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「ホウカ」?下膨れは富貴の人相だぁ!=「続一年有半」⑰

 中江兆民の「続一年有半」シリーズの第17回です。

 

 (十二)無形の意象

 

 吾人幼時から見物する所ろの物、例へば馬牛犬豕の如き皆一の絵画となりて、記性中に印せられて居る。即ち生れていまだ絵を学んだことのない者でも、一たび①メイモクして馬の事を思ふ乎、犬の事を思ふ乎、何日か見た所ろの馬犬の影象が儼然として意念中に現出すること、極て巧みな画工の描ける絵を異ならぬ。また書を読み字を識る者は、あるいは絵でなく字で現出する、また抽象的に馬または犬の事が浮出する、これがいはゆる意象である。これらは勿論五官に接触する実物だから論はないが、さて正不正、義不義、美不美等のいはゆる無形の意象でも、その実やはり五官を経由して出来て居る、五官に関せぬなどといふのは②フセン極まる言事である。

 

 ①〔 瞑 目 〕→意味〔目をつむること〕・「」は〔つむ・る〕〔つぶ・る〕〔くら・い〕〔くら・む〕と訓む・「」「」「」がとてもよく似た漢字で意味も似ており、区別には注意が必要です。「目」扁なので「つむる、つぶる」の意味は浮かぶでしょう残りはすべで「くらい」の意味があります。「瞑眩(メイゲン、メンゲン)=めがくらむこと、めまい、特に強い薬で起こるめまいのこと

 ②〔 膚 浅 〕→意味〔あさはかなこと、物事を深く考えず思慮に欠けること〕・類義語〔浅薄〕・「」は〔はだ〕とも訓む

 

 けだしおよそ意象といひ影象といひ、皆三、五歳の幼時より漸次に記性中に印せられて居るものである。彼れ幼童が怒て他の童を㋐つとか、両親の命に背きて何か㋑曲事を為すとか、いづれ絵に写されべき、形を図せられべき、具体的の行事よりして、正不正の意象が源頭し来るのである。観劇の際、由良之助の城渡を見て具体的に義の意象を生じ、斧九太夫を見て具体的に不義の意象を生じ、小野の小町が美の意象のモデールとなり累ねの顔が醜の意象のモデールとなる等、とにかく即時事に遇ひ物に接し、具体的に即ち影象的に絵図的に記性中に捺印して、その後は実物を離れて直に記性中の影象と交渉するに至りて純然たる無形の意象を成すのでも、その源頭はここに述る如く必ず五官を経由して来たのに相違ないのである。

 

 ㋐〔・つ〕→「打つ」と同義・「撾」は配当外の漢字で「タ」。「撾殺」(タサツ)=なぐり殺す

 ㋑〔くせごと〕→意味〔正しくない事柄、道理に背いた事〕・「曲」を「くせ」と訓むのは表外訓み・「曲者」「曲舞」「曲人」「曲形」

 

 (十三)神の意象

 

 特に神の如き、幼時両親の③ゴワを聴き、これ極て慈善なる、温和なる、愛らしき顔の、色の白き面の、④ホウカで福々しい、⑤シュゼン雪の如き、常に⑥カンジとして㋒みつつある、老後旅行中の水戸西山公にも似たらんかと思ふ老人を想像して、その具体的絵画が㋓穉弱なる記性中に深く㋔滲入して抜くべからずなりたるものである。勿論欧米の児童には、水戸西山公ではなく、また他に適当なるそれぞれのモデールがあつて出来たことはいふまでもない。かくの如く昧者が全然実質と関係なき如く思惟して居る無形の意象も、その源頭に溯り⑦コウサクすれば、必ず具体的のものより生じ、実質より成り来れるものたるは無論である。

 

 ㋒〔・み〕→「咲む」は「笑う」と同義

 ㋓〔ちじゃく〕→意味〔おさない、いとけない、幼稚であるさま〕・「穉」は配当外で「おさない、まだ成長していないわかい作物」

 ㋔〔しんにゅう〕→意味〔液体が浸み入ること〕・「滲」は〔・みる〕〔にじ・む〕とも訓み、「」が書き換え字・「滲出」(シンシュツ)=にじみ出ること、「滲漏」(シンロウ)=ある程度の悟りを得た人に残っている、煩悩の余り

 ③〔 語 話 〕→意味〔語り話し合うこと〕・兆民語

 ④〔 豊 下 〕→意味〔下膨れ、頰の下部のふくれていること、富貴の人相とされる〕・同音異義語は「法化」「放火」「蜂窩」「蓬顆」「苞裹」「縫罅」「鋒戈」「包裹」「匏瓜」「放下」「放歌」「法科」「烽火」「法家」

 ⑤〔 鬚 髯 〕→意味〔あごひげとほおひげ〕・「髭鬚髯」の後二語・2009年度第1回試験では「鬚髭」(シュシ)が出題されたようです・「ひげ」関連の熟語は今後も要注意かも…「紫髯」(シゼン)、「虎鬚」(コシュ)、「髯鬚」(ゼンシュ)、「髯蘇」(ゼンソ=宋代の蘇軾のこと)、「髯奴」(ゼンド=西洋人の蔑称)=「髯虜」(ゼンリョ)、「鬚眉」(シュビ=男子のこと)、「鬚髪」(シュハツ)、「払鬚塵」(シュジンをはらう=権力者にこびへつらうさま)

 ⑥〔 莞 爾 〕→意味〔にっこりと笑うさま、莞然ともいう〕・「」は〔い〕=「藺」

 ⑦〔 考 策 〕→意味〔物事を明らかにするため考えること〕・辞書にはない兆民語・類義語は〔考 覈〕(コウカク)

 

 更に助語の辞即ち「直ちに」「即ち」「速に」「徐々に」「より多く」「より少く」「責めては」「なるべく」等の如きは、実物と何の交渉もないやうだが、これまた大に然らずである。幼時母親に何か求むる所ろでもあれば、母が「直ちに云々せん」とか「速に斯々せん」とか言ふのを聴きて、当時乞ひ求めた蜜柑とか林檎とかを、これら助語と⑧ケンレンして、即ち蜜柑林檎の影象を仮り来て、「直ちに」「速に」等の意象を記性中に入れたので、「徐ろに」「より多く」「より少く」等の助語でも皆この例である。然らずしてもし宗旨家言ふ所ろの如くに諸無形の意象が先天的であつて、五官の経由を㋕らず、⑨コンゼン意念中に全成して欠くる所ろがないとすれば、児童は皆信者なるべきに、皆正義者なるべきに、さはなくて日々⑩キョウチの態を現出して両親を苦しめ、また助語の辞等に至ては時々大に誤用して、一座⑪ダンランの長年をして⑫コウショウせしむる愛嬌があるではないか。

 

 ㋕〔・ら(ず)〕→「藉りる」は「借りる」

 ⑧〔 牽 聯 〕→意味〔つらなること、一体的に続くこと、関連し合うこと〕・「」は「連」と同義で書き換え字・「」は「ひ・く」で「牽攣乖隔」(ケンレンカイカク)=心が惹かれあっているが身は遠く離れ離れになっていること、「拘文牽義」(コウブンケンギ)=細かい文句にとらわれすぎること、「牽強付会」「牽強傅会」(ケンキョウフカイ)=自分の都合よいようにこじつけること、「牽糸」(ケンシ)=はじめて官職に就くこと、婚姻を定めること

 ⑨〔 渾 然 〕→意味〔異なったものが一つに溶け合っているさま〕・この場合の「」は「すべ・て」とも訓む・「渾身」(コンシン)=からだ全体、全身

 ⑩〔 驕 痴 〕→意味〔おごり高ぶって莫迦をさらけ出すさま〕・「」は〔おご・る〕と訓む・「驕蕩」「驕宕」(以上キョウトウ)=おごり高ぶっていて我が儘なこと、「驕汰」「驕泰」(以上キョウタイ)=おごり高ぶっていて自分勝手な振る舞いをすること、「驕誇」「驕夸」(以上キョウコ)=おごって、実際以上に大げさなことをいう、得意になって自慢すること、「驕蹇」(キョウケン)=おごり高ぶって、道理に外れること=「驕横」(キョウオウ)、「驕盈」(キョウエイ)=自身がありすぎてえらそうにするさま=「驕溢」(キョウイツ)・「」は〔おろか〕〔たわけ〕と訓む・「痴鈍」(チドン)=愚かで智の働きが鈍いこと、「痴呆」(チホウ)=愚か、愚か者

 ⑪〔 団 欒 〕→意味〔親しい者の楽しい会合、まどい、だんご〕・「」はこの場合は「もつれてからみあう、人の集まりのなごやかなさま」・「ひじき、梁を支える弓型の横木」や「ふたご」の意味もある・「欒子」(ランシ)=ふたご

 ⑫〔 哄 笑 〕→意味〔大勢が一斉にどっと笑うこと〕・「」は「どよめく」・「哄然」(コウゼン)=たくさんの人が声をあげてどっと笑う様子・「交渉」「高尚」「工廠」ではない

 

(この項は次回に続きます)
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Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
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2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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