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「円座」「結い燈台」「台盤所」…「俊寛」も平安王朝物です〔芥川龍之介作品補遺シリーズ(from 「mixi日記」 of char)〕⑭

 芥川転載補遺シリーズの第14回は、本日3度目の更新となります。

 今回のメインは「俊寛」。日本史を少し嚙ったならば、平安時代の僧侶である俊寛(1143~1179)のことはご存知でしょう。平家打倒のクーデター未遂の罪で、藤原成経、平康頼とともに奄美諸島の鬼界ヶ島へ流されてしまう。平家物語では、康頼だけを載せて都に帰る船を追って地団駄を踏み「我乗せて行けやとて、をめき叫び給えども、漕ぎて行く船のならひにて、跡は白浪ばかりなり」と悲劇の僧侶として描かれています。

 ところが、芥川の描く俊寛は雄大で、女々しく泣き喚くなんて事はしない。琵琶法師の哀調は噓っぱちだと言い切る。同時期に菊池寛が同じく悲劇のヒーロー「俊寛」を書いており、対照的な人物像となっている。対抗意識ありありだったんでしょう。

【好色】


 ●気骨(きぼね)

 「もし今日も亦ないとすれば、――ああ、ああ、おれもついこの間までは、こんな事に気骨を折る程、意気地のない人間じゃなかったのだがな。」

 →気苦労。心配。「~が折れる」と用いて「いろいろ気を使う苦労が多くて心が疲れること。気疲れすること」。

 ●打衣(うちぎぬ)

 「それからずっと探りまわすと、絹らしい打衣の袖にさわる。その衣の下の乳房にさわる。円々した頬や顋にさわる。氷よりも冷たい髪にさわる。――」

 →女房装束の構成の一つ。袿と同形の裏付きの袷。表の地質は綾、裏は平絹、紅や濃き色を常とした。平安後期から晴儀の所用となった。うちぎ。うちあこめ。「擣衣」とも書く。

 ●抽く(ぬく)

 「が、庇の外の空には、簇々と緑を抽いた松が、静かに涼しさを守っている。」

 →引き出す。抽出する。表外の訓読み。

 ●仏倒し(ほとけだおし)

 「そうして其処の床の上へ、仏倒しに倒れてしまった。」

 →仏像を倒すように直立の姿勢のままで倒れること。ほとけころび。

 

【奇怪な再会】


 ●燻べる(くべる?、ふすべる)、燻ずる(クンずる)

 「そう云う内に香炉からは、道人の燻べた香の煙が、明い座敷の中に上り始めた。」

 「道人は薄赤い絹を解いて、香炉の煙に一枚ずつ、中の穴銭を燻じた後、今度は床に懸けた軸の前へ、丁寧に円い頭を下げた。」

 →いぶる。くすぶる。(いい匂いを)かおらせる。「くべる」とルビが振ってありますが、もしかしたら誤植でしょうか。ここは「ふす・べる」と訓んだ方がいいかもしれません。「くべる」は「焼べる」で、どちらも火に入れるのですが、香りを出すニュアンスでは「ふすべる」が適語です。「燻」は1級配当でこれまでも何度も登場しています。いろいろな訓読みのあるなかなかの難語です。芥川がお気に入りの言葉の一つでしょう。「燻煮」(クンシャ)、「燻灼」(クンシャク)、「燻胥」(クンショ)、「燻夕」(クンセキ)、「燻天」(クンテン)、「燻蒸」(クンジョウ)、「燻製」(クンセイ)。

 ●祭文(サイモン)

 「そんな祭文が終ってから、道人は紫檀の小机の上へ、ぱらりと三枚の穴銭を撒いた。」

 →祭祀の際、神前で奏する中国風の祝詞。告祭文。さいぶん。

 ●見料(ケンリョウ)

 「お蓮はここへ来た時よりも、一層心細い気になりながら、高い見料を払った後、匆匆家へ帰って来た。」

 →人相や手相を見て貰った時などに支払う料金。

 ●ふっつり

 「さもなければ忘れたように、ふっつり来なくなってしまったのは、――お蓮は白粉を刷いた片頬に、炭火の火照りを感じながら、いつか火箸を弄んでいる彼女自身を見出した。」

 →突然に途絶えるさま。ふつり。ぷっつり。

 ●水口(みずぐち)、腰障子(こしショウジ)

 「婆さんは水口の腰障子を開けると、暗い外へ小犬を捨てようとした。」

 →台所の異称。

 →腰板の高さが約30センチメートルほどの明かり障子のことで、痛みやすい腰板の部分を板張りや襖張りしている。腰高障子とも言う。腰板がない障子は水腰障子という。

 ●邪慳(ジャケン)

 「陸軍主計の軍服を着た牧野は、邪慳に犬を足蹴にした。」

 →意地の悪いさま。無慈悲なさま。「慳」は1級配当で「お・しむ」が訓読み。「慳貪」(ケンドン)、「慳悋」「慳吝」(以上、ケンリン)。

 ●慴える(おびえる)

 「所が横町を一つ曲ると、突然お蓮は慴えたように、牧野の外套の袖を引いた。」

 →びくびくする。危険などに直面しておそれおののく。「慴れる」(おそれる)の方が一般的。1級配当で「ショウ」が音読み。「慴伏」「慴服」(以上、ショウフク)。「懾服」「懾伏」とも書く。

 ●房楊枝(ふさようじ)

 「お蓮は房楊枝を啣えながら、顔を洗いに縁側へ行った。」

 →端を打ち砕いて房のようにした楊枝。「総楊枝」とも書く。打楊枝(うちようじ)。

 ●《薄痘痕》(うすいも)

 「田宮は明いランプの光に、薄痘痕のある顔を火照らせながら、向い合った牧野へ盃をさした。」

 →うすあばた。目に立たないほどに残るあばた。痘瘡の治った痕(あと)。

 ●《猪口》(ちょく)

 「牧野は太い腕を伸ばして、田宮へ猪口をさしつけた。」

 →陶磁器で、形が小さく上は開き下はすぼんだ酒杯。ちょこ。さかずき。のぞき。

 ●屈托(クッタク)

 「門には竹が立てられたり、座敷には蓬莱が飾られたりしても、お蓮は独り長火鉢の前に、屈托らしい頬杖をついては、障子の日影が薄くなるのに、懶い眼ばかり注いでいた。」

 →一つのことばかり気にかかって心配すること。くよくよすること。「屈託」と書く方が一般的でしょうか。「托」は準1級配当で「托鉢」(タクハツ)、「茶托」(チャタク)、「一蓮托生」(イチレンタクショウ)、「委托」(イタク)、「花托」(カタク)。「託」が書き換え。

 ●悪丁寧(わるデイネイ)

 「――それを眼鏡越しに睨みながら、あちらの御新造はまた上ろうともなさらず、悪丁寧な嫌味のありったけを並べて御出でなさる始末なんです。」

 →必要以上に丁寧なさま。丁寧の度が過ぎ、慇懃無礼を尽くすこと。この場合の「悪」は「過度なさま」という意で、悪乗り、悪ふざけ、悪度胸、悪止め、悪遣いなどが用例。

 ●一挺(イッテイ)

 「お蓮は派手な長襦袢の袖に、一挺の剃刀を蔽ったなり、鏡台の前に立ち上った。」

 →農具や銃など長い物を数える語。「挺」は準1級配当で「ぬ・く」「ぬき・んでる」。「挺出」(テイシュツ)、「挺進」(テイシン)、「挺身」(テイシン)、「挺然」(テイゼン)、「挺秀」(テイシュウ)。

 ●瑠璃燈(ルリトウ)

 「するといつか天井からは、火をともした瑠璃燈が一つ、彼女の真上に吊下っていた。」

 →瑠璃製の油皿を内部に納めた釣り灯籠。「瑠璃」は七宝の一つで、青色の宝石。〔瑠璃も玻璃も照らせば光る〕(るりもはりもてらせばひかる)は「囊中之錐」のこと。

【俊寛】


 ●談らう(かたらう)

 「またもう一人の琵琶法師は、俊寛様はあの島の女と、夫婦の談らいをなすった上、子供も大勢御出来になり、都にいらしった時よりも、楽しい生涯を御送りになったとか、まことしやかに語っていました。」

 →男女が約束する。いいかわす。契る。表外の訓読み。

 ●我は顔(われはがお)

 「一体琵琶法師などと云うものは、どれもこれも我は顔に、嘘ばかりついているものなのです。」

→我こそはと言いたげな顔つき。自慢らしい顔つき。得意顔。得意満面。

 ●界隈(カイワイ)

 「御房は、――御房の御住居は、この界隈でございますか?」

 →そのあたり一帯。近所。「隈」は準1級配当で「くま」「すみ」が訓読み。「山隈」(サンワイ)、《隈回》(くまみ)、「隈無く」(くまなく)。

 ●豕(いのこ)

 「御主人は時々振り返りながら、この家にいるのは琉球人だとか、あの檻には豕が飼ってあるとか、いろいろ教えて下さいました。」

 →イノシシ。または、ブタ。この場合はブタですね。1級配当で「シ」が音読み。「封豕長蛇」(ホウシチョウダ)、「豕交獣畜」(シコウジュウチク)と重要四字熟語があり。「豕心」(シシン)、「豕喙」(シカイ)、「豕突」(シトツ)=猪突、「豕牢」(シロウ)=便所。

 ●台盤所(ダイバンどころ)

 「しかし実方の朝臣などは、御隠れになった後でさえ、都恋しさの一念から、台盤所の雀になったと、云い伝えて居るではありませんか?」

 →食物を盛った器をのせる台を置く所。宮中では、清涼殿ないの一室で、女房の詰所。

 ●北の方(きたのかた)

 「『あれが少将の北の方じゃぞ。』と、小声に教えて下さいました。」

 →公卿などの妻の敬称。北の台。

 ●結い燈台(ゆいトウダイ)

 「その夜わたしは結い燈台の光に、御主人の御飯を頂きました。」

 →油をともして「あかり」とするための照明器具。細い3本の棒をねじって結び上下を開き、上の棒の間に油皿を載せたもの。宮廷行事で使われる。「むすびトウダイ」ともいう。

 ●《不束》(ふつつか)

 「廚子や机はこの島の土人が、不束ながらも御拵え申した、琉球赤木とかの細工だそうです。」

 →不恰好なさま。不体裁なこと。

 ●《円座》(わろうだ)

 「俊寛様は円座の上に、楽々と御坐りなすったまま、いろいろ御馳走を下さいました。」

 →わら縄で作った円座。わらふだ。「藁蓋」とも書く。

 ●得脱(トクダツ)、不量見(フリョウケン)

 「どれでも勝手に箸をつけてくれい。粥ばかり啜っていさえすれば、得脱するように考えるのは、沙門にあり勝ちの不量見じゃ。」

 →生死の苦しみを解脱して涅槃に到ること。煩悩を断じて菩提を得ること。

 →不料簡、不了見とも書く。よくない考え。

 ●怯れる(おくれる)

 「兼ねて覚悟はしていたものの、いざ申し上げるとなって見ると、今更のように心が怯れたのです。」

 →気後れする。自信をなくし尻込みする。「怯」は準1級配当で「キョウ、コウ」「おび・える」「ひる・む」。「おくれる」は当て字訓みですね。「怯弱」(キョウジャク)、「怯懦」(キョウダ)、「怯夫」(キョウフ)、「卑怯」(ヒキョウ)。

 ●衆苦(シュウク)、没在(ボツザイ)

 「おれ一人衆苦の大海に、没在していると考えるのは、仏弟子にも似合わぬ増長慢じゃ。」

 →衆人の苦しみ。多くの苦痛。しゅく。

 →日本語ではないようです。中国語で「この世から姿が見えなくなること。ないこと」。簡単な漢字ですがちょと難しい。

 ●邪業(ジャゴウ)

 「艱難の多いのに誇る心も、やはり邪業には違いあるまい。」

 →よこしまな行い。仏教でいう八邪の一つ。邪見・邪思惟・邪語・邪業・邪命・邪方便・邪念・邪定。

 ●祠(ほこら)

 「この島の火山には鎮護のためか、岩殿と云う祠がある。」

 →神をまつる小さなやしろ。1級配当で「シ」が音読み。「まつ・る」もある。「祠堂」(シドウ)、「社祠」(シャシ)、「合祠」(ゴウシ)、「小祠」(ショウシ)、「神祠」(シンシ)、「葆祠」(ホウシ)、「奉祠」(ホウシ)。

 ●獄(ひとや)

 「が、おれは莫迦莫迦しかったから、ここには福原の獄もない、平相国入道浄海もいない、難有い難有いとこう云うた。」

 →罪人を捕えて押し込めておく屋舎。牢屋。表外の訓読み。圉、囹、圄、牢とも書く。

 ●悪鬼羅刹(アッキラセツ)

 「八万法蔵十二部経中の悪鬼羅刹の名前ばかり、矢つぎ早に浴びせたのじゃ。」

 →恐ろしい魔物のたとえ。「悪鬼」は、人に悪いことをする化け物。「羅刹」は、仏教で、足が速く力が強く、人をだまし、また、人を食うという魔物。「アッキラサツ」とも読む。羅刹は梵語で、悪鬼の通名。速疾・大力で人を魅惑し、あるいは人を喰うという鬼。悪鬼羅刹と重ねることで、極悪非道の鬼という意味合いを表現しています。
「刹」は1級配当で「セツ、サツ」。てら、寺院を表わす言葉です。「刹那」(セツナ)、「古刹」(コサツ)、「大刹」(タイセツ)、「仏刹」(ブッサツ)、「名刹」(メイサツ)。

 

LOS CAPRICHOS】


 ●愚昧(グマイ)、奔る(はしる)

 「アウエルバツハの穴蔵に愚昧の学生を奔らせたる、メフイストフエレエスの哄笑なり。」

 →愚かで道理が分からないこと。「昧」は準1級配当で「くら・い」が訓読み。「昧爽」(マイソウ)、「曖昧」(アイマイ)、「昧蒙」(マイモウ)、「矇昧」(モウマイ)、「三昧」(ザンマイ)、「草昧」(ソウマイ)、「幽昧」(ユウマイ)、「昧死」(マイシ)、「昧旦」(マイソウ)。

 →勢いよく駆けて行く。疾走する。表外の訓読み。

 ●一撮(ひとつまみ)

 「イエス忽ちユダに一撮の食物を与え、静かに彼に云いけるは、『爾が為さんとする事は速かに為せ。』」

 →指先でつかみとった少量のもの。「撮む」(つまむ)は表外の訓読み。

 ●箒(ほうき)、片々(ヘンペン)

 「魔女は箒に跨りながら、片々と空を飛んで行った。」

 →ちりやごみをはき寄せて、きれいにする道具。1級配当で「ソウ、シュウ」が音読み。「草箒」(くさぼうき)、「竹箒」(たけぼうき)、「手箒」(てぼうき)、「箒木」(ほうきぎ、ははきぎ)、「箒星」(ほうきぼし)。

 →断片の軽くひるがえるさま。「翩翩」(ヘンペン=軽く飛び上がるさま)に近いニュアンスでしょうか。

 ●流俗(リュウゾク)

 「何故彼はこの時でも、流俗のように恐れなかったか? それは一人も霊の中に彼程の美男がいなかったからである!」

 →一般の俗人。世人。「流賊」なら、諸方を渡り歩き害をする賊。


 【庭】


 ●頭瘡(ずそう)

 「中村家の隠居、――伝法肌の老人は、その庭に面した母屋の炬燵に、頭瘡を病んだ老妻と、碁を打ったり花合せをしたり、屈託のない日を暮していた。」

 →頭部にできた湿疹・できもの・はれもの。「瘡」は1級配当で「かさ」が訓読み。「瘡痍」(ソウイ)、「瘡腫」(ソウショウ)、「瘡瘢」(ソウハン)、「瘡痕」(ソウコン)。

 ●表徳(ヒョウトク)

 「長男は表徳を文室と云う、癇癖の強い男だった。」

 →雅号。別号。あだな。

 ●昼日なか(ひるひなか)

 「少くとも彼には昼日なか、そんな幻が見えたのだった。」

 →昼日中。ひるま。日中。ひるなか。

 ●雑色(ザッシキ)

 「爾来庭は春になると、見慣れた松や柳の間に、桃だの杏だの李だの、雑色の花を盛るようになった。」

 →さまざまの種類。

 ●野辺送り(のべおくり)

 「その又野辺送りの翌日には、築山の陰の栖鶴軒が、大雪の為につぶされてしまった。」

 →遺骸を火葬場または埋葬場まで見送ること。のおくり。葬式のことも指す。

 ●紙石板(かみセキバン)

 「彼は廉一の紙石板へ、山や船を描いてやった。」

 →ボール紙に金剛砂や軽石の粉と獣炭とをまぜたものを塗って、石盤の代用としたもの。

 ●山気(ヤマギ)

 「山気に富んだ三男は、米相場や蚕に没頭していた。」

 →万一の僥倖をたのんで物事をしようとする気質。山師のような気質。冒険・投機を好む心。やまけ。やまごころ。「ヤマキ」とも読む

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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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