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枕上鞍上厠上…good ideaが浮かぶよ〔芥川龍之介作品学習シリーズ(from 「mixi日記」 of char)〕23

  

 芥川転載シリーズ第23回は、本日の3回目の更新です。

 少し先を急ぎ、長めのupとします。本日で「之」の章を終了させます。


 【ある恋愛小説】


 ●哀婉(アイエン)

 「『堀川氏の筆に成れる、哀婉極りなき恋愛小説』とか何とか広告しますよ。」

 →あわれに美しく、そしてしとやかなこと。しとやかさの中に悲しみをたたえているさま。「婉」は1級配当で2月12日付日記の「婉然」で紹介済み。女性が目を潤ませながら色っぽい姿は男にとっちゃたまらんでしょう。

 ●椰子(ヤシ)

 「妙子は大きい椰子の葉の下にじっと耳を傾けている。そのうちにだんだん達雄に対する彼女の愛を感じはじめる。」

 →単子葉植物ヤシ科に属する植物を広く指して言う呼称。単子葉植物としては珍しく木本であり、幹は木化して太くなる。大きいものでは30メートルにも達するが、茎が立ち上がらないものや、草本並みの大きさのものもある。葉は羽状複葉か掌状に裂け、基部は茎を抱き、鞘が茎を包んだり、繊維を茎にまといつかせる。茎に沿って多数の葉を並べるものもあるが、茎の先端部に輪生状に葉が集まるものが多く、ソテツ類に似た独特の樹型を見せる。花は小型で、穂になって生じる。花序の基部には包がある。花びらは小型。熱帯地方を中心に230属、約3500種がある。日本には7種ほどが自生、または自生状態で見られる。しかし、観葉植物として栽培される種が多く、見かける種数ははるかに多い。(以上ウィキペ抜粋)「椰」は1級配当で「ヤ」、これ一字でも「やし」。

 

【文放古】


 ●文放古(ふみほご)

 「これは日比谷公園のベンチの下に落ちていた西洋紙に何枚かの文放古である。」
 
 →文反古・文反故と書くのが一般的。「ふみほうご」「ふみほんご」「ふみほうぐ」とも訓む。用の済んだ手紙。ふみがら。書き損じた手紙。《放古》は当て字で《反古》《反故》。

 ●心頭(シントウ)

 「わたしは心頭に発した怒火を一生懸命に抑えながら、とにかく一応は彼女の論拠に点検を加えようと決心した。」

 →心の中。念頭。〔怒り心頭に発する〕(怒りがこみ上げる、激怒する)はよく「怒り心頭に達する」と誤用されますが、「心頭」の意味が「心の中」と押さえておけば大丈夫でしょう。「頭に血が上る」からの連想から「達する」と勘違いしてしまうので要注意。この場合の「頭」は単に場所を表す接尾辞のようなもので「心」という場所を強調している。〔心頭を滅却すれば火もまた涼し〕の「心頭」も同じ意味で単なる「こころのうち」。

 ●屠蘇(トソ)

 「ピュリタンなのは好いけれども、お屠蘇も碌に飲めない癖に、禁酒会の幹事をしているんですって。」

 →「屠蘇散」を入れた酒・みりんのことで、正月の祝儀として飲む。「屠蘇散」は古代中国の魏の名医華佗の処方という、年始に飲む薬。山椒・防風・白朮・桔梗・蜜柑皮・肉桂皮などを調合し、屠蘇袋に入れて、酒・みりんに浸して飲む。一年の邪気を払い、寿命を延ばすという。日本では平安時代から伝承されている。「屠」は1級配当で「ほふ・る」が訓読み。「蘇」は準1級配当で「よみがえ・る」が訓読み。「紫蘇」(シソ)、「蘇枋」(スオウ)、「蘇鉄」(ソテツ)など植物の名称でよく使われる。この場合は「邪気を屠(ほふ)り、心身を蘇(よみがえ)らせる」という意味とされるが、異説もありこじつけの感もあります。

 ●禁治産(キンジサン)

 「そりゃまだ好いにしても、評判の遊蕩児と来ているんでしょう。そのために何でも父の話じゃ、禁治産か何かになりそうなんですって。」

 →禁治産者(きんちさんしゃ)が一般的。法律用語で、心神喪失の情況にあり、家庭裁判所の審判により禁治産の宣告を受けた者。明治時代に制度化され、文字通り「(家の)財産を治めることを禁ず」という意を持つ。国家権力により私有財産の処分を禁ぜられ無能力者との烙印が捺されること、また禁治産・準禁治産が戸籍に記載されることが、人格的な否定等の差別的な印象を与えたことなどから、「禁治産制度」の利用に抵抗があった。1999年民法改正により2000年4月から成年被後見人と改称され、新たな制度に移行した。

 ●惘れ返る(あきれかえる)

 「従兄の遊蕩をやめさせる道具に使われるだけなんですもの。ほんとうに惘れ返ってものも云われないわ。」

 →はなはだしくあきれる。あきれてものの言い様がない。「惘」は1級配当で「ボウ・モウ」。「惘然」(ボウゼン)、「悵惘」(チョウボウ)、「惘惘」(モウモウ、ボウボウ)。「あきれる」はほかに「呆れる」「飫きれる」「酲きれる」「羨れる」。

 ●詠歎(エイタン)

 「そうそう、あなたは何よりもセンティメンタリズムが嫌いだったわね。じゃもう詠歎はやめにして上げるわ。……」

 →声に出して感嘆すること。感動詞などを用いて強い感動を表現すること。「詠」には「うた・う」の表外読みがあります。


 【十円札】


 ●泰山木(タイサンボク)

 「そのまた胴は窓の外に咲いた泰山木の花を映している。……」

 →モクレン科の常緑高木。高さ約10メートル。北アメリカ南東部の原産で、暖地で観賞用に栽培される。葉は大形、革質で長楕円形、表面は光沢があり、裏面には茶褐色の毛が多い。初夏に白色で芳香のある6~12弁の大輪花を開く。果実は卵形。種子は茶色。漢名は「洋玉蘭」。

 ●沈吟(チンギン)

 「粟野さんは保吉の教科書を前に、火の消えたパイプを啣えたまま、いつもちょっと沈吟した。」

 →静かに口ずさむこと。深く考え込むこと。憂え歎くこと。物思いに耽る。

 ●驢馬(ロバ)

 「しかし保吉に芸術のないのは驢馬に草のないのも同然である。」

 →ウマ科の哺乳類。肩高120センチメートルほど。毛色は灰色か褐色で、背に黒い線を持つ。鬣は黒褐色。耳が大きく尾の先に長い毛の房がある。性質が温和で粗食に耐え、主として荷物を運ぶのに使う。うさぎうま。「驢」は1級配当で「ロ・リョ」「うさぎうま」。兎馬とも書く。「驢鳴犬吠」(ロメイケンバイ=下手で詰まらない文章)。「驢鳴狗吠」(ロメイクバイ)も同義。

 ●饑渇(キカツ)

 「六十何銭かは堀川保吉に精神的饑渇の苦痛を与えた。」

 →うえとかわき。食物や飲物がない苦しみ。hunger and thirst 、starvation。「饑」は1級配当で「キ」、「う・える」が訓読み。「ひだる・い」とも訓む。「飢」の書き換え。「饑窮」(キキュウ)、「饑溺」(キデキ)、「饑餓」(キガ)、「饑饉」(キキン)、「饑歳」(キサイ)、「饑狼」(キロウ=飢えた狼)。「うえる」はほかに、「飢える」「饉える」「餒える」「秧える」「餓える」。

 ●痛痒(ツウヨウ)

 「けれども粟野廉太郎には何の痛痒をも与えないであろう。」

 →いたみとかゆみ。「~を感じない」「~を与えない」など否定形で用いることが多く、「いたくもかゆくもない。何らの利害や影響をも受けない、与えない」といった意味。「痒」は1級配当で「かゆ・い」が訓読み。「搔痒」(ソウヨウ)、「隔靴掻痒」(カッカソウヨウ)、「痒疹」(ヨウシン)。「かゆい」はほかに「癢い」(1級配当、ヨウ)がある。「技痒」「技癢」(以上、ギヨウ=見せびらかしたくてうずうずすること)は既出です。

【大導寺信輔の半生】


 ●節倹(セッケン)

 「その為には勿論節倹の上にも節倹を加えなければならなかった。」

 →費用を省いて質素にすること。倹約。節約。倹節。thrift。対義語は「奢侈」(シャシ)、「贅沢」ゼイタク)。「倹」には「つま・しい」「つづま・やか」の表外読みが存るので要注意です。「約」も「つづま・やか」。

 ●罫紙(ケイシ)

 「国木田独歩を模倣した彼の『自ら欺かざるの記』はその黄ばんだ罫紙の一枚にこう言う一節を残している。――」

 →罫線を引いた紙。「罫」は準1級配当で「ケイ」。文字をまっすぐに書くために引いた線。すじめ。わく。格子形の線。「罫線」(ケイセン)、「罫書き」「罫描き」(以上、ケがき)。

 ●勤倹尚武(キンケンショウブ)

 「父も、――如何に父は真事しやかに『勤倹尚武』を教えたであろう。」

 →生活を質素にして、武芸に励むこと。「勤倹」は「勤勉倹約」で、よく働き倹約に勤めること。「尚武」は武道を尊ぶ意。武士としての生活態度として重んじられた考え方。

 ●奢侈文弱(シャシブンジャク)

 「父の教えた所によれば、古い一冊の玉篇の外に漢和辞典を買うことさえ、やはり『奢侈文弱』だった! 」

 →おごり、ぜいたくを尽くして、文章ばかりにふけって、おとなしく、気が弱いこと。「奢侈」は分限を超えた暮らしをすること。「文弱」は文事(文学・学問上のこと)にのみふけって、やさしいこと。「奢」は1級配当で「シャ」「おご・る」。「華奢」(カシャ)、「驕奢」(キョウシャ)、「豪奢」(ゴウシャ)、「奢靡」(シャビ)。「侈」は1級配当で「シ」「おご・る」。「侈麗」(シレイ)、「驕侈」(キョウシ)、「放辟邪侈」(ホウヘキジャシ)、「華侈」(カシ)、「侈泰」(シタイ)=「倨傲」(キョゴウ)。
 「おごる」はほかに、「靡る」「蹻る」「蹇る」「踞る」「敖る」「夸る」「僣る」「僭る」「慠る」「傲る」「偃る」「倨る」「伉る」「溢る」「浩る」「汰る」「夷る」「喬る」「泰る」。

 ●自彊術(ジキョウジュツ)

 「彼はその自彊術の道具を当然『自ら欺かざるの記』に求めた。――」

 →大正5年(1916)、中井房五郎氏によって創案された日本最初の健康体操と医療術。体操は31の動作から構成され、その動作を順番に行うことで全身の関節を動かすことにつながり、全身の調和をはかります。療法の天才といわれた中井氏の治療術から工夫されたもので、単なる健康体操ではなく“万病克服の治療体術”との触れ込みが、自彊術普及会のオフィシャルサイトに出ています。
 「易経」(乾象)に「天行健なり、君子以て自彊して息(や)まず」があります。「天の運行は健やかで、一刻も休むことがない。君子もそれに則って勤めてやむことのない努力をしなければならない」という意味。「自彊」は「みずから黽めて励むこと」。「彊」は準1級配当で「キョウ」「つよ・い」「し・いる」。「勉彊」(ベンキョウ)=「勉強」。

 ●軽佻浮薄(ケイチョウフハク)

 「その二は軽佻浮薄也。軽佻浮薄とは功利の外に美なるものを愛するを言ふ。」

 →考えや行動が軽はずみで、浮ついているさま。考えが浅はかで、上滑りで移り気なさま。「佻」は1級配当で「チョウ」「かる・い」。「軽窕浮薄」とも書く。類義語に「軽佻浮華」(ケイチョウフカ)、「軽佻佞巧」(ケイチョウネイコウ)、「軽率短慮」(ケイソツタンリョ)、「鼻先思案」(はなさきシアン)。

 ●筐底(キョウテイ)

 「彼の筺底の古写真は体と不吊合に頭の大きい、徒らに目ばかり赫かせた、病弱らしい少年を映している。」

 →箱の底。箱の中。「篋底」とも書く。2008年3月1日付「筐」で紹介済み。「筐底に秘す」は「原稿などを未発表のままにお蔵入りさせる」。同音異義語に「胸底」(キョウテイ)があります。こちらの「胸底に秘す」は「思いを胸に仕舞い込んで外に出さない」。
「筐体」(キョウタイ)は「業界用語。特に電器製品などの外箱を指す」。

 ●操行点(ソウコウテン)

 「信輔は試験のある度に学業はいつも高点だった。が、所謂操行点だけは一度も六点を上らなかった。」

 →「通知表」(通信簿)の成績評価目のうち、日ごろの生活態度を点数化したもの。marks of conduct。「操行」は「行い」「品行」「身持ち」「身上」「素行」。
 岡本かの子の「老妓抄」に「みち子は柚木の膝の上へ無造作に腰をかけた。様式だけは完全な流眄(ながしめ)をして『どのくらい目方があるかを量ってみてよ』柚木は二三度膝を上げ下げしたが『結婚適齢期にしちゃあ、情操のカンカンが足りないね』『そんなことはなくってよ、学校で操行点はAだったわよ』みち子は柚木のいう情操という言葉の意味をわざと違えて取ったのか、本当に取り違えたものか――」との「お洒落」なやり取りのシーンが見えます。

 ●厠上(シジョウ)

 「彼は度たび本を前に夜を徹したことを覚えている。いや、几上、車上、厠上、――時には路上にも熱心に本を読んだことを覚えている。」

 →「厠」は「かわや」、トイレのこと。「厠上」は「トイレの上」というよりは「トイレの中」。「厠」は1級配当で「シ」「かわや」。「かわや」はほかに、「溷」「廁」(異体字)。「溷廁」(コンシ)、「上廁」(ジョウシ)、「雑廁」(ザッシ=いりまじること)、「廁牀」(シショウ)、「廁溷」(シコン)。
 寺田寅彦の「路傍の草」の冒頭に、「『三上』という言葉がある。枕上鞍上厠上合わせて三上の意だという。『いい考えを発酵させるに適した三つの環境』を対立させたものとも解釈される。なかなかうまい事を言ったものだと思う。しかしこれは昔のシナ人かよほど暇人でないと、現代では言葉どおりには適用し難い。」があります。

 ●吝嗇(リンショク)、譏(そしり)

 「第三に吝嗇の譏さえ招いだ彼の節倹のおかげだった。」

 →けちん坊。ひどく物惜しみすること。しみったれ。stinginess、miser。この熟語はともに1級配当で「吝」は「リン」、「嗇」は「ショク」。ともに訓読みは「お・しむ」「しわ・い」「やぶさ・か」。「吝惜」(リンセキ)、「鄙吝」(ヒリン)、「吝情」(リンジョウ)、「吝気」(リンキ)、「吝愛」(リンアイ)、「吝心」(リンシン)、「慳嗇」(ケンショク)、「孅嗇」「繊嗇」(以上、センショク)。
ありあまる時間や金がありながら、労力などを出し惜しみすること。  「楽して漢字検定1級を合格しよう」なんて言う輩(やから)はまさに「吝嗇」だと私は思うし、抑何のために目指すのかが分からない。「楽して…」と言った時点で論理矛盾を露呈している。1級の勉強は「プロセス」こそが問われるもの、そんな「捷径」などありはしない。合格という結果のみを追い求めるからなのでしょうが無意味。こんなに覚える漢字や語彙が溢れている世界では、四の五の言わずどっぷり浸かって貪欲に逃げることなく正面から立ち向かうしかない。どんなに時間がかかろうとも、それこそが捷径なのだから。

 →落ち度や欠点を見つけて、人を批難し、けなし、悪し様に言うこと。「譏」は1級配当で「キ」「そし・る」。「譏議」(キギ=そしりきらうこと)、「刺譏」(シキ)、「非譏」「誹譏」(以上、ヒキ)、「譏誚」(キショウ)、「譏笑」(キショウ)、「譏嫌」(キゲン)、「譏訶」「譏呵」(以上、キカ=きつくそしりしかる)、「譏察」(キサツ)、「譏讒」(キザン)、「譏刺」(キシ)、「譏揣」(キシ)、「譏排」(キハイ)、「譏評」(キヒョウ)、「譏諷」(キフウ)、「譏謗」(キボウ)、「譏誹」(キヒ)。
 「そしり」はほかに、「誚り」「誹り」「非り」「呰り」「毀り」「疵り」「詛り」「詆り」「詬り」「誣り」「譖り」「譛り」「讒り」「貶り」「刺り」「謗り」と多数あり。

 ●対蹠点(タイセキテン)

 「その為に又下流階級に、――彼等の社会的対蹠点に病的な惝怳を感じていた。」

 →地球の反対点、真裏の点。「タイショテン」(もちろん誤読の慣用化)とも読む。「対蹠」の「蹠」(1級配当で「セキ・ショ」)は「あしうら」とも訓み、「足裏を対する」という意味で即ち「正反対」。西洋言語の「antipode」は、“anti”(反対) と“pode”(足) の合成語で、「足を対した所」という意。日本の対蹠点(真裏)は、アルゼンチンの大西洋上に位置しています。
 異体字に「跖」(セキ、あしうら)があります。古代中国の大泥棒の名前でもあり、「盗跖」(トウセキ)ともいう。ここから「跖狗吠尭」(セキクハイギョウ=善悪ではなく忠義を尽くすこと)。
 「惝怳」(ショウコウ、ショウキョウ)は既出(ともに配当外、2008年3月1日)で、「失望して面白くないさま」。

【早春】


 ●《蜥蜴》(とかげ)

 「しかしこの標本室へ来れば、剥製の蛇や蜥蝪のほかに誰一人彼等を見るものはない。」

 →爬虫綱有鱗目トカゲ亜目に分類される構成種の総称。ピンチになると自ら尾を切って逃げるが、尾はまた再生する。いずれも1級配当で「セキエキ」との音読みもある。「とかげ」は《石竜子》の熟字訓もある。かがみそ。かがみっちょ。

 ●錦鶏鳥(キンケイチョウ)

 「カナリヤ、錦鶏鳥、蜂雀、――美しい大小の剥製の鳥は硝子越しに彼を眺めている。」
 →「錦鶏」のこと。キジ目キジ科の鳥。全長は雄が約1メートル、雌が65センチメートル。雄は兜状の冠羽と腰が黄金色、胸から腹が赤く、尾羽は長く茶色、背は緑。雌は全体に茶色で黒斑がある。中国原産で、飼い鳥とされる。あかきじ。にしきどり。「錦鶏間」(きんけいのま)というのがあって、「京都御所の居間の名。その襖絵に錦鶏が描かれている」。極彩色の翼をひろげ、ひときわ高く鳴き声をあげることから、大吉運を招き、貴家を末永く富栄させると言われており、中国で古来、王侯貴族の間で莫大な財運・金運を運ぶ鳥として珍重されてきた。

 ●容色(ヨウショク)

 「容色はまだ十年前と大した変りも見えないのであろう。目かたも、――保吉はひそかに惧れている、目かただけはことによると、二十貫を少し越えたかも知れない。……」

 →容貌と顔色。みめかたち。また、みめかたちがよいこと。美貌。女性にとっては永遠のテーマである美の追求。田山花袋は「蒲団」で「女性には容色(きりょう)と謂うものが是非必要である。容色のわるい女はいくら才があっても男が相手に為ない。」と、「きりょう」と当て字訓みをさせています。また、小野小町が「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに」(百人一首)と詠んでいるのは、自身の容色の衰えを嘆き悲しんでいるのです。
 ちなみに「一貫」は「3・75キログラム」ですから、「二十貫」はえ~っと、「…」(絶句)。迚も恐くて書けませんがな。容色衰えざるも目方はドン。これって幸せ太り?容色衰えるも目方はスリムとどっちがいいっすか?ま、元々の容色のレベルと、その衰え方の程度によりますかね。


 【伝吉の敵打ち】


 ●《乾児》(こぶん)

 「伝吉はたちまち枡屋を逐われ、唐丸の松と称された博徒松五郎の乾児になった。」

 →やくざの親分から盃をおろされた子分。若衆、若者、若いの、若中、乾分、三下と異称も多数。この当て字は検定試験に出るかも。中国語から来ているようです。「乾」の連想から「漢字(カンジ)、漢文・古文(コブン)」で覚えたらいかがでしょう?

 ●横逆(オウゲキ)

 「伝吉、一郷の悪少と共に屡横逆を行えりと云う。」

 →わがままで道理に反すること。また、そのさま。横暴。「オウギャク」と読む方が一般的です。
 横逆困窮は、是れ豪傑を煉するの一副の鑪錘なり。能く其の煉を受くれば、即ち身心交も益し、其の煉を受けざれば、即ち身心交も損す。(菜根譚前集127) この場合の「横逆」は「逆境。災難」。

 ●〔積善の家に余慶あり〕(セキゼンのいえにヨケイあり)

 「伝吉はその後家富み栄え、楽しい晩年を送りました。積善の家に余慶ありとは誠にこの事でありましょう。」

 →善行を積み重ねた家には、必ず思い掛けない良い事が起こり、幸福になる。また、子孫にまで慶事が起こるものである。「余慶」は「吉事」の意。出典は「易経-坤文言」の「積善之家必有余慶、積不善之家必有余殃」。後段の対句は〔積悪の家に余殃あり〕(セキアクのいえにヨオウあり)。「殃」は1級配当で「オウ」「わざわ・い」。「殃禍」(オウカ)、「禍殃」(カオウ)、「咎殃」(キュウオウ)、「余殃」(ヨオウ)は「災禍」。〔殃及池魚〕(わざわいちぎょにおよぶ)は「関係のないものが巻き添えを食い、思いがけない災難にあうこと。側杖を食らう」。
 徳は事業の基なり。未だ基の固からずして、棟宇の堅久なる者有らず。心ある者は、後裔の根なり。未だ根の植たずして、枝葉の栄茂する者有らず。(菜根譚前集156)
 「積善余慶」を推し進める心を説いています。


 【報恩記】


 ●《阿媽港》(あまかわ)

 「苗字は――さあ、世間ではずっと前から、阿媽港甚内と云っているようです。」

 →マカオ。「澳門」「阿馬港」「亜媽港」「亜嫡港」「媽港」「濠鏡」「天川」などの表記もあります。中国南東部、広東省の広東湾南岸、珠江(シュコウ)河口部にある特別行政区の港湾都市。マカオ半島とタイパ島・コロワン島から成る。半島の丘陵は風景佳良・気候温和。香港の対岸にあり、もとポルトガルの植民地。

 ●通辞(ツウジ)

 「そう云えばつい二三年以前、阿媽港日記と云う本を書いた、大村あたりの通辞の名前も、甚内と云うのではなかったでしょうか?」

 →通訳。通訳をする人。特に長崎で通訳や貿易事務を行なった江戸幕府の役人。オランダ通詞と唐通事とがあった。通事、通詞、通弁とも。

 ●僭上(センジョウ)

 「いや、――失礼は赦して下さい。(微笑)伴天連のあなたを疑うのは、盗人のわたしには僭上でしょう。」

 →身分を越えて出過ぎた行いをすること。身分を弁えず差し出がましい行為をするさま。分不相応な振る舞いをすること。「センショウ」とも。「僭上張る」。「僭」は1級配当で「セン」「おご・る」。「僭越」(センエツ)、「奢僭」(シャセン)、「踰僭」(ユセン)、「僭主」(センシュ)、「僭称」(センショウ)、「僭用」(センヨウ)、「僭する」(センする)、「僭踰」(センユ=ですぎたまね)、「僭擬」(センギ)、「僭号」(センゴウ)、「僭恣」(センシ)、「僭縦」(センショウ)。

 ●凩(こがらし)、雲水(ウンスイ)

 「もう二年あまり以前の話ですが、ちょうどある凩の真夜中です。わたしは雲水に姿を変えながら、京の町中をうろついていました。」

 →秋から初冬にかけ吹く、強く冷たい風。1級配当の国字です。木枯らし。

 →所定めず諸国を行脚、遍歴修行する禅僧。行脚僧。雲衲(ウンノウ)。「行雲流水」(コウウンリュウスイ=自然の成り行きに任せて行動する。一所不住、雲遊萍寄ウンユウヒョウキ)から来ている言葉。空に漂う雲、流れる水のように自由気儘。

 ●分限者(ブゲンシャ)

 「しかしとにかく沙室や呂宋へ、船の一二艘も出しているのですから、一かどの分限者には違いありません。」

 →刻苦精励して富を築いた金持ちのこと。成金。資産家。財産家。長者。富豪。素封家。man of wealth。

 ●閂(かんぬき)

 「それを実地に役立てさえすれば、大きい錠前を扭じ切ったり、重い閂を外したりするのは、格別むずかしい事ではありません。

 →両開きの扉が開かないように横に渡して固定した木。かんぎ。1級配当で音読みは「サン」。

 ●抛げ銀(なげがね)

 「さあ、それが愚痴と云うものじゃ。北条丸の沈んだのも、抛げ銀の皆倒れたのも、――」

 →投げ銀。鎖国以前、江戸時代初期の頃、朱印船貿易で海外貿易に投資すること。具体的には、日本の豪商たちが、ポルトガル人・中国人および海外に行く日本人に対して、航海貿易の資金として投機的に貸し付けた。海上銀。海難するなどリスクが高いため、投機的な投資や無駄な投資のたとえにもいう。そういう豪商のことを「投げ銀商人」とも呼んだ。「~が倒れる」はそうした金が踏み倒され、何の利益も生まず投資が失敗したことをいう。「唐へ投銀」ともいいました。いわば博奕ですね。

 ●大明竹(ダイミンチク)

 「雪の深い茶室の前には、大明竹の垂れ伏したあたりに、誰か二人掴み合っている――と思うとその一人は、飛びかかる相手を突き放したなり、庭木の陰をくぐるように、たちまち塀の方へ逃げ出しました。」

 →「タイミンチク」と読むのが一般的。ほかに、「ダイミョウチク」の異称もある。イネ科メダケ属の多年生常緑ササ類。沖縄原産。樹高は7~8メートル、径は1~2センチメートル。茎は密に束生し、葉は線状の披針形で先が尖る。地下茎は遠くへ走らず密生し,枝葉がよく繁茂,葉は鮮緑色で光沢があり、細長くて先端が下垂れする。柔らかい感じで適当の高さに刈り込むと美しく、生け垣・目隠しに適す。

 ●攀じ登る(よじのぼる)

 「雪のはだれる音、塀に攀じ登る音、――それぎりひっそりしてしまったのは、もうどこか塀の外へ、無事に落ち延びたのでございましょう。」

 →物につかまってのぼる。すがりついてのぼる。「攀」は1級配当で「ハン」「よ・じる」「すが・る」。「攀折」(ハンセツ)、「追攀」(ツイハン)、「登攀」(トウハン)、「攀桂」(ハンケイ=科挙に合格、立身出世すること)、「攀登」(ハントウ)。このほか、「すがる」の意味では、「攀轅臥轍」(ハンエンガテツ=立派な人の留任を希望して引きとめること)→「轅に攀りて轍に臥す」、「攀竜」(ハンリョウ)、「攀恋」(ハンレン)=「攀慕」(ハンボ)、「攀附」(ハンプ)、「攀竜附鳳」(ハンリョウフホウ=家来が優れた君主にたよって功績をたてること)、「攀縁」「攀援」(以上、ハンエン)があります。
 「明礬」(ミョウバン、既出)は下が「石」です。「手」との違いに注意しましょう。「樊籠」(ハンロウ)の「樊」(まがき、とりかご)も似ているのでしっかり押さえて。「攀」「礬」「樊」の三つはセットで覚えましょう。
 ちなみに「よじる」は「捻る」「捩る」もありますが、こちらは「ねじる」という意味。「腹を捻って笑う」。

 ●回向(エコウ)

 「が、せめてもの恩返しに、陰ながら回向をしてやりたい。――こう思ったものでございますから、わたしは今日伴もつれずに、早速一条戻り橋へ、その曝し首を見に参りました。」

 →故人を偲んで行う法要などをさす。読経や供養などの仏事を営み、冥福を祈ること。元々は、自分の善行によって得た清い心を周りの人にささげ、向け回すことを意味する大乗仏教の考え方。「廻向」とも書き、「廻」は準1級配当で「カイ・エ」「まわ・す」「めぐ・る」「まわ・る」「めぐ・らす」。「回」の書き換え字です。

 ●瘧(おこり)

 「が、声を揚げるどころかわたしの体は瘧を病んだように、震えているばかりでございました。」

 →まず強い悪寒がきて、それが極まると高熱に変わる発作を、一日に数回から、月に数回の頻度で繰り返す病気。マラリアの熱型。風邪をこじらせても同じ状態になることがあり、日常の臨床でも時に出くわすことがあります。「温瘧」はその中でも悪寒少なく熱ばかりものです。わらわやみ。ときのけ?「瘧」は1級配当で「ギャク」が音読み。「瘧疾」(ギャクシツ)、《瘧草》(えやみぐさ)。

 ●詐る(かたる)

 「殺生関白の太刀を盗んだのも甚内です。沙室屋の珊瑚樹を詐ったのも甚内です。」

 →だまして金品などを取ること。「いつわ・る」(表外訓み)とも読めますが、文脈からは「かた・る」。しかしながら、「騙る」と書く方が一般的でしょう。熟語では、「詐欺」「詐取」「詐称」「奸詐」「譎詐」「詐術」「詭詐」「狡詐」。

 ●赧ら顔(あからがお)

 「が、柳町の廓にいたのは、まだ三十を越えていない、赧ら顔に鬚の生えた、浪人だと云うではありませんか? 」

 →赤い顔。類義語は「赭顔」(シャガン)。「赧」は1級配当で「タン・ダン」が音読み、「あから・める」「は・じる」。「火であぶったようにあかくなる。転じて、恥じて顔をあかくする」という意。「愧赧」(キタン)、「赧顔」(タンガン)、「赧面」(タンメン)、「赧愧」(タンキ)=恥じいって赤面すること。「羞赧」(シュウタン)、「赧然」(タンゼン)、「赧赧然」(タンタンゼン)=以上、恥じらうさま。
 「はじる」は、ほかに「靦じる」「瞞じる」「慚じる」「慙じる」「怩じる」「忸じる」「羞じる」「愧じる」。


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漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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