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青春のシンボルは「面皰」…「靤」もあるよん〔芥川龍之介作品補遺シリーズ(from 「mixi日記」 of char)〕②

 芥川転載補遺シリーズの第2回です。先を急ぎま~す。

【煙管】


 ●拝領(ハイリョウ)

 「そんなに金無垢が有難けりゃ何故お煙管拝領と出かけねえんだ。」

 →もらうことの謙譲語。主君や貴人から物をもらうこと。類義語は「恩賜」「頂戴」。

 ●典故(テンコ)

 「煩雑な典故を尚んだ、殿中では、天下の侯伯も、お坊主の指導に従わなければならない。」

 →典拠となる故事。故実。

 ●卑吝(ヒリン)

 「それからまた一方には体面上卑吝の名を取りたくないと云う心もちがある。」

 →いやしくけちなこと。鄙吝と書くのが一般的。1級配当の「吝」は「しわい」で既出。

 ●うすいも

 「ふりかえると、そこには、了哲が、うすいものある顔をにやつかせながら、彼の掌の上にある金無垢の煙管をもの欲しそうに、指さしていた。」

 →「薄痘痕」と書き、「うすあばた」とも訓む。目立たない程度に残るあばた。あばたはできものの痕(あと)。

 ●宏量(コウリョウ)

 「これを聞いた家中の者は、斉広の宏量なのに驚いた。」

 →度量の広いこと。こころがひろいこと。広量。対義語は「狭量」。

 ●運上(ウンジョウ)、入目(いりめ)

 「あるいは、そのために運上を増して煙管の入目を償うような事が、起らないとも限らない。」

 →運送上納金の略。江戸時代の雑税の一種で、商・工・漁猟・運送などの営業者に課した。

 →費用。入費。

 ●鬩ぐ(せめぐ)

 「その高慢と欲との鬩ぎあうのに苦しめられた彼は、今に見ろ、己が鼻を明かしてやるから――と云う気で、何気ない体を装いながら、油断なく、斉広の煙管へ眼をつけていた。」

 →子供の喧嘩のように互いに恨み、対抗して争う。現在の衆参ねじれ国会で与野党が小競り合いを演じているさまはまさに「鬩ぐ」。「鬩」は1級配当で「ゲキ」が音読み。「鬩牆」「鬩訟」(以上ゲキショウ)。

 ●口気(コウキ)

 「丁寧な語の中に、鋭い口気を籠めてこう云った。」

 →もののいいぶり。口ぶり。口吻。語気。


 【将軍】


 ●白襷隊(しろだすきタイ)、北麓(ホクロク)

 「第×師団第×聯隊の白襷隊は、松樹山の補備砲台を奪取するために、九十三高地の北麓を出発した。」

 →日露戦争中の旅順攻略戦第三次総攻撃の奇襲を担当した先遣独立突撃隊。聖将の異名を馳せた乃木希典大将の命令を受けて、難攻不落の敵要塞に銃剣のみの暴挙に等しい夜襲突撃を敢行した約3000人の各師団選抜の混成部隊だった。暗いトンネルを掘って進んだので暗闇でも敵と味方の区別が付くように「白い襷」を掛け、突撃は失敗し全滅に至ったが、その勇姿はその後数々の戦争において兵卒の理想像として称えられ続けた。

 →山の北側のふもと、山すそ。「麓」は準1級配当で「ふもと」。1級配当国字に「梺」がある。

 ●酒保(シュホ)

 「酒保の酒を一合買うのでも、敬礼だけでは売りはしめえ。」

 →旧日本軍の基地・施設内や艦船内に設けられていた売店に類するもの。「酒保で品物を買うには、班ごとに注文をまとめて当番が酒保帳に記入し、酒保の窓口に並んで受け取ってくる。酒保の代金は、毎月の給料から差し引かれるが、海兵団の場合、酒保代金が一か月四円を超えると「酒保止め」にされてしまう。」「草や酒、羊羹や飴などの嗜好品から歯ブラシや石鹸、ちり紙といった日用品、缶詰やパンなどの食料品、筆記道具や裁縫用具まで品揃えされ、在庫も民間に比べると豊富だった。扱い品の中にはコンドームまであった。コンドームは上陸時に病気に感染しないための必需品で、艦によっては上陸の際に検査があり、所持していないと上陸が認められないこともあった。」(某サイト引用)

 ●悪辣(アクラツ)

 「そうして酒臭い相手の顔へ、悪辣な返答を抛りつけた。」

 →非常にたちが悪いさま。やり方があくどいさま。1級配当の「辣」は何度も出てきました。

 ●襞(ひだ)

 「その家々の屋根の上には、石油色に襞をなぞった、寒い茶褐色の松樹山が、目の前に迫って見えるのだった。」

 →衣服につけた細長い折り目のことで、この場合はそのように波打って見える山すそのこと。1級配当で「ヘキ・ヒャク」が音読み。「山襞」(やまひだ)、「褶襞」(シュウヘキ)。

 ●《面皰》(にきび)

 「その兵は石に腰をかけながら、うっすり流れ出した朝日の光に、片頬の面皰をつぶしていた。」

 →思春期に多くできる吹き出物。「メンポウ」と音読みもする。「皰」は1級配当で「ホウ」、これ一字でも「にきび」。「皰瘡」(ホウソウ)。にきびは「靤」もある。

 ●彼我(ヒガ)、唸り(うなり)

 「何時間かの後、この歩兵陣地の上には、もう彼我の砲弾が、凄まじい唸りを飛ばせていた。」

 →他人と自分。この場合は敵と味方。

 →にぶく低い音が長く尾を引くように鳴ること。振動数が違う二つの音が重なるとき、干渉のため、音が強くなったり弱くなったりする現象の結果、こうした音が発生する。「唸」は1級配当で「テン」が音読み。

 ●迸る(ほとばしる)

 「その土煙の舞い上る合間に、薄紫の光が迸るのも、昼だけに、一層悲壮だった。」

 →勢いよく飛び散る。飛沫状になって散る。「迸」は1級配当で「ホウ・ヘイ」が音読み。「迸出」(ヘイシュツ・ホウシュツ)、「迸発」(ホウハツ)。巻き添えを食うことの「とばっちり」も「迸り」と書く。

 ●珊(サンチ)

 「今のは二十八珊だぜ。」

 →旧日本軍では、大砲などの口径を読み、書き、呼称する単位としてフランス語読み(centimètre)の略が使われ、装甲の厚みなど、一般的な単位として使用されるラテン語の「センチ(centi)=糎」と区別していました。海軍艦船の仕様書においてはサンチを「珊」、センチを「糎」と記していました。「珊瑚」(サンゴ)の「珊」で、音だけ借用したのでしょう。

 ●繍(ぬい)

 「それは彼が出征する時、馴染の芸者に貰って来た、縁に繍のある手巾だった。」

 →刺繍。ぬいとり。準1級配当で「シュウ」「ぬいとり」。布地に色糸、金糸で模様や文字を刺し縫いして表わすこと。また、その文字や模様。ぬいさし。「綾羅錦繍」(リョウラキンシュウ)。

 ●手擲弾(シュテキダン)

 「その夜の八時何分か過ぎ、手擲弾に中った江木上等兵は、全身黒焦になったまま、松樹山の山腹に倒れていた。」

 →手投げ弾。手榴弾。「抛」は「ほうる、なげる」。

 ●坎(カン)

 「この棟の低い支那家の中には、勿論今日も坎の火っ気が、快い温みを漂わせていた。」

 →あな。1級配当で「あな」が訓読み。「坎穽」(カンセイ)、「坎軻」(カンカ)、「坎日」(カンニチ)。

 ●露探(ロタン)

 「『露探か?』 将軍はこう尋ねたまま、支那人の前に足を止めた。」

 →中国人でありながら ロシア軍に内通し いわゆるスパイ行為(間諜)をしていた者たち。

 ●叩頭(コウトウ)

 「しかし驚いたけはいも見せず、それぎり別々の方角へ、何度も叩頭を続け出した。」

 →地面に頭をすりつけてお辞儀をすること。「叩」は準1級配当で「たた・く」「はた・く」が訓読み。《叩頭》ずくは「ぬかず・く」。

 ●石敢当(セキカントウ)

 「が、遠い枯木立や、路ばたに倒れた石敢当も、中佐の眼には映らなかった。」

 →「いしがんとう」とも訓む。沖縄や九州南部で道路のつきあたりや門・橋などに、「石敢頭」の三文字を刻して建ててある石碑。中国伝来の民俗で、悪魔よけの一種。

 ●蓆敷(むしろじき)

 「が、その蓆敷の会場には、もう一時の定刻前に、大勢の兵卒が集っていた。」

 →藁などで編んで作った敷物。ござ。「蓆」は1級配当で「セキ」が音読み。

 ●兵站(ヘイタン)

 「将軍を始め軍司令部や、兵站監部の将校たちは、外国の従軍武官たちと、その後の小高い土地に、ずらりと椅子を並べていた。」

 →戦場の後方にあって、車両、食糧、弾薬など軍需品の補給や輸送、また連絡の確保に当たる機関。「站」は1級配当で「車馬や人のとまる宿場の意」。「駅站」(エキタン)、「車站」(シャタン)。

 ●一場の俄(イチジョウのにわか)

 「それから、――筋は話すにも足りない、一場の俄が始まった。」

 →その場。一席の。

 →俄狂言の略。素人が座敷や街頭で演った即興の滑稽寸劇。茶番狂言。

 ●袷(あわせ)

 「内地はもう袷を着ているだろう。」

 →裏地のついた仕立て着物。「袷」は準1級配当で「コウ」が音読み。対義語は「単」(ひとえ)。

 ●閑日月(カンジツゲツ)

 「二十年余りの閑日月は、少将を愛すべき老人にしていた。」

 →ひまな月日。ひまな時。心に余裕のあること。

 ●籖(くじ)

 「じゃあなた方に籤を引いて貰おう。」

 →紙片や木片に記号や文字を記してその中から一つを抜き取らせて等級、当落、吉凶を決めるもの。「籖」は1級配当で「セン」が音読み、「ひご」とも訓む。「竹籖」(たけひご)。「抽籤」(チュウセン)、「当籤」(トウセン)、「牙籤」(ガセン)。くじには「鬮」もある。

 ●武弁(ブベン)

 「閣下はお前がたの思うように、決して一介の武弁じゃない。」

 →武士、武官、武家。「弁」は武官が被った冠の意味。

【桃太郎】


 ●開闢(カイビャク)

 「何でも天地開闢の頃おい、伊弉諾の尊は黄最津平阪に八つの雷を却けるため、桃の実を礫に打ったという、――その神代の桃の実はこの木の枝になっていたのである。」

 →天地が開いた始まり。この世の始まり。物事の始まり。「闢」は1級配当で「ヘキ・ビャク」、「ひら・く」。「闢闔」(ヘキコウ)、「闢土」(ヘキド)、「闢発」(ヘキハツ)。

 ●核(さね)

 「が、それよりも不思議なのはその実は核のあるところに美しい赤児を一人ずつ、おのずから孕んでいたことである。」

 →表外訓み。たね。「核太棗」(さねぶとなつめ)。

 ●《八咫》鴉(やたがらす)

 「しかしある寂しい朝、運命は一羽の八咫鴉になり、さっとその枝へおろして来た。」

 →中国古代説話で太陽の中にいるという三本足の赤色の鳥の、日本での称。金烏。金烏玉兎、烏兎。「鴉」は1級配当で「ア」が音読み。「咫」も1級配当で「シ」ですが既出。

 ●黍(きび)

 「のみならず途中の兵糧には、これも桃太郎の註文通り、黍団子さえこしらえてやったのである。」

 →イネ科の一年草。インド原産とされ、古くから栽培。秋に淡黄色の花穂をつけ、実ると垂れ下がる。五穀(既出)の一つで食用。1級配当で「ショ」が音読み。「禾黍」(カショ)、「蜀黍」(ショクショ)。きびは「稷」「粢」とも書く。

 ●瘤(こぶ)

 「瘤取りの話に出て来る鬼は一晩中踊りを踊っている。」

 →皮膚に盛り上がってできたしこり。たんこぶ。1級配当で「リュウ」が音読み。「贅瘤」(ゼイリュウ)。

 ●亭々(テイテイ)

 「鬼は金棒を忘れたなり、『人間が来たぞ』と叫びながら、亭々と聳えた椰子の間を右往左往に逃げ惑った。

 →木などが高く、まっすぐにそびえているさま。

 ●嘴(くちばし)

 「雉も鋭い嘴に鬼の子供を突き殺した。」

 →鳥類の口で、上下が突き出て角質のさやをかぶっている部分。1級配当で「シ」が音読み、「はし」とも訓む。「沙嘴」(サシ)、「嘴子」(シシ)。嘴太鴉(はしぶとがらす)。〔嘴が黄色い〕は「年が若い、鵯っ子」。〔鶍の嘴の食い違い〕(いすかのはしのくいちがい)は「嚙み合わず、思い通りにならないこと」。觜、喙もくちばし。


 【湖南の扇】


 ●提籃(テイラン)

 「すると薄汚い支那人が一人、提籃か何かをぶら下げたなり、突然僕の目の下からひらりと桟橋へ飛び移った。」

 →茶道具の一種で、茶道具一式を収納するカゴ。しかし、この場合は単に物を入れて下げる「提籃」風のカゴのことでしょう。「籃」は1級配当で「かご」。「魚籃」(ギョラン)、「揺籃」(ヨウラン)、「籃輿」(ランヨ)。

 ●土匪(ドヒ)

 「さあ、土匪の斬罪か何か見物でも出来りゃ格別だが、………」

 →土着の匪賊。「匪」は準1級配当で「あら・ず」が訓読み。匪賊は集団で出没し、略奪や殺人などを犯す盗賊のこと。「匪石」(ヒセキ)。


 【点鬼簿】


 ●西廂記(セイソウキ)

 「僕はいつか西廂記を読み、土口気泥臭味の語に出合った時に忽ち僕の母の顔を、――痩せ細った横顔を思い出した。」

 →元代の14世紀に成ったとされる有名な雑劇、戯曲の一つ。セイショウキとも読む。作者は一般的に王実甫と言われ、身分の高い女性「崔鶯鶯」と無冠の士「張君瑞」とが、数々の曲折を乗り越えて恋を成就するラブロマンス。

 ●莟(つぼみ)

 「この莟のある樹。」

 →花が咲く前のふくらんだ状態。1級配当で「ガン」が音読み。「蕾」とも書く。「蕊」、「はなしべ」ともいう。

 

【枯野抄】


 ●葱(ねぶか)

 「立ちならんだ町家の間を、流れるともなく流れる川の水さえ、今日はぼんやりと光沢を消して、その水に浮く葱の屑も、気のせいか青い色が冷たくない。」

 →「ねぎ」の異称。「根深」とも書く。「葱」は準1級配当で「ソウ」「ねぎ」。「葱青」(ソウセイ)、「葱鮪」(ねぎま)、「葱坊主」(ねぎぼうず)。

 ●擬宝珠(ギボウシュ)

 「すべてがうす明い、もの静な冬の昼を、橋の擬宝珠に置く町の埃も、動かさない位、ひっそりと守っている」

 →(ギボウシ、ギボシ)とも。欄檻の柱頭につける宝珠の飾り。形は葱の花に似る。

 ●炷く(たく)

 「――隔ての襖をとり払った、だだっ広い座敷の中には、枕頭に炷きさした香の煙が、一すぢ昇って、天下の冬を庭さきに堰いた、新しい障子の色も、ここばかりは暗くかげりながら、身にしみるように冷々する。」

 →香や線香に火をともしてくゆらせること。「炷」は1級配当で「シュ」が音読み。「炷香」(シュコウ)、「一炷」(イッシュ)は「線香一本が燃え尽きる時間(およそ40分)のことで、坐禅などを組む時間や、遊郭の遊び時間の基準単位とした。すなわち砂時計の代わり」。

 ●剛愎(ゴウフク)

 「その容子をじろじろ眺めながら、古法衣の袖をかきつくろって、無愛想な頤をそらせている、背の低い僧形は惟然坊で、これは色の浅黒い、剛愎そうな支考と肩をならべて、木節の向うに坐っていた。」

 →意地っ張りで人に従わないこと。強情なさま。「愎」は1級配当で「フク、ヒョウ」「もと・る」。「愎戻」(フクレイ)。何度も出てきましたが「剛腹」(ゴウフク)は「肝が据わっていること」、「業腹」(ゴウはら)は「はらわたが煮えくり返っていること」。

 ●痰喘(タンセキ?)

 「芭蕉はさっき、痰喘にかすれた声で、覚束ない遺言をした後は、半ば眼を見開いた儘、昏睡の状態にはいったらしい。」

 →「痰咳」(タンガイ)の紕りではないでしょうか。「喘」は「ゼン、セン」との音読みしかない。あるいは「痰がつまって喘ぐさま」を言う漢字かもしれませんが、それにしても「タンゼン」と読んだほうがいいと思われます。誤植か。

 ●惻々(ソクソク)

 「その惻々として悲しい声の中に、菩提樹の念珠を手頸にかけた丈艸は、元の如く静に席へ返って、あとには其角や去来と向いあっている、支考が枕もとへ進みよった。」

 →ひしひしと悲しみ、心を痛めるようす。惻然。「惻」は1級配当で「いた・む」が訓読み。「惻隠の心は仁の端也」(孟子)。

 ●命終(メイシュウ)

 「して見れば師匠の命終に侍しながら、自分の頭を支配しているものは、他門への名聞、門弟たちの利害、或は又自分一身の興味打算――皆直接垂死の師匠とは、関係のない事ばかりである。」

 →臨終。ミョウシュウ、ミョウジュウ、メイジュウとの読みもあり。

 ●逞しくする(たくましくする)

 「だから師匠はやはり発句の中で、屡予想を逞くした通り、限りない人生の枯野の中で、野ざらしになったと云って差支えない。」

 →勢いを盛んにする。思う存分にする。「逞しゅうする」と音便形もあり。「逞」は1級配当で「テイ」が音読み。「不逞」(フテイ)=「不埒」(フラチ)、「逞兵」(テイヘイ)、「逞志」(テイシ)=勝手気儘。

 ●白眼(ハクガン)、習気(シュウキ)

 「人の好い去来の如きは、始からその冷然とした態度に中てられて、さっきの不安を今更のように又新にしたが、独り其角が妙に擽ったい顔をしていたのは、どこまでも白眼で押し通そうとする東花坊のこの性行上の習気を、小うるさく感じていたらしい。」

 →白目勝ちに人を見る目つき。冷淡な目つき。魏時代の「竹林の七賢」の一人、阮籍は白目と黒目を使い分けて、形式だけを守る人には白目で、礼儀を重んじる人には黒目で応対した。白眼視、青眼視。

 →身についたならわし。習慣。

 ●驚悸(キョウキ)

 「元来彼は死と云うと、病的に驚悸する種類の人間で、昔からよく自分の死ぬ事を考えると、風流の行脚をしている時でも、総身に汗の流れるような不気味な恐しさを経験した。」

 →おどろいて胸がどきどきすること。

 ●徘徊(ハイカイ)

 「障子に冬晴の日がさして、園女の贈った水仙が、清らかな匂を流すようになると、一同師匠の枕もとに集って、病間を慰める句作などをした時分は、そう云う明暗二通りの心もちの間を、その時次第で徘徊していた。」

 →どことも当てなく歩き回ること。ぶらつくこと。いずれも1級配当で「さまよう」。類義語は「彷徨」(ホウコウ)。試験に出るぞ。

 ●恍惚(コウコツ)

 「彼はこの恍惚たる悲しい喜びの中に、菩提樹の念珠をつまぐりながら、周囲にすすりなく門弟たちも、眼底を払って去った如く、唇頭にかすかな笑を浮べて、恭々しく、臨終の芭蕉に礼拝した。――」

 →うっとりして我を忘れるさま。「恍」は1級配当で「とぼ・ける」が訓読み。「恍然」(コウゼン)。「惚」は準1級配当で「ほ・れる」「ぼ・ける」「ほう・ける」「とぼ・ける」。「茫惚」(ボウコツ)。

 

【手巾】


 ●警抜(ケイバツ)

 「先生は、警抜な一章を読み了る毎に、黄いろい布表紙の本を、膝の上へ置いて、ヴエランダに吊してある岐阜提灯の方を、漫然と一瞥する。」

 →すぐれて抜きん出ていること。着想が優れていること。事実を鋭くついていること。

 ●帰趣(キシュ)

 「この武士道によって、現代日本の思潮に帰趣を知らしめる事が出来るならば、それは、独り日本の精神的文明に貢献する所があるばかりではない」

 →物事の落ち着くところ。帰着点。帰趨。

 ●贏ち得る(かちえる)

 「――俳優が最も普通なる感情に対して、或一つの恰好な表現法を発見し、この方法によって成功を贏ち得る時、彼は時宜に適すると適せざるとを問はず、…」

 →努力の結果、手に入れること。「贏」は1級配当で「エイ」「か・つ」「あま・る」。なかなか艱しい漢字ですが漢字検定1級ではごくごく基本で頻出です。「贏財」(エイザイ)、「贏余」(エイヨ)、「贏利」(エイリ)、「輸贏」(ユエイ・シュエイ)、「余贏」(ヨエイ)、「贏輸」(エイシュ、エイユ)、「贏得」(エイトク)、「贏縮」(エイシュク=盈ちる事と損る事)。

 ●栞(しおり)

 「そこで、栞代りに、名刺を本の間へはさんで、それを籐椅子の上に置くと、先生は、落着かない容子で、銘仙の単衣の前を直しながら、ちよいと又、鼻の先の岐阜提灯へ眼をやった。」

 →読みかけの書物に目印として挟むもの。枝折り(シおり)から。1級配当で「カン」が音読み。


 【母】


 ●銘仙(メイセン)

 「もっとも後は向いたと云う条、地味な銘仙の羽織の肩には、崩れかかった前髪のはずれに、蒼白い横顔が少し見える。」

 →熨斗糸、玉糸、絹諸撚糸または紡績絹糸で織った絹織物。衣類、座布団、夜具地などにもちいる。縞物、絣物などがあり、実用呉服の需要が多く、とくに伊勢崎、足利、秩父などが主産地だった。

 ●《天竺葵》(ジェラニウム)

 「その窓にはいつ水をやったか、花の乏しい天竺葵が、薄い埃をかぶっている。」

 →ゼラニウム(Geranium)。フウロウソウ科テンジクアオイ属多年草の園芸上の通称。特にモンテンジクアオイ(紋天竺葵)などをいう。花は五弁で赤、白、桃色など。鉢植え、花壇用。

 ●居心(いごころ)

 「しかし前の部屋よりは、広くもあるし居心も好いし、不足を云う理由はないんだから、――それとも何か嫌な事があるのかい?」

 →いごこち。主として江戸後期から明治初期に用いられた。

 ●森とした(シンとした)

 「いつか森とした部屋の中には、かすかに人の泣くけはいがしている。」

 →静かで音や声がまったく聞こえないさま。森閑、森厳。

 ●巌乗(ガンジョウ)、槲(かし)

 「巌乗な槲の窓枠が、ちょうど額縁を嵌めたように見える。」

 →頑丈。「巌」は準1級配当で「いわ」「いわお」「けわ・しい」が訓読み。「巌巒」(ガンラン)。

 →柏(かしわ)。ブナ科の落葉高木。果実はどんぐり。1級配当で「かしわ」「コク」。

 ●たあた

 「まあ、御可愛いたあたですこと。」

 →幼児語で足袋、靴下。「たあたあ」とも。

 ●追善(ツイゼン)、放鳥(ホウチョウ)

 「お隣の赤さんのお追善ですもの。ほら、放鳥って云うでしょう。あの放鳥をして上げるんだわ。文鳥だってきっと喜んでよ。――」

 →死者の冥福を祈るため、仏事、善事、興行などを行うこと。追福とも。

 →放生会や葬儀のとき、功徳のため、捕えておいた鳥を放ちやること。「はなちどり」ともいう。

 ●鍍金(メッキ)

 「男はワイシャツの肩や胴衣に今は一ぱいにさし始めた、眩い日の光を鍍金しながら、何ともその問に答えなかった。」

 →金属や非金属の表面に、装飾やさびどめなどの目的で金、銀などの薄い膜をかぶせること。「鍍」は準1級配当で「ト」、これ一字でも「めっき」。「トキン」との音読みもある。

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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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