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「繡簾銀簟」と「大巧若拙」=「碧眼録」で四字熟語・最終回

 本日は略一か月の長きにわたって続けてきました「碧巌録」の最終回ということにいたします。11世紀前半の中国・北宋時代の禅僧、雪竇重顕(せっちょうじゅうけん)が厳選した古人の言行からの「百則」に、韻文の賛辞である「頌」を添えて禅の教科書となったものに、11世紀後半、さらに圜悟克勤(えんごかくごん)と弟子らが「垂示」「著語」「評唱」を加えたもの。難解窮まりないものでした。とても迂生では太刀打ちできない。

そこで、四字熟語を切り口にアプローチを試みました。その一端には触れることだけはできたと思います。漢検四字熟語辞典に載っているもの、そうでないもの、四字熟語にとどまらず故事成語、諺、言い伝えも数多くありました。意味はいいんです。そうした禅問答の雰囲気にいささかでも浸れただけで成果はあったと思います。四字熟語の奥深さも味わえたと思います。さまざまな古人の糟魄を味わう上で、四字熟語は効果的と言っていいでしょう。

 みなさんもお好きな作品を、四字熟語を通じて味わってみるという試みをされてはいかがですか?

 最後も気を抜かずにフィニッシュいたしましょう。本日は「繡簾銀簟」(シュウレンギンテン)と「大巧若拙」(タイコウジャクセツ)。


 まず、「第一〇〇則 巴陵の吹毛剣」の「本則」に対する「評唱」に次の一節があります。

 …佩びて龍宮に入りて歩むこと遅遅たり、繡簾銀簟何ぞ参差たる。即ち知らず、驪龍珠を失うを知るや知らずや…

 「佩びる」(お・びる)は「珠や刀を腰につける」。「は・く」ともいう。音読みは「ハイ」。「佩刀」「佩玉」「佩韋」(ハイイ)「佩環」「佩弦」(ハイゲン)「佩綬」(ハイジュ)「佩剣」「佩犢」(ハイトク=武事をやめて農業に従事すること、「犢」は「仔牛」)「佩服」(ハイフク=銘記、感謝)「佩韋佩弦」(ハイイハイゲン)「感佩」。

 「繡簾銀簟」は「刺繍で飾られたすだれと銀の敷物がきらびやかに並び連なるさま」。豪華絢爛の形容です。「繡」は「ぬいとり」、「簾」は「すだれ」、「簟」は「たかむしろ」。

 「驪龍珠を失う」は「驪龍玩珠」(リリョウガンシュ)で既出。


 続いて、「頌」の冒頭に次の件が見えます。

 【頌】 不平(いざこざ)を平(しず)めんと要(ほっ)して、〔細かきこと蚍蜉(あり)の若し。大丈夫の漢須是(すべか)らく恁麼(さよう)なるべし。〕大巧は拙なるが若し。〔声色(しょうしき)を動ぜず。身を蔵して影を露す。〕… 


 「蚍蜉」(ヒフとも読む)は「大蟻。微細なところまで食い込む鋭利なものの喩え」。「蚍」の一字で「おおあり」。身の程知らずに譬えることもある。「蚍蜉大樹を撼がす」(ヒフタイジュをうごかす)は「見識の狭い者が、身の程を知らずに、優れている人をみだらに批評する愚挙を戒める言葉」。

 「大巧若拙」(タイコウジャクセツ)は有名な「老子」に出てくる成句で「非常にすぐれた上手なものは、かえって、下手糞のようにみえるもの」。漢検四字熟語辞典によると、「このうえもなく巧みなものは一見稚拙に見える。本当に技量のあるものはかえって不器用に見える」。類義語に「大智不智」(ダイチフチ)、「大成若欠」(タイセイジャクケツ)、「大弁若訥」(タイベンジャクトツ)。いずれも「老子・四五章」に見えます。至芸は素人目には下手に見えるのです。含蓄のある深い言葉です。戒めとして肝に銘じましょう。

 最後のmixi日記転載四字熟語は次の通りです。

■「田園将蕪」(デンエンショウブ)


 田畑を耕す働き手がいないために、雑草が生い茂って田畑が荒れ果てていること。陶淵明の「帰去来辞」の「第一段」で「帰りなんいざ、田園将に蕪れなんとす 胡ぞ帰らざる」が見えます。「将蕪」は「勝負」「菖蒲」「踵武」「尚武」「韶舞」「韶武」「招撫」でないことに注意しましょう。「将(まさ)に蕪れなん」でございます。「荒蕪」(コウブ)、「蕪蔓」(ブマン)、「蕪昧」(ブマイ)、「蕪径」(ブケイ)、「蕪荒」(ブコウ)、「蕪雑」(ブザツ)、「蕪辞」(ブジ)、「蕪言」(ブゲン)、「蕪浅」(ブセン)、「蕪没」(ブボツ)、「蕪穢」(ブワイ)なども押さえておきましょう。

■「桃弧棘矢」(トウコキョクシ)


 災いを取り除くこと。「桃弧」は桃の木で作った弓、「棘矢」はいばらの木で作った弓。いずれも魔除け。出典は「春秋左氏伝・昭公四年」の「黒牡秬黍、以享司寒、其出之也、桃弧棘矢、以除其災、其出入」から。悪魔降伏の祈祷です。


■「騰蛟起鳳」(トウコウキホウ)


 才能が特別すぐれていること。「騰蛟」は天に躍りあがる蛟竜。「起鳳」は飛び立つ鳳凰。出典は王勃の「滕王閣序」の「騰蛟起鳳、孟学士之詞宗、紫電青霜、王将軍之武庫」から。「蛟」(みずち)も「鳳」(おおとり)も瑞祥の象徴。大きなうねりを感じさせるダイナミックな成句です。


■「道揆法守」(ドウキホウシュ)


 道理をもって物事をはかり定め、法度をみずから守ること。「揆」ははかる意。出典である「孟子・離婁・上」によると、「上に道もて揆ることなく、下に法もて守ることなく、朝(上の人)は道を信ぜず、工(下の人)は度(法度)を信ぜず、君子は義を犯し、小人は刑を犯して、国の存する所(あ)る者は幸なり」とある。上、人君は道理をもって判断することなく、下、家臣は法度をもって身を守ることなく、朝廷の役人は道義を信用しない。民間の工人(しょくにん)は法度を信用しない。上位にある君子は正義に叛き、位についていない庶民は刑罰を犯すようになり、それでもなお国家が滅亡せずにすむとすれば、それこそ全くの僥倖と言わねばならない(そんな都合の良いわけはないであろう)。つまり、「道揆」は上位者(上、朝、君子)に対して、「法守」は下位者(下、工、小人)に対してそれぞれ守られていないから守り通せと言った言葉なのです。「一揆」(イッキ)、「百揆」(ヒャッキ)、「揆度」(キタク)、「揆測」(キソク)などは案外盲点です、覚えましょう。コンパスを回して一回転させるようにはかるイメージで。。。


■「天覆地載」(テンプウチサイ)


 天地のように広くおおらかな心や仁徳のこと。天は上にあって万物を覆い、地は下にあって万物を載せるということから。出典は「中庸・三一章」(岩波文庫では17章)の「上は天時に律(のっと)り、下は水土に襲(よ)る。譬えば天地の持載せざることなく、覆(ふうとう)せざることなきが如し」から。上は天の季節のめぐりにのっとり、下は地上の山川風土のあり方に従われた。たとえば、大地がすべてのものもを載せ支え、天がすべてのものを覆いつくしているようなものだ。仲尼(孔子)の徳を称した言葉です。

 「覆」は、「翼覆嫗煦」(ヨクフウク)と同様に、「フク」でなく、この場合は「フウ(プウ)」と読むことに注意。「おおう」という意味の場合は「フウ、フ」(伏)。「覆蓋」(フウガイ)、「覆載」(フウサイ)、「覆蔽」(フウヘイ)、「覆路」(フウロ)、「覆盆子」(フウボンシ、いちご)、「覆育」(フイク、フウイク)。「くつがえす、くつがえる」の場合はもちろん「フク」。「覆車の戒め」が有名。


■「天保九如」(テンポウキュウジョ)


 人の長寿を祈る語。「天保」は詩経の小雅の篇名。この詩は、天子の長寿と幸せを祈るもので、詩中の句の中に「如」の字が九個(山・丘・岡・陸・川・三日月・太陽・南山・松柏の如く))あることからいう。「千秋万歳」(センシュウバンザイ)、「南山之寿」(ナンザンノジュ)が類義語。「キュウジョ」が「翕如」「救助」でないことに注意か。


■「道之以徳」(ドウシイトク)


 国民を指導するには道徳教育が重要であること。出典は「論語・為政」で「これを道びくに政を以てし、これを斉うるに刑を以てすれば、民免れて恥ずること無し。これを道びくに徳を以てし、これを斉うるに礼を以てすれば、恥ありて且つ格(ただ)し」。人民を小手先の政治で導き、刑罰で統制していくなら、人民は法網をすり抜けても恥と思わない。しかし、道徳で導き、礼(規範)で統制していくなら、道義的な羞恥心を持ってそのうえに正しいものとなるのだ。「道徳」の典拠となったくだりです。四字熟語学習の掉尾を飾るのは「道徳」ということにしましょう。擱筆。獲麟。。。除夜の鐘前に終わることができました。(mixi日記では2008年12月31日に書きました)
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「!」の多さにやる気が見えますよ~

季節は一気に秋。いい季節になりました。勉強も捗るでしょう。おっと、ラブ・アフェアーもね☆☆
漢検1級合格と恋愛成就を一箭双雕したいものですな。

> 今日は私の一番好きな「大巧若拙」、「大智不智」!が出ましたね!だからやる気でましたよー!!

ほぉ~「大巧若拙」が座右の銘ですか。渋いですね。

> 私は普段、口元がなんとなく締りがないので…

どんな口元?お口や脣そのものではなくて、いらんことばかりついつい口にしてしまうということでしょうか。舌禍にはお気をつけてください。

> きっと私は「大巧若拙」のお手本みたいな子なんだと思います!思いたい!(笑)

迂生もそう思いたいですが、「大巧若拙」は自分でアピールしすぎてはだめですよ~。って、アピールすることそのものが「大巧若拙」かもね。。。

> いまだに、「ニンマ」「シェンマ」と読んでしまいます。少し前に二年くらい中国語を履修していました。懐かしいです。

そうですか。中国語を。これは強みですね。恁麼、什麼があっさり読めるとは素晴しい。有望!

> 師匠は中国語のテキストも普通に読めそうですね。

それはないです。無理無理。興味は「むんむん」ありますが、せいぜい漢字を齧るのが関の山です。でも、いつかは中国語を勉強して中国に行ってみたいとは思いますね。迂生にとっては憧れの地ですよ。陶淵明先生ゆかりの勝迹を辿ってみたいです。

漢詩学習が始まりました。肩肘張らずにやるつもりです。漢検1級合格に向けての一助になればうれしいですが、そんなに意識もしないので、疲れた時の清涼剤としてご活用くだされば。。。

師匠から一言。。。「たまご」や、老子の言葉に『躁勝てば寒、静勝てば熱。清静なれば、天下の正と為る』というのがあるぞ。慌てず騒がず己の欲する道をきわめるのだ。焦っても騒いでも何にもならん。かといって無為ではない。内なる熱き思いは秘めて静かに一歩一歩、毎日毎日前にだけは進もうぞ。振り返るのは最後でいい。

おつかれさまです☆

こんにちは。師匠。ちょっとまたやる気がでてきました!

今日は私の一番好きな「大巧若拙」、「大智不智」!が出ましたね!だからやる気でましたよー!!

私は普段、口元がなんとなく締りがないのでお友達から「たまごちゃんはばかなのでは?」と疑われているのですが、先生からは「たまごはきっと大物になるどー!」といわれています。きっと私は「大巧若拙」のお手本みたいな子なんだと思います!思いたい!(笑)

なのでこの熟語は大好きです!私もみなさんの期待に沿えるように大物になりたいです。まずは漢字だー!!うおーぅ!!

老子好きですね~。特に、一級じゃないけど天網恢恢疎にして漏らさず、なんていいですよね~!!(´□`)!!

恁麼、什麼。。。

「碧巌録」で何度も眼にする言葉でしたね。

この言葉を中国語読みで覚えるほうが早かったので、いまだに、「ニンマ」「シェンマ」と読んでしまいます。少し前に二年くらい中国語を履修していました。懐かしいです。

漢字なので読むのはあまり苦労しなくてすみました。

一級漢字の勉強も外国語の勉強のような感覚です。

師匠は中国語のテキストも普通に読めそうですね。(´□`)

「碧巌録」おつかれさまでした。師匠!!

漢詩も楽しみにしています!!☆

profile

char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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