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お帰り如亭山人!おっ、いきなり「雪泥鴻爪」ですか…=漢詩学習

久しぶりに柏木如亭(1763~1819)の登場です。一休宗純ほど露骨ではありませんが、彼もまた男女の恋愛風景を漢詩という一見儼しい「フィールド」で描写した詩人です。彼の代表的な艶詩である「吉原詞」(「詩本草」=岩波文庫=に収録)の賞翫は、弊blogでもロングラン連載(2009年4月30日~5月5日)で行いました。遊郭の街・吉原に入り浸った自身の“遊蕩体験”を、時には客として、時には遊女の立場から詠じたものでした。

「如亭山人遺藁」が収録されている「新日本古典文学大系64」(岩波書店刊行)を古書肆で入手いたしました。グルメ本でもある「詩本草」にも採録されていた美食の漢詩も入っており、改めて思ったのですが、やはり、彼の詩はなかなかにバラエティに富んでいて、味わい深い。何よりも「語彙」が圧倒的に豊富です。以前も直感したのですが、「如亭の詩は漢字学習に向いている」。弊blogの詩本草シリーズの最終回「さようなら、ザ・ダンディー山人」(2009年5月17日)の最後のくだりに、「なかなか彼の詩は簡単にはアクセスができないのが残念ですが、いつの日かじっくりと彼の詩を翫わう機会も訪れることを期待して筆を擱きます」としたためてありました。

どうやら、その「機会」が訪れたようです。

如亭の詳細は以前の連載(2009年4月18日~5月17日)をご参照ください。

「如亭山人遺藁」は、「序」「巻一~巻三」「跋」から成ります。

「巻一」の劈頭は「駿州道中、松魚を食ふ」。「詩本草」にも採録されていました。(如亭は読み下し文だけでいいでしょ?だめ?如亭の詩は数をこなしたいので…詳しい解釈も省きます)

東海の旧トウフウ 緑を吹き
店に上がる時新 赤玉を斫る
正に是れ江都清和の天
此の時口所欲を遂ぐ
去年四月北方に在り
越海到る処嘗むべからず
今日駿州一たび咀嚼す
大いに勝れり 夜夢カキョウに向ふに


「トウフウ」は、何かの「風」であることは自明でしょう。「東風」「唐風」ではない。稍難しいか。「蕩風」が正解。心をそわそわとさせる風です。「蕩舟」(トウシュウ)は「ゆらゆらゆれる舟」。「蕩心」(トウシン)は「酒色にふけるこころ」。

「赤玉」というのは、松魚の身のあかあかとしたさまを譬えた言葉。「斫る」は「き・る」。

「江都」(コウト)は「江戸」。「清和」は陰暦四月一日、また、四月のこと。

」(ザン、サン、配当外)は、がつがつ食うこと、欲張りなさま。

「カキョウ」は浮かびますか?「花筐」「華僑」「佳境」ではありません。正解は「家郷」。ふるさと、故郷のこと。「家山」(カザン)、「家国」(カコク)ともいいます。

春爛漫。初鰹を美味そうに頬張る如亭の姿が髣髴とします。でも、去年の今頃は越後に遊んでいたため、夢にまで見た堅魚の姿でした。

続いて「桑苾堂に似す」。

雪寒を衝破して故園を離る
自ら慙づ 到る処姓名の存するを
天涯定まらず 飛鴻の影
泥辺に向いてソウコンを認むることを休めよ


「桑苾堂」は、桑原苾堂(1784~1837)。東海道島田宿(いまの静岡県三島市)の豪家。桑は修姓、苾堂は号。名は瑞、字は公圭、通称を伊右衛門・古作。居を鉄蕉書院といい、詩・書を能くし、東海道を往来する文人と広く交わった。如亭の編集した海内才子詩(文政三年刊)に詩八首を収める。

「似す」は「しめ・す」と訓んで、「贈る、与える」という意。

「衝破」(ショウハ)は「突破する」。

「天涯」は天のはて、極めて辺鄙なところ。

「飛鴻」(ヒコウ)は、大空を飛ぶ鴻雁。

「ソウコン」は浮かびますか?何かの「痕」(あと)なんですが、「創痕」「瘡痕」ではない。正解は「爪痕」。雪の上に鴻が爪のあとを残すことを「雪泥鴻爪」(セツデイコウソウ)といいます。人の行迹の儚いことを意味します。これは蘇東坡の「和子由池懐旧」(子由の「池懐旧」に和す)に由来しており、如亭の詩も明らかにこれを踏まえています。せっかくですから、蘇東坡の詩も掲げておきます。岩波文庫「蘇東坡詩選」から。

人生到る処知んぬ何にか似たる
応に似たるべし飛鴻の雪泥を踏むに
泥上に偶然指爪を留むるも
鴻飛んで那ぞ復た東西を計らん
老僧は已に死して新塔と成り
懐壁は旧題を見るに由無し
往日のキクたるを還お記するや否や
路は長く人は困じてケンロは嘶きしを


子由というのは蘇東坡(蘇軾)の弟、蘇轍のこと。

「キク」は「愧懼」「規矩」ではない。正解は「崎嶇」。山道がけわしくて歩きづらいさま。

「ケンロ」は前に「困じて」、後ろに「嘶き」(いななき)とあるから、疲れ果てて足が進まないロバのことで、正解は「蹇驢」。浮かびますか?稍難問でしょうか?

前半のくだりが「雪泥鴻爪」。人生のさすらい。それは舞い降りた雁が雪融の泥をひょいと踏むようなもの。泥の上にはたまさかつめのあとを残すものの、飛び去った張本人の行方はもう分かりはしないし、自分が残したあとのことなどかまってもいない。。。

如亭に戻りますが、あちこちを遍歴する己の何ともはかない人生を振り返っているのです。彼にとっての「故園」とは一体何処なのでしょうか?あちこちに“浮き名”だけが残っている。そんな人生はもうたくさんだ。。。でもやめらんねぇ~、というのが本音でしょうかね。如亭山人。

本日は復帰初戦ということでこの辺で。。。。やっぱ如亭はいいわ。
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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