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吉原の婬靡な秘密を探れ…=柏木如亭「詩本草」

 柏木如亭の「詩本草」シリーズの11回目は「吉原詞」。岩波文庫の校注者である揖斐高氏の解説によると、如亭は「若い時に江戸の遊里吉原に耽溺し、そのために家職の幕府小普請方大工棟梁を辞職せざるを得なくなった。放浪の詩人としての如亭の後半生はそこから始まった」とあります。「吉原詞」は、自身の遊蕩体験をもとに、竹枝詞三十首の連作を作詞したもので、「江戸時代後期の竹枝詞流行の先駆けとなった、如亭の師市河寛斎の『北里歌』(天明6年刊)に続く試みで、天明末年から寛政初年の頃に成立したと推測されている。以後、如亭は後半生の放浪生活の中でも『吉原詞』の推敲改作を続け、最終的には二十首に絞り込んだものを『詩本草』の第四十段に収録した」。竹枝詩というのは、楽府の一体で、その土地の風俗、男女の情愛を民謡風に詠じたもの。唐の劉禹錫が創始したという。

 この詩には、グルメを翫わう「美味」が主題ではありません。まさに、若き日の「色」の思い出だけです。二十首とやや長いですが、数回に分けて翫わってみましょう。

《40吉原詞》①

余、少時嘗て酒海肴山に北里の中に堕在し、吉原詞三十首を作る。頗る同臭の為に賞せらる。後復た此の種の詞を作らず。四方に餬口し、藁も亦た散落す。復た近日の都知、阿誰に属するかを知らざるなり。往事を追憶す。亦た遊仙枕上の一夢なるかな。今記する所の者二十首を録して以て巻末に附す。


 ■「酒海肴山」(シュカイコウザン)=海のように大量の酒を容れる大きな盃と山のように盛られた酒の肴。豪勢な酒宴の喻え。

 ■「北里」(ホクリ)=江戸の遊里・吉原のこと。これは、唐の都・長安の色町である平康里が都城の北に位置していたことから、後に色町を北里と称するようになり、吉原も江戸の北の方角に位置していた。

 ■「堕在」(ダザイ)=だらだらといすわること。身を落としてしまうこと。

 ■「同臭」(ドウシュウ)=同じ嗜好を持つ人の意。同じ穴の貉みたいなニュアンスか。遊里を漢詩に詠じることは必ずしも好ましいものではなく、そうした意識を謙退する意味を込めて「臭」の字を用いたとある。

 ■「餬口」(ココウ)=寄食すること、食客となること。「餬」は1級配当で「くちすぎ・する」「かゆ」。「餬口」は「くちにのりする、くちをのりする」とも訓む。別に意味では、どうにか食物にありついて暮らすこと。「餬」(コセン)は「かゆ」。「」は配当外で「たっぷりと湯でのばしたかゆ」。「粥」(センシュク)、「饘酏」(センイ)も「かゆ」。「」は配当外で「おもゆ」。

 ■「藁」(コウ、したがき)=「吉原詞」の原稿のこと。

 ■「都知」(トチ)=遊女屋の中で頭株の女。老妓。

 ■「阿誰」(アスイ)=疑問の代名詞。だれ、だれかしら。「何誰」(カスイ)ともいう。

 ■「遊仙枕」(ユウセンチン)=伝説上の枕で、これを枕にして眠ると、夢で仙人のいるところに遊べるとされた。

 ここまでがいわば序文。なぜ「吉原詞」を纒めようと思ったのか其の訳を記しています。若い頃に吉原で遊んだ思い出がある。むかし三十首の詩にしたのだが、「同好の士」からは褒められもした。全国を漂浪した中で原稿も散逸してしまったが、何とか二十首だけ残ったものをここにまとめとして記録しておこう。それは、仙人になって天にも上る夢見心地の気分にしてくれるものなのだ。


 (1) 月暗うして長去路遥かなり
    竹輿桐 華に換ふ
    女閭門内 昼よりも明らかなり
    金屋 粧成る 千阿嬌

 ■「長」(チョウテイ)=長堤、まっすぐに伸びた川のつつみのこと。「」は配当外で「つつみ」。「堰」(エンテイ)は、川をせきとめたつつみ。

 ■「去路」(キョロ)=ある場所に向かう道路。

 ■「竹輿」(チクヨ)=竹製の乗り物、駕籠。

 ■「桐」(ゴゲキ)=桐の履物。桐の下駄。「」は配当外で「きぐつ」。「木」(ボクゲキ)、「声」(ゲキセイ)=「響」(ゲキキョウ)は、人が訪ねて来る時の木の履物の音。「履間」(ゲキリのカン)は、道を歩く間、あわただしい場合。「を倒にして」(ゲキをさかさまにして)という表現を嘗てどこかで見た記憶がありますが、これも「慌ただしく人を迎える形容」。

 ■「華」(カヒョウ)=馬にかませる美しいくつわ。「華を換ふ」で、馬を下りること。「」は配当外で「ヒョウ」「かがみいた」「くつばみ」。正確にはくつわの部品で、馬銜の端につけて、一方の手綱をひくとき、馬銜が口から抜け出さないように留める金具のこと。「鑣鑣」(ヒョウヒョウ)は、軽やかに進むさま。「轡」(ヒョウヒ)は、馬を操る轡と轡(たづな)。

 ■「女閭門」(ニョリョモン)=色町の門。ここでは吉原の大門を指す。「閭門」は通常、村里の出入り口の門。「閭」(リョ)は「ちまた」「さと」「むらざと」とも訓む。「閭閻」(リョエン)、「閭伍」(リョゴ)、「閭闔」(リョコウ)、「閭巷」(リョコウ)、「閭左」(リョサ)、「閭市」(リョシ)=「閭井」(リョセイ)、「閭娵」(リョシュ)、「軾閭」(ショクリョ)、「式閭」(ショクリョ)、「旌閭」(リョにセイす)、「閭」(リョカン、も配当外で村里の入り口の門)、「閭里」(リョリ)。

 ■「金屋」(キンオク)=華美で豪奢な建物。煌びやかな遊郭。

 ■「千阿嬌」(センアキョウ)=多くの美人。「阿嬌」は前漢の武帝の后、陳皇后の幼名で、転じて、美人のこと。「金屋」と「阿嬌」は武帝の故事があり縁語の関係にある。

 吉原に行くには長い川の堤に沿って、駕籠に揺られるのだ。月明かりだけが頼りだが、俺の気持ちは昂ぶってしょうがない。大門を入ると、昼間のように燦めく世界が待っている。そして、そこ立ち並ぶ不夜城には粧し込んだ何人もの美女連中が俺のことを待っているのだ。
 あぁ、羨ますぃ~。甘美な濃艶な世界が広がっているんですねぇ、如亭さん。。。お金忘れてないっすよねぇ。。。愚問でやしたな。。。

 本日はイントロだけ。以上です。

 【今日の漢検1級配当漢字】

禹、餬、喻、閭、閻、闔、娵、軾、旌、煌、嬌
 【今日の配当外漢字】

饘、酏、隄、屐、鑣、閈
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京都の名産品を殫見洽聞しよう=柏木如亭「詩本草」

 柏木如亭の「詩本草」シリーズは早くも10回目、二桁の「大台」に乗りました。3月30日に弊blogを開設して以来丁度1カ月が経ちますが、陶淵明の「桃花源の記」「止酒」、如亭の「訳注聯珠詩格」、「菜根譚」とおおむね一週間でテーマをころころ変えて来たのを見れば、迂生の性格に少々飽きっぽいところのあるのが分かると思います。血の型は「B型」ですから…。しかしながら、この詩本草シリーズは思いの外、「ロングラン」で続いています。これは、率直に言って如亭の文章が洒落ていて面白く、迂生のセンスに「すぽっ」と嵌ったからです。

 日本各地のグルメを翫わいながら、詩を詠じる。酒は弱かったようですが、各地の女性(遊女が多いと思いますが)たちとも濃厚な交わりで「浮き名」を流したのでしょう。詩人・日夏耿之介は如亭のことを「日本のボードレール」と称して、フランスの頽廃主義詩人の生涯と重ね合わせていますが、幕府の大工棟梁という名誉ある家職を若くして弟に譲り、結局は一所不住の生涯を送らざるを得なかった不遇の漢詩人でした。

 どこにも記述は見えませんが、恐らく生涯を通じて、いわゆる「家族」というものは持たなかったんじゃないかなぁ。想像するに。。。江戸時代後期、如亭は裕福な実家を「後ろ楯」にして優游自適の生活を貫いた「吟遊詩人」という、現在の迂生から言わせれば羨ましい限りです。官職を得たり、商売を成功させたりといったいわば「栄達」を求めることなく、己の擅に自由奔放に生きた。今まで取り上げた題材は、鯛、鮑、松茸、鮎、鼈……いずれも高級食材、庶民感覚からすると簡単には手に入らないものばかり。土地土地の藩家老や素封家らをパトロンとして、彼らの食客となって画詩を潤筆したり、私塾に於いて詩作を教授したりすることで得られたものでしょう。無論それは彼の「才能」が導いたものです。中国古典に通じた博覧強記ぶりやそのセンスのよさは、彼の詩の一端を読めば分かります。なんだかこの如亭「詩本草」シリーズを卒えるため振り返っているみたいですが、いや、ご心配なく、まだまだ続きますよ。これからが佳境を迎えると言っていいでしょう。

 ってことで、本日のお題は「京の名品」。京都の名物を列挙した上で、最後に江戸の名物と較べています。東西二つの都、中国の唐代で言えば洛陽と長安。個人的見解と断って、江戸はウナギの蒲焼き、京都は家鴨入りの茶碗蒸しが両巨頭だと評しています。同調者が出てほしいとは最後の件(くだり)に見られるように、ちょっとだけ自信のなさも顔を覗かせているのが面白い。結構、配当外の漢字も登場しますが、いずれも食べ物関係なので馴染みやすいでしょう。

 《38京の名品》

 京寓還り来つて便ち家に当つ
 嵐山鴨水の旧生涯
 老夫は是れ官を求むる者にあらず
 祗だ愛す平安城外の花

 平安は万世の帝都なり。城中のネツドウ、市井のケンカ、物として有らざる無く、事として有らざる無きは必ずしも言を待たず。その名園のカキ、城外の風景、余の七載の留滞すら尚ほ未だ詳を言ふこと能はず。独り飲膳において粗ぼ一二を識る。此以て言ふ可きのみ。それ祇園の田楽豆腐・加茂の閉甕菜・北山の松蕈・東寺の芋魁・錦巷の肉・桂川の香魚は児童も亦たその佳なるを知る。金鯉・銀・絳・黄の美鮮は邇く琵琶湖中に取り、棘鬣・比目・方頭・大口の名遐く若狭の海浜より輸す。水菜・蕪菁・腐皮・麪筋の妙選、昆布・子・魚・海鰻の精製、僕を更へて数へ難し。若しそれ酒楼の品は茶碗蒸を以て第一と為す。茶碗蒸は鶩を以て第一と為さば、到る処復た敵する者無し。惟だ江戸の蒲焼以てこれに当つるに足れり。江戸は即ち我が江南陳眉公が所謂ゆる人世の極楽国なり。又た物として事としてこれ無きは無し。酒楼の品は又た蒲焼を以て第一と為し、蒲焼は又た「魚+麗」を以て第一と為す。鶩と「魚+麗」の何れの地かこれ有らざらん。但し是れ服に果するのみ。その脂膏の殊、調理の尤に至っては、則ちショウジョウたり。その中に又復たイチユイチエイ有り。而して鶩は江戸は平安に及ばず、「魚+麗」は平安は江戸に及ばず。吾今特に二者を以て断じて東西のケイテキと為す。味を知るの真なる者に非ざれば、蓋し言い難からん。姑くこれを書して以て両都に遊ぶことの久しうして老余に同じき者を竢つ。

 この段は珍しく、いきなり七絶で始まっています。この詩は「京城の寓所に還る」という題で、漂泊の詩人が晩年、腰を落ち着けた京都への思いを詠いこんでいます。都合7年間棲んだと言っていますが、官職を求めるでもなく、流浪の身であることに変わりはない。ただ、嵐山、鴨川が好きで都の郊外に咲く花を愛でるのみである。この場合の「花」は女を寓意しているんでしょうなぁ。


 ■さて、次に三つ連続で漢検1級配当の重要熟語が登場。これは問題にせねばなりません。是非とも正解してほしい。「ケンカ」は複数の正解があり得るかも。

 「ネツドウ」→「熱鬧」。

 にぎやかに繁盛していること。「鬧」は「さわ・がしい、さわ・ぐ、あらそ・う」と訓む。

 「ケンカ」→「諠譁」。


 大声で騒々しいこと。両字共に「かまびす・しい、やかま・しい」と訓む。このほか、「讙」「喧」もあるので一緒に覚えましょう。「讙嘩」「讙譁」「喧嘩」もOKでしょうかね。


 「カキ」→「花卉」。草花。


 「卉」は「くさ、さか・ん」と訓む。

 ■「邇く」と「遐く」。訓んでください。

 →「ちか・く」と「とお・く」。

 「邇」は「ジ」で「邇遐」(ジカ)=遠近(おちこち)、「邇言」(ジゲン=卑近)、「邇来」(ジライ)、「遐」は「カ」で「遐異」(カイ)、「遐域」(カイキ)、「遐遠」(カエン)、「遐観」(カカン)、「遐棄」(カキ)、「遐睎」(カキ=遠くをながめやる)、「遐挙」(カキョ)、「遐荒」(カコウ)、「遐邇」(カジ)、「遐陬」(カスウ)、「遐想」(カソウ)、「遐登=逝去」(カトウ)、「遐年」(カネン)=「遐齢」(カレイ)、「遐念」(カネン)、「遐福」(カフク)。面白いのは「邇遐」と「遐邇」の両方があること。セットで覚えるべきでしょう。


 さぁ、ここから如亭が称げる京都の名物が並びます。

 ★「祇園の田楽豆腐」。「田楽豆腐」は、長方形に切った豆腐を串に刺し、練り味噌を塗って焼いたもの。祇園社鳥居前の二軒茶屋の名物であった、と註釈にある。

 ★「加茂の閉甕菜」。「ミズグキ」とルビが振ってあるが、註釈によれば、「甕に漬け込んで発酵させた菜っ葉の漬物。具体的には今も京都の名産として名高い酸茎菜(すいぐきな、すふき)を指すと思われるが、云々」とある。Wikipediaによると、「紫菜」「千枚漬」と並び、京都の三大漬物だという。「甕」は「オウ、かめ」。1級配当では「甕裡醯鶏」(オウリケイケイ)で覚えなければならない「外せない漢字」です。「加茂」は「賀茂」と同じで、洛北にある上賀茂社・下賀茂社周辺一帯の地名のことです

 ★「北山の松蕈」。「松蕈」(マツタケ)は既出ですね。「北山」は京都北部の山々、即ち、船岡山・衣笠山・岩倉山などをいう。

 ★「東寺の芋魁」。「芋魁」は「いもがしら」。里芋の親芋のこと。拳大の大きさで正月の雑煮に入れる。「おやいも」ともいう。「東寺」は、平安京の南の出入り口である羅城門の東(今の京都市南区九条町)に創建された教王護国寺の通称。

 ★「錦巷の肉」。「肉」は「カマボコ」とルビ。蒲鉾のこと。「」は配当外で「コウ」。こってりした、むしもちの類。米の粉をむしてねる、日本でいう「ういろう」のイメージ。「」(配当外、コウ)と同義。「錦巷」(キンコウ)は、錦小路、今の京都市中京区錦小路。生鮮食料品を中心にした市場があり、古来、京の台所と呼ばれている。

 ★「桂川の香魚」。これは詩本草12段で既出。「香魚」は「あゆ」。

 ★「金鯉」はコイ。

 ★「銀」は「ギンブナ」。「」は配当外で「ショク、ソク、ふな」。「鮒」なら準1級配当。変わりどころでは「烏」(ウソク)とは「イカ」(烏賊)。

 ★「絳」は「アメノウオ」。「」は配当外で「カン、ゲン、あめのうお」。「あまご」「琵琶鱒」の別名とある。「絳」(コウ)は1級配当で「あか・い、あか」と訓む。外見が絳いのではなく、肉の色が絳いのだとそうです。

 ★「黄」は「ワタカ」「コウコ」。「」は配当外で「コ」。ヨコグチ。体は扁平で黄みがかった銀白色。口は小さい。腹や腸に脂肪が多い。「黄魚」のこと。

 ★「棘鬣・比目・方頭・大口の名」。詩本草31段で既出。「」(エン)は配当外で「つける、しおづけ」と訓む。「名」(メイエン)は、塩漬けの名品のこと。「蔵」(エンゾウ)は魚・肉・野菜などを塩漬けにして貯蔵すること。「菜」(エンサイ)は菜の漬物。

 ★「水菜・蕪菁・腐皮・麪筋の妙選」。「水菜」(みずな)は京菜ともいう。「蕪菁」は「かぶら」。「腐皮」は「ゆば」。湯葉が一般的。「麪筋」は「フ」とのルビが振られているが、小麦粉から取り出したグルテンを精製した食品。「麩」であれば、「小麦から麦粉を取ったかす、ふすま」。「麪」は「麵」の異体字で「むぎこ」。四字熟語に「麪市塩車」(メンシエンシャ)という一風変わったものがあります。白尽くしで「雪が積もる形容」ですが、余力があれば。。。。出典は李商隠なんですが見つからない。。。

 ★「昆布・子・魚・海鰻の精製」。「昆布」は松前から送られ京都で精製し「京昆布」と称して重宝された。そのルートは、松前から、越前・敦賀、若狭・小浜を経由して京に運ばれた。鯖街道ですね。「子」は「チマキ」とルビが振られているが音なら「ソウシ」。「」は「粽」(1級配当、ちまき)の異体字。「ソウ、スウ」。「粽子」とも書く。「魚」は「マナガツオ」とルビ。「」は配当外で「ショウ、まながつお」。「鯧鯸魚」(ソウコウギョ)とも書く。「海鰻」は訓めてほしい。「あなご」とも訓めるが、ここは京都なので「はも」。1級配当なら「鱧」ですね。これは書けなければいけない。

 ■「僕を更へて数へ難し」は「ボクをかへてかぞへがたし」。事物が多くて数え切れない・「礼記」で孔子が言った言葉が典故と註釈にある。

 ★「鶩」は「アヒル」。「阿比留」とも訓じる。音読みは「ボク」。「鶩櫂」(ボクトウ=アヒルに形が似た小船)=「鶩」(ボクレイ)、「鶩列」(ボクレツ=朝廷の百官の列、最近では北朝鮮で良く見られる光景)。

 ★「魚+麗」(第4水準2-93-94)=「ウナギ」。配当外で「レイ、ライ」。「鱧」と同義ともある。

 ■「江南陳眉公」(コウナンチンビコウ)。明の陳継儒(1558~1639)。「詩文を能くし、書画にも巧みで、董其昌(トウキショウ)と名を斉しくし」と註釈にある。かの董其昌とは莫逆の友だったようです。「学は仲醇、眉公など。江蘇省華亭の人。早くから詩文、書などに才能を発揮し、同郷の三年先輩で親友の董其昌と並び称される存在であったが、二十九歳で隠居生活に入った。博学で画、篆刻も得意とし、特に北宋時代の蘇軾の書を好んで学んだといわれるが、残された彼の書には董其昌の書風も垣間見られる。収蔵にも富んだが、彼が専心して集めたのはやはり蘇軾の書で、それらをまとめた「晩香堂蘇帖」が知られている」(考古用語辞典)。

 「董其昌」は「1555~1636、字は玄宰、号は思白など。江蘇省華亭の人。明時代末期の高官。二王やその流れをくむ唐時代の名家、北宋時代の米芾などの書を学ぶが、項元汴など大収蔵家の下であらゆる肉筆作品を鑑賞、研究する機会に恵まれたことが書画家としての大成に大きく役立った。「行草書羅漢賛等書巻」(東京国立博物館)をはじめ、多くの書画作品が現存しており、晩明の四大家の中でも特に後世に絶大な影響を与えている」(同)。

 ■「ショウジョウ」は書き問題。→「霄壌」。天と地。「月と鼈」。

 ■「イチユイチエイ」は書き問題。→「一輸一贏」。負けたり勝ったりすること、互角でいい勝負だということ。「一輸」は「イッシュ」とも読む。

 ■「ケイテキ」は書き問題。→「勁敵」「勍敵」。強敵のこと。いいライバル。「」も「」も「つよ・い」と訓む。

 ■「老」=「ロウザン」。極めて食い意地のはった人。意地汚い人。「」は配当外。「サン、サン、セン、むさぼる」。「火」(サンカ)、「嗜」(サンシ)、「涎」(サンゼン)、「吻」(サンプン)。

 いかにも各地を逍遙して名品を食べ尽くした美食家・如亭らしい一段ですね。書き取り問題で出題した6問はいずれも本番で狙われても可笑しくないです。必ず書けるようにしておきましょう。配当外の漢字も多く登場しました。とりわけ「魚偏」の漢字は厄介な代物が多い。その物を知らないだけに記憶に定着する確率はかなり低いですね。一方、1級配当の「鱧」や「鶩」ど重要語も目白押しです。「遐い」「邇い」は書けなくてもいいが読めるように。ただし、「遐邇」「邇遐」は書けるように。「在邇求遠」(ザイジキュウエン)はしっかりと押さえてください。


 【今日の1級配当漢字】

譚、嵌、耿、頽、游、擅、鮑、鼈、甕、蕈、絳、邇、棘鬣、遐、菁、麪、鶩、竢、鬧、諠譁、讙、卉、陬、醯、扁、粽(糉)、鱧、櫂、篆、軾、霄、贏、勁、勍、嗜、涎、吻、逍

 【今日の配当外漢字】

糕、餻、鯽、鯇、鯝、醃、鯧、「魚+麗」、饞、睎、鯸、舲、汴

自分の子供を責めまくる親と褒めちぎる親=陶淵明と李商隠


 本日は柏木如亭の「詩本草」を一休み。、NHK‐BShiで毎朝月~金曜日の午前7時25分から5分間番組でやっている「新・漢詩紀行」から、本日のお題だった陶淵明の「責子」(こをせむ)を取り上げます。以前、迂生のmixi日記(2009年3月6日付、IDがある方はこちら)で取り上げたネタだなぁということで、そのままパクらせていただきます。毎日更新もしんどくなってきました。本日でようやく1ヶ月ということでたまにはお休みを戴いてもいいでしょう。許してください。以前も御覧になった方は、「なんじゃい」と思うかもしれませんが、復習を兼ねてもう一度、中国の詩人二人の「親心」に思いを馳せてみましょう。ちなみに、李商隠は晩唐の官僚詩人です。この詩人も陶淵明に負けずにとても面白い人で、またいずれ彼の詩は取り上げてみようと思います。

 ただ、「今日の漢検1級配当漢字」と「今日の配当外漢字」は新たにまとめました。また、音読み仮名はカタカナに改めますのでご容赦を。。。

 (以下は迂生のmixi日記から)

 陶淵明と李商隠のそれぞれ生きた時代は400~500年の時が隔たっています。「後輩」である李商隠はきっと陶淵明の詩を読み込んでいる筈で、明らかに「本歌取り」宜しく淵明の詩をモチーフにして詠じた詩があります。それが「驕児の詩」です。息子のことを褒めちぎっており、セクスィー詩人・商隠の意外な「子煩悩ぶり」というか、「親馬鹿ぶり」が遺憾なく発揮されています。眼の中に入れても痛くない「袞師」(コンシ)。本篇は5段まであり相当長いのですが、1段目に淵明を意識した件があるので、1段だけ紹介します。

 翻って、「後輩」にモチーフを提供した格好の淵明の詩は「責子」。なんとまぁ、「子を責める」ですよ。親が子を責めちゃあきませんわ。兎に角、楽天・野村監督よろしく「ボヤキ節」の雨霰なんですわ。出来の悪い子供、しかも男5人(上から順に、「阿舒」(アジョ)、「阿宣」(アセン)、「雍」(ヨウ)、「端」(タン)、「通子」(トウシ))とも、揃いも揃って勉強嫌いの「莫迦」ばかり。。。親の心を知らないとんでもない餓鬼どもだぁ、って溜息をつく淵明。しかし、最後はやっぱり「酒でも飲むしかない」。って、結局は子供をぼやくことで、酒を呑む「出汁」に使っているんですね。子も子なら、親も親也なり。。。

 この二人のバトル(まぁ、商隠の一方的バトルですが)を読み校べて御覧あれ。。。おもろいですよ。どっちもどっちだな。何時の時代も、何処の国でも親は親。子供は可愛いのさ。。。親の負けなり。



 【驕児の詩】

(岩波文庫 「李商隠詩選」P291~)
(五言古詩)


 袞師は我が驕児

 美秀 乃ち匹い無し

 文葆 未だ周晬ならざるに

 固より已に六七を知る

 四歳にして姓名を知り

 眼には梨と栗とを視ず

 交朋 頗る窺い観て

 謂う是れ丹穴の物ならんと

 前朝は器貌を尚ぶ

 流品 方に第一

 然らずんば神仙の姿

 爾らずんば燕鶴の骨

 安んぞ此く相い謂うを得ん

 衰朽の質を慰めんと欲すればなり




 【驕児の詩】

 ■「驕児」

 =「キョウジ」。見出し語(注意:以下、見出し語は漢検辞典のこと)にあり。わがままな子ども。駄々っ子。父母や年長者の教えを聞かない子。西晋の詩人・左思の詩に「嬌女の詩」(キョウジョのうた)があり、やはり二人の、こちらは女の子を誉めそやしている。タイトルは恐らくこれを意識したものであろう。「驕」も「嬌」ともに、可愛いという意味と共にやんちゃ、お茶目の意味も伴う、と川合氏(訳注者)の解説にはあります。「驕」は「おご・る」とも訓み、熟語は「驕奢」(キョウシャ)、「驕佚」「驕逸」(以上キョウイツ)、「驕誇」(キョウカ、キョウコ)、「驕傲」「驕敖」「驕」(以上キョウゴウ)、「驕侈」「驕恣」(以上キョウシ)、「驕慢」(キョウマン)、「悍驕」(カンキョウ)、「驕矜」(キョウキョウ)、「矜驕」(キョウキョウ)、「驕驕」(キョウキョウ)、ここまでが漢検辞典の見出し語と小文字。漢字源には、「驕淫」(キョウイン)、「驕盈」(キョウエイ)、「驕溢」(キョウイツ)、「驕悍」(キョウカン)、「驕気」(キョウキ)、「驕倨」「驕踞」(以上キョウキョ)、「驕蹇」(キョウケン)、「驕横」(キョウオウ)、「驕肆」(キョウシ)、「驕子」(キョウシ)、「驕色」(キョウショク)、「驕怠」(キョウタイ)、「驕惰」(キョウダ)、「驕怠」「驕汰」(以上キョウタイ)、「驕蕩」「驕宕」(以上キョウトウ)、「驕暴」(キョウボウ)、「驕易」(キョウイ)、「驕陽」(キョウヨウ)。多い。。。。

 ■「匹い」

 =「たぐ・い」と表外訓み。一対を為す相手。また、二つで一組となるもの。この意味では「匹耦」(ヒツグウ)、「匹合」(ヒツゴウ)、「匹儔」(ヒッチュウ)。「たぐい」は「類」「畴」「」「疇」「伉」「醜」「般」「双」「偶」「倫」「例」「彙」がある。

 ■「文葆」

 =「ブンボウ」。模様のついたおくるみ。「葆」は見出し語はないが1級配当で音読みは「ホ、ホウ」。「草木がこんもりとしげる」や「ふさふさしたはねかざり、車や旗ざおの先につけるはねかざり」。完全征服には「しげ・る」「たも・つ」「つつ・む」「たから」「はねかざ・り」の訓みも見える。ここでは「褓」(むつき)の意とある。漢字源によると、熟語には「葆光」(ホウコウ=光をつつみ隠すこと)、「葆祠」(ホウシ=たからとして祠る)、「葆守」(ホウシュ=守って領土や物事を保つ)、「葆真」(ホウシン、シンをたもつ=人が生れつきもっている自然な本質を保ち守ること)、「羽葆」(ウホウ)。余り見慣れない難しい漢字といっていいでしょう。李商隠の詩で出遭えてよかったですわ。

 ■「周

 =「シュウサイ」。生後満一年のこと。「」は配当外で「めぐる」。赤ん坊が満百日、または満一年になること。覚えておきたい。

 ■「交朋」

 =「コウホウ」。仲間、友だち。「朋僚」「朋寮」(以上ホウリョウ)、「朋輩」(ホウハイ)、「朋儔」(ホウチュウ)、「朋儕」(ホウセイ)、「朋徒」(ホウト)ともいう。「朋友」(ホウユウ)というのが最も一般的で、現代中国語では「ポンユウ」。「あいつとはポンユウだ」など日本語でもよく使われますね。この場合は李商隠の友だち。「朋」絡みの四字熟語では「朋党比周」(ホウトウヒシュウ)に注意。

 ■「丹穴」

 =「タンケツ」。南の果てにある山の名。鳳凰が棲むとされる。「丹穴の物」で、鳳凰の再来くらいの意味か。ここでは全く無関係ですが、李商隠の「薬転」の余韻が残っており、「丹穴」には女陰の意味もある。「丹」は「あかい」とも訓み、これ絡みの熟語には「丹壑」(タンガク)、「丹闕」(タンケツ)、「丹霄」(タンショウ)、「丹脣」(タンシン)、「丹堊」(タンアク)、「丹鳳」(タンポウ)、四字熟語に「黝堊丹漆」(ユウアクタンシツ)、「臍下丹田」(セイカタンデン)。

 ■「器貌」

 =「キボウ」。人物としての器と容姿。風采。「縹緻」(キリョウ)、「器量」(キリョウ)と言ってもいいでしょう。「貌」は「かたち」とも訓み、「貌形」(ボウケイ)、「貌状」(ボウジョウ)、「貌言」(ボウゲン)、「貌象」(ボウショウ)、「貌寝」「貌侵」(以上ボウシン=不細工)。「前朝」というのは先の王朝、つまり六朝時代のこと。解説によれば、家柄とともに風貌が重視された時代で、当時の人物伝にはしばしば容姿がすぐれていることが記されているとある。

 ■「燕鶴」

 =「エンカク」。高貴な人の骨相。聊か見慣れない四字熟語に「燕頷鶴歩」(エンガンカクホ)というのがあり、ここからきているようだ。「燕頷虎頸」(エンガンコケイ)や「燕頷虎頭」(エンガンコトウ)、「燕頷投筆」(エンガントウヒツ)なら存じ上げているのだが。。。これは知らない。でも「燕頷虎頸」とは非常に意味は似ている。折角だからセットで覚えよう。「燕」は「つばめ、つばくら、つばくろ」のほか「くつろ・ぐ」「やす・んずる」とも訓み、、熟語には「燕飲」(エンイン)、「燕婉」(エンエン)、「燕燕」(エンエン)、「燕窩」(エンカ=ツバメの巣)、「燕居」(エンキョ)、「燕娯」(エンゴ)、「燕語」(エンゴ)、「燕好」(エンコウ=援交ではないので注意)、「燕子」(エンシ)=「燕児」(エンジ=つばめ)、「燕脂」(エンシ)、「燕子花」(エンシカ=カキツバタ)、「燕室」(エンシツ)、「燕雀鴻鵠」(エンジャクコウコク)。

 「鶴」の熟語は「鶴駕」(カクガ)、「鶴馭」(カクギョ)、「鶴頸」(カクケイ)、「鶴膝」(カクシツ)、「鶴寿」(カクジュ)、「鶴書」(カクショ)、「鶴痩」(カクソウ)、「鶴髪」(カクハツ)、「鶴歩」(カクホ)、「鶴俸」(カクホウ)、「鶴料」(カクリョウ)、「鶴鳴之士」(カクメイのシ)、「鶴鳴之歎」(カクメイのタン)、「鶴翼」(カクヨク)、「鶴林」(カクリン)、「鶴林玉露」(カクリンギョクロ)、「風声鶴唳」(フウセイカクレイ)、「鶴鳴」(カクメイ)、「鶴唳」(カクレイ)、「鶴企」(カッキ)=「鶴立企佇」(カクリツキチョ)=「鶴立」(カクリツ)=「鶴望」(カクボウ)=「鶴首」(カクシュ)=「鵠企」(コクキ)、「断鶴続鳧」(ダンカクゾクフ)。

 ■「安んぞ」

 =「いずく・んぞ」と表外訓み。反語の副詞、え~っと第何弾でしたかね。見出し語にあるので覚えましょう。「安得~」と用いて、「いずくんぞ~をえん」と訓み、「なんとかして~したいものだ」あるいは「どうして~なんだろうか」と訳す。実現しがたい事を強く願望する意を示す。ここでは、「どうしてみんなこの子を誉めそやすんだろう」。

 ■「衰朽」

 =「スイキュウ」。見出し語に無し。年を取っておとろえ弱ること。また、そのようなからだ。「衰」の熟語は「衰征」(シセイ、セイをそぐ)、「衰」(スイゲツ)、「衰颯」(スイサツ)、「衰弛」(スイシ)、「衰痩」(スイソウ)、「衰鬢」(スイビン)、「衰耄」(スイボウ、スイモウ)、「衰邁」(スイマイ)、「斬衰斉衰」(ザンサイシサン)。

 うちのかわいい坊や、袞師ちゃん。眉目秀麗比類なく。むつきにくるまれ1歳まだきのうちから賢くて、4歳になったら名前も覚えてしまったよ。友人たちは口々に「かの丹穴に棲む鳳凰だ」「風采を重んじる前の時代なら、この品格は第一級」「でなければ神仙の素質がある」「いやいや燕鶴の貴い骨相を備えておる」。なんでまたこうも頌めてくれるのか?おかしいぞ。乃公が老け込んだから気遣っているのだろう。

 まぁ、友人の言葉と称してとにかく褒めちぎっています。陶淵明の詩を明らかに意識した件は、「固より已に六七を知る」と「眼には梨と栗とを視ず」の2箇所。次に陶淵明の詩を掲げますので、どこかにでてきますから注意して読んで下さい。あと「匹い無し」も被ります。


 【責子(子を責む)】

 (岩波文庫 「陶淵明全集(上)」P248~)

 (五言古詩)


 白髪は両鬢を被い、

 肌膚復た実ならず。

 五男児有りと雖も、

 総べて紙筆を好まず。

 阿舒は已に二八なるに、

 懶惰なること故に匹い無し。

 阿宣は行くゆく志学なるも、

 而も文術を愛さず。

 雍と端は年十三なるも、

 六と七とを識らず。

 通子は九齢に垂んとするに、

 但だ梨と栗とを覓るのみ。

 天運 苟くも此くの如くんば、

 且く杯中の物を進めん。


 【責子】

 ■「両鬢」

 =「リョウビン」。両方の耳わきのびんの毛。双鬢(ソウビン)ともいう。「鬢」は「びんずら」とも訓む。熟語には「鬢糸」(ビンシ)、「鬢雪」(ビンセツ)、「鬢霜」(ビンソウ)、「霜鬢」(ソウビン)、「鬢髪」(ビンパツ)、「鬢斑」(ビンハン)、「鬢毛」(ビンモウ)、「鬢乱釵横」(ビンランサイオウ)、「雲鬢」(ウンビン)、「風鬟雨鬢」(フウカンウビン)、「霧鬢風鬟」(ムビンフウカン)。

 ■「肌膚」

 =「キフ」。見出し語にあるが「はだ、皮膚」とまんまです。「肌」を「き」と読むのは表外の音読みです。この読みでは「肌骨」(キコツ)、「肌肉玉雪」(キニクギョクセツ)、「肌理」(キリ、きめ)、「銘肌鏤骨」(メイキルコツ)、「雪肌」(セッキ)=「雪膚」(セップ)。「膚」の熟語は「膚引」(フイン=断章取義)、「膚学」(フガク=浅学)、「膚肌」(フキ)、「膚見」(フケン)、「膚公」(フコウ=勲)、「膚合」(フゴウ)、「膚受之愬」(フジュのうったえ)、「膚寸」(フスン)、「膚浅」(フセン)、「膚撓」(フトウ)、「膚敏」(フビン)、「膚理」(フリ)。「肌膚が復た実(ゆたか)ならず」とは、皮膚が皺だらけになってもう以前のように瑞々しくはならないという意。

 ■「紙筆」

 =「シヒツ」。見出し語無し。紙と筆、転じて、文章を書くこと、さらに、学問・勉強のこと。

 ■「二八」

 =「ニハチ」。2×8=16で16歳。とくに娘盛りの年齢とされる。破瓜。陶淵明の子供は全員男です。「阿~」は親しみの気持ちを表わして人の名前の頭に付ける接頭辞。「~ちゃん」。長男は「舒ちゃん」、次男は「宣ちゃん」。この関係では「阿爺下頷」(アヤカガン)。ちなみにここで出てくる子供の名前はすべて幼名。本名は上から順に「儼」(ゲン)、「俟」(シ)、「份」(フン)、「佚」(イツ)、「佟」(トウ)。

 ■「懶惰」

 =「ランダ」。見出し語。おこたること。なまけてぶらぶらしていること。無精なさま。「懶」は「ものう・い」「おこた・る」「ものぐさ・い」と訓む。「ものぐさ・い」は訓み問題の最後に出そうだ。熟語は「懶婦」(ランプ)、「懶眠」(ランミン)、「放懶」(ホウラン)、「老懶」(ロウラン)、「懶困」(ランコン)、「懶慢」(ランマン)。

 ■「志学」

 =「シガク」。論語で孔子が謂う「15歳」。「吾れ十有五にして学に志す」から。

 ■「覓むる」

 =「もと・むる」。「もとめる」は見出し語。求める。「覓」の音読みは「ベキ」。熟語では「騎驢覓驢」(キロベキロ)、「覓句」(ベキク、クをもとむ)、「覓索」(ベキサク)、「覓得」(ベキトク)。

 ■「杯中物」

 =「ハイチュウのもの」。ずばり「酒」。「杯」の熟語は「杯圏」(ハイケン)、「杯杓」(ハイシャク)、「杯觴」(ハイショウ)、「杯水車薪」(ハイスイシャシン)、「杯洗」(ハイセン)、「杯中蛇影」(ハイチュウのダエイ=疑心暗鬼)、「杯盤狼藉」(ハイバンロウゼキ)。

 どうですか。親ならここまで子供を扱き下ろすかぁ、普通?っていう感じでしょ。

 最近頓に老け込んできたんで跡継ぎのことも考えにゃならんのだが、揃いも揃って勉強嫌いの5人衆。長男は16にもなって無類の怠け者。次男はもうじき15、学問が駄目だという。その下の二人は共に13だが(多分、双子ではなく、異母兄弟)、6と7の区別もつかない。末っ子も9歳になろうというのに、梨ちょうだい、栗ちょうだいとおねだりばかり。。。。。。はぁ~~~。んでも、これも乃公の運命というなら諦めるしかない。さぁ、酒だ、酒でも飲んで憂さを晴らそう。

 商隠の息子は1歳になる前にもう既に、6とか7とか数えられた。淵明の三男、四男は13歳で、6も7も区別がつかなかったというのに。。。(これは言い過ぎで算数に興味が全くなかったということでしょう)。さらに商隠の息子は4歳になると名前を覚えて、梨や栗などおやつはもう目もくれない。淵明の末っ子は9歳でもおやつおやつと欲しがってばかりいたのに。。。。なんかもう、読んでいるとクスクス笑えますな。

 しかし、迂生も娘ながら子を持つ親として身につまされます。子供とはかくも己の思い通りにならん存在なのかと。。。おもちゃじゃない、ペットでもないことは分かっている。ああしたい、こうしたいなんぞは思わないようにしている。しているのだが、隔靴掻痒、親の心娘知らず。口出しすまいと思いつつも、へまばかりこく。李商隠だって友だちが頌めすぎなのはおかしいと思っているし、陶淵明にいたっては酒を飲むしかないと諦めている。まぁ、こうやってぼやくのも親の特権でありましょうか。子供を持たなきゃ絶対に味わえない感情ですからね。諄諄書いていても落ちはない。李商隠と陶淵明の詩でも読んで半分笑って、半分泣くしかないですな。。。。ふはははは。。。。とほほほ。。。

 【今日の漢検1級配当漢字】

驕、袞、霰、舒、雍、葆、嬌、奢、傲(慠)、敖、侈、悍、矜、倨、踞、蹇、肆、耦、疇(畴)、伉、彙、儔、褓、祠、儕、壑、闕、霄、脣、黝堊、臍、縹緻、頷、婉、窩、唳、佇、鳧、孼、颯、鬢、耄、邁、頌、雖、懶、釵、鬟、鏤、愬、撓、皺、儼、俟、佚、覓、驢、觴、藉、痒、諄

 【今日の配当外漢字】

 晬、份、佟

魚の塩漬けの味を「女性」に譬えるエロチックなセンス=柏木如亭「詩本草」


 柏木如亭の「詩本草」シリーズ9回目は、「魚の塩漬け」。魚の名前なんですが、暴走族の「與滷鷙嶇」(ヨロシク)みたいな宛字が連なる、見慣れない言葉が目白押しです。配当外の漢字も交じっていて普通は読めないでしょう。。。そして、それぞれの魚の塩漬けの味というか、その旨味を、さまざまな女性の種類というか、立場というか、姿というか…に譬えるという「斬新且つエロチックな試み」にも挑戦しています。まずは御覧下さい。

 《31魚の塩漬け》

 越前の答剌、越後の失弼吉、加賀の蔑乙失、駿河の屋吉貲達乙、美なり。然れどもこれを若狭の骨達乙に較ぶれば、猶ほ数ジンを隔つ。答剌はキョウサイの如く、失弼吉はエンショウの如く、蔑乙失はシュンピの如く、屋吉貲達乙はメイギの如く、骨達乙は則ちセンキンショウシャの如し。愛す可くして狎る可からざるなり。答剌は(口+大)魚なり。失弼吉は松魚なり。蔑乙失は海鰮なり。屋吉貲達乙は方頭魚なり。骨達乙は棘魚なり。皆な是れ塩蔵の名品にして、他州及ぶこと能はざる者なり。

 万葉仮名みたいですが、「答」=「タ」のように漢字の音を当てているようです。

 ■「答剌」は「タラ」。→「鱈」。「口+大 魚」=大口魚(タイコウギョ)とも書く。越前(福井県)のが最高だという。「剌」(ラツ)は「もと・る」「そむ・く」と訓む。

 ■「失弼吉」は「シホビキ」。→「塩引鮭」。「松魚」(ショウギョ)=鮭。漢検の世界で「松魚」と言えば「かつお」のことですが、如亭に言わせれば、「さけ」。詩本草19段には「松魚」を取り上げており、解説しています。興味があれば御覧下さい。「かつお」と「さけ」の両方ともあるようです。「さけ」は越後(新潟県)のが最高だという。「」は配当外で「カク、コウ」。火がかっかと熱いさま。火力がさかんなさま。「熇熇」(カクカク)。

 ■「蔑乙失」は「ヒメイワシ」。→「姫鰯」。「海鰮」(カイオン)=鰯。加賀(石川県)のが最高だという。「」は配当外「」の異体字で「キツ、コチ」。「肹肹」(キツキツ)は、ひびきわたる、きっきっと笑う声の形容。「」は1級配当で「ベツ」。たび、くつした。

 ■「屋吉貲達乙」は「ヲキツダイ」。→「興津鯛」。「方頭魚」(ホウトウギョ)=甘鯛。「くずな」「かながしら」とも言うようです。駿河(静岡県)のが最高だという。「貲」(シ)は1級配当で「たから」「あがな・う」「みのしろ」と訓む。「貲布」(さいみ)、「貲財」(シザイ)=「貲産」(シサン)、「貲郎」(シロウ)。

 ■「骨達乙」は「コダイ」。→「小鯛」。「棘鬣魚」(キョクリョウギョ、既出)=鯛の異称。若狭(福井県)のが最高だという。

 ■書き問題「数ジンを隔つ」(スウジンをへだ・つ)は、はるかに劣っているという意味。→「」。「後塵を拝す」なら「人の後れを取る」。

 そして、面白いのはそれぞれの魚の味を女性に譬えている。これがエロチック。それぞれのカタカナ表記を、意味をヒントにして浮かべてみましょう。分かるのは分かるが、難しいのもある。。。

 ■書き問題「答剌」は(キョウサイ)、すなわち、美貌の妻。「恐妻」。。。惜しい、一般的に言って必ずしも美貌とは限らない、いや多くはそうではない。→「嬌妻」。



 「嬌」は「なまめ・かしい」とも訓む。「嬌声」(キョウセイ)、「嬌嬰」(キョウエイ)、「嬌客」(キョウカク)、「嬌児」(キョウジ)、「嬌羞」(キョウシュウ)、「嬌女」(キョウジョ)、「嬌笑」(キョウショウ)、「嬌艶」(キョウエン)、「嬌態」(キョウタイ)=「嬌姿」(キョウシ)=「嬌容」(キョウヨウ)、「嬌痴」「嬌恥」(以上、キョウチ)、「嬌鳥」(キョウチョウ)、「嬌面」(キョウメン)=「嬌顔」(キョウガン)、「阿嬌」「婀嬌」(以上、アキョウ)。

 ■書き問題「失熇弼吉」は(エンショウ)、すなわち、色っぽいめかけ。「猿嘯」。。。猿の哀しい叫び声か。。。ちゃう、だって全然色っぽくないもん。→「艶妾」。

 ■書き問題「肹蔑乙韈失」は(シュンピ)、すなわち、秀美な下女(はしため)。これは同音異義語はない、下女で「ピ、ヒ」はいいよね。「シュン」が浮かぶかどうか?→「俊婢」。

 ■書き問題「屋吉貲達乙」は(メイギ)、すなわち、名高い遊女。「名義」ではない、遊女で「ギ」はこれっきゃない。→「名妓」。

 ■書き問題「骨達乙」は(センキンショウシャ)、すなわち、富家のお嬢さん。「センキン」は素直に。。。「瀟灑」は人間には使わないね、「樵者」だと与作がきを剪るきこりだよ。。。ちっちゃな「あねご」と言えば分かるかな?→「千金小姐」。



 「姐」は準1級配当ですが「ソ、シャ」「あね、あねご」と訓む。「小姐」(ショウシャ)は中国語で「シアオ・チエ」。お嬢さんのこと。

 ■「狎れる」は「な・れる」と訓み、なれなれしくすること。音読みは「コウ」。「あなど・る」「もてあそ・ぶ」とも訓む。「狎愛」(コウアイ)、「狎客」(コウカク)、「狎翫」「狎玩」(以上、コウガン)、「狎近」(コウキン)、「狎恰」(コウコウ)、「狎昵」(コウジツ)、「狎邪」(コウジャ)、「狎臣」(コウシン)、「狎猟」(コウリョウ)、「狎弄」(コウロウ)=「狎侮」(コウブ)。

 ■「塩蔵」(エンゾウ)は、塩漬け。

 ここからは、岩波文庫の揖斐高氏の註釈を引用するのですが、「塩漬けの魚の味の違いを女性の比喩で説明するのは、『色食は性と成り、天真爛』(『柏山人碑』)と評された如亭らしい奇想であるが、それがいかにもそれぞれの魚肉の味の特徴を捉えているように思われるのは、さすがである」と称しています。游びの粋人・柏木如亭の面目躍如と言ったところでしょうか。迂生にはなぜに「タラ」が美人妻で、「ヒメイワシ」が賢い下女なのかは分かりませんが。。。魚のことに疎いのか、はたまた女のことをよく分かっていないのか、どちらでしょうかねぇ。。取り合えず、「よっ、さすが游び人如亭」とだけ声を掛けておきますわ。。。やっかみ半分で。。。本日は以上です。

 【今日の漢検1級配当漢字】

滷、鷙、嶇、譬、剌、韈、貲、鰮、棘鬣、嬌、羞、婀、嘯、婢、瀟灑、樵、剪、狎、昵、爛、游

 【今日の配当外漢字】=新コーナーです

熇、肸(肹)、口+大、熳

鼈、団魚、スッポンを知り尽くせ=柏木如亭「詩本草」

 柏木如亭の「詩本草」シリーズ8回目は、「雲壌月」の「」の二段を取り上げます。「月と」ですが、月が天でが地のように、なぜにを下に見るのかは分かりません。こんなに美味なのに。。。円いというだけで比べられた可能性があるぞ。

 《28 その一》

 余喜んでを食ふ。客曰く、「団魚好喫なるも哉に何如ぞ」と。余、声に応じて曰く、「宰予必ずしも澹臺に賢らず」と。

 ■「喜んで」は表外訓み。「この・んで」。

 ■「団魚」は「ダンギョ」。漢名でスッポンの異称です。「まるいさかな」ですか。これで「月」と比べられちゃったんですねぇ?ある意味、スッポンにとっては不幸な命名でした。団いだけなら「お盆」もある。「月とオボン」でいいやん。スッポンという音の響きも良かったんでしょうね。

 ■「好喫」(コウキツ)は、美味。中国語では「ハオ・ツィー」。

 ■「」は「」の異体字。「」は「セン、ゼン」。タウナギ科の淡水魚。ウナギに似るが、鰭(ひれ)が無く、鰓孔(えらあな)は、左右につながって一つになっている。泥の中にもぐって棲息する。たうなぎ。「」(セン、ゼン、たうなぎ)も異体字で、「序」(センジョ)という熟語がある。これは、教室、講堂の意で、卿大夫の衣服や冠に、鳥が「」を咥えた模様をつけたことから、「」は知識人の象徴となった。この場合の「序」は学校のことで、1級基本熟語の「庠序」(ショウジョ)も浮かびますね、、、ちょっと脱線。あ、勿論、「」は海の魚である「うつぼ」「ごまめ」もありますよね、お忘れなく。。。

 ■「哉」(ヤ)は意味を強める助字。

 ■訓み問題「何如」は「いずれ」と訓む。どちらが。

 ■「宰予」(サイヨ)と「澹臺」(タンダイ)。岩波文庫の註釈によれば、ともに孔子の弟子。前者が宰我、後者が澹臺滅明のこと。宰予は弁舌に優れ、澹臺は容貌風采があがらなかった。そのために、孔子は初め宰予を高く評価し、澹臺を低く見たが、後にその評価が間違っていたことに気づき、「吾れ言を以て人を取りて、これを宰予に失し、貌を以て人を取りて、これを子羽(澹臺の字)に失す」(史記・仲尼弟子列伝)と言ったというとあります。つまり、如亭は、ちょっと見るとグロテスクでいかにも愚鈍な風采の上がらない「スッポン」だって、見た目の優れた「タウナギ」に優るとも劣らない美味であると、孔子の弟子連中を引き合いに出し、当意即妙のウィットに富みながら、一方で回りくどい比喩で楽しんでいるのです。

 ところが、「誹風柳多留」百二十九編には「すつぽんの味(うなぎ)とはお月さま」とあるそうです。どちらかというとスッポンに肩入れした如亭ですが、川柳子はウナギに軍配を上げているのです。要は好みの違いじゃん。

 ■訓み問題「賢らず」は「まさ・らず」と表外訓み。「賢」は、すぐれていること。


 これだけでは短いので、引き続き「29段」には「」の雄と雌について面白い考察が。。。。「は雌しかいない」というのです。じゃぁ子孫繁栄できないじゃんかと思うのですが、「蛇や大亀」の精子を戴くというのですが、何だか胡散臭い話だなぁ。真ん丸いの雄と雌が外見上区別しにくいのは確かでしょうね。でも、中国の木蘭(ムーラン)という女戦士が男に化けて勇敢に戦って十二年もばれなかった「撲朔謎離」(ボクサクメイリ)じゃあるまいし。。。。さらに、は耳が無く、目で音を聴くともいう。はぁ?ですね。こんな珍説が「淮南子」にも出てくるらしいのですが。。。。。如亭は荒唐無稽と一刀両断、丁寧に解説してくれます。面白いですよ。これであなたもスッポン通になれる。

 《29 その二》

 本草綱目の諸説、笑ふ可き者多し。鰈の一目並び行くこと、前幅既にその非を弁ず。更に笑ふ可きの最も甚だしき者有り。又た弁ぜざることを得ず。曰く、「は純雌にして雄無し。蛇及び黿を以て匹と為す」と。比目は自ら是れ双目独行す。団魚何ぞ曾て純雌にして雄無からんや。惟だ此の形状相おなじくして、遽には別け難きのみ。鑑定、法有り。我、今筆を援ちて、聊か為に本草を閲する者の目を刮せん。尾尖り出て甲外に在る者は即ち雄なり。曲りて甲内に在る者は即ち雌なり。出る者は卵無く、曲る者は卵有り。卵味尤も美なり。又た曰く、「、耳無し。目を以て聴くを為す」と。淮南子の「耳無くして神を守る」を引きてこれを証す。豈に李時珍が前生、此れ為るか。若し然らずんば、聴不聴、何ぞ以てこれを知らん。一を為す可し。

 ■「本草綱目」(ホンゾウコウモク)は、「中国の本草学史上において、分量がもっとも多く、内容がもっとも充実した薬学著作。作者は明朝の李時珍(1518~1593年)で、1578年(万暦6年)に完成、1596年(万暦23年)に南京で上梓された。日本でも最初の出版の数年以内には初版が輸入され、本草学の基本書として大きな影響を及ぼした。中国では何度も版を重ねたが、日本でもそれらが輸入されるとともに和刻本も長期に亙って数多く出版され、それら和刻本は3系統14種類に及ぶ」(wikipedia)。

 ■「鰈」は訓み問題。→「かれい」。「玉餘魚」とも書く。音読みは「チョウ、トウ」。「鰈魚」(チョウギョ)。「詩本草」の23段では、本草綱目に「一目並び行く」、つまり、鰈は目が一つしかなく、二匹が合体して一匹のように泳ぐ習性がある、と書いてあるのですが、如亭は「とんでもないデマ。一匹ずつ泳ぐのだ」と実証例を挙げて論述しています。

 ■「黿」は「ゲン、ゴン」で「おおがめ」と訓む。配当外で「黿鼉」(ゲンダ=大形のカメとワニの類)、「黿鳴鼈応」(ゲンメイベツオウ)は、大形のカメが鳴くと、スッポンがこたえる、転じて、君臣が感応しあうことのたとえ。「琴瑟相和」みたいで、意味はなんとなく通る。

 ■「匹」(ヒツ)は、配偶、たぐい、ペア。「匹耦」(ヒツグウ)、「匹儔」(ヒッチュウ)、「匹夫匹婦」(ヒップヒップ)。

 ■「何ぞ曾て」は「なん・ぞかつ・て」と訓み、どうして~か。反語の漢文訓読語法の基本です。

 ■「遽には」は訓み問題。→「にわか・には」。音読みは「キョ」。「あわただ・しい」とも訓む。「遽急」(キョキュウ)=「遽疾」(キョシツ)、「遽止」(キョシ)、「遽色」(キョショク)、「遽人」(キョジン)、「遽然」(キョゼン)、「遽卒」(キョソツ)、「駭遽」(ガイキョ)。

 ■「援ちて」は「も・ちて」と表外訓み。この場合は、筆をとるということですね。

 ■「目を刮せん」は「め・をカツせん」。刮目させる。「刮」は「けず・る」「こす・る」「こそ・げる」と訓む。「刮目」は、目をかっと見開いてよく見る。特に期待し、注意して見る。「刮刷」(カッサツ)、「刮磨」(カツマ)=「刮摩」。

 ■スッポンの雄雌の見分け方→「尾尖り出て甲外に在る者は即ち雄なり。曲りて甲内に在る者は即ち雌なり」。簡単じゃないですか。この鑑定方法だと、一目瞭然ですよ。本草綱目はいい加減ですね。

 ■さらに、本草綱目は「、耳無し。目を以て聴くを為す」と記述し、これは淮南子の「耳無くして神を守る」を傍証としているようですが、如亭は「豈に李時珍が前生、此れ為るか。若し然らずんば、聴不聴、何ぞ以てこれを知らん。一を為す可し」と、ちゃんちゃら可笑しいぞと断じています。

 にはさらに別名があって「神守」(シンシュ)という。李時珍は、これの由来として淮南子には「は耳無くして神を守る、神守の名此を以てす」と書かれているとして、引き合いにだしているが、如亭は、あなた(李時珍)はスッポンでないのに、どうして「聴不聴」が分かるのか教えてほしいというのです。

 ■「一」は「イッキャク」。大笑い。「」は配当外の漢字で「キャク」「わら・う」。大口を開けて大袈裟に笑うさまを表わします。此の音符で「キャク」と読むのは難しい。さきほどの「遽」は「キョ」。「醵」も「キョ」。口の上、鼻の下の窪んだところ、鼻溝のことを「肉月+」といいますが、これも「キャク」と読む。

 そこで、淮南子の一節を調べてみました。巻17・説林訓8~9です。

無耳、而目不可以蔽、精於明也;瞽無目、而耳不可以塞、精於聰也。遺腹子不思其父、無貌於心也;不夢見像、無形於目也。蝮蛇不可為足、虎豹不可使緣木、馬不食脂、桑扈不啄粟、非廉也。秦通塞、而魏築城也。饑馬在廄、寂然無聲、投芻其旁、爭心乃生;

 「」(ベツ)は「鼈」の異体字。「瞽」(コ)は「めくら」。「蝮蛇」(フクジャ)は「マムシ」。「桑扈」(ソウコ)は「青雀、鵤/斑鳩/豆回し」。「」(コウ)は「河南・陝西両省の境にある険しい山の名」。「芻」(スウ)は「まぐさ、飼い葉」。

(迂生の勝手解釈)

 スッポンは耳がないが、めくらではない。目はちゃんと見える。だから、耳がない代わりに見る能力が優れるのである。瞽は目が見えないが、耳は達者である。だから、耳はちゃんと聞こえる。目がない代わりに聴く能力が優れるのである。父親が死んでから誕まれた子供は、その父親を尊敬することはない。その顔を見たことがないからである。ましてや夢に見ることもない。その顔を見たことがないからである。このように、見えなければ見えないでいい、聞こえなければ聞こえないでいい、知らないものは知らないでいい。

 マムシに足をつけても、虎や豹を木に登らせてもいけない。馬が脂を食べないし、青雀が粟を啄まないのは、生まれ持った性質のせいであり、清廉が理由なのではない。秦が山の塞(とりで)を修め通じれば、魏は城を築いて備える。馬が飢えて厩舎にいれば、寂然として声を出さないが、まぐさが傍にあると盗られまいとして競争心が煽られるのである。人為的でない、持って生まれたままの自然体が一番いいのである。そうすれば無用な争いごとはなくなるのである。

 で、結論なんですが、李時珍が淮南子に書いてあるとした「鼈は耳無くして神を守る、神守の名此を以てす」はどこにも記述がないことが判明。つまり、淮南子を引き合いに出しているのはアバウトだったということですね。李時珍がどこかからの請け売りで書いたようです。聞き齧りの知識で知ったかぶりすると、結局は「御里」が知れますよ~。誡めましょう。

 本日は以上です。

 【今日の漢検1級配当漢字】

鼈(鱉)、澹臺、鱓(鱔、鱣)、鰓、咥、庠、喩、淮、刮、遽、豈、鰈、餘、瑟、耦、儔、駭、醵、瞽、蝮、扈、魏、饑、芻、陝、煽、齧、誡

「渓鰮」「細鱗魚」食べるなら桂川か大豬川産がお勧め=柏木如亭「詩本草」


 柏木如亭の「詩本草」シリーズの7回目は、ある川魚を題材とした段を取り上げます。いささか難しい漢字ですが、何の魚かを考えながら読むと面白いと思います。短いのでさっと読めるでしょう。

 《12渓鰮》

 渓鰮、所在皆な美なり。西は則ち桂川、東は則ち玉川、中は則ち大豬川、その最も著名なる者なり。但し大豬の魚は肥大を以て名を得るも、そのユジの如きは桂・玉二川に及ばず。大豬川横さまに官道を絶す。海内の至険たり。テイボウの歳西遊し、初めて此の水を渡る。詩以てこれを紀す。

  一道の横流 望 漫たり

  行人 此に到りて肝先づ寒し

  だ言ふ 世路 風波険なりと

  世路の風波還つて自づから安し

 いや~短すぎですね。これで何の魚か当てろと言うのは少し酷かな。魚そのものの記述より、「大豬川」を初めて渡った感慨の方を大きく取り上げている。何の魚は最後にて。。。

 ■書き問題「ユジ」は難問。いかにも1級配当の熟語らしい漢字が二つ並びます。同音異義語は「諛辞」「逾時」「踰時」がありますが、この魚の最大の特徴を言い表す言葉ではないですね。ヒントは、「肥えて脂がよくのっていること」。確かに、天然物は。。。旨そう。。。おっと大ヒントですね。→「腴膩

 「腴」(ユ)は「こ・える」「あぶら」「ゆた・か」と訓む。「膏腴」(コウユ)。「膩」(ジ)は「あぶら」「あか」「あぶらあか」「なめ・らか」と訓む。「細膩」(サイジ)、「瑣砕細膩」(ササイサイジ)、「臙膩」(エンジ)、「油膩」(ユジ)、「膩滑」(ジカツ)、「膩粉」(ジフン)、「膩葉」(ジヨウ)、「膩理」(ジリ)、「腥膩」(セイジ)。

 ■書き問題「テイボウ」は、干支です。偶には書いてみましょう。→「丁卯」(ひのとう)。ここでは文化四年(1807年)。

 ■「漫」は「ビョウマン」。水がひろびろと広がったさま。「茫」ともいう。「」は配当外で「ひろびろとはるかに広がる水」。「」(ビョウビョウ)も同じ意味。「渺」「眇」(めではとらえにくい)と同系と漢字源にある。

 ■「祗だ」は「た・だ」。「祗」は1級配当で音読みが「シ」。「つつし・む」とも訓む。「祗畏」(シイ)、「祗役」(シエキ)、「祗候」(シコウ)、「祗粛」(シシュク)=「祗敬」(シケイ)、「祗服」(シフク)。「注意すべきは「祇」との違い。「氏」の下に「一」がある。本番でも留意しようね。急ぐと間違うよ。「祇園」(ギオン)や「天神地祇」(テンジンチギ)のように「ギ」だけなら区別しやすいのですが、「シ」もあるので厄介だ。しかも、こちらも「ただ」と訓む。ごちゃごちゃになるね。「祗」と「祇」。。。。じ~っと見て体で覚えこむしかない。意地悪くなると、「舐犢之愛」(シトクのあい)の「舐」、「砥礪切磋」(シレイセッサ)の「砥」などが混ざってくるとこんがらがるね。そのコンテクストでいくと、お子様漢字である「紙」まであやふやになるから、さぁ大変だぁ。。。此の際整理。「祗」「砥」と「舐」「祇」「紙」。これ以外にありましたっけか?

 ■「世路」は「セロ、あるいはセイロ」。世渡りの道。人生行路。「セロ」と言えばこれしかないのですが、案外浮かばないかもしれません。例えば、書き問題で「険しきセロを渡る身の辛さよ」とあって書けるかどうかなんですが、迂生は自信ないですねぇ。。。。

 ■それで「渓鰮」なんですが、分かりましたか?日本全国の川で採れるのですが、中でも京都・桂川や駿府・大豬川(大井川)などのものが美味で有名らしいのですが。。。ヒントは「腴膩」でしょうね。

 正解は「あゆ」。う~ん、「鮎」「香魚」「年魚」「阿諛」。。。もとい、最後のはギャクです。前記三つが漢検本番用には覚えておけばいいでしょう。「鰮」って「いわし」ですよね。渓流の鰮ですか。これがどうして「あゆ」なんでしょうね。岩波文庫の揖斐高氏の註釈では、和漢三才図会に「平陽鴈蕩山志云、香魚 又名記月魚細鱗魚渓鰮其註最詳」とあるといい、このほかに「月魚」「細鱗魚」とも言うようです。また、寛政十二年に刊行された「俗書正譌」という書物に「渓鰮(あゆ、正字)」とあると出ています。

 ★「あゆ」の字が「魚偏+占」となった謂われとなっている文書に「日本書紀 巻第九 気長足姫尊 神功皇后」があります。

 夏四月の壬寅の朔にして甲辰(三日)に、北火前国の松浦県に到りまして、玉島里の小河の側に進食したまふ。是に皇后、針を勾て鉤に為り、粒を取りて餌にして、裳の縷を抽き取りて緡し、河中の石上に登りて、鉤を投げ祈ひて曰はく、
「朕、西、財国を求めむと欲ふ。若し事を成すこと有らば、河の魚鉤を飲へ」とのたまふ。因りて竿を挙げて、及ち細鱗魚を獲たまひつ。時に皇后の曰はく、「希見き物なり」とのたまふ。故、時人、其処を号けて梅豆羅国(めづらのくに)と曰ふ。
今し松浦と謂ふは訛れるなり。是を以ちて、其の国の女人、四月の上旬に当る毎に、鉤を以ちて河中に投げ、年魚を捕ること、今に絶えず。唯し男夫のみは、釣ると雖も、魚を獲ること能はず。

 本篇が短かったので、折角ですから、日本書紀のこの件も勉強してみましょう。

 ■「壬寅」は読めますか?→「ジンイン」(みずのえとら)。

 ■「甲辰」は読めますか?→「コウシン」(きのえたつ)。

 ■「鉤」は「ち」と訓み、「つりばり」。

 ■「粒」は「いいぼ」と訓み、「めしつぶ」。

 ■「縷」は「いと」と訓む。音読みは「ル、ロウ」。「縷切」(ルセツ)、「縷説」(ルセツ)=「縷述」(ルジュツ)=「縷言」(ルゲン)=「縷陳」(ルチン)、「縷縷」(ルル)。

 ■「緡」は「つりいと」と訓む。音読みは「ビン」。「さし」とも訓み、「緡銭」(ビンセン)、「緡緡」(ビンビン=無知)。

 ■「希見き」は「めずらし・き」と訓む。

 ■「訛れる」は「なま・れる」と訓む。「いつわ・る」とも訓む。音読みは「カ」。「訛言」(カゲン)、「訛音」(カイン、カオン)、「訛舛」(カセン)、「訛伝」(カデン)、「訛謬」(カビュウ)=「訛語」(カゴ)。

 ちなみに、「年魚」の字を当てるのは、『和名類聚抄』に「春生じ、夏長じ、秋衰え、冬死す、故に年魚と名付く」と記されているとあります。

 さて、「大豬川(大井川)」ですが、如亭は「海内の至険たり」と言っています。江戸幕府は当時、軍事的な配慮から大井川に橋を架けなかったため、旅人は危険を冒して川渡しで急流を渡らなければならず、何人も命を落とした話も伝わっています。「箱根八里は馬でも越すが越すに越されぬ大井川」は有名な成句です。如亭が生まれて初めて大井川を見て、「肝先づ寒し」。そして渡り切ったときには、「世路の風波還つて自づから安し」と安堵の溜め息。世知辛い世間の方が大井川よりよほどましだよと半泣きだったんでしょうなぁ。。。。でも、今からたった200年前のことですよ。世の中がいかに急速に進んでいるかを改めて感じないわけにはいきませんね。本日は以上です。

 【今日の漢検1級配当漢字】

鰮、祗、諛、逾、踰、腴膩、臙、腥、茫、渺、眇、舐犢、磋、譌、縷、緡、訛、謬、堵

草君に饋る「菜根譚」と「止酒」=柏木如亭「詩本草」

 柏木如亭の「詩本草」シリーズの6回目は、第10段「蕈狩りの怪異」の後半です。蕈狩りの最中に道に迷った某生とその下僕の二人が、とある草廬に出くわします。そこで彼らが見たものは、体験したこととは一体。。。。ひゅ~どろどろ。。。

《10蕈狩りの怪異》の続きです

1 これをウカガへば、一老僧、蒲団上に趺坐す。

2 生、径ちに入りて礼を作し、且つ茶を乞ふ。

3 僧応ぜずして石鼎を指す。

4 生と僕と坐して茶をススる。

5 僧復た屋後を指す。

6 因つて首を回らせば、林外宛も一梵宇を見る。

7 至れば則ち宝殿古奥、内に数十の木仏有り。

8 正面に阿弥陀仏を安んず。

9 而して十六聖者左右に排列す。

10その大きさ丈余。

11面貌生けるが如く、も亦た殊だ古し。

12葢し数百年の物ならん。

13生、覚えず信を起して礼拝し、因つて懐中を探り、一方金を捧げて敬賽す。

14殿内に憩ふこと少頃、酒醒めて興趣頓に尽き、看看天色暮れんと欲す。

15将に出で去らんとして忽ち見る、一木像の手を挙げて一像を指すを。

16一像破顔して相顧み、カカ大いに笑ふ。

17生、毛髪尽くち、カンゾク体に遍し。

18須臾にして門外にタクタクとして声有り。

19急に頭を擡げてこれを看れば、僕の屍首のりて樹上に在るを見る。

20生、魂飛び魄散じ、顧みずして走り、既に帰りて主人に告ぐ。

21主人駭きて曰く、「彼の山は相伝へて鬼魅の窟と為す。

22入る者は再び出づること無し。

23君独り何を以て生還することを得たる。

24豈に腰間の鉄、護すること有るか。

25抑信を起して仏を礼す。

26神明陰助するなからんか。

27従僕の死は憫む可しと雖も、君は幸に恙無し。

28請ふ、心を寛うして三盃を喫せよ」と。

29侑むるに酒を以てし、賀して且つ驚きを圧すと云ふ。


1 書き問題「ウカガ・う」。1級配当ですが書けますか?「伺う」「窺う」「闖う」「遉う」「睨う」「俔う」「諜う」「間う」「斥う」「候う」「覗う」ではないもう一つ。→「覘う

  じっと様子を見ることです。音読みは「テン」。「のぞ・く」とも訓む。熟語は「覘候」(テンコウ)、「覘望」(テンボウ)。

  「趺坐」は「フザ」。足の甲を股の上に置く座り方。「結跏趺坐」(ケッカフザ)・「全跏坐」(ゼンカザ)、あるいは「半跏趺坐」(ハンカフザ)・「半跏坐」(ハンカザ)のこと。「趺」は「あし」「うてな」「あぐら」とも訓む。「趺跏」(フカ)という熟語もあり、「趺」「跏」も同じ意味。

  「蒲団」は訓めますか?通常なら「フトン」という唐音読みですが、ここでは別の音読みで。。。。→「ホタン

  えっ?結構難問でしょ。ガマの葉でまるく編んだ敷物。僧が坐禅のときなどに使う。円坐。日本の「布団」は宛字です。「ホタン」と読めるようにしておきましょう。というよりもむしろ、「ホタン」の書き問題が狙われそうです。例えば、「ホタンの上で趺坐する老僧」はいかが。むずいぞ。

2 「径ちに」は訓めますか?表外訓みですが、あまり見慣れない。→「たちま・ち」とルビが振っているが、正確には「ただ・ちに」の方がいいのではないでしょうか。漢字源によると、「回り道をせずまっすぐ、近道を通って、ほかのことをしないですぐに」とある。「径路」(ケイロ)は、近道、捷径(ショウケイ)のことですね。

3 「石鼎」(セキテイ)は、陶器製の茶を烹る道具。「鼎」は「かなえ」。

4 書き問題「ススる」。これはノーヒントで書けてほしい。但し、いずれも1級配当ですが「る」「酳る」「歃る」「哈る」ではないので念のため。。。→「啜る

  音読みは「セツ、テツ」で「すすりな・く」とも訓む。「啜汁」(セツジュウ、しるをすする)、「啜賺」(セッタン)、「啜泣」(テッキュウ)。

6 「宛も」は「あたか・も」。さながら。

  「梵宇」(ボンウ)は、寺院、仏寺。「梵刹」(ボンサツ)とも書く。

7 「古奥」(コオウ)は、古くて奥の深いさま。簡単ですがあまり見かけない熟語です。

8 「聖者」はここでは、「ショウジャ」。まよいを去り、道理を悟った人。ここでは羅漢像のこと。「セイジャ」と読めば、最も高い人徳を身につけ、知恵のすぐれた人、中国の天子。

10 「丈」は「ジョウ」。「一丈」は約3米。

11 「状」は訓めますか?表外訓読みです。→「かたち」。覚えましょう。

13 「一方金」は「イチホウキン」。一枚の方形の金貨。一分金(四分の一両)をいう。

   「敬賽」は「ケイサイ」。恭しく捧げ呈すること。「賽」は「おれいまつ・り」「さいころ」とも訓む。熟語には「賽神」(サイシン)、「報賽」(ホウサイ)、「賽会」(サイカイ、サイエ)、「賽社」(サイシャ)、「賽銭」(サイセン)、「賽日」(サイニチ)、「賽河原」(サイのかわら)。

14 「少頃」は「ショウケイ」。しばらく。「少時」(ショウジ)とも書く。

   「看看」(カンカン)は、みるみるうちに、次第に。

16 書き問題「カカ」。書けますよね?同音異義語は「嘉禾」「禾稼」「哥哥」「禾果」「嬶」「嚊」ですが、その後に「大いに笑ふ」とありますから、OKですよね。→「呵呵

  からからと大声で笑うさま。「呵」は1級配当で「しか・る」「わら・う」「ふ・く」とも訓む。「呵呵大笑」(カカタイショウ)、「呵譴」(カケン)、「呵欠」(カケン=あくび)、「呵詬」(カコウ)、「呵止」(カシ)=「呵禁」(カキン)、「呵責」(カセキ、カシャク)、「呵凍」(カトウ)=「呵筆」(カヒツ)=「呵硯」(カケン)、「訶問」(カモン)。

17 「竪ち」は訓めますか?→「た・つ

  「竪」は準1級配当で「ジュ」、「た・つ」「たて」。「豎」は異体字。熟語は「竪子」(ジュシ)、「竪立」(ジュリツ=身の毛が弥立つ)、「小竪」(ショウジュ)、「竪宦」(ジュカン)、「竪児」(ジュジ)、「竪儒」(ジュジュ)、「竪僧」(ジュソウ)、「竪吏」(ジュリ)。

  書き問題「カンゾク」は浮かびますか?「漢族」「姦賊」「奸賊」ではありません。総毛立ち、体中に「カンゾク」が立っているというのですから。。。。。→「寒粟

   寒さや恐怖の為に、肌にアワのような粒が生じること。鳥肌が立つこと。「粟膚」(ゾクフ)。

18 書き問題「タクタク」はいかがでしょう?「啄啄」ではありません。やや難しいか。ヒントは、骨がぽきぽきという音なんですが。「はりつけ」が大ヒントです。→「磔磔

 「磔」は「はりつけ」「さ・く」と訓む。からだをひきさく、ひきさいて内臓を開くという意味もあります。かなり残酷な漢字。「桀」の一字で「はりつけ」。これに石偏。「磔磔」と言えば、ことこととたたく音の形容、あるいは、鳥の羽ばたく音、鳥の鳴く声の形容が一般的です。この「ぽきぽき」という音が宝殿の外から聞こえてきたのです。何でしょう。

19 「挂りて」は「かか・りて」。「掛かり」と同義。「挂」は1級配当で「ケイ」「ひっか・かる」とも訓む。「挂冠」(ケイカン、官職を辞すこと)=「挂冕」(ケイベン)=「挂綬」(ケイジュ)、「挂歯」(ケイシ)、「挂錫」(ケイシャク)。下男の首が樹上にかかっていたのです。ぎゃぁあああああ~~~~。

20 「魂飛び魄散じ」は「コンと・びハクさん・じ」。恐怖の余り精神錯乱状態になってしまうこと。そのまま四字熟語に「魂飛魄散」(コンヒハクサン)で覚えましょう。

21 「鬼魅」(キミ)は、物の怪。「魑魅魍魎」(チミモウリョウ)。「魅」は「すだま」。

22 「腰間の鉄」(ヨウカンのテツ)は、腰にさした刀。どうしてあなたさまだけ助かったのか?刀のせいではござるまい。

29 「酒」は「シュコウ」。酒と肴。「」は配当外で「おかず、皿の上に交差させて並べる料理」。「核」(コウカク)=「肴核」「函」(コウカン)、「殽烝」(コウジョウ)、「殽饌」(コウセン)、「殽乱」(コウラン)=「殽雑」(コウザツ)。

  「驚きを圧す」は、恐ろしい目にあった者に、酒食を供して心を落ち着かせること。


 さあ、「某生」だけがどうして鬼魅の手にかからず、生き延びることができたのでしょうか?「13」の信心による「敬賽」のお蔭なんでしょうね、単純だけど。あの趺坐して何も語らなかった僧が[物の怪]だった。外で待っていた下男だけがやられた。信心と言うのは咄嗟のとき役立つものなのかもしれません。しかも、意図したものでは駄目でしょう。心の底から感動したとき、その「験」が最大限に発揮されるのです。これは屹度、学習も同じだと思います。漢字検定試験が6月にあろうがなかろうが関係ないんです。いつあってもいいように常に学習を怠らず、咄嗟のときにその実力が発揮できるようでなければならないんです。いささか、牽強付会ではありますが、一歩でもいいから前に進むことが大切なんです。物の怪の話ではありましたが、自分の身に置き換えてみました。こじつけでも何でもいいんです。

 ただ、ひとつ疑問なのは「14」に「酒醒め」とあるのですが、「4」で啜ったのはお茶ですよね。草廬では酒は飲んでいないはずです。ははぁ~ん、草廬に辿り着く前に、「青苔」で下男と「壺觴」を交わしましたよね(前半の「27、28」)。これは既に酔っていましたね。草君のように。。。酩酊状態だ。それでぐるぐる歩き回ったものだから、まさに「桃花源」を見たのではないでしょうか。草廬なんてなかった。宝殿もなかった。十六聖人もなかった。。。。すべては「夢」の中。。。「全裸」にこそなっていなかったものの、いい気分でこの世に無い妄想を見ていたんでしょう。じゃ、下男の首はどうなんだって?何かと見間違えたんではないですかね。今頃、下男もどこかに眠りこけているのではないでしょうか?そういう落ちってあり?。。。ですか?

 んでも、酒って恐いよねぇ。。草君。「強制猥褻」でなく「公然猥褻」だから、大したことないって。反省は必要だが、一度リセットして出直そうよ。ストレスは誰にでもある。酒で憂さを晴らすのもいいでしょう。あの陶淵明だって酒を止めようと思った時期もあるくらいの「失敗」を犯したようだから、君はまだ三十四歳、若いぞ。世間は許してくれると思うよ。且く謹慎して復帰した暁には、また、ニュー「草」として活躍すればいいじゃないか。謹慎期間中には、「菜根譚」を読むことを勧めるよ。一度、挫折を知った人間は強いぞ。このまま朽ちてはいけない。それだけが言いたくて、無理矢理、酒の話を持ち出した次第です。。。失礼。。。
 本日は以上です。

【今日の漢検1級配当漢字】

蕈、趺、賽、臾、擡、挂、魄、駭、曰、憫、雖、恙、闖、遉、睨、俔、覘、跏、歠、酳、歃、哈、啜、賺、刹、禾、哥、嬶、嚊、呵、譴、詬、磔、冕、魑、魍、魎、烝、饌、咄嗟、屹、廬、觴、猥褻

蕈狩り迷った先には桃花源…=柏木如亭「詩本草」


 柏木如亭の「詩本草」シリーズの5回目は、「蕈狩り」にまつわるちょっと、いや、かな~り不気味なお話を紹介します。如亭自身の体験談ではなく、人から聞いた話のようですが、そう簡単には忘れられないでしょうね。怪談の季節にはちと早いですが、すこしだけ寒くなっていただきましょう。ただし、ちょっと長いので、2回シリーズで。重要漢字は目白押しですよ。そして、また陶淵明の出番です。

《10蕈狩りの怪異》

1 蕈を拾ふは蕈を食らふより楽し。

2 に信中に寓す。

3 舎後の乱山松林の中に多く此の物を生ず。

4 秋来、日として拾はざるは無し。

5 毎に筐に盈ちて帰る。

6 即ち隣翁を招きて、酒を貰ひ蕈を焼きて鬼を説かしむ。

7 中にサイキンの一話有りて最も怪し。

8 云はく、「某生、一僕を携へて竜神の温泉に浴す。

9 温泉は紀の深山の中に在り。

10能く諸瘡を治すと云ふ。

11時に維れ八月、秋気蕭条として草木黄落す。

12浴に在ること数日、旦夕惟だ谷鳥の悲鳴、嶺猿のアイショウを聞くのみ。

13生、無聊に堪へず。

14因つてサイキンの遊を為さんと欲し、これを居停主人に謀る。

15主人曰く、「此を去ること十七八里、一松林有り。

16菌甚だ多し」と。

17生、翌日暁を侵して出づ。

18僕、行厨を提げて相従ふ。

19行くこと二十里多路にして謂ふ所の松林を見ず。

20小径、通ずるに似、窮するに似て、只だ縦歩して行く。

21大木、天に参じて日を蔽ふ者、その数を知らず。

22生、顧て僕に謂ひて曰く、「古の名士は多く山水を愛して動もすれば輙ちを結びて栖む。

23予が心、これを慕ふも、風塵に奔走して未だ初志を遂げず。

24今求めずして此の如きショウキョウに遇ふことを得たり。

25豈に幸ならずや」と。

26主僕相対して青苔に坐す。

27手づから壺觴を引きて以て飲む。

28既に酔ひて興趣ボツゼンたり。

29且つ吟じ且つ行く。

30前面に忽ち一孤峰を見る。

31眺望絶佳なり。

32乃ちトウカツハンエンして上る。

33狭径僅かに行履を通じ、落葉人を没す。

34行くこと里許、殆ど将に絶頂に近づかんとするも、亦た甚だしくは険ならず。

35一草廬有り。

36短牆斜門、ジンセイを隔絶す。

37生、驚歎して曰く、「這の裏に又た秦を避くる人有るか」と。          (続く)

 ここで一旦切らせていただきます。本文は追い込んでいますが、見やすいように一文ずつ改行しました。併せて文の数も多いのでどの文から語彙を採用したか分かりやすくするために一文ずつ番号を付しましたのでご容赦を。。。。一文は短くて、あたかも「漢詩」のように歯切れがいいでしょ?こうすると読みやすく、意味は汲みやすいのではないでしょうか?

1 きのこ狩りは、きのこを食べるよりも楽しいと言っています。その気持ちはマニアなら分かる。譬えて言うなら、漢字学習は、漢字検定試験を受けるよりも楽しい。。。全然違うか。いや、逆か。漢字検定試験を受ける方が、漢字学習より楽しい。何が言いたいかわからな~い、例えになっていな~い。

2 「曩に」は訓めますよね?「嚮に」とも書く。→「さき・に

  「信中」は、信濃国、すなわち長野県。どこぞの家老か豪商のところに食客となって世話になっていたのでしょう。

5 「毎に」は訓み問題です。表外訓み。→「つね・に

  「筐」は「かご」。四角いカゴ。和訓ではほかに、「かたみ」「はこ」「ねだい」。音読みは「キョウ」。熟語は「筐筥」(キョウキョ)、「筐篋」(キョウキョウ)、「筐笥」(キョウシ)、「筐牀」(キョウショウ)、「筐箱」(キョウソウ、箱のソウは表外音)。

6 「貰ひ」は「もら・ひ」。珍しい訓みに「おぎの・る」がありますが、むしろ中国ではこちらの意味が主。品物を先にやり取りして支払いは後にする、付け買い、掛買いという意味。漢詩などではよく出てくる。この意味の熟語では「貰買」(セイバイ)、「貰貸」(セイタイ)。「もらう」という意味は日本用法。「鬼」は妖怪、化け物のお話。

7 書き問題「サイキン」。蕈狩りのことです。書けますか? 「最近」「砕錦」「細瑾」「采芹」「細謹」ではない。→「採菌

8 「竜神の温泉」は、注釈によれば、今の和歌山県田辺市龍神村にある温泉。

10 「瘡」は「ソウ」で「きず、かさ、くさ」と訓む。できもの、腫れ物。「瘡痍」(ソウイ)=「瘡夷」、「瘡腫」(ソウショウ)、「瘡瘢」(ソウハン)=「瘡痕」(ソウコン)、「痘瘡」(トウソウ、もがさ)、「刀瘡」(トウソウ)。

11 「維れ」は「こ・れ」。特別な用法ですが、意味は無く語調を整え、次に来る語を強調する役割を担っています。「時」を強調する。

   「蕭条」は「ショウジョウ」。物寂しいさま。

12 「谷鳥」(コクチョウ)は、谷間を飛ぶ鳥。「嶺猿」(リョウエン)は、嶺(みね)に棲む猿。

   書き問題「アイショウ」。哀しい鳴き声。同音異義語は「愛誦」「愛称」「相性」「愛唱」「愛妾」「哀傷」。→「哀嘯

   「嘯」(ショウ)は「うそぶ・く」「うな・る」「ほ・える」「しか・る」とも訓む。「嘯歌」(ショウカ)=「嘯詠」(ショウエイ)、「嘯傲」(ショウゴウ)、「嘯合」(ショウゴウ)、「嘯聚」(ショウシュウ)=「嘯集」(ショウシュウ)、「嘯咤」(ショウタ)、「嘯風」(ショウフウ)、「嘯風弄月」(ショウフウロウゲツ)。

14 「居停」(キョテイ)は、寄寓している家。温泉の宿屋のこと。

18 「行厨」は「コウチュウ」。携帯用の酒食。弁当。木や竹でつくったわりご(破籠、)。

19 「多路」(タロ)は、~以上の道のり。歩いた距離は二十里ではきかなかったということ。

20 「縦歩」(ショウホ)は、気ままに歩くこと。逍遙。

22 「廬」は訓み問題。訓で。このblogの名称でもある。 →「いおり

   音は「ロ」。粗末な小さい家。「廬舎那仏」(ルシャナブツ)、「廬山」(ロザン)、「廬児」(ロジ)、「廬舎」(ロシャ)、「廬墓」(ロボ)、「廬落」(ロラク)、「廬陵」(ロリョウ)、「草廬」(ソウロ)。

24 書き問題「ショウキョウ」。書けますか。とても簡単な漢字です。景色の良いところ。同音異義語は「猖狂」「生姜」「松喬」「鈔劫」「抄劫」「商況」「小経」。→「勝境

   この場合の「勝」は「まさる、すぐれる、他のものの上に出る」という意。熟語では「勝引」(ショウイン)、「勝概」(ショウガイ)、「勝景」(ショウケイ)、「勝状」(ショウジョウ)、「勝蹟」「勝迹」(以上ショウセキ)、「勝絶」(ショウゼツ)、「勝地」(ショウチ)、「勝区」(ショウク)、「勝致」(ショウチ)、「勝麗」(ショウレイ)。

27 「壺觴」は読めますか?酒つぼとさかずきのこと。 →「コショウ

   陶淵明の「帰去来兮辞」に「壺觴を引きて以て自ら酌む」がある。陶淵明の基本ワードですね。

28 書き問題「ボツゼン」。書けますか?急に沸き起こるさま。基本ですね。→「勃然

32 書き問題二題「トウカツ」と「ハンエン」。書けますか?「トウカツ」は同音異義語は「偸活」「統括」「統轄」ですが違う。次の「ハンエン」とも連動するのですが、こちらは「よじのぼる」。よじのぼるものと言えば。。。。漢字は簡単ですが「トウカツ」では浮かび難いですね訓で。「ふじかずら」ならいかがですか?→「藤葛」と「攀縁

   「攀」(ハン)は「ひ・く」「よ・じる」「すが・る」とも訓む。「登攀」(トウハン)、「攀援」(ハンエン)、「攀桂」(ハンケイ)、「攀登」(ハントウ)、「攀附」(ハンプ)、「攀竜附鳳」(ハンリョウフホウ)、「攀恋」(ハンレン)=「攀慕」(ハンボ)、「攀轅臥轍」(ハンエンガテツ)。

36 「短牆斜門」は「タンショウシャモン」。丈の低い垣根と正門の横の潜り戸。「牆」(ショウ)は「かき」「まがき」「へい」「かこ・い」とも訓む。「牆垣」(ショウエン)、「牆衣」(ショウイ)、「牆籬」(ショウリ)、「牆頭」(ショウトウ)、「牆有耳」(ショウにみみあり)、「牆壁」(ショウヘキ)、「牆面」(ショウメン=無能者)。

 書き問題「ジンセイ」。書けますか?同音異義語は「仁政」「恁生」「人性」「腎性」「人生」。けがれたよのなかのこと。分かりますね。→「塵世

   類義語は「塵界」(ジンカイ)、「塵境」(ジンキョウ)、「塵俗」(ジンゾク)、「塵寰」(ジンカン)。

37 「秦を避くる人」は、懐かしの「桃花源の記」の一節。例の漁人が迷い込んだ邑の住人は、自分たちの祖先が500年も以上前の秦の暴虐の時代を避けてこの地に逃げ込んだと語っていました。このお話の「某生」も、蕈狩りをしていて迷い込んだところに見つけた草廬を見て、あの桃花源の記を思い出し、邑人の祖先と同じように世を棄てた人でも棲んでいるのではないかと思ったのです。心憎い台詞と言えましょう。

 本日はここで筆を擱きます。まだ、おどろおどろしくないですね。次回、後半はかなり恐いですよ。お楽しみに。。。。

 【今日の1級配当漢字】

蕈、曩、筐、瘡、蕭、聊、輙、廬、觴、牆、彙、譬、嚮、筐、筥、篋、牀、瑾、痍、瘢、嘯、傲、逍、猖、姜、鈔、蹟、迹、偸、攀、籬、恁、寰、擱

「松蕈」を咬んで嗅いで翫わって=柏木如亭「詩本草」

 柏木如亭の「詩本草」シリーズの四回目は、「松蕈」。訓めますよね。季節は秋。香りがいい。肌触りが滑らかで、柔らかいこと此の上無い。。。。形もすこしエロチック。。。

 《9松蕈》

 蔬中の奇は蕈に如くは莫し。蕈中の奇は松に如くは莫し。松中に又た釘有り、笠有り、傘有り。山中の人、以て玉食に充つ楊誠斎の

 「 面黄紫光湿はんと欲す。
  酥茎嬌脆手軽く拾ふ。
  響きはガショウの如く味は蜜の如し。
  滑らかさはジュンシの如く点渋無し。
  傘は笠に如かず釘は笠に勝れり。
  香り歯牙に留まりてジャも及ぶことなし 」(本文中は追い込み)

といふは、曲さにその妙を尽くすと謂ひつ可し。此の外は寥寥として聞くこと無し。吾友詩仏が十絶、遥かに後塵を継ぐに足れり。庭瀬に客たる日、松蔭大夫、余が此の味を嗜むこと命の如くなるを知り、斬新の者を獲るときは則ち必ず遣らる。一日早起し方に佳味を思ふ。忽ち松風面を撲ち、大夫已に一籠を送り来る。香色大いに担頭の物に勝れり。筆を拈りて立どころに一律を賦して价に付す。その落句に云はく、

 「但だ恐る吾生の清福を損ぜんことを。
  玉食を将つて送り来ることの頻なるを休めよ」。(本文中は追い込み)

食し了りて往きて謝し、乃ち道ふ、「早間恵まるる所、脆美尤も口に可なり。惜むらくは誠斎をして九原に起して同じく嘗めざらしむるを」と。大夫為に笑倒す。

 ■「蔬」は「ソ」。野菜のこと。訓読みでは「な」「あおもの」「あら・い」「こめつぶ」がある。「蔬果」(ソカ)、「蔬菜」(ソサイ)、「菜蔬」(サイソ)、「蔬食」(ソシ、ソショク)、「蔬筍」(ソジュン)、「蔬茹」(ソジョ=温野菜)、「蔬飯」(ソハン)、「蔬圃」(ソホ)=「蔬畦」(ソケイ)、「疎糲」(ソレイ)。

 ■「蕈」は「きのこ」。音読みは「シン、ジン」ですが難しい。「香蕈」(コウジン=香蕈シイタケ)、「松蕈」(ショウジン=松茸マツタケ)。「きのこ」には「茸」「菌」も。「蕈中」は「シンチュウ」と読ませている。次の「松」は「マツタケ」のこと。

 ■「釘」「笠」「傘」とあるのはいずれも、松茸の形状。注釈によると、「釘」は上部がまだ開かないもの、「笠」は上部がやや開きかかったもの、「傘」は上部が大きく開いたもの。面白い表現です。

 ■「玉食」(ギョクショク)は、御馳走、美味しい食べ物。

 ■「楊誠斎」(ヨウセイサイ)は、南宋三大大家と称された詩人の一人(残りは范成大、陸游)。次に引用した七言古詩は、彼が詠じた「蕈子」(ジンシ)の一部。

 ■「面」(ロウメン)は、蠟を塗ったように光沢のある表面。

 ■「酥茎」は「ソケイ」。滑らかで柔らかな茎。「酥」は1級配当で「ちちしる」と訓む。牛・羊・馬などの乳を煮詰めた乳製品。クリーム。バター。「酥灯」(ソトウ)、「酥酪」(ソラク)、「酥油」(ソユ)。

 ■「嬌脆」は見慣れない熟語ですが読めますか?「キョウゼイ」。可憐でもろい。「嬌」は1級配当、「脆」は準1級配当でおのおの馴染みのある漢字ですが、この組み合わせは初見ですね。見慣れましょう。マツタケを乱暴に扱うと形がれてしまうさまを言っているのでしょう。

 ■書き問題「ガショウ」は浮かびますか?「響き」とあるのは歯ざわりのこと。マツタケを咬むと「ガショウ」のような歯ごたえだというのですが、ヒントになりますかね?やや難しい。「ガ」は1級配当漢字である鳥の名前なんですが。。。。同音異義語には「牙璋」「臥牀」「賀頌」「臥床」「娥粧」「雅頌」「賀正」「画商」などがありますが。。。。鳥関係はないですよねぇ。。。ガチョウの水搔き。大ヒントです。

 正解は「鵝掌」。な~るほどですね。美味とされますが、注釈には細かい料理法が書いてあります。興味があれば読んでみてください。「鵝」は「がちょう」ですね。「鵝毛」(ガモウ=毫毛)、「鵝眼」(ガガン)、「鵝湖」(ガコ)、「鵝鴨」(ガオウ)、「鵝黄」(ガコウ)。

 ■書き問題「ジュンシ」はいかがでしょう?同音異義語は「殉死」「徇死」「荀子」「巡視」などでは人名ですね。ややむずかしいか。マツタケの滑らかさと言ったら「ジュンシ」のようだという。滑らか。。。。なるほど、確かにこの食べ物は滑らかだ。。。「ジュンシ」は難問ですが、「ジュンサイ」なら浮かぶでしょう。大ヒントです。

 正解は「蓴糸」。「蓴」は「ぬなわ」「じゅんさい」と訓む。有名な「蓴羹鱸膾」(ジュンコウロカイ)は「蓴鱸」(ジュンロ)とも書く。基本四字熟語ですな。もう一つの特徴はすべてが1級配当漢字で構成される珍しいパターン。

 ■「点渋無し」(テンジュウな・し)は「僅かの渋滞もない」。マツタケの表面が滑らかですべすべしているさまをいう。

 ■「歯牙」(シガ)は、この場合は「歯」のこと。

 ■書き問題「ジャ」は浮かびますか?「香り」とあるので何となくOKでしょう。「ジャ」で香りと言えばこれしかありませんよ。

 正解は「麝」。「じゃこうじか」と訓む。鹿の一種で、腹部の分泌器官から麝香と呼ばれる強い芳香を分泌する。マツタケの香りはジャコウといい勝負だと言うのです。

 ■訓み問題「曲さに」は訓めますか?表外訓読み。

 正解は「つぶ・さに」。でも、宛字っぽいですね。「つぶさに」と言えば「具に」「悉に」「備に」の方が一般的で、試験に出ます。「曲」には「こまごまとこまかく複雑であるさま」という意味があるので、これから充てられたものと思われます。「委曲」(イキョク)、「曲尽」(キョクジン)、「曲礼」(キョクレイ)などがある。

 ■「寥寥」は「リョウリョウ」。この場合は、数か少ないさまとある。ほかには、うつろでひっそり、空虚なさまもある。「寥」は「さび・しい」「しず・か」と訓む。「寂寥」(セキリョウ)、「寥郭」(リョウカク)、「寥落」(リョウラク)、「寥亮」(リョウリョウ)、「寥戻」(リョウレイ)。

 ■「後塵を継ぐ」は「コウジンをつ・ぐ」。「後塵」は人や車馬の通ったあとのちりほこり。「~を拝す」だと、権力者に諂びたり、人に遅れを取ったりという意味になりますが「~継ぐ」では、人のあとにつくという意味。

 ■「斬新」(ザンシン)は、甚だ新鮮ということ。

 ■読み問題「一籠」は読めますか?音読みで読んでほしい。

 正解は「イチロウ」。なぁ~んだと言うかもしれないが、案外読めないのでは?「籠城」(ロウジョウ)や「灯籠」(トウロウ)、「薬籠」(ヤクロウ)は見慣れているが、「一籠」は珍しい用法ですね。狃れましょう。訓読みならば「ひとかご」でしょうかね。

 ■「担頭の物」は「タントウのもの」。「担頭」は天秤棒を担いで売りに来るもの。行商人の売り物でしょうか。

 ■「拈り」は「と・り」と訓む。「拈」は「ひね・る」「つま・む」と訓むので、いささか珍しい訓みですね。

 ■読み問題「价」は訓めますか?そして意味は分かりますか?これは難問。1級配当漢字ではありますがほとんど見かけたことはありません。「よ・い」「よろ・う」はあるものの、一字訓読みは記載がありません。文脈から類推しましょうか。美味しいマツタケを届けてもらい、それを運んで来た「价」に律詩一首を渡したんです。

 正解は、読みは「カイ」、意味は「下男、下僕」。読むのは音符を其の儘ですね。ところが意味は難しい。漢字源にはありましたが、漢検辞典には見えない。

 ■「落句」(ラクク)というのは、律詩の尾聯の二句を指す。

 ■「玉食」(ギョクショク)は二度目の登場、この場合はマツタケを指す。

 ■「脆美」は「ゼイビ」。歯切れよくて美味。「脆」は「もろ・い」「やわらかい」。

 ■「九原に起して」(キュウゲンをおこ・して)は、前回も出ました。「死者を蘇らせて」。あのマツタケを絶賛し尽くした楊誠斎にも食べさせたいほど旨いのだが、それは叶わないね、ざまぁみろ。。。如亭がギャグをかましています。「笑倒」(ショウトウ)は捧腹絶倒、笑い転げることですね。

 如亭が松蔭大夫より送り届けてもらったマツタケ=松蕈はよほど美味だったのでしょうね。しかし、如亭はあちこちの大名、家老に食客だったんですね。ここでは備中・庭瀬藩の家老宅。そして、詩を教えてそのお礼にグルメ産品を味わい尽くしたんですね。うらやますぃ~。。。。

 本日は以上です。ふ~っ、何とか本日中に終えられました。。。。

 【今日の漢検1級配当漢字】

蕈、蔬、酥、嬌、寥、嗜、拈、价、尤、筍、圃、糲、范、游、嬌、頹、璋、牀、頌、娥、鵝、徇、荀、蓴羹鱸膾、麝、狃

「鰒魚」と「石決明」と「鮑」と「蚫」=柏木如亭「詩本草」

 柏木如亭の「詩本草」シリーズの3回目の御題は「鰒魚」。これは読めますよね。このほかにも宛てる漢字や、漢名由来の熟字訓もあり、検定試験本番ではよく狙われます。如亭によれば、駿河の国(今の静岡県)の産が美味しいそうです。

《22 鰒魚》

 鰒魚は即ち王莽が啗ふ所の者にして、その殻を石決明と曰ふ。海に沿ひて所在これ有り。亦た海国常食中の美品なり。駿の薩埵嶺下に烹る所の者、頗る好喫たり。越に游ぶの日、尾張の勾臺嶺と能生の海浜に抵り、一孤島を見る。 【              】 岸を距つること僅かに三里なり。奇景探る可く、急に一船を弁じ、酒と鰒とを携へて往きて游ぶ。是の日天気晴明にして海面、鏡の如し。佳処を揀びてし、俯して魚楽を観る。游する者、泳ずる者、歴歴として数ふ可し。是において盃を挙げて古を論じ、詩画を談ず。快甚だし。莫に至りて帰る。再び至れば則ち風浪大いに起り、洶湧岸を拍ち、リンコとしてそれ留まる可からざるなり。チョウゼンして詩を吟じて去る。

 前月来る時此に舟を買ふ

 センプウ吹き送る小瀛洲

 初めて知る 凡骨終に再びし難きを

 屋の如きキョウトウ 旧游を隔つ

 白文

 前月来時此買舟
 センプウ吹送小瀛洲
 初知凡骨終難再
 如屋キョウトウ隔旧游

 ■「鰒魚」は「あわび」とルビを振っているが、音読みなら「フクギョ」と見たままでOK。「鰒」の一字で「あわび」ですが、和名では「ふぐ」もあるので要注意です。「あわび」では「蚫」「鮑」もある。

 ■「王莽」は「オウモウ」。漢の人。初めは善政を敷いて人望を集め、平帝を弑して帝位を簒奪して国を新と号したが、過酷な政治に民心が離反し、光武に殺された。「漢書」王莽伝に「王莽、関東に兵の起るを以て憂憊し、食はず但だ酒を飲み鰒魚を食ふ」とある。古来、鰒好きで知られた人のようです。

 ■訓み問題 「啗ふ」は訓めますか?訓読みの読み問題で出そうです。



 正解は「く・ふ」あるいは「くら・ふ」。音読みは「タン」で「啗以利」(くらわすにリをもってす=利益を与えて人を味方につける)、「啗齧」(タンゲツ=がつがつとかんで食べる)。と思ったんですが、これってもしかしたら配当外?漢検辞典には載っていないような。。。でしたら失礼。問題には出ませんわ。「啖」(タン)なら1級配当なので、こちらを覚えたらいいかもしれません。すいません、よく見たら、「啖」の異体字でした。したがって、問題には出ます。歴とした1級配当でした。漢字源では別の漢字で書かれていたもので。。。二重に失礼。。。「健啖」(ケンタン)、「啖呵」(タンカ)。

 ■「石決明」は熟字訓問題で頻出。これも「あわび」です。ここでは「セキケツメイ」と読ませています。「大和本草」巻14に「石決明 海介の上品也。又蚫と云。肉も殻も目を明にす。弘景蘇恭は石決明と鰒魚を一物とす。蘇頌と時珍は一種二種とす」と記されていると注釈にあります。すなわち、「中国の本草書ではアワビ自体を指し、日本でも『類聚名義抄』や『下学集』に見られるように古くはアワビそのものを指していたが、『本朝食鑑』巻10・鰒に『鮑 俗称 殻は石決明と名づく』(原文漢文)とあるように、後にはその殻のみを指す例が見られる」というわけです。正確には「石決明」はその身というよりは殻を指すようです。勉強になりますねぇ。。。

 ■「駿の薩埵嶺(サツタリョウ)」は、駿河(現在の静岡市清水区と由比町との間)に位置する薩埵峠で、東海道の難所として知られたとある。その峠の下の海で海女が栄螺や鮑を採って旅人に供したことが知られているといいます。「好喫」(コウキツ)は「美味しい」の意。

 ■訓み問題 「適」は表外訓みで基本です。読んで下さい。



 正解は「たまたま」。「偶」も「たまたま」。ふたつセットで覚えましょう。

 ■「勾臺嶺」(コウタイレイ)は人名。尾張の画家で、文化2年(1805年)秋、越後游歴中に五十嵐川のほとりで如亭と邂逅し、以後翌年にかけて如亭と一緒に信越の地を遊歴した。

 ■「能生の海浜」(のふ)は新潟県糸魚川市大字能生の海岸のこと。

 ■「抵り」は「いた・り」と表外訓みで、「到る」と同義。「あ・たる」の訓みもあるがここでは採らない。「抵死」(テイシ)、「抵罪」(テイザイ)、「抵牾」(テイゴ)などの熟語がある。

 ★ 【     】内には「ラケイ・セイカン、ケンキュウにして空にソビゆ。」の一文が入ります。1級配当漢字が5文字です。分かりますか?結構難しいですね。ヒントを出します。この文は、陸から三里許と程ないところに浮かぶ小島を形容しています。この場合の一里は4粁じゃないですよ、6町(=約500米)。

 ■まず、「ラケイ」。この音で浮かびませんか?「蘿径」ではない。ぐるぐると巻貝のように高く盛り上がったさまなんですが。。。。



 正解は「螺髻」。ホラガイのような形に束ねた子供のまげ。形が似ているところから、青々とした山の形容としても用いる。「螺」は準1級で「つぶ、にし」。「螺髪」(ラハツ)、「螺旋」(ラセン)、「螺甸」(ラデン)、「法螺」(ホラ)。「髻」は1級配当で「もとどり、たぶさ、みずら」と訓む。「髻華」(うず)、「髻子」(ケイシ)、「肉髻」(ニクケイ、ニッケイ)、「椎髻」(ツイケイ)、「宝髻」(ホウケイ)。

 ■次に「セイカン」。「セイ」は「青」。問題は「カン」。大ヒント。「緑に覆われた青いまげのような形」を言い表しています。1級配当の「カン」で「まげ」と言えば浮かぶでしょう。。。



 正解は「青鬟」。「鬟」は1級配当で「わげ、こしもと、みずら」と訓む。「丫鬟」(アカン)、「風鬟雨鬢」(フウカンウビン)、「霧鬢風鬟」(ムビンフウカン)、「花鬟」(カカン)、「小鬟」(ショウカン)、「翠鬟」(スイカン)、「垂鬟」(スイカン)。

 ■次は「ケンキュウ」。同音異義語は「研究」「譴咎」「狷急」「建久」。どれもぴたっときませんね。ここで言いたいのは、島が山のように高くてけわしいということ。「ケン」は「けわしい」。「キュウ」は「たかい」。ただし、両字とも1級配当。あまり馴染みがないかもしれませんが。。。。



 正解は「嶮岌」。難しい言葉ですね。ともに1級配当。「嶮」は「けわ・しい」と訓む。「嶮路」(ケンロ)、「嶮隘」(ケンアイ)、「嶮峻」(ケンシュン)、「嶮岨」(ケンソ)。「岌」は「たか・い」と訓む。「岌岌」(キュウキュウ)、「岌峨」(キュウガ)=「岌嶷」(キュウギョク)。いずれも山の雄大な態を形容する漢字です。

 ■最後は「ソビゆ」。これは簡単。絶対にノーヒントで浮かんでほしい。



 正解は「聳ゆ」。1級配当で音読みは「ショウ」。訓はほかに「おそ・れる」「つつし・む」「そばだ・つ」「そび・やかす」「すす・める」と多いので要注意です。熟語には「聳懼」(ショウク)、「聳峙」(ショウジ)=「聳立」(ショウリツ)、「聳秀」(ショウシュウ)、「聳身」(ショウシン、みをそばだつ)、「聳戦」(ショウセン)、「聳善」(ショウゼン、ゼンをすすめる)、「聳然」(ショウゼン)、「聳動」(ショウドウ=世間の耳目を驚かす)。

 ■訓み問題 「距つる」と「許」。ともに表外訓読みです。基本です。本番でも出ますよ。



 正解は「へだ・つる」「ばかり」。しっかり学習しましょう。

 ■「佳処」は「カショ」。絶景ポイントですね。

 ■「揀びて」は「えら・びて」。「選」「簡」と同義。「揀」は1級配当で「わ・ける」とも訓む。「揀別」(カンベツ)、「揀択」(カンタク)、「揀取」(カンシュ)、「揀退」(カンタイ)、「揀選」(カンセン)。

 ■訓み問題 「席」は訓めますよね。「セキ」じゃないっすよ。表外訓読み。



 正解は「むしろ」。ここでは「席する」と動詞にしていますが、「むしろ」は敷物のことで、席を敷いて座る場所を設えること。「むしろ」はほかに「莚」「筵」「莞」「苫」「蒲」「蒻」「蓆」「藉」もある。

 ■「魚楽」(ギョラク)は、魚が自由に泳ぐ楽しみ。注釈によると、「荘子」秋水に出典があるそうです。

 ■「游する者、泳ずる者、歴歴として数ふ可し」は、海水浴に来ているビキニギャルをにやにやしながら眺めている……、なわけなくて、魚が泳ぎまわっている様を数を数えながら眺めていること。

 ■「莫」は「くれ」。暮と同じ。

 ■「洶湧」は「キョウユウ、キョウヨウ」。波がわきたつ音。また、そのさま。「洶」は1級配当で「わ・く」「さわ・ぐ」とも訓む。「洶洶」(キョウキョウ)、「洶動」(キョウドウ)。「湧」(準1級配当)も「わ・く」。音は「ヨウ」と「ユウ」。「涌」は異体字。「湧出」(ユウシュツ)、「湧溢」(ヨウイツ)、「湧出」(ヨウシュツ)、「湧泉」(ヨウセン、ユウセン)、「湧湍」(ヨウタン)。

 ■書き問題 「リンコ」は書けますか?「林胡」「廩庫」ではありません。ノーヒント。



 正解は「凛乎」。音や声がよく響くさま。あるいは、寒さの烈しいさま。「凜」は「さむ・い」「すさま・じい」とも訓む。「凜秋」(リンシュウ)、「凜森」(リンシン)、「懍慄」(リンリツ)、「凜凜」(リンリン)、「勇気凜凜」(ユウキリンリン)、「凜冽」(リンレツ)、「凜烈」(リンレツ)。

 ■書き問題 「チョウゼン」は書けますか?「超然」「輒然」「佻然」「帖然」「兆膳」ではありません。これもノーヒント。



 正解は「悵然」。思い切れず、失意するさま。「悵」は「いた・む」「うら・む」とも訓む。「悵恨」(チョウコン)、「悵悵」(チョウチョウ)、「悵望」(チョウボウ)、「惆悵」(チュウチョウ)。

 ■書き問題 「センプウ」は書けますか?「旋風」「尖風」じゃないですよ。「仙風」?う~ん、これも正解かなぁ。惜しい。「セン」は1級配当で、確かに「仙人」を意味しますね。これがヒント。



 正解は「僊風」。仙界の風。仙人が起す風。「僊」は「せんにん」「やまびと」とも訓む。魂が肉体を抜け出て、飛べるようになった人。すなわち、仙人のこと。「羽化登仙」(ウカトウセン)は「羽化登僊」(ウカトウセン)とも書く。中国の秦から後漢のはじめごろまでは「仙人」を「僊人」と書いた。

 ■「瀛洲」は「エイシュウ」。中国の伝説にある三神山の一つ。東海(渤海)中にあって仙人が住んでいると伝えられる。三神山とは、蓬萊、方丈、瀛洲。「瀛」は1級配当で「うみ」とも訓む。「瀛寰」(エイカン→海と陸の総称、この場合の「寰」は寰宇=カンウで、天下を指す)、「瀛海」(エイカイ)、「瀛表」(エイヒョウ)。

 ■「凡骨」は「ボンコツ」。平凡な人間、凡人。対義語は「仙骨」(センコツ)=仙人の骨相、すぐれた人。

 ■書き問題 「キョウトウ」は書けますか?「驕宕」「驕蕩」「狂蕩」「劫盗」「兇党」「侠盗」「共闘」「教頭」「郷党」ではありませんよ。意味は、逆巻く大波。これでお分かりですね。



 正解は「驚濤」。「濤」は準1級配当で「なみ」と訓む。「濤声」(トウセイ)、「濤波」(トウハ)、「濤瀾」(トウラン)、「松濤」(ショウトウ)、「怒濤」(ドトウ)、「波濤」(ハトウ)、「風濤」(フウトウ)。


 それほど長い条ではないのですが、漢検本番で出そうな語彙が目白押しでした。酒と鰒を携行して島に遊び、一日中、のんびりと魚を眺めて日向ぼっこしていたのですが、次に来たときは荒れ狂う濤が岌く、島にすら近寄れない。やはりあの島は仙人が住むという瀛洲だったのか。あぁ、やはり凡人には二度とは渡れないのだ。自然界の変化を身に沁みたのでしょう。仙人になれない自分のちっぽけさも感じないわけにはいかなかったようです。そして、その時詩人は詩を吟じるばかりです。それでいいのです。

 本日は以上です。

 【今日の漢検1級配当漢字】

鰒、莽、啗、游、揀、俯、洶、瀛、蚫、鮑、弑、簒、憊、齧、啖、呵、臺、邂逅、牾、蘿、髻、甸、鬟、鬢、譴咎、丫、狷、嶮岌、隘、嶷、聳、懼、峙、莚、筵、蒻、蓆、藉、湍、廩、輒、佻、悵、惆、僊、寰、驕、瀾、彙
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char

Author:char
不惑以上知命未満のリーマンbloggerです。
言葉には過敏でありたい。
漢検受検履歴
2006.3  漢字学習スタート
2006.6  2級合格
2006.10 準1級合格
2007.10 1級合格①
2009.2 1級合格②

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