。財布のことです。

8)「ユウミ」=幽味。何とも言えない奥深い味。「幽~」という熟語で目を引くのは、「幽篁」(ユウコウ)=奥深く茂った竹藪、「幽愁」=心の奥にある深い悩み・悲しみ、「幽隠」=俗世間を離れて静かに暮らしている人、「幽眇」=奥深く、微妙な様子、「幽馥」(ユウフク)=奥ゆかしい香り、「幽芳」=目立たないところに咲いた花、「幽碧」=「幽翠」=奥深く透き通るような草木の緑。

イ)「膾」=なます。ここは鯛のお刺身のこと。ぞの前の「錦様」は鯛を指す。

「湯」は、スープ。鯛の潮汁を指す。「骨辺の肉」は、骨の周りについている肉。美味いんだな茲が…。「五更」は夜明け前の午前四時ごろの時間帯をいう。つまり、鯛の骨にまつわる肉は量は少ないけれど味は最高だということなんですね。

○4○

一千餘里 行何ぞ憚らん
到る処の園池 好花有り
9)リョキョウ 相逢ひて君問ふことを休めよ
客居久しきに慣れて家よりも熟せり


9)「リョキョウ」=見慣れない「音」ですね。正解は旅況。旅の様子。これはあまり一般的な言葉ではないでしょうね。辞書にも掲載がありません。

○5○

静かに10)ユウヨウを養ひて廬を出でず
11)コクテン枕上 人と疎なり
但だ12)シャコの松声を虧き得て
13)ムコンを呼び醒まして時に書を読ましむ


10)「ユウヨウ」=これは超難問。悠揚、有用くらいしか浮かばないですよね。だら~っとなまけてものぐさな様をいう言葉なのですが、正解は幽慵。これも辞書にはない。「慵」はこれまでも頻出。「ものう・い」。

11)「コクテン」=黒甜。昼寝をすること、うたた寝。しかし、これは難問でしょう。解説にある典拠としては、「西清詩話云、南人以飲酒為軟飽、北人以昼寝為黒甜」(詩人玉屑<シジンギョクセツ>=中国・南宋末の魏慶之<ギケイシ>が編纂した詩学書。全21巻)とだけあるのですが今ひとつよくわかりません。ネット検索しますと、蘇軾だとか陸游だとかが詩で詠じているらしいのですがよくわかりません。ただ、漢字源には載っている言葉であり、出典が「枕黒甜余」(蘇軾・発広州)とありました。

12)「シャコ」=這箇(這個もOK)。この。熟字訓の蝦蛄や鷓鴣ではない。

13)「ムコン」=夢魂。無根ではない。夢の中の魂。まんまです。

○6○

枵腹愁ひ無く客もウ)ぞ妨げん
酔餘の14)ホウハン即ち吾が郷
エ)煙蓑雨笠 農家様
亦た村南に去きて15)オウを挿むを看る


14)「ホウハン」=飽飯。お腹いっぱいに食べること。意外に難問か。第一句にある「枵腹」(キョウフク)は、空腹のこと、あるいは空疎無学の人を譬えた言葉。「枵」は配当外で「おなかがすくこと、へること」。これに対抗した言葉ですね。「睡餘」(スイヨ)は、睡眠をたっぷりとったという意味。

15)「オウ」=秧。ここは「挿秧」(ソウオウ、オウをさしはさむ)と成句で理解しましょう。田植えのことです。「秧」は「なえ」とも訓む。他の熟語では「秧稲」(オウトウ=稲の苗を田んぼに植えること)、「秧田」(オウデン=苗代)、「秧鶏」(オウケイ、くいな=水鳥の一種)、「秧歌」(オウカ=中国農村の田植え唄、いまは所謂フォークダンスソングに)

ウ)「那ぞ」=なん・ぞ。反語の副詞。本番でも出そう。

エ)「煙蓑雨笠」=エンサウリュウ。「煙雨」(けむったようにかすんで降る雨)の中でつける蓑と笠。単独で「蓑笠」なら読めるのに、こうした“応用形”になったら読めなくなるということがないようにしましょう。陸游の「渓上小雨」に「収得煙蓑雨笠身」がある。ここを意識か。

○7○

睡らず 坐して16)ブンシをして飽かしむ
孤燈オ)り尽して17)テイアに到る
也た知る 今夜も応にカ)り難かるべきを
借り得たり唐詩の数十家


16)「ブンシ」=蚊子。蚊のこと。「蚊子をして飽かしむ」というのは、蚊が刺してお腹いっぱいになるまで血を吸うままにさせておくということ。

17)「テイア」=啼鴉。啼くカラス。つまり夜明けの風景です。

オ)「剔り」=けず・り(えぐ・りもOKか)。ここでは燈心を切って、ろうそくの炎を掻き立てて明るくすること。音読みは「テキ」。四字熟語に「爬羅剔抉」。

カ)「度り」=わた・り。時間を過ごすという意。表外訓みに注意しましょう。

「唐詩の数十家」は、唐の詩人数十人の作品を収める詩集。如亭は一晩中、蚊に刺されながらも読み耽っていたのでしょう。

後半の七首は次回に続きます。お楽しみに。
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char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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