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天皇の御食事は「大饗」、紫の「帛紗」…「地獄変」〔芥川龍之介作品補遺シリーズ(from 「mixi日記」 of char)〕③

 芥川転載補遺シリーズの第3回です。左欄の「category」で「芥川龍之介」が「31」となり、「漢詩」を抜いてトップの回数になりました。怒濤の転載ですからね。致し方なし。まだまだ回数は伸びるでしょう。しかし、漢詩も忘れてはいない。いずれまたトップを抜き返す場面もあるでしょう。

 本日の補遺は「羅生門」「藪の中」「地獄変」の3本建て。いずれも平安時代を舞台とした王朝物。芥川作品には「キリシタン物」「保吉物」などがありのですが、個人的にはこの「平安物」が一番好みです。「芋粥」や「好色」などもその範疇に入ります。

 饑餓をテーマにしたり、おどろおどろしい雰囲気もあるんですが、登場する女性陣が異様に艶やか。このコントラストがなんとも言えないエロスを醸しだしているからです。生きるとは何か?そして、和のテーストの原点。輒ち、中国人とは違う、日本人の根源的な部分。。。

【羅生門】


 ●《蟋蟀》(きりぎりす)

 「ただ、所々丹塗の剥げた、大きな円柱に、蟋蟀が一匹とまっている。」

 →「蛬」(きりぎりす)とも書く。音読みは「シュッソツ」で通常は「こおろぎ」。「きりぎりす」であるなら、《螽斯》または一字で「螽」が通常表記。

 ●鴟尾(シビ)

 「昼間見ると、その鴉が何羽となく輪を描いて、高い鴟尾のまわりを啼きながら、飛びまわっている。」

 →宮殿や仏殿などの棟の両端にとりつける飾り。鳥の尾または魚が尾を跳ね上げた形。後世のしゃちほこの原型。「蚩尾」とも書き、「とびのお」とも訓む。「鴟」は1級配当で「シ」「とび」。「とび、とんび」「ふくろう、みみずく」の意。《鴟尾草》(いちはつ)、「鴟梟」(シキョウ)。

 ●襖(あお)

 「下人は七段ある石段の一番上の段に、洗いざらした紺の襖の尻を据えて、右の頬に出来た、大きな面皰を気にしながら、ぼんやり、雨のふるのを眺めていた。」

 →両脇のあいた上着で、昔の武官の礼服。「襖」は準1級配当で「オウ」「ふすま、あお」。「素襖」(スオウ)、「襖絵」(ふすまエ)。

 ●甍(いらか)

 「夕闇は次第に空を低くして、見上げると、門の屋根が、斜につき出した甍の先に、重たくうす暗い雲を支えている。」

 →屋根瓦。瓦で葺いたやね。「甍」は1級配当で「ボウ・モウ」が音読み。「甍宇」(ボウウ)、「高甍」(コウボウ)、「甍棟」(ボウトウ)、「連甍」(レンボウ)。

 ●遑(いとま)

 「どうにもならない事を、どうにかするためには、手段を選んでいる遑はない。

 →用事の無い時間。ゆとり。ひま。1級配当で「コウ」が音読み。「遑寧」(コウネイ)、「遑遑」(コウコウ=あわただしく落ち着かないさま)。〔枚挙に遑がない〕。

 ●聖柄(ひじりづか)、鞘走る(さやばしる)

 「下人はそこで、腰にさげた聖柄の太刀が鞘走らないように気をつけながら、藁草履をはいた足を、その梯子の一番下の段へふみかけた。」

 →三鈷柄の剣。また、鮫皮を付けない木地のままの刀の柄ともいう。

 →刀身が鞘から自然に抜け出る。「鞘」は準1級配当で「刃物の刀身の部分を納める筒」。「利鞘」、「鞘当て」、「鞘堂」。諺に〔鞘走りより口走り〕。失言への箴めです。

 ●弩(いしゆみ)

 「老婆は、一目下人を見ると、まるで弩にでも弾かれたように、飛び上った。」

 →古代中国の武器で、ばね仕掛けで大矢や石を発射する強い弓。「おおゆみ」とも訓む。弩弓(ドキュウ)。1級配当で「ド」が音読み。「弓弩」(キュウド)、「超弩弓」、「強弩」(キョウド)。

 ●鬘(かずら)

 「この髪を抜いてな、この髪を抜いてな、鬘にしようと思うたのじゃ。」

 →かつら。そえがみ。1級配当で「マン・バン」が音読み。「華鬘」(ケマン)、「玉鬘」(たまかずら)。

 ●太刀帯の陣(たてわきのジン)

 「現在、わしが今、髪を抜いた女などはな、蛇を四寸ばかりずつに切って干したのを、干魚だと云うて、太刀帯の陣へ売りに往んだわ。」

 →たちはきの詰め所。たちはきは、古代、春宮坊の舎人監の役人で、皇太子の護衛に当たった武官。舎人の中で武術に優れた者を任じ、特に帯刀させた。

 ●黒洞々(コクトウトウ)

 「外には、ただ、黒洞々たる夜があるばかりである。」

 →真っ暗。暗黒。「洞」は表外の音読み。「洞々」は「ドウドウ」とも読み、「黒々しているさま」。「洞冥」(ドウメイ)、「洞壑」(ドウガク)。

 

【藪の中】


 ●縹(はなだ)、水干(スイカン)

 「死骸は縹の水干に、都風のさび烏帽子をかぶったまま、仰向けに倒れて居りました。」

 →薄い藍色。そらいろ。1級配当で「ヒョウ」は何度も登場しています。

 →糊を使わずに水につけて板に張ってほした絹でつくったかりぎぬの一種。一般の人の普段着。

 ●蘇芳(スオウ)

 「何しろ一刀とは申すものの、胸もとの突き傷でございますから、死骸のまわりの竹の落葉は、蘇芳に滲みたようでございます。」

 →染め色の名。黒味を帯びた赤色。

 ●如露亦如電(ニョロヤクニョデン)

 「あの男がかようになろうとは、夢にも思わずに居りましたが、真に人間の命なぞは、如露亦如電に違いございません。やれやれ、何とも申しようのない、気の毒な事を致しました。」

 →現世に存在するものは、朝露や電光のように本来ははかなく空であり、実体が無いということ。金剛般若経に説かれる。

 ●搦め取る(からめとる)

 「わたしが搦め取った男でございますか?」

 →捕まえてしばりあげる。「搦」は1級配当で「ジャク・ダク」が音読み。「搦め手」(からめて)は「城の裏門。物事の裏側」。搦みは、~前後、~内外。「しばりあ・げる」とも訓む。

 ●呻る(うなる)

 「もっともわたしが搦め取った時には、馬から落ちたのでございましょう、粟田口の石橋の上に、うんうん呻って居りました。」

 →うめく。痛みや苦しみのためにうなり声をあげる。1級配当で「シン」。「呻吟」(シンギン)、「嚬呻」(ヒンシン)。「嚬」は「ひそ・める」。

 ●発く(あばく)

 「向うの山には古塚がある、この古塚を発いて見たら、鏡や太刀が沢山出た、…」

 →土を掘り起こし、埋めた物を取り出す。外にさらけ出す。多くは「墓を発く」。表外訓み。

 ●樗(おうち)

 「どうせ一度は樗の梢に、懸ける首と思っていますから、どうか極刑に遇わせて下さい。」

 →センダン(栴檀)の古称。楝とも書く。「樗」は準1級配当で「チョ」。栴檀は初夏に淡紫色の五弁花を多数つけ楕円形の黄色い実を結ぶ。材は器具用。

 ●中有(チュウウ)

 「おれは中有に迷っていても、妻の返事を思い出すごとに、…」

 →亡くなってから四十九日。四有の一つ。衆生が死んで次の生を受けるまでの間。


 【地獄変】


 ●意表(イヒョウ)

 「でございますから、あの方の為さいました事には、一つとして私どもの意表に出ていないものはございません。」

 →考慮に入れていないこと。思いの外。意外。「~に出る」で用いる。

 ●権者(ゴンジャ)

 「その頃洛中の老若男女が、大殿様と申しますと、まるで権者の再来のように尊み合いましたも、決して無理ではございません。」

 →仏、菩薩が衆生を救うために権に現れた身。化者(ケシャ)。権化(ゴンゲ)。権現。「権」(ゴン)は「かりそめ」の意味。

 ●《大饗》(おおみあえ)

 「大饗の引出物に白馬ばかりを三十頭、賜ったこともございますし、長良の橋の橋柱に御寵愛の童を立てた事もございますし、それから又華陀の術を伝えた震旦の僧に、…」

 →天皇の食事。宮中で群臣に賜る酒饌。「大御饗」と書くのが一般的。「饗」は準1級配当で「キョウ」。「もてな・す」とも。「あえ」は「人々が集まって宴会をすること。ごちそう。饗応」。「饗筵」(キョウエン)、「饗応」(キョウオウ)、「饗膳」(キョウゼン)、「饗告」(キョウコク)、「饗賜」(キョウシ)、「饗報」(キョウホウ)、「饗礼」(キョウレイ)。


 ●悧巧(リコウ)

 「その上早く女親に別れましたせいか、思いやりの深い、年よりはませた、悧巧な生れつきで、年の若いのにも似ず、何かとよく気がつくものでございますから、御台様を始め外の女房たちにも、可愛がられて居たようでございます。」

 →利口。かしこい。「悧」は1級配当で「リ」。「怜悧」(レイリ)。「俐」も「リ」で同義。

 ●枉げる(まげる)

 「父親の命乞なら、枉げて赦してとらすとしよう。」

 →無理に押さえる。無理に変える。「枉」は1級配当で「オウ」が音読み。「枉屈」(オウクツ)、「枉橈」「枉道」「枉撓」(以上、オウドウ)、「枉駕」(オウガ)、「枉顧」(オウコ)、「枉法徇私」(オウホウジュンシ)、「冤枉」(エンオウ)、「邪枉」(ジャオウ)、「誣枉」(フオウ)、「枉死」(オウシ)、「枉訴」(オウソ)、「枉駕来臨」(オウガライリン)。

 ●魔障(マショウ)

 「現に横川の僧都様も、良秀と申しますと、魔障にでも御遇いになったように、顔の色を変えて、御憎み遊ばしました。」

 →仏道修行を妨げる悪魔のさわり。

 ●放免(ホウメン)

 「不動明王を描く時は、無頼の放免の姿を像りましたり、いろいろの勿体ない真似を致しましたが、…」

 →徒刑、流刑を免ぜられ、そのかわりに検非違使庁で使役された下司。犯罪に通じており、追捕に便利なゆえ置かれた。ホウベンともいう。

 ●冥官(ミョウカン)

 「でございますから、唐めいた冥官たちの衣裳が、点々と黄や藍を綴って居ります外は、どこを見ても烈々とした火焔の色で、その中をまるで卍のように、墨を飛ばした黒煙と金粉を煽った火の粉とが、舞い狂って居るのでございます。」

 →冥界の官人。閻魔の庁の役人。

 ●輳まる(あつまる)

 「云わば広い画面の恐ろしさが、この一人の人物に輳っているとでも申しましょうか。」

 →(車の輻=や=が轂=こしき=に集まるように)真ん中、一点に集中する。1級配当で「ソウ」が音読み。「輻輳」(フクソウ)は「混み合っているさま」。

 ●《驀地》(まっしぐら)

 「怪鳥も元よりそれにつれて、高く低く翔りながら、隙さえあれば驀地に眼を目がけて飛んで来ます。」

 →勢いよく、一心不乱に目的地に向かって進むさま。「驀」は1級配当で「バク」が音読み。「驀越」(バクエツ)、「驀進」(バクシン)、「驀然」(バクゼン)、「驀破」(バクハ)。

 ●爆ぜる(はぜる)

 「それがちょいと言を御切りになると、すぐ又何かが爆ぜたような勢ひで、止め度なく喉を鳴らして御笑いになりながら、…」

 →果実などが熟しまたは熱せられて裂ける。裂けて開く。〔毬栗も内から爆ぜる〕は「女子は年頃になると自然と色気づくものだ」。

 ●鴎尻(かもめじり)

 「鹿の生角さえ裂くようになったと云う強力の侍が、下に腹巻を着こんだ容子で、太刀を鴎尻に佩き反らせながら、御縁の下に厳しくつくばっていた事でございます。――」

 →太刀鞘の尻を上に反り上がるように帯びること。

 ●濛々(モウモウ)

 「庇についた紫の流蘇が、煽られたようにさっと靡くと、その下から濛々と夜目にも白い煙が渦を巻いて、或は簾、或は袖、或は棟の金物が、一時に砕けて飛んだかと思う程、火の粉が雨のように舞い上る――その凄じさと云ったらございません。」

 →霧や小雨、もやなどがたちこめ、視界の悪いさま。「濛」は1級配当で「濛雨」(モウウ)、「濛気」(モウキ)、「濛昧」(モウマイ=矇昧)、「空濛」(クウモウ)、「昏濛」(コンモウ)、「溟濛」「冥濛」(以上、メイモウ)。

 ●引き攣る(ひきつる)

 「が、その大きく見開いた眼の中と云い、引き歪めた唇のあたりと云い、或は又絶えず引き攣っている頬の肉の震えと云い、良秀の心に交々往来する恐れと悲しみと驚きとは、歴々と顔に描かれました。」

 →痙攣を起こす。筋肉が引っ張られて、かたくこわばる。「攣」は1級配当で「レン」が音読み。「攣縮」(レンシュク)、「痙攣」(ケイレン)、「攣曲」(レンキョク)、「攣攣」(レンレン)、「牽攣乖隔」(ケンレンカイカク)、「拳攣」(ケンレン)、「拘攣」(コウレン)。

 ●帛(きぬ)

 「そうして朱塗のような袖格子が、ばらばらと焼け落ちる中に、のけ反った娘の肩を抱いて、帛を裂くような鋭い声を、何とも云えず苦しそうに、長く煙の外へ飛ばせました。」

 →精巧に作った絹織物。薄くなめらかで、つやのある絹織物。とくに、白い絹布をいう。1級配当で「ハク」が音読み。「帛書」(ハクショ)、「玉帛」(ギョクハク)、「竹帛」(チクハク)、「布帛」(フハク)、「幣帛」(ヘイハク)、「裂帛」(レッパク)。「帛紗」(フクサ)=袱、袱紗、服紗。「垂名竹帛」(スイメイチクハク、なをチクハクにたる)。

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Author:char
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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