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「楊梅瘡」って何?…南京に行ったらTake Care〔芥川龍之介作品学習シリーズ(from 「mixi日記」 of char)〕⑭

 芥川転載シリーズの第14回です。「南京の基督」は異国情緒たっぷりながら、男にとってはとってもこわ~いお話です。女が純真無垢っぽいだけに尚更おどろおどろしい…。遊びもお気をつけて…。

 

 

【女】

 ●庚申薔薇(コウシンバラ)

 「雌蜘蛛は真夏の日の光を浴びたまま、紅い庚申薔薇の花の底に、じっと何か考えていた。」

 →(60日に1度めぐる庚申日ごと=隔月ごと、に花が咲くことから命名)バラ科の常緑低木。中国原産。高さ約1・5メートル。花は紅色または桃色で四季咲き。庚申日ごとに咲くというのは正しくないでしょうが、季節に関係なく年間を通じて複数回、花を付けることから言うのでしょう。月季、四季花とも。
 民間信仰の「庚申待ち」は、人身中にいる三尸(さんし)が体を蠧むのを防ぐため、庚申日の夜に一晩中起きているという風習です。中国の道教の守庚申に由来する禁忌で日本では平安時代に起こり江戸時代に流行しました。
 で、なぜに薔薇の名前になったのか?花を付けている期間が長く、江戸時代これがには長春花とも呼ばれていました。庚申日のたびに夜を明かしながら、「永遠の長い春」を希求した人々の思いが、庚申薔薇と結びついたのではないでしょうか。枯れては再び咲き誇り、命の限りがあるのかないのか。限りがないからこそ求めてしまう哀しい。せめて花だけは永に…。

 ●翅音(はおと)

 「すると空に翅音がして、たちまち一匹の蜜蜂が、なぐれるように薔薇の花へ下りた。蜘蛛は咄嗟に眼を挙げた。」

 →虫の飛ぶ音。「ぶ~~~ん」。「翅」は1級配当で「シ」「(主に虫の)はね」「つばさ」「(魚の)ひれ」。昆虫だけでなく鳥類にも用います。まっすぐにぴんと伸びた短い羽を指します。「翅翼」(シヨク=鳥の翼、「翼翅」ヨクシ)、「魚翅」(ギョシ)、「羽翅」(ウシ)、「双翅」(ソウシ)、「比翅」(ヒシ)、「後翅」(ゼンシ)、《翅斑蚊=羽斑蚊》(はまだらか)、《薄羽蜉蝣》(うすばかげろう)は正確には《薄翅蜉蝣》でしょう。
 ちなみに「魚翅」は「フカヒレ(鱶鰭)」のことで中国語では「ユイチー( yu chi )」。フカヒレ料理にも「排翅」と「散翅」というのがあって、前者は姿煮にしたもの、後者は繊維状にばらばらにほぐしたもの。

 ●啜る(すする)

 「雌蜘蛛はじっと身じろぎもせず、静に蜂の血を啜り始めた。」

 →液状のものを口に少しずつ吸い込む。垂れた洟(はなじる)を息とともに吸い込む。「啜」は1級配当で「セツ・テツ」が音読み。「啜汁」(セツジュウ=甘い汁を吸う)、「啜泣」(テッキュウ=啜り泣く)、「啜賺」(セッタン=巧みに言葉をつづる。内容無い言葉で賺す)、「餔啜」(ホセツ)。「すする」はほかに「る」「歃る」「哈る」。このうち、「歃血」(ソウケツ)は「春秋時代、諸侯が盟約するとき、大皿に入れたいけにえの血を互いにすすって、誓いを守り変心しない心を表した。牛耳を取る」。
 昔懐かしいTV時代劇の桃太郎侍が数え歌風に吟じる決め台詞で「ひとぉ~つ、人の世の、生き血を啜り、…」があります。「ふたぁ~つ、不埒な悪行三昧、みぃ~っつ、醜い浮世の鬼を、退じてくれよう、桃太郎ぉ~っ」と続きます。
 「身じろぎ」は「《身動》ぎ」とも書きます。

 ●殺戮(サツリク)

 「恥を知らない太陽の光は、再び薔薇に返って来た真昼の寂寞を切り開いて、この殺戮と掠奪とに勝ち誇っている蜘蛛の姿を照らした。」

 →むごたらしく多くの人々を殺すこと。「戮」は1級配当で「リク」。「ころ・す」が訓読み。「戮殺」(リクサツ)、「戮没」(リクボツ)、「戮笑」(リクショウ)、「戮辱」(リクジョク=はじ)、「戮力」(リクリョク)→「戮力同心」(リクリョクドウシン=一致団結)、「刑戮」(ケイリク)、「大戮」(タイリク)、「誅戮」(チュウリク)。似た漢字に「勠」(1級配当、「リク」「あわ・せる」)があり、こちらは「勠力」(リクリョク)」のみ。
 「ころす」はこのほか、「誅す」「虔す」「獮す」「殪す」「戡す」「弑す」「夷す」「劉す」。

 ●獰猛(ドウモウ)

 「幕はまるで円頂閣のような、ただ一つの窓を残して、この獰猛な灰色の蜘蛛を真昼の青空から遮断してしまった。」

 →性質があらく猛々しいこと。性質が悪く、強いさま。残忍で凶暴なこと。「獰」は1級配当で「ドウ」「わるい」「にくにくしい」。「獰悪」(ドウアク)、「獰鱗」(ドウリン=獰猛な魚、ブラックバスとか?)、「獰飆」(ドウヒョウ=おおかぜ)。


 【南京の基督】


 ●私窩子(シカシ)

 「少女は名を宋金花と云って、貧しい家計を助ける為に、夜々その部屋に客を迎える、当年十五歳の私窩子であった。」

 →淫売婦。売春婦。私娼。「窩」は1級配当で「カ」「あな」「むろ」「かく・す」「すみか」。この場合は「すみか」ですね。「家窩」(カカ)、「腋窩」(エキカ)、「眼窩」(ガンカ)、「心窩」(シンカ)、「蜂窩」(ホウカ=蜂の巣)、「燕窩」(エンカ=燕の巣)、「山窩」(サンカ=村里に定住せず山間を転々とし竹細工や狩猟をして暮らした民族)、「窩蔵」(カゾウ=犯罪人を窩ったり、盗品を窩したりすること)、《窩主買》(けいずかい=盗品をさばく、胡買)。

 ●鴉髻(アケイ)

 「が、金花は彼の腕に、鴉髻の頭を凭せながら、何時もの通り晴れ晴れと、糸切歯の見える笑を洩らした。」

 →女の黒いまげ。女の黒い髪。高く結った髪が鴉の濡れ羽色であるさま。「鴉鬟」(アカン)、「鴉鬢」(アビン)ともいう。「鴉」は1級配当で「ア」「からす=烏」「くろい」。「鴉軋」(アアツ)、「鴉黄」(アコウ)、「寒鴉」(カンア)、「暁鴉」(ギョウア)、「乱鴉」(ランア)、「鴉片」(アヘン=阿片)、「鴉鷺」(アロ=黒と白)、四字熟語は「鴉雀無声」(アジャクムセイ=ひっそり静か)、「鴉巣生鳳」(アソウセイホウ=鳶が鷹を生む)。「髻」は1級配当で「ケイ」「もとどり」「みずら」「たぶさ」。これまでも何度か取り上げましたが、髪の毛をお団子のように纒めたもの。「宝髻」(ホウケイ)、「肉髻」(ニッケイ)、「螺髻」(ラケイ)、「椎髻」(ツイケイ)。

 ●楊梅瘡(ヨウバイソウ)

 「所が彼是一月ばかり前から、この敬虔な私窩子は不幸にも、悪性の楊梅瘡を病む体になった。」

 →梅毒、黴毒。「楊梅」はヤマモモの漢名。「瘡」は1級配当で「ソウ」「かさ」「もがさ」「できもの」「はれもの」。進行の第2期に見られる赤い丘疹が「楊梅」の実に似ているところから名づけられた。いつのまにか「楊」が取れ、梅毒になった。鼻骨が陥没するこわ~い病気です。これ以上突っ込むのやめます。

 ●汞藍丸(コウランガン)、迦路米(カロマイ)

 「その後又やはり朋輩の毛迎春は、彼女自身が服用した汞藍丸や迦路米の残りを、親切にもわざわざ持って来てくれた。」

 →いずれも梅毒治療の漢方薬。詳しい資料は見当たりませんでした。「汞」は1級配当で「コウ」「みずがね」。金属元素の「水銀 Hg」。「昇汞」(ショウコウ)は「塩素と水銀の化合物。水銀の塩化物のひとつである塩化水銀(Ⅱ)。組成式はHgCl2。。昇汞水は防腐・消毒剤に使用するが毒性が強い」。塩化水銀(Ⅰ)は「甘汞(カンコウ)」。「汞和金」(コウワキン)は「水銀と他の金属との合金。歯科治療などに用いる。アマルガムamalgam」。「雷汞」(ライコウ)、「白降汞」(ハッコウコウ)。

 ●画舫(ガボウ・ガホウ)

 「この間肥った奥さんと一しよに、画舫に乗っていた人かしら。」

 →画を書いたり色を塗ったりしてして、美しく飾った遊覧船。例えば、イタリアのベニスにある名物の小舟であるゴンドラ。当て字で《画舫》(ゴンドラ)→漱石の「三四郎」にあります。「舫」は1級配当で「ホウ」「もや・う」。「連舫」(レンホウ)、「舫人」(ホウジン=船頭)。「舫艇」(ホウテイ)、「舫舟」(ホウシュウ)。「舫船」(もやいぶね・むやいぶね)は、「互いにつなぎあわせられている二隻の船」。

 ●絳紗(コウシャ)

 「彼女の椅子の後には、絳紗の帷を垂れた窓があって、その又窓の外には川があるのか、静な水の音や櫂の音が、絶えず此処まで聞えて来た。」

 →赤色の紗(うすぎぬ)。「絳」は1級配当で「コウ」「あか」。深い赤。濃い赤。深紅。もともとは、絹の染色で黒味を帯びた赤色。「絳裙」(コウクン=芸妓)、「絳帳」(コウチョウ)、「絳桃」(コウトウ)、「絳蠟」(コウロウ)、「絳英」(コウエイ)、「絳河」(コウカ=天の川)、「絳脣」(コウシン=色っぽいクチビル)、「絳裳」(コウショウ=芸妓)。
 「紗」は準1級配当で「サ・シャ」「うすぎぬ」。「錦紗」(キンシャ)、「更紗」(さらサ)、「紗綾」(サや)、「袱紗」(フクサ)、「羅紗」(ラシャ)。

 ●小舸(ショウカ)

 「が、埃臭い帷を垂れた、小舸のような寝台の中には、さすがにまだ生暖い仄かな闇が残っていた。」

 →小さい早舟。小早(こばや)。「舸」は1級配当で「カ」「ふね」「おおぶね」。「舸船」(カセン)、「荊軻」(ケイカ)、「軽舸」(ケイカ)、「走舸」(ソウカ)、「舸艦」(カカン)。

 ●糯米(もちごめ)

 「しかし血色の悪い頬には、昨夜の汗にくっついたのか、べったり油じみた髪が乱れて、心もち明いた唇の隙にも、糯米のように細い歯が、かすかに白々と覗いていた。」

 →糯稲(もちいね)から取れる米で、粘りが強く餅や赤飯とする。もちよね。「糯」は1級配当で「ダ・ナ」「もちごめ」。対義語は「粳」(うるち=炊いたとき糯米のような粘り気を持たない普通の米。うるごめ。うるしね。うるちまい)。「粳稲」(コウトウ)、「粳糧」(コウリョウ)。

 ●《襯衣》(したぎ)

 「彼女は思はず襯衣の儘、転ぶように寝台を這ひ下りると、冷たい敷き石の上に跪いて、再生の主と言葉を交した、美しいマグダラのマリアのように、熱心な祈祷を捧げ出した。……」

 →上半身に着る洋風の肌着。襦袢(ジュバン)。通常は、中着や上着として着る衣服、ワイシャツなどをいう。「シンイ」と音読みもする。「襯」は1級配当で「シン」「はだぎ」「じゅばん」。「襯衫」(シンサン=はだぎ)、「襯紙」(シンシ=書物や器の間に挟んで保護する紙。当て紙。はさみ紙)。「親しく(肌に)くっつく衣」で「したぎ・シャツ」と覚えましょう。熟字訓問題では頻出。

 

【捨児】


 ●黄八丈(きハチジョウ)

 「何でも古い黄八丈の一つ身にくるんだまま、緒の切れた女の草履を枕に、捨ててあったと云う事です。」

 →八丈絹の一種。八丈島のハチジョウカリヤスで糸染めした黄色の地に鳶・黒色などの縞・格子柄を表した絹織物。本産地は八丈島。

 ●樒(しきみ)

 「この時の事は後になっても、和尚贔屓の門番が、樒や線香を売る片手間に、よく参詣人へ話しました。」

 →シキミ科の常緑高木。寺院に多く植栽される。3~4月頃に淡黄色というよりは黄色がかった白色の花をつけ、夏の頃に青い果実を実らる。古代には榊と同様に神事に用いられたといわれるが、その後仏事に用いるようになった。そのため、神式の「榊」(準1級配当国字)に対応させる形で「」(木偏に佛、「佛」は仏の旧字体)という1級配当の国字もある。日蓮正宗などでは樒の枝葉を仏前に供える。浄土真宗では、華瓶(けびょう)という仏具に樒の枝葉を挿して、本尊前の上卓の上に供える。芳香があるため線香や抹香の材料に用いられた。全体にアニサチンなどの有毒物質を含み、特に果実に多く、食べれば死亡する可能性があるほどに有毒である。樒の果実は植物としては唯一、劇物に指定されている。(以上ウィキペディアから抜粋)

 ●畸人(キジン)

 「日錚和尚と云う人は、もと深川の左官だったのが、十九の年に足場から落ちて、一時正気を失った後、急に菩提心を起したとか云う、でんぼう肌の畸人だったのです。」

 →(奇人とも)性質・挙動が普通の人とは違った人。変人。変わり者。「畸」は1級配当で「キ」。「あまり・はんぱ・はした」「めずらしい」などの意味があります。「畸形」(キケイ)。寛政の三畸人は、林子平、蒲生君平、高山彦九郎。
 「でんぼう肌」は「伝法肌」で「勇み肌」。任俠の世界にふさわしい響きがあります。

 ●看経(カンキン)

 「守りをするのから牛乳の世話まで、和尚自身が看経の暇には、面倒を見ると云う始末なのです。」

 →禅宗で経文を黙読すること。対義語は「諷経」(フギン=声をそろえて経文を読むこと)。「キン」の読みは唐音。お経の誦み方にはほかに、「読経」(ドキョウ=一般的な総称)、「諷誦」(フジュ=声を出して誦む)、「誦経」(ズキョウ=暗誦する)。

 ●癇癖(カンペキ)

 「よくよく問い質して見ると、疑わしい事ばかりでしたから、癇癖の強い日錚和尚は、ほとんど腕力を振わないばかりに、さんざん毒舌を加えた揚句、即座に追い払ってしまいました。」

 →癇癪(カンシャク)。神経過敏で怒りやすい性質。「癇」は1級配当で「カン」「ひきつ・け」。「癇症」「癇性」(カンショウ)「癇癪玉」(カンシャクだま)、「癲癇」(テンカン)。音符は「」で、「嫺」(ならう、みやびやか、カン)、「㵎」(たに、たにみず、カン・ケン))、「繝」(あや、ケン・ゲン)、「燗」(かん、ラン)があります。

 ●庫裡(クリ)

 「庫裡には釜をかけた囲炉裡の側に、勇之助が蜜柑を剥いている。」

 →仏教寺院の伽藍のうち、住職らが居住する建物のこと。寺務所と一体になっているものも多い。「ク」は「庫」の呉音。「コリ」ではないことに注意しましょう。「庫裏」とも書く。「七堂伽藍」(シチドウガラン)というのがあって、「伽藍を構成する主な建物として、俗世間との境界を示す山門、本尊を祀る本堂、塔、学習の場である講堂、僧の住居である庫裏、食堂(じきどう)、鐘楼、東司(とうす)などがある。これらの要素の配置や数は宗派、時代によって異なる。鎌倉時代の『古今目録抄』では金堂、塔、講堂、鐘楼、経蔵、僧坊、食堂となっており、これが一般的に知られている。ただし禅宗で七堂伽藍というと、山門、仏殿、法堂(はっとう)、僧堂、庫院(くいん)、東司(または西浄〈せいちん〉)、浴室とされる」(ウィキペから抜粋)。

 ●一転化(イッテンカ)

 「実際私の母に対する情も、子でない事を知った後、一転化を来したのは事実です。」

 →一転機。一つの重大な変わり目。分岐点。


 【影】


 ●更紗(さらサ)

 「更紗の窓掛けを垂れた部屋の内には、不相変残暑の寂寞が、息苦しいくらい支配していた。」

 →ポルトガル語のsaraça。人物・鳥獣・花卉など種々の多彩な模様を手描きあるいは木版や銅版を用いて捺染した綿布。インドに始まり、ジャワのパティック、オランダ更紗などに影響を与えた。日本製のものは和更紗という。暹羅染(シャムぞめ)とも。

 ●根懸け(ねがけ)

 「今度は珊瑚珠の根懸けが出た。」

 →日本髪の髻の後ろにかけるひも状の飾り物。要は髪飾り。飾り石の種類は玉簪と同様に、珊瑚(サンゴ)、翡翠(ヒスイ)、瑪瑙(メノウ)やガラス玉などがあります。根掛け。漱石の「道草」には「或時は自分と全く交渉のない、珊瑚樹の根懸だの、蒔絵の櫛笄だのを、硝子越に何の意味もなく長い間眺めていた」、また、「彼岸過迄」には「そうして瑪瑙で刻った透明な兎だの、紫水晶でできた角形の印材だの、翡翠の根懸だの孔雀石の緒締だのの、金の指輪やリンクスと共に、美くしく並んでいる宝石商の硝子窓を覗いた」があります。

 ●西洋(セイヨウがや)

 「と同時に見慣れた寝室は、月明りに交った薄暗がりを払って、頼もしい現実へ飛び移った。寝台、西洋、洗面台、――今はすべてが昼のような光の中に、嬉しいほどはっきり浮き上っている。」

 →ベッドの廻りに枠を冊てて垂らしたとばり。蚊帳、帷、緞帳。「」は配当外(JIS第4水準1201)で「チュウ・ズ・ジュウ」。「紗」(サチュウ=うすぎぬのとばり)=「羅」(ラチュウ)。ショーウインドウは「展示幮窗」。

 ●《常春藤》(きづた)

 「それは彼の家の煉瓦塀が、何歩か先に黒々と、現われて来たからばかりではない、その常春藤に蔽われた、古風な塀の見えるあたりに、忍びやかな靴の音が、突然聞え出したからである。」

 →木蔦。ウコギ科キヅタ属の蔓性常緑木本。茎から多数の気根を出して石垣や樹木に吸着登攀する。晩秋に花は枝先に頂生の短い軸をだし、その先に球形の散形花序を多数つけ、黄褐色の花を開く。果実は球形で翌年黒く熟す。葉は長柄、革質で光沢がある。紅葉が美しく、塀・壁などに這わせる。ナツヅタ。地錦、いつまで草、フユヅタともいう。中国では「百脚蜈蚣」とも書く。英語ではivy。西洋の諺にGood wine needs no ivy bush.があります。良酒常春藤を要せず、いいものは勝手に売れる。

 ●墓窖(はかあな)

 「明い電燈の光に満ちた、墓窖よりも静な寝室の中には、やがてかすかな泣き声が、途切れ途切れに聞え出した。」

 →墓穴。「窖」は1級配当で「コウ」「あな」「あなぐら」。「地窖」(チコウ)、「暗窖」(アンコウ)、「窖窯」(あながま)。「あな」は「窩」「竇」「穹」「嵌」「壙」「塹」「埳」「坎」「坑」「竅」。

 

【お律と子等と】

 ●上り框(あがりがまち・あがりかまち)

 「そう答えた店員は、上り框にしゃがんだまま、あとは口笛を鳴らし始めた。」

 →主に玄関の上がり口で履物を置く土間の部分と廊下や、玄関ホール等の床との段差部に水平に渡した横木をいう。まれに式台の部位を指すことがある。日本建築における床の間の段差部では床框(とこがまち)と呼び区別する。廊下や玄関ホールの床材を切り落とした切断面を隠し、床材のささくれを防ぐ目的で用いる化粧材である。木材を用いる場合は表面の木目(肌理、きめ、もくめ)が美しく強度のある堅木(かたき、かたぎ)を用いる。床材と同種の材料である必要はなく色の異なる樹種を初めとして、床材と異なる材種の石材や人造大理石(テラゾー)などが採用される傾向がある(以上ウィキペ要約)。それにしても、バリアフリーの現代では土間からどのくらいの高さに框があればいいのでしょうか。あるいは上がり框はなくなっていくのか。
 「框」は1級配当で「キョウ」「かまち」「わく」。玄関の横木だけでなく、戸や障子、その他器物のわくのことも言います。音符「匡」(キョウ)は「筐」。


 ●瑪瑙(メノウ)、印形(インギョウ)

 「神山はにやにや笑いながら、時計の紐をぶら下げた瑪瑙の印形をいじっていた。」

 →「縞状の玉髄の一種。蛋白石、石英、玉髄が層状に岩石の空洞中に沈殿してできた鉱物の変種である。中心部にすき間を残していることがしばしばあり、まれに液体・気体がそのすき間に存在することもある。ドイツ、ブラジル、チェコのボヘミア地方で多くとれる。日本では石川県、富山県、北海道などに産し、七宝のひとつに数えられている。
 「瑪瑙は玉髄とともに、各種の彫刻材料として使われており、硬度が高いのを利用して、化学用の乳鉢、天秤の支点、灰皿、置時計と様々なものに用いられている。また、円形に加工、皮革の艶出し用のローラー素材として使われている。ジュエリーや数珠に使われることも多い。最近は穴を開けた球状の縞瑪瑙(オニキス)にゴムや紐を通しブレスレットやペンダントなどのアクセサリーとしても使われる。」(以上ウィキペから)
 「瑪」「瑙」ともに1級配当で「メ・バ」、「ノウ」、「瑪瑙」でしか用いられません。

 →はんこ。判子。印章。印鑑。

 ●《冬青》(もち)

 「中庭には太い冬青の樹が一本、手水鉢に臨んでいるだけだった。」

 →黐の木(もちのき)のこと。モチノキ科の常緑高木。高さ10メートルに達し、庭木として栽培される。葉は厚くて光沢があり、長楕円形。春に小形淡黄緑色の小花を開き、赤色球形の核果を結ぶ。材は硬く緻密で印材または挽き物用。樹皮から鳥黐を製する。「黐」は1級配当で「チ」「もち」。「黐木」(チボク)、「黐粘」(チデン)、「鳥黐」(とりもち)、「黐竿」(もちざお)。
 《冬青》は「そよご」の意味もある。モチノキ科の常緑低木、山地に自生。初夏、白色の四弁花をつけ、球形の赤い実を結ぶ。材はそろばんの珠などに使う。葉は染色用。フクラシバ。

 ●楫棒(かじボウ)

 「車夫は五六歩行き過ぎてから、大廻しに楫棒を店の前へ下した。」

 →人力車や荷車、山車などで、方向を変えるために操る2本の長柄。「楫」は1級配当で音読みが「シュウ」「ショウ」「かじ」「こ・ぐ」。「楫師」(シュウシ=船頭)、「艤楫」(ギシュウ)、「舟楫」(シュウシュウ=天子を輔ける臣下のこと)、「楫取り」(かじとり)、「楫櫂」(シュウトウ・ショウトウ=船を進めるかい)→「楫」は「短いかい」、「櫂」は「長いかい」。「かじ」はほかに「舵」「舳」「櫂」「橈」「梢」「榜」「柁」。

 ●歯齦(はぐき)

 「母は腹痛をこらえながら、歯齦の見える微笑をした。」

→歯茎、歯肉。「シギン」と音読みもする。「齦」は1級配当で「ギン・コン」「はぐき」。「齦齦」(ギンギン)」、「齦齶」(ギンガク=岩石がでこぼこしているさま)。「歯肉炎」=「歯齦炎」。「齶」(1級配当、「ガク」)も「はぐき」。「コン」「ギン」と読むことに注意。音符「艮」は「ギン」が「垠」「銀」、「コン」が「跟」「很」「根」「恨」。

 ●夜伽(よとぎ)

 「洋ちゃん。お前今夜夜伽をおしかえ?」

 →女性が男性に対して、話し相手をしてつれづれを慰めると同時に、添い寝し、夜のセックスの相手も勤めること。一般的には、妃や妾などが殿様と共に寝て、愛のお相手をすることを指すことが多いです。
このほか、葬儀で遺体が安置されているとき、親族が交替で線香やろうそくを絶やさないよう夜を明かすこと。お通夜のことを指すこともあります。しかしながら、本文の場合は、単なる夜通しの看病、あるいは付き添いのことでしょう。だって、夜伽する相手が実の母親であり、しかもまだ死んでいないのですから。つまりはsit up with (a sick person)。
「伽」は何度か取り上げましたが、「とぎ」とよむ場合は「御伽噺」があるように「退屈をなぐさめるおはなし」「話し相手を務めること」の意味。


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